概要

無電柱化事業は災害の防止、安全で円滑な交通の確保、景観の向上などを目的とし、全国で進められています。
加えて、日本各地に残る歴史的町並みでの無電柱化は、観光振興、地域活性化など、ソフト面の効果も期待されています。

今回は、大阪活動委員会・新春特別企画として、「五六市」「くらわんか舟」で有名な京街道の宿場町「枚方宿」での無電柱化街並み見学会を通して、ソフト・ハード両面の無電柱化手法の確認と、街づくりにおける無電柱化の意義を探っていきます。
枚方宿地区は、当NPOの髙田理事長が無電柱化のコンサル事業に携わった地区です。
枚方市、地元の方もこの見学会にご協力いただくことになりました。

詳細情報

日時 2020年1月24日(金)14:00~16:30
会場 枚方市岡本町自治会館
住所 大阪府枚方市岡本町10-9
主催 NPO法人電線のない街づくり支援ネットワーク
協力 枚方市都市整備部景観住宅整備課
枚方宿地区まちづくり協議会
参加費 無料
交流会 会場近辺にて交流会の開催を予定(費用:3000円程度)

スケジュール

第一部
14:00 岡本町自治会館集合
14:00~14:05 NPO無電柱ネットから挨拶(NPO髙田理事長より)
14:05~14:25 枚方宿まちづくりについて(枚方市様より)
※枚方宿まちづくり経過年表、無電柱化のハード面の説明、枚方市の取り組み事例など
14:25~14:55 枚方宿完成までの道のり(NPO髙田理事長より)
14:55~15:25 枚方宿無電柱化事業当時を振り返って(田中会長様より)
移動・休憩
第二部
15:30~16:20 無電柱化施工個所の見学・意見交換 枚方市様
※電柱残存個所との比較、トランス位置、機材などの確認
16:30 岡本町自治会館にて解散

交流会 17:00~19:00

結果報告

絵の上部の川が淀川、左上では河岸で花火大会の花火が上がっている。上の大きな敷地はクラボウの工場。

いきなり「この絵。なに?」という声が聞こえてくることが想像されますが、実は、1月24日、講演会場である岡本町会館内の壁に掲げられていた絵なんです。
壁一面を覆う大きな絵でした。
私が会場の準備をしているときに、会場を管理されている自治会長の羽田様にこの絵について色々お話をうかがいました。
絵の中央にある、横に伸びている道が当時の枚方宿で京街道。これは東海道から続く街道である。伏見・淀・枚方・守口と宿場が続き、最後は大坂(高麗橋)。
枚方は東海道の品川から数えて56番目にあたる。
この道を左にどんどん進んでいくと、枚方パークにつながるとのこと。

手前には京阪電車の線路が見える。電車は右側に描かれている。今は高架になっているが、昔は地上を走っていた。
左側には、今回頂上まで見学に行くことができなかった展望できる広場がある。
画面上で読み取れなくて申し訳ないですが、街では夏祭りの風景や家の庭で行水をしている場面などが描かれている。にぎやかだった街道の風景が感じられる。

後の話で出てくる枚方市職員の森様の話では、この会場の岡本町会館がここ岡本町地区の無電柱化の起点になっている。地中埋設工事では地上機器の設置に頭を痛めるケースが多いが、電柱・電線類を裏配線などで他の方向に導くためには、何カ所か電柱を残し、起点とする場所が必要となる。
土地の転売をする際、この電柱や電線がネックになることがあるからだ。
公共の土地だけでうまく処理できればいいが、それは不可能に近い。その配置や住民への理解を森様は、1軒、1軒、説得して回られたという。
交渉した軒数は約250軒。昼間に居られない場合は、夜間に訪れる。根気のいる作業を長期間にわたって行われたとのこと。
「今日はどこのうちに行くんや」という地域の方との会話が日常になるほどの日々だったそうです。ここで得られた地域住民との絆が、無電柱化の工事の際にも役立たれたのではないでしょうか。
講演の中で、森様が「この岡本町会館が無ければ、今目の前にある無電柱化の道は無かったでしょう」という言葉。色々な思いが詰まった会場なんだなとしみじみ感じるとともに、その想いがこの絵にも詰まっているように思えた。

なぜ、枚方宿の無電柱化見学なのか?

無電柱化推進法の施行後、当NPOでは年に2回~3回のペースで、各地で無電柱化推進シンポジウム、無電柱化まちづくりシンポジウムを行ってきた。
無電柱化の啓発を目的として、関係各所の識者を招いて全国各所で進めてきた。東京、大阪、那覇、札幌、名古屋、金沢、福岡、仙台、広島。そして今年の5月に高松を予定し、ほぼ全国を回ることになる。
このような大規模なホールを借りたシンポジウムとは別に、NPO発足時より行っていた無電柱化された街の見学会をしようと、大阪の理事会でも話があがった。
大阪の理事会の中で何カ所か候補が上がった中で、比較的交通の便がよい枚方宿に白羽の矢がたった。
枚方宿の無電柱化は髙田理事長が無電柱化のコンサルタント事業に携わったところでもあり、当NPOが発行している『電柱のないまちづくり』でも紹介されている。

