無電柱化推進シンポジウムin名古屋

~美しく安全で見せる日本の「中部圏」~

◆日時:2018年4月16日(月)14:00~17:30

◆場所:愛知県産業労働センター ウインクあいち 5階小ホール2

◆基調講演:国土交通省 蓮見有敏

◆コーディネーター:髙田 昇 パネリスト:松原隆一郎、鈴木淳雄、岡 俊彦、井上利一

◆主催:NPO法人電線のない街づくり支援ネットワーク

後援:一般財団法人日本みち研究所、無電柱化を推進する市区町村長の会、一般社団法人無電柱化民間プロジェクト実行委員会、NPO法人「日本で最も美しい村」連合、メ~テレ、中京テレビ放送、テレビ愛知、東海テレビ放送、CBCテレビ、中日新聞社

1.主催者挨拶

NPO法人電線のない街づくり支援ネットワーク理事長 髙田昇

NPO法人を立ち上げるにあたってまずやらなければならないことは、世界に類のない電柱大国である我が国の現状をどうすれば脱するか、またそのためにどうすれば多くの人に知ってもらうことができるかということだった。

そこで我々は『電柱のないまちづくり』という本を出版した。今年に入ってから出版社から連絡が来て、改訂版を出さなければならなくなった。というのも、現在の本の中に勝手に無電柱化基本法なるものを提案した。偶然の一致で我々が提案したものがほとんど同じ形で一昨年12月に「無電柱化の推進に関する法律」として施行された。

私たちはそれで一安心かと思われたが、実際にはこの法律を作る前後に様々な方々と法律をつくるだけではうまくいかないので、どうすれば多くの人に理解してもらえるか、またネックになっている低コスト化が実現できるかを考えた。それに加えて一言で地中化と言っても地域によって大きな違いがある。それぞれの地域に見合った地中化というのはどういう方法があるのかということを一つ一つ考えていかなければ法律ができても前に進まない。ただ、その上でもかなり進んできたというのが私の実感である。しかしその進んだことすら多くの人には知られていない。どういうことを研究していて、NPOがどういう活動をしているのか。またそれを受けて実際に新しい試みがされているのか、低コスト手法とはどういうものでここまで進んでいて、ここまでは進んでいないという情報はまだまだ知られていない。これからの課題だ。

2.来賓挨拶

公明党参議院議員 新妻秀規

2年前の「無電柱化推進法」がどのように成立したかを説明する。この法律は議員立法で、超党派での理解が必要だった。この法案自体、数年前に党内プロセスは終わっていた。ただ当時、野党の理解が得られなかったので、なかなか前に進まなかった。そこで超党派の議員連盟で作った法案であれば、他の野党の党内プロセスも踏めるのではないかということが分かった。議員連盟を作って、議論を重ね、視察に行ってヒアリングを行い、これだったらいけるという案が完成した。こういう法案は皆様の熱い思いを我々議員が受け止めてできたというのを実感している。もちろん法律ができただけでは前に進まないのでこういった事業者や各関係者の熱い思いが融合して初めて無電柱化の推進につながるのだと思っている。ともに、無電柱化を進めていきたい。

名古屋市長 河村たかし

工場で働いていると工場の中ははっきりと見えた方がいいというのはお分かりいただけるだろうが、無電柱化の素人からいうと無電柱化というのは地下に埋められている分危険な様に思える。しかし無電柱化というのは災害で倒れるので取り除いていかなければならない存在だ。水道というのは古代では地上にあったものだが今では地下というのが当たり前だ。それを考えると国民の意識が変わるのも時間の問題なのかもしれない。日本一税金を納めている名古屋市が無電柱化率においては3位というのは納得がいかない。今までは目を向けてこなかったが、皆で楽しめる街にするにはこういう無電柱化というのが実は最大の課題である。

国土交通省中部地方整備局長 塚原浩一

日本の無電柱化率は貧弱である。ヨーロッパはもちろんのことアジア諸国にも遅れを取っている。最近では無電柱化に対するニーズが高まっているというのは私も感じていることである。特に防災の観点から非常にニーズが高まっている。特に中部地方では、南海トラフ地震の対策の意味でも推進していかなければならない。まちづくりや観光の点でもニーズ自体は高いが、これを具体的に進めるとなると皆、二の足を踏む自治体が多い。我々もそういった面をサポートしていかなければならないと考えている。一昨年には「無電柱化推進法」が成立し、無電柱化推進計画が策定したという絶好のタイミングでシンポジウムを開催されるのは非常に良いことだと思っている。

 

