今年の当NPOのアクションプラン「無電柱化アクションプログラムをもっと日本のすみずみまで」に象徴されるように今回の無電柱化推進展で元々あった企画に加えて、新たな試みも行いました。井上咲楽さんとのトークショー、当NPOブース内でのVR体験やデータ端末での無電柱化ビフォーアフターのコーナーなど、2019年7月24日から7月26日の3日間の様子をお伝えします。

また来場者などのデータは、(一社)日本能率協会のホームページ(https://www.jma.or.jp/mente/report/index.html)をご参考ください。

目次

    1. はじめに
    2. 無電柱化ミニセミナー
    3. NPOブースの展開
    4. 無電柱化推進セミナーの報告
    5. 謝辞
    6. お問い合わせ

 

はじめに

今回の無電柱化推進展でも、壁面にパネルを貼付し、当NPOの活動内容が分かるようにしました。

・NPOの活動紹介や本年度のスローガン・計画
・無電柱化低コスト手法の開発
・民間ワーキンググループ(国交省との連携)
・無電柱化を推進する市区町村長の会との連携
・京都大学大学院准教授大庭先生の研究発表
・国研寒地土木研究所の研究成果
の計6枚を展示しました。

NPOの活動紹介や本年度のスローガン・計画のパネル

写真・図を多く使用し、できるだけ視覚に訴えるようなパネルデザインを目指しました。

ブース内のロゴパネルはマルマテクニカ㈱様にご提供いただきました。作業は、ホール内の空調が聞かない中、黙々と皆で進め、昨年よりかなり早く終わらせることができました。ご協力ありがとうございました。

推進展の準備にご協力いただいた皆様

今回のブースでは、1日4回のミニセミナー、VRを使った災害体験コーナー、その横で設けた無電柱化前・無電柱化後のビフォーアフターの情報端末コーナー、ラックや机に関連資料を設置。また、無電柱化の相談ができるスペースを設けるなどして臨みました。

無電柱化ミニセミナー

日頃話が聞けない、興味深い話題を豪華なメンバーにご提供いただきました。

緒方聡:国立研究開発法人寒地土木研究所 主任研究員

ミニセミナーを行う緒方研究員

北海道を代表する寒冷地での電線の耐久性や損傷を緻密な設備や長い距離での実験を通して検証。どれだけコストをかけずに電線類地中化をできるかを研究している。

また、北海道らしい無電柱化の説明。例えば、浅層埋設ができるかどうかをトレンチャーという掘削機を使って実証試験を行ったり、景勝地での電柱を逆車線に移行・集中して見栄えをよくしたり、並木と同化させて、電柱を目立たなくする工夫をしたりすることなどを紹介された。

トレンチャーについてはこちらの記事が詳しいです。

無電柱化コスト73%削減!?京都大学正門前トレンチャーの実証実験

他にも、印象に残った内容では、日本は各国に比べて無電柱化率は低いが、道路総延長が長いことも特徴としてあるという話。日本列島を緻密に張り巡らせている道路網は世界でもトップクラスなので、公共事業としての道路は、日本にとって重要な位置づけを担っている。

ちなみに道路の総延長距離ランキングでは2010年のデータで世界6位で西ヨーロッパ諸国と比較してもかなり長いことが分かる。

詳しくは寒地土木研究所のHP(http://scenic.ceri.go.jp/no_utility_pole/index.html)でご確認下さい。

高山登:当NPO東京支部長

ミニセミナーで講演いただいている高山支部長

関東地方で無電柱化されている成田山・川越の無電柱化・街づくりの経緯とその状況を紹介。

高山支部長の話を伺っていると、無電柱化は単に電柱を無くすだけではなく、そこに住んでいる地域の人たちの思いや無電柱化と並行しての街並み整備があって、初めて実を結ぶことが分かる。

無電柱化した後の青写真が、整備をするもの、住人ができているかで、その効果が何倍にもなることがよくわかるお話でした当NPOでもよく使用する無電柱化をした後の電線のない街並みのシミュレーションは、案外効果があるのかもしれません。


成田山は駅から寺までの参道を4期に分けながら進めていって、最初に進めた無電柱化された沿道の景観の良さから、2期・3期・4期へと結びついたそうだ。成田山祇園祭の山車は電線が邪魔で支障をきたす面があったが、今ではすっきりした沿道のもと祭りが実行されるようになった。