無電柱化入門書のご紹介

また今回は、共和ゴム(株)の林様が、枚方市役所の各方面の担当者に声をかけていただくなどのご協力をいただき、とんとん拍子に話が進んでいった。

枚方宿の無電柱化見学会をするに当たって

枚方宿無電柱化見学会を行うに当たって、理事会で、髙田理事長に、枚方宿で和菓子屋を営んでおられる田中様に当日、当時の話や今の枚方宿についての話をしてもらうようにアドバイスをいただいた。田中様は、枚方宿地区まちづくり協議会の会長でもある。
共和ゴム(株)の林様と枚方市職員の方と話を進めるのと並行して、企画書を持参して田中様のお店を訪れることにした。
夕方、訪れたお店で、田中様はお忙しくされていたが、髙田理事長から是非田中様に当日話してもらうよう依頼してきてほしいというお話をすると、田中様は、髙田先生には、無電柱化の計画だけでなく、街づくりについて様々なお話をしていただいたことや、先生と一緒にみんなで撮った集合写真を今でも飾っている話や、先生から教わったガーデニングを皆で今でもしている。見学会の当日、先生が来られたときに今でも続けているガーデニングを見られたら喜んでいただけるかなと、短い時間の中でも笑顔で懐かしそうにお話しして頂いた。
また、先ほど話にあげた枚方市職員の森様の話もしていただいた。すごくお世話になって、彼がいたからこそ、何とかこの通りの無電柱化ができたのだと。
後に枚方市役所で直接森様にもお話をうかがったが、当時、森様ご自身も電線共同溝工事しかご経験がなく、幅員4m程度しかないこの枚方宿の通りを無電柱化することは、手探りで、その工事を地元の住民に理解していただくなんてことは更に大変なことで困難な話だったということが、田中様の話でも容易に想像がついた。

枚方宿くらわんか無電柱化見学会の当日

1月の20日ころから、関西地方では、冬の冷たい雨が続き、当日は、雨になるかと心配していたが、なんとか前日から持ち直した。当日は、寒さもほどほどに、天候にも恵まれ、44名の参加をいただいた。
枚方市議会議員のかたもご参加下さり、加えて自民党の佐藤ゆかり議員秘書の梶原様が先生にかわってご挨拶をしていただいた。
プログラムに移り、枚方市役所 都市整備部 景観住宅整備課の堀井様、笠井様より、枚方宿まちづくりについてご説明をいただいた。

枚方市役所、堀井課長様の説明の様子

明治ごろには街道にびっしりと建っていた伝統的建造物も時代の流れとともにどんどん減っていった。この状況を打開するため、平成11年より枚方市が街なみ環境整備事業に着手することになった。
まちづくりの経過は以下の通りである。

平成11年度 枚方宿地区を対象とし、国土交通省の「街なみ環境整備事業」による『現況調査』
平成12年度 住民等で『枚方宿地区まちづくり協議会』設立
街なみ環境整備事業整備方針策定
地元において「まちづくり協定」締結
平成13年度 国土交通大臣による『枚方宿地区街なみ環境整備方針』の承認
街なみ環境整備事業整備計画策定
平成14年度 『歴史的環境保全地区』に指定(枚方市都市景観形成要綱)
『枚方宿地区街なみ環境整備事業計画』(平成14~23年度の10年間)に基づき事業着手
町屋等の修景助成
案内サイン設計
道路美装化測量設計(新町地区)
平成19年度 三矢公園整備設計
五六市(毎月第二日曜日開催)
平成20年度 『大阪ミュージアム構想』における『石畳と淡い街灯まちづくり支援事業』にモデル地区として選定(富田林市、枚方市、岸和田市、河内長野市、箕面市、柏原市の6地区を選定)
電線類地中化プラン
街かど美術館創出プラン
平成21年度 枚方宿街道菊花祭
枚方宿地区(岡本町・三矢町)無電柱化事業実施設計委託
町屋情報バンクによる空き家等の紹介
『まちづくり実施計画』策定(平成21~23年度の3年間・大阪府支援事業)
平成22年度 枚方宿地区(堤町地区)無電柱化事業実施設計委託
枚方宿地区(岡本町、三矢町地区)無電柱化事業実施設計委託
万年寺山周道 石畳と淡い街灯整備工事
平成23年度 枚方宿地区無電柱化事業関連委託、補修工事
枚方宿地区無電柱化事業に伴う電線類宅内配線工事
枚方宿地区無電柱化事業に伴う街路灯整備工事
枚方宿地区舗装復旧工事
平成24年度 『歴史的街道区域』に指定(大阪府景観計画)
平成26年度 『景観重点区域』に指定(枚方市景観計画)
平成27年度 一般社団法人枚方宿くらわんか五六市設立

髙田理事長のお話で

枚方宿地区では、2000年6月に枚方市と専門家アドバイザーの支援を受けて、住民が中心になって「まちづくり協議会を設立し、三つの目標を掲げて活動している。

髙田理事長による主催者挨拶の様子

①歴史的な街なみを整え、まちの魅力づけをする。
②生活環境として、住みよく改善していく。
③多くの人に愛される商業地として、元気のあるまちにする。

これらの目標を実現するために、2001年3月に建築の際の約束事として「街づくり協定」を締結するとともに、コンテナガーデンの設置など目に見える形で魅力的なまちづくりを進めてきた。

