1.つくば市の概要
平成28(2016)年9月30日、日本で初めて無電柱化の制度を制定
つくば市無電柱化条例とは?
特定のエリア内で新規開発等を行う際に、電線類を敷設するときは、電線類を地下に埋設することを義務化する条例
この条例のポイント
① 点、線ではなく面で無電柱化を誘導
② 道路だけではなく民地についても制限
③ 既存電柱を抜くのではなく、新たに建てさせない
2.つくばのまちづくり
筑波研究学園都市の建設
◆建設の目的
1 科学技術の振興と高等教育の充実
2 東京の過密緩和
◆都市構造(二つの地区)
〇研究学園地区(約2,700ha)
研究機関や住宅、商業などを計画的に配置
(都心地区、研究・教育施設地区、住宅地区)
①都心地区
研究学園地区の中央に配置し、「広域自立都市圏の中核都市にふさわしい行政、商業、業務、サービス、文化等の施設を充実」させる地区
②研究・教育施設地区
国等の試験研究・教育機関が立地する地区として、文教系機関を北部に、建設系機関を北西部に、理工系機関を南部に、生物系機関を南西部に配置
③住宅地区
地区の居住者のための教育、福祉、商業等の施設を適正な配置のもとに、人口の集積に応じて整備した地区筑波研究学園都市のまちづくり
〇周辺開発地区
研究学園地区と適切に機能分担
(工業団地、TX沿線開発地区)
研究開発型工業団地の整備が進められてきたが、現在はつくばエクスプレスの開業に伴い、新たな市街地開発(沿線開発)が進行中
①研究開発型工業団地
民間企業の研究開発機能を誘致するために、市内に7つの工業団地を整備
研究開発型工業団地
TX沿線開発地区
②TX沿線開発地区
2005年につくばエクスプレスが開業し、市内4駅を中心とした土地区画整理事業による新しいまちづくりが進行
筑波研究学園都市のまちづくり
都心地区の一部と住宅地区の一部では、新住宅市街地開発事業(全面買収)で整備したことから、計画的なまちづくりが実現
◆まちなみ誘導の例
・ペデストリアンデッキを整備し、歩車分離
・建築物は大通りから10mセットバック
・大通り沿いには緑地帯
・建ぺい率は10~30%程度
・容積率は20~100%程度
・緑化率は50%程度
・日照を確保できる住棟配置
・電線類の地中化など
◆電線類の地中化
・主要幹線道路は地中化を行う
・研究・教育施設地区はほぼ地中化を図る
・中心市街地と計画住宅地は地中化を図る
・特に中心市街地は完全地中化を図る
建設時の無電柱化の区域
公務員宿舎削減と電柱の建柱
国家公務員宿舎の廃止がまちづくりの大きな転機
3.日本初 つくば市無電柱化条例
もともと地中化されているのに、なぜ電柱が建ってしまうのか
電柱NO!!
既に‘‘約30ha”の公務員宿舎が処分され、一部は架空線で開発…
今後25ha以上の公務員宿舎が売却予定…
このままでは電柱がたくさん出現…どうにかしなきゃいけない!
つくば市はこれらに対応するため様々取り組む!
①つくば中心市街地再生推進会議の設置
有識者や関係者等で構成する「つくば中心市街地再生推進会議」を平成25年5月に設置し、都市再生のあり方や公務員宿舎の処分手法等を検討
都市機能の集積、緑豊かなゆとりある都市環境、無電柱化を図っていこう!
②地区計画や高度地区の指定
地区計画による街並み誘導や高度地区による高さ制限
③公務員宿舎等売却時の事業者との調整
売却時に市からのまちづくりの要請事項を示して頂き、事業者と市で協議
④都市の再構築に向けた検討やインフラの更新
⑤ペデ(ペデストリアンデッキ)などの公共空間を活用した都市の魅力づくりなどなど
平成26年の半ばから検討開始し、制定まで2年…
平成28年9月30日 日本で初めて無電柱化の制度を制定
つくば市無電柱化条例とは?