川越一番商店街は、最初メインストリートの無電柱化が行われたが、線だけで終わらせずに周辺地区も続けて無電柱化され、面での無電柱化が実現し、見学者が見学者を呼んでいる、メインストリートは自動車も通れるが、休みの日は、自然と歩行者天国のような形になっているという。

大庭哲治:京都大学大学院准教授

ミニセミナーで後援いただいている大庭先生

先生の研究は「無電柱化事業の可視化と効果計測研究への挑戦」と題され、地方自治体の限られた財源で効果的に無電柱化を進めるには、エビデンスに基づいて、選択と集中による効率的・効果的な無電柱化事業の推進が急務という主張の元に講演いただいた。

現在、京都市県建設局道路建設部道路環境整備課と連携して整備実績データを分析・可視化を試みている。その際、差分の差分推定法を適用し、データの可視化を深めている。

先生の講演の細かな説明は省略しますが、無電柱化工事を4つの段階、つまり①決定した時、②開始した時、③終了した時(電線はないが電柱はある)、④抜柱した時(電線も電柱もない)に分けてそれぞれの地価の変化を分析すると以下の図のようになった。

無電柱化工事 地価
①決定した時 上昇
②開始した時 鈍化もしくはやや下降
③終了した時 ほぼ変化なし
④抜柱した時 上昇

セミナーの後、「差分の差分推定法」に質問が集中した。簡単に説明すると、京都での地価上昇を検証する場合、インバウンド効果などの無電柱化による地価上昇以外での上昇要因をあらかじめ検証し、その除いた数値で検証することをいう。

大庭先生のお話は、地方自治体の限られた財源の中で無電柱化するにはどこを優先すればよいかを検証するのに最適な方法となりうる研究で、聴衆もそこに興味を持たれた様子でした。今後大庭先生の研究も注目でしょう。

NPOブースの展開

ミニセミナーを実施している以外での時間、無電柱化関連動画(当NPOが関わった報道番組を何本かまとめて流す)を流した。

通路正面には、昨年も配布した推進展用の冊子やNPO法人経歴書、5月に行われた九州シンポジウムの概要記録をラックに挿して自由に持って帰れるようにした。その横でVR体験コーナーと無電柱化される前の街と無電柱化された後の街のシミュレーション画像を体験できるコーナーも設けた。操作を説明しなければ進めない点など、今後の課題を残したといえる。無電柱化ビフォーアフターは横の資料を持って帰る方に声をかけやすく、アプローチしやすかった。

通路横にラックを設け、主要な資料を持って帰ってもらうようにした。昨年も配布したが、3日間で昨年よりも100部近く配布数が増えた。他の資料の配布も公表だった。ラックの右側にVR]の器具を設置。

無電柱化推進セミナーの報告

今回の無電柱化推進セミナーでも、井上事務局長は昨年の9枠から12枠の講演数に増やし、無電柱化に関する専門家の生の声を増やす機会を設けた。それとともにタレントの井上咲楽さんと井上事務局長のW井上トークショーを企画し、無電柱化推進展の新しい参加者層を広げる試みも行った。

W井上トークショー

7月24日(火)の初日、無電柱化推進セミナーでタレントの井上咲楽さんと井上事務局長のW井上トークショーが実現した。井上咲楽さんは、自ら国会の傍聴にも行く政治通で、無電柱化のトークの際にもてきぱきと局長に疑問を投げかけていた。

トークの中で咲楽さんは、自らの体験で、蔵の街・川越商店街(埼玉県)のことを語った。こちらの商店街は売っている商品が魅力的なのと同時に、すっきりとした街並みが人々を訪れさせているのではないかと語っていた。自身も何回か訪れているとのことで地元の方の努力で無電柱化された街のすばらしさ、その素晴らしさが人を呼び、街を活性化させていることを力説されていました。

無電柱化推進セミナーで共演中の井上咲楽さんと井上事務局長

トークの最中、井上事務局長から「無電柱化のキャラクターを咲楽さん書いてみてください!」という無茶ぶりなリクエストにも臆せず、5分程度の制限時間でキャラクターを描いていただいた。それが後の画像のモグチュウである。キャラクターの顔が電柱を手のようなものが電線を表しているそうだ。土に潜る(地中化)イメージを込めたイラストとのこと。