協議会の構成

①枚方宿街道菊花祭

枚方宿地区では、市の花である菊を街道沿いに並べ、暮らす人、訪れる人がともに、まちの持つ歴史と文化に親しみ、魅力を再認識していただくことを目的に、2002年度より「街道菊花祭」を開催している。2004年度からは賑わいの創出に向け、菊花展示のほか枚方宿ジャズストリートと題して、地区内の9会場でジャズ演奏会を開催している。

②枚方宿「五六市」

東海道の56番目の宿場町であった枚方宿の魅力の発信と賑わいを創出するため、2006年度に「枚方宿町屋情報バンク」を設立した。町屋を借りたい人の登録会員数が約90名に達したこともあり、バンク設立1周年記念事業として、2007年に地区内の駐車場や空き地において露天市を開催し、定着している。



枚方宿五六市。店先や駐車場を利用して店が出店

❸ 町屋情報バンクの空き家紹介

地区内に多くあった未利用の空き家・土地を、まちの魅力向上と賑わいを創出に活用するために、建物や土地を貸したい人借りたい人をひき合わせ、まちづくりの目標に合致する活用を実現するための仕組みを構築してきた。「五六市」出店者や「街づくり協定」とも連動している。

❹ ガーデニング講習会

枚方宿五六市。店先でのガーデニング

年に2回程度の開催

■田中会長・枚方市・森様のお話で

① 田中会長様のお話

枚方宿地区まちづくり協議会の取り組みについてお話をいただくとともに、「枚方宿くらわんか五六市(ゴロクイチ)」についてご説明いただいた。
平成19年3月から開催、かつて東海道56番目の宿場町の賑わいを甦らせたいと名前にもその思いが込められている。
平成27年6月に「一般社団法人枚方宿くらわんか五六市」を設立された。

枚方宿、岡本町地区の無電柱化の入り口

現在では毎回公募(出店登録数1,000店以上)で200店舗が集まり、手作りの雑貨やアクセサリー等の作品やコダワリ品が並ぶ個性溢れる品々で訪れる人々を楽しませてくれている。
前段で髙田理事長が説明されたように、理事長が一緒に進めてこられた段階から、街自体がひとり立ちされ、かつ当初のコンセプトも継承されながら、発展していかれている。一般社団法人などの組織もしっかりつくられ、髙田理事長が「もうこちらからアドバイスをすることがない」といわれるほど、見事に運営なさっている。ただ、田中会長のお話から、現状に満足せずに、常に課題と目標をもって進めておられる姿勢にもうまくいかれている一因があるように思いました。

②枚方市役所・森様のお話

住民との合意形成には、とにかく話をして、理解をいただくことが大事だということを教えていただきました。森様のお話の中で、
「最後の電線がとれるときに、その時、職員で立ち会ったのは私だけで、その1本がなくなって、青い空だけになったときの瞬間のことを今でも鮮明に覚えている」
そのとき、たまたま地域の住民のかたと一緒に見ていて「電柱・電線がなくなるってこんな感じになるんだね」と感動したというお話をうかがった時、苦労が報われた
瞬間だったんだなと、私自身も少し涙が出そうになりま
した。

講演いただいている田中会長様と森様

また枚方宿の無電柱化工事をする際に、色んな無電柱化された場所、裏配線を採用されたところを見に行かれたというお話もうかがいました。亀山(三重)、犬山(岐阜)、今井町(奈良)、寺内町(大阪)など他にも行かれたところもあるかと思いますが、行かれたとのこと。
「4m程度の幅員でどうやって無電柱化?」という意識が当時最初に思われたとのこと。

見学会の様子

①うれしい悲鳴

うれしい悲鳴といってはなんですが、40名近くの参加者を幅員4m程度の道路をはさんで枚方市職員の方にご説明いただきながらというのは、一瞬どうしようかなと、お互い顔を見合わせましたが、何とかやってみようということになりました。平日の街道は、車や歩行者、自転車なども頻繁に行きかい、参加者の皆様にもご協力をいただきながらの進行となりました。
現地の説明と、誘導を枚方市職員の方にお願いしながら貴重な現場を丁寧にご説明いただきました。

現地視察会の現場で、ご説明をされる枚方市の森様(写真右側手前)

街路灯も歴史街道にふさわしいデザインに工夫され、ところどころに道標や案内板が設置されている。メインの通りは裏配線や地下埋設で施工している。その管路・電線・残った電柱などをポイント・ポイントで森様にご説明をいただきました。その説明と現場の状況を参加いただいた会員の皆様も熱心に見て、聞いておられました。

枚方宿の現場は、無電柱化推進法も施行されていない、試行錯誤な状況で、かつ狭隘な道路での無電柱化なので、現在の工法と比較しながら見られる貴重な経験になりました。

建通新聞・大阪版 1/28に取り上げていただきました。