3.基調講演「無電柱化の現状とこれから」

国土交通省 道路局環境安全・防災課 交通安全政策分析官 蓮見有敏

無電柱化の目的は、大きく分けて①防災、②安全・快適、③景観の観点から推進している。無電柱化整備の際、その費用は、地方公共団体と国が負担。地上機器(トランス等)・電線等の整備や建設負担金は、電線管理者が負担している。

無電柱化推進計画は、平成28年12月16日に公布・施行された「無電柱化の推進に関する法律」から段階を経て平成30年4月6日に決定された。

無電柱化するための課題は、財政面(費用面)、ハード面(技術面や人的な問題)、合意形成面(電力・通信・自治体・事業者との合意。それに住民も加わるケースもある)、意識面(国民の無電柱化に対する意識向上)など様々な要因があるが、これらの課題を克服するために法律を整備し、国民の意識を促し、民間の力を借りて低コスト化を図らなければならない。

4.パネルディスカッション 「美しく安全で見せる日本「中部圏」へ」

パネラー自己紹介

鈴木淳雄 東海市長

無電柱化との関わりは、東海市には古くから山車があって毎年秋に祭りがあるのだが、山車の前で写真を撮る時に電線・電柱が写り込んでしまう。これを10年程前から何とかならないかと思って中部電力に掛け合っているのだが、その道路はいわゆる狭隘道路で、話し合いが進むにつれて小型ボックスの共同研究が進み、平成30年度から事業化に至ることとなった。その縁で無電柱化の取り組みに関わることになった。

 

松原隆一郎 放送大学教授

 1990年代から携わっているが、自らの著書の中で当時の電線地中化計画の批評や経済効果などを行っている。またそうしていく中で小池百合子氏から共にやろうという声がかかって、共著することになった。内容としては推進法ができるまでのプロセスを内部から見てレポートするというものだ。実は、親戚の家が名古屋にあってよく来ていたが、道が広くて名古屋は素晴らしい街だなと思う。しかし、私が初めて電線の束というのを見たのも名古屋の辺りだった。当時は電線に関する規制緩和によって、様々な線が一気に増えるということが起こって、さすがに線とはいえない状態になっていた。それを気づかせてくれたのも名古屋だった。

 

岡俊彦 中部電力 配電部長

が中部電力に入社したのは昭和61年だったが、この年に第1期の電線地中化計画が実施された。大々的に仕事に関わり始めたのは静岡県浜松市の管理職に配属された時だ。浜松市の区画整理をすると共にそのエリアを地中化するという時に浜松市役所の関係者に一つ一つ説明しながら進めていった記憶がある。現在は、無電柱化推進計画の第7期がスタートしたということで、低コストや工期などの課題はあるが、今までなかった技術を駆使して推進していければと思う。

 

井上利一 当NPO法人理事兼事務局長

NPOの事務局と共に会社を経営している。具体的な仕事の内容としては、宅地開発時の無電柱化をやっている。私はメディア等にも出演していて都知事とも交流を持ちながら円滑に無電柱化を進めていきたいと思っている。先の河村市長も話されていたが、無電柱化は危険だという認識を持っておられる方もいらっしゃるようだがそれは間違いである。今から大人の人間の認識を変えるのは難しいので小学生への啓発活動を通して無電柱化の必要性を訴えている。著書も出版しているので興味がある方は是非一読いただきたい。

 

中部圏における無電柱化の意義と方法、課題等

髙田:無電柱化推進計画があるが、それぞれの地域ではこれをローカルな捉え方をしていると思う。またその地域に相応しい方法でやることこそが結果として実現につながるし、低コスト化にもなると思う。その辺りのことを無電柱化推進計画も踏まえながら一言ずつ頂きたい。

鈴木:実際に公共工事を扱うものとして言わせていただくが、無電柱化はインフラ整備の道路整備事業の中では今まで優先順位が低い方であった。東南アジアに視察に行くと無電柱化は当然行われていて、素晴らしい景観を誇っている。日本は非常に遅れていると言わざるを得ない。また東海市はトルコと姉妹都市を結んでいるが、トルコから都市計画を学びに来た人が電線を見て失望したという話も聞いた。今のままではオリンピックを開いたとしても都市としてのレベルが低いと思われるだろう。もちろんすべてを地中化するのは難しいだろうが、無電柱化は都市の価値を上げるものであると思う。推進計画は努力義務に留まっているが、当市では優先順位は非常に高いものだと認識している。区画整理を行う時にはその前から地中化を行っておけば後々の心配がないのでそういうことも考えて進めていかなければならない。また災害対策として液状化しやすい緊急輸送道路を無電柱化しておくというのも必要なことである。しかし、総花的に進めていくと、明らかに予算が足りないので、しっかりと別枠の予算を組んで計画を立ていかなければならない。