井上咲楽作「モグチュウ」

50分という短い時間での共演でしたが、今後の二人の共演に期待したいです。

トークショー内アンケート 商品抽選結果

W井上トークショー内でアンケートにご回答いただいた方の中から抽選で1名様に井上咲楽さんのサイン入り下敷きをプレゼントさせていただきました。当選された方は関東にお住まいの男性です。おめでとうございます。

井上事務局長の講演

7月26日(木)の最終日、無電柱化推進セミナーのオオトリを今回も井上事務局長が務めた。講演のタイトルは「”世界で一番住みたいまち”の無電柱化事情とは?~北米住宅開発にみる街づくり~」と題された。

事務局長はハウスメーカー団体とともに北米へ視察に行き、ポートランド、シアトル、バンクーバーの3か所を見学した際の北米の住宅街や無電柱化事情についての話題を話した。

ポートランド

全米で最も住みたいまち1位に選ばれたポートランドは、現在中堅としながら人口がどんどん増えているにも関わらず、CO2の排出量が減っているという魔法のような都市です。

市内には町のいたるところに公園があり、その一つ一つがビオトープ(生物の生息場所)となっています。また雨水を地表で吸収して下水に流さない工夫も行われていて、下水道の処理費を63億円も節約したという話も紹介されていました。他にも街中にあるビルが廃材を利用して作られたものであるなど、徹底的に自然に優しい設計となっているようです。

住民たちの環境に対する意識も非常に高く、遠藤に落葉樹を採用していて、メンテナンスは住民が率先して行うそうです。これが日本なら市役所にクレームが入るところです。

ポートランドの電柱事情はどうなっているかというと、当然のように無電柱化されています。低コストの工夫も見受けられて、日本では通常特殊部の防護に鋳物の蓋を用いますが、ポートランドでは鉄板が用いられていました。他にも、グリーンインフラの中にトランスを上手に隠したり、大通りからは見えないような位置にトランスを配置した入りとトランスの配置一つとっても工夫がちりばめられている。

低所得の方でも購入しやすい住宅エリアでもしっかりと無電柱化が行われているので裏通りに入ると急に景観が損なわれるということもないようです。

シアトル・バンクーバー

シアトル北部のノースウェストランディングは30年がかりで開発された自然に優しい街で緑の中に多様な住宅が配置されている。街の中の緑の管理は管理組合が行い、住民が管理費を支払うというポートランドとは対照的な仕組みです。

シアトルの中心街ではトランスを目立たさせない工夫が行われていたり、トランス自体にペインティングを施し、アートとして成立させようという取り組みもありました。
バンクーバーの中心地では無電柱化の工事自体が終了していましたが抜柱はされておらず、電線のない電柱が並ぶという不思議な光景が広がっていたそうです。

最後に

ポートランドに行ったときに最も印象深かったのが、市民が環境に対して非常に高い意識を持っていたことです。地域環境を守るためのネイバーフッドアソシエーションという市民団体にわざわざ会費を払って入会する人も多いそうです。その証に高速道路を撤去して緑地を作るという運動を住民が中心となって起こしています。

また面白い取り組みの一つとして、無電柱化するとその土地の資産仮が将来的に向上することを利用してその差額を債権として貸し出すというシステムも存在しているようです。

生まれた時から電柱が当たり前となっている現状を市民が主体的にかかわっていかなければ結局いつまでたっても電柱がなくならないことを痛感しました。

 

謝辞

今年も会員企業様のご協賛をいただき、推進展の期間、小冊子の第2弾「脱・電柱社会~日本の空を取り戻そう~無電柱化事業の現状2」を参加者に配布することができました。本当にありがとうございました。

【協賛企業一覧】

ミリケンジャパン合同会社

マルマテクニカ株式会社

東拓工業株式会社

株式会社オーイケ

株式会社イトーヨーギョー

株式会社エイテック

共和ゴム株式会社

株式会社エヌ・エス・ピー

株式会社七和

ジオ・サーチ株式会社

ミライズ公共設計株式会社

株式会社長栄通建

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