特定のエリア内で新規開発等を行う際に、電線類を敷設するときは、電線類を地下に埋設することを義務化する条例
この条例の最大のポイント ① 点、線ではなく面で無電柱化を誘導 ② 道路だけではなく民地についても制限 ③ 既存電柱を抜くのではなく、新たに建てさせない |
最初から条例ではなかった
目的は「無電柱化を維持する、新たに建てさせない」こと
Step1 「研究学園地区まちづくりビジョン」などの計画に無電柱化を記載
→ 法的拘束力が無いことから、なかなか守られない・・・。
Step2 地区計画など既存の制度を活用した誘導手法を検討
→ 電柱は特別だった・・・
電柱などは地区計画の届出対象になっていない・・・。
とりあえず、地区計画の方針にも記載
Step3 開発事業者と個々に調整を実施
→ 無電柱化は費用を要することから難航
多くの開発が一度に行われると対応できない・・・。
Step4 地方自治法にもとづく条例で制定
しかし、条例制定への道はいばらであった…
電気等は特別で様々なもので守られている・・・
電気等を地中化するための仕組みが複雑・・・
国で検討している法案に先行して制定し、法と異なっていたら・・・
公務員宿舎の売却はとめられない…早くしないと取り返しがつかない…
平成26年の半ばから検討開始し,制定まで2年・・・
平成28年9月30日 日本で初めて無電柱化の制度を制定!
条例を検討する上でのポイント
➀道路だけではなく民地についても電柱の建柱を制限しなくてはいけない。
➁無電柱化を推進するためには、「既存電柱を抜く」「新たに電柱を建てさせない」の2つの視点から検討が必要。
早急な対応が必要なのは、どんどん増えていく電柱を抑制すること。
「既存電柱を抜く」は行政が中心となって行う?
➂私権を制限することから、どのエリアでどこまで制限するかを慎重に検討しなくてはいけない(憲法第29条の財産権・・・)
➃無電柱化を促進したことにより、その他のまちづくりへ影響を与えてはいけない。
(電柱がなくなると街の明かりもなくなる可能性が・・・)
◆◆つくば市無電柱化条例◆◆
条例の概要
➀ 新たに電線類を敷設する際の決まり(既存の電柱は対象外)
② 公共用地のみでなく民地に対しても制限
③ 電線類等を敷設する者すべてが対象
④ 地中化設備の構造や管理等は定めていない
⑤ 無電柱化の際の弊害についても対応
制限の仕組み
無電柱化区域の制限
第3条 別図に掲げる区域(以下「無電柱化区域」という。)において電線類の敷設を要請しようとする者は、電柱を設置することなく、電線類を地下に埋設することにより敷設するための管路その他の規則で定める設備を整備し、及び電線類を敷設する者に対し、費用(電柱を設置することなく、電線類を地下に埋設することにより敷設するために必要な費用のうち規則で定める費用に限る。)を負担しなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する場合は、この限りでない。
(1) 電線類を敷設する区域において、電柱を設置することなく、電線類を地下に埋設することにより敷設することが技術的に困難な場合
(2) 工事等により電線類又は電柱を一時的に使用する場合
(3) その他市長がやむを得ないと認める場合
2 無電柱化区域において自ら内線を敷設しようとする者は、電柱を設置することなく、内線を地下に埋設することにより敷設しなければならない。ただし、前項各号のいずれかに該当する場合は、この限りでない。
3 前2項の規定は、電柱を設置することなく、電線類を地下に埋設することにより敷設するために最低限必要となる電線類又は電柱については、適用しない。
簡単に言うと・・・無電柱化区域では、 1 電線類の敷設を要請する者(開発事業者など)は、管路などを整備し、費用を負担しなければならない 2 敷地内で内線を敷設しようとする者は、内線を地下に埋設しなければならない 適用除外 電線類を地下に埋設することが技術的に困難、一時的に使用する場合、無電柱化のために最低限必要な部分 |
無電柱化を促進する区域での制限
無電柱化を促進する区域 ①新たに敷設する電線類と既設の電線類との接続箇所が既に地下に埋設されている ②開発行為の面積が1haを超える場合 |
第4条 無電柱化区域を除く区域において、次の各号のいずれかに該当する場合は、電線類の敷設を要請しようとする者は、電柱を設置することなく、電線類を地下に埋設することにより敷設されるよう努めなければならない。
(1) 敷設する電線類と既設の電線類との接続箇所が既に地下に埋設されている場合