:中部圏の特徴として①大地震の発生の懸念、②身近な道路整備、③観光資源が豊富というのがある。課題としては、無電柱化推進計画に過去最大級の距離を無電柱化するにあたってやはり低コスト化は必須である。また整備対象毎に異なる道路状況という点では小型ボックスや浅層埋設を使い分けていきたい。また街路樹方式等も活用していきたいと考えている。

井上:中部地方は大地震の確立が非常に高い。一般的に電柱は単独で倒れないと考えられているが、実際に東日本大地震の後に現地を訪れたが、かなり単独でも倒れているものが多かった。近年では気候変動もあって名古屋にも大きな台風が来るかもしれないが、電柱は台風の被害を受けやすい。他にも観光という点において、白川郷に行くバスの道中では無電柱化されていない所が多い。そういうところを今後無電柱化していく必要があると思う。中部地方は、他の地域に比べて重伝建地区が多く、また無電柱化の整備率も高い。無電柱化というツールを使ってその地域が盛り上がればよい、と考えている。

松原:私からは法律が成立するまでのプロセスを説明したい。法律ができて、理念上は大きな変化があったが現場の変化は少なかった。そこでこの法律 をどう現場に活かすか、影響を与えさせるかを検討していくために民法の専門家を呼んで、国土交通省のあり方検討委員会が開かれた。そして法改正の内容が昨年8月に提案された。それを受けて国が無電柱化推進計画を策定した。数値が出ていてかなり具体的になったのだが、実際に多くを占めるのは地方自治体の道であるので、道路法の改正を行った。今後は首長の熱心な声が上がれば各自治体で推進計画を立てていくと思われる。東京都はその計画として新設電柱の禁止を上げている。もちろんこれは条例だが、効果はあるように思える。東京都は都が区にお金を出すという形を取っているので、愛知県知事もこれを模倣して、同じようにすればいちいち国に陳情に行かなくても自治体単位で無電柱化出来るようになると思う。

最後に一言

松原:阪神淡路大震災で被災したが、電柱はものすごく倒れていた。特に変圧器は最大で500㎏もあるので、これが落ちてくると危険極まりない。阪神淡路大震災は午前5時だったので通行人が少なかったが、電柱が立っていて「安全だ」とは、災害時に決して言えないのが電柱の危険なところである。

髙田:私なりに三つのポイントにまとめてみる。一つ目は意識、つまり電線・電柱があることに対しての捉え方である。多くの人は慣れが原因でそこまで気にならない。私も学生に向けてアンケートを取るが、最初にアンケートを行うと半分の学生が「あってもいいもの」として見ているが、最後にまたアンケートを取ると、9割の学生が電柱は「無い方が良い」と言う。これはしっかりと伝えていくことが大事であると思う。そういう意味では何かきっかけが必要だ。是非それぞれの地域で計画を作り、それをきっかけにして多くの人に知ってもらうことが重要なのだと感じる。二つ目は技術開発、つまりコストの問題である。それぞれ事業者や国などに任せきりにするのではなく、是非民間が真剣に取り組み連携していくことが大事なのではないか。三つ目は地域のまちづくり、成長戦略として無電柱化を推進することである。東海市がいい例だ。電柱を埋設するだけでなく、一緒に道路をキレイにしていくということだ。中部地域は地中化の必要性がある地域であるし、またやりがいもある地域だと思う。

5.ホール展示内容紹介

今回、中部地方で無電柱化に取り組む会員企業の協力を得て、シンポジウム参加者への低コストの製品カタログや、低コスト化手法に関わる製品展示コーナーを設けました。開始前と休憩時間には、たくさんの来場者が見学に訪れ、積極的に名刺交換や製品説明に聞き入っておられました。

製品のホール展示は、ホール後方壁面に、シンポジウムの開始前や、休憩時間に見学できるように実施。今後のシンポジウム会場でも機会をつくっていきたいと考えています。

 

 

 

【協賛企業】

未来工業株式会社

狭隘道路を考える会

日鐵住金溶接工業株式会社

株式会社オーイケ

東拓工業株式会社

古河電気工業株式会社

株式会社きゃん電研

弘陽工業株式会社

ジオ・サーチ株式会社

株式会社イズマサ

マルマテクニカ株式会社

北野電機株式会社                             (順不同)