無電柱化の様々な課題について、関係者と連携して検討していくため、無電柱化推進のあり方検討委員会の下部に無電柱化推進技術検討会等を設置。縦割り行政の弊害を解消するための新たな体制が整いました(下図参照)。

 低コスト推進WG

低コスト推進に向けた課題

○無電柱化推進の主な課題は、コストが高いこと、トランス(変圧器)の設置場所がないことなど。

○無電柱化の迅速な推進及び費用の縮減を図るための調査研究、技術開発等を関係省庁、地方公共団体、関係事業者が相互に連携し協力して行うことが必要。

具体的な方針

○低コスト推進WGの下に、電力SWG、通信SWG、コンサルSWG、合意形成SWGを設け、それぞれの立場や観点から低コスト化に係る技術開発等について検討を実施。

※合意形成SWGは、合意形成ガイドを作成後に計画推進SWGに改組予定。

無電柱化スピードアップWG

事業化を推進するにあたっての課題

○無電柱化の事業は、設計、支障物件移設、本体工事、引込管工事毎に発注及び関係者との事業調整を行うため事業期間が長期間になる。

○同時施工や事業調整の円滑化による事業期間を短縮することが必要。

具体的な方針

○設計、支障物件移設、本体工事、引込管工事、事業調整を包括して発注する「包括発注方式」を採用した『無電柱化スピードアップモデル事業』を全国10箇所程度選定し、現地にそれぞれSWGを設置し、事業のスピードアップに係る課題の対応について検討を実施。

参拝・観光客でにぎわう出雲大社前の神門通り

面整備事業における無電柱化推進WG

無電柱化の推進に向けた課題

○市街地開発事業等における無電柱化を推進するには事業の採算性確保が課題。

○関係者が多岐にわたり、調整に時間がかかる。

○円滑な調整のためには事業の初期段階から無電柱化の導入方法について緊密に検討する必要があるが、ノウハウが十分に共有されていない。

検討の方向性

○市街地開発事業等における無電柱化の推進に向けて、関係者間の円滑な合意形成プロセスのあり方や、計画から施工、管理までの各段階におけるコストの低減手法について検討する必要があるのではないか。

○得られた知見を地方公共団体に周知し、許認可等の機会をとらえて地方公共団体が施工者や開発業者等に無電柱化の推進に向けた指導助言ができる体制を強化する必要があるのではないか。

○開発事業者等と電線管理者の費用負担の運用実態の見直し等を検討する必要があるのではないか。

具体的な方針

○面整備事業における無電柱化推進WGを設置し、旅行者、開発事業者等の意見を聴きながら、円滑な合意形成プロセスのあり方やコスト低減手法等について検討を実施。

無電柱化推進のあり方検討委員会での内容

11月17日に開かれた第3回無電柱化推進のあり方検討委員会で、次期無電柱化推進計画に以下の11項目を盛り込むことが決められた。

阪神・淡路大震災時の電柱倒壊(神戸市)

①無電柱化の対象道路

緊急輸送道路(災害時に優先的に復旧が求められる市街地の幹線道路や倒壊した電柱による2次災害の回避が必要な道路)など「防災」からの観点、幅員の狭い道路や歩道など「安全・円滑な交通確保」の観点(5月に成立した改正道路法を踏まえ、にぎわいのある道路空間を構築する「歩行者利便増進道路」など)、世界遺産、日本遺産の周辺、景観条例等に位置付けられた地域など「景観形成・観光振興」の観点を踏まえ、各地域において無電柱化対象道路・地区を検討し、整備していく。

②無電柱化の事業手法

低コストで無電柱化を図るため、浅層埋設方法や小型ボックス方法を実用化し、低コスト手法の手引きを作成して、地方公共団体に情報提供を図る。

③無電柱化推進計画の目標・期間・計画

中期的(おおむね10年)に無電柱化すべき道路・地区を選定。次期推進計画の整備目標延長を調整、決定する。無電柱化推進計画の事業期間については、社会資本整備重点計画(5年)などの期間を踏まえ設定。

④低コスト手法の普及・拡大及び事業のスピードアップ

無電柱化をスピードアップするため、低コスト手法の普及にも引き続き取り組む。すでに採用が進んでいる低コスト手法については、設計要領、仕様書、積算基準に盛り込んで標準化を図る。

⑤災害に強い設備

道路冠水等による地上機器の浸水で停電が発生することがあり、対応が必要。海外の事例も参考にしつつ、災害に強い設備のあり方を検討する。

東日本大震災及び阪神・淡路大震災における電力線・通信線の被害率、架空線に比べ地中線が低いが、液状化等で被災した場合のスピードは架空線の方が早い。災害で被害が生じた際の速やかな故障点の検出及び復旧方法について検討する。また対応が難しい場合は、地中化以外の手法の対応を検討する。

※多くの都市において、水害対策が行われている。

※地震への対応は諸外国の都市でも確認できない。

⑥占用制限の的確な運用(新設電柱・既設電柱)

電柱の本数が年間7万本ペースで増加していることから占用制度の的確な運用を図るほか、既設電柱も電線管理者との協議の上、段階的に占用制限を実施するなどの対応を検討する。緊急輸送道路の既設電柱の占用制限は、拡幅する道路や迂回(うかい)路のない道路などで優先順位を決めて適用。文化財保護法、景観法、国立公園法などの規制を適用した占用制限を検討する。

道路の幅員や道路の性質(通学路、観光地等)に応じた外部不経済を反映した占用料の弾力的な設定のあり方について検討する。

⑦市街地開発事業等における無電柱化の推進

市街地開発事業施行者、開発事業者等の意見を聞きながら、円滑な合意形成プロセスのあり方やコスト低減手法等について検討する。

日本の電柱本数の推移(第1回無電柱化推進のあり方検討委員会資料による)

⑧財政的支援・技術的支援

各地方ブロック毎にワンストップ窓口を設置して、技術的支援や支援事例の共有を図る。更に計画段階からの合意形成に関する参考図書などのマニュアル化を進める。

無電柱化の推進などを含む必要な投資の確保とコスト効率化を促す託送制度改革を盛り込んだ改正電気事業法の趣旨を踏まえ、実施する。

⑨関係者間の連携強化

関係者が協力して無電柱化を推進するため、関係省庁、道路管理者、電線管理者、地方公共団体、地元関係者等による地方ブロック無電柱化協議会等を活用し、連携強化を図る。

⑩新たな制度や施策を検討

沿線民地に立地する電柱について、電線管理者及び電線によってもたらされるサービスの利用者の既存の利益・期待等にも十分に配慮しつつ、防災の観点での新たな仕組みを検討する

各電線管理者で事業規模が大きく異なることに配慮し、新たな支援の枠組みを検討する。

無電柱化が持つプラスの外部不経済も踏まえつつ、諸外国や他事業を参考に無電柱化の目的に応じた新たな制度や費用負担の見直しを検討する。

⑪広報・啓発活動

防災面における無電柱化の効果を定量的に算出するなど、国民に向け広報する。

委員会では、次回会合で項目ごとの方針を踏まえ次期推進計画骨子案を検討する。