(2) 都市計画法第7条第1項に規定する市街化区域において、開発行為をする土地の面積が1ヘクタール以上の開発行為を行う場合
2 無電柱化区域を除く区域において、前項各号のいずれかに該当する場合は、自ら内線を敷設しようとする者は、電柱を設置することなく、内線を地下に埋設することにより敷設するよう努めなければならない。
3 前条第1項ただし書の規定及び同条第3項の規定は、前2項の規定による電線類の敷設について準用する。
簡単に言うと・・・無電柱化を促進する区域で 1 電線類の敷設を要請する者(開発事業者など)は、電線類が地下に埋設されるよう努めなければならない 2 敷地内で内線を敷設しようとする者は、内線を地下に埋設するよう努めなければならない 適用除外(無電柱化区域の適用除外と同じ) 電線類を地下に埋設することが技術的に困難、一時的に使用する場合、無電柱化のために最低限必要な部分 |
無電柱化の弊害への対応
全域で無電柱化図ると、景観は良くなるが、夜間が暗くなる・・・。
➾無電柱化した場合には街灯を設置することを規定
(無電柱化区域では義務化、促進する区域では努力規定)
第5条 無電柱化区域において、開発行為に伴い電線類を地下に埋設する場合であって、道路を新設するときは、当該開発行為を行う者は、規則で定めるところにより当該道路を照らすための街灯その他の照明を設置しなければならない。
2 無電柱化区域を除く区域において、前条第1項第2号に規定する開発行為に伴い電線類を地下に埋設する場合であって、道路を新設するときは、当該開発行為を行う者は、規則で定めるところにより当該道路を照らすための街灯その他の照明を設置するよう努めなければならない。
◆勧告と公表
実効性を担保するため、勧告と公表を規定
◆勧 告 規定に違反又は違反するおそれがあると認める者に対し、必要な措置をとるよう勧告することができる。 ◆公 表 勧告を受けた者が、勧告に従わない場合は、氏名・住所・勧告内容を公表できる。 |
第6条 市長は、第3条又は前条第1項の規定に違反し、又は違反するおそれがあると認める者に対し、違反を是正するために必要な措置をとることを勧告することができる。
第7条 市長は、前条の規定による勧告を受けた者が、正当な理由なく当該勧告に従わないときは、当該勧告に従わない者の氏名及び住所並びに当該勧告の内容を公表することができる。
2 市長は、前項の規定により公表しようとするときは、あらかじめ当該公表の対象となる者に意見を述べる機会を与えなければならない。
無電柱化条例を検討するにあたり、様々な疑問や問題に突き当たる・・・
➀ どこまで制限し、どこまで対象することが相応しいのか
・開発などで新たに電柱を建てさせないこと(早急に対応)
・対象は通信をも含む電線類を敷設する行為すべて
・ここでは構造の制限ではなく行為の制限なので構造は別途
➁ このような制度が他の法令の違反とならないのか
“地方公共団体は、法令に違反しない限りにおいて条例を制定することができる”
・憲法第29条財産権: 公共の福祉の範囲内であるかがポイント
・都市計画法、建築基準法等: 電線類に関して適用除外はあるが特に問題なし
・電気事業法等: 電気等の供給を妨げなければOK
➂ 電気事業者などにも決められたルールがあり、それらをどのように考えるか
電気事業者などが所有するルール(約款等)と整合を取らなくては、事業者が困ることになるため、できる限り合致
④ 前例がない条例、どこから手をつければいいのか
関係する法律を調べる、目的を明確にする、なにを制限すればいいのか明確にする、とりあえず文章(条文)にする、あとは気合・・・
⑤ 飴と鞭の両方を使い分けるべきか、鞭だけでいいのか
今回は既に無電柱化がされている区域を指定したので・・・
⑥ 抜け道が無いように気をつける
せっかく条例を作っても抜け道があったら意味なし・・・
一つの条文を何日も何日もかけて、悪い人になって考える・・・
その結果、普通の人が見ても分かりにくい条文に・・・
⑦ 電気事業者などとの調整をどうするか
これが一番つらいところ・・・
条例施行から6年が経過・・・
無電柱化域内の開発では、無電柱化で計画することがスタンダードに!!
一方・・・
無電柱化促進区域では無電柱化は進まない・・・
今後は、
〇無電柱化促進区域の扱いをどのようにしていく?
〇無電柱化区域の電柱がある区域において無電柱化を促進?
〇架空線で整備されている地域の無電柱化を検討し、無電柱化区域の拡大を検討?
当日の様子を限定で公開しています。