第2部 無電柱化まちづくりシンポジウムin四国
~四国で低コスト無電柱化を進めるには~
1.無電柱化の意義と課題及びテーマ説明
コーディネーター:松原隆一郎
私は、神戸が実家で、阪神・淡路大震災で被災した。震災発生の2日後に同市東灘区に入ったが、直下型地震で電柱が何本もなぎ倒されていた。 こうなると、被災地に踏み込むことができない。 更に火災なんかが起きたらどうすることもできない。 このような光景を目の当たりにした結果、日本の電柱の多さを独自で調べるようになった。当NPOとはその時からの付き合いになる。 無電柱化についての思いを馳せながらも、世間にはなかなか共感してもらえなかった。 その後、当時、代議士である小池百合子東京都知事に「無電柱化の法案を出したい」という声がかかり、NPOで地道に勉強会を続けていき、宮内議員や全国の自治体の長が集まって発足した無電柱化を推進する市区町村長の会との交流を諮り、その他関係者の力も借りて、2016年12月に無電柱化推進法が施行された。 法律が成立すると、必然的に制度化に向けての動きが進められ、2017年に無電柱化を推進するあり方検討委員会が発足し、私も委員を務めた。 推進法制定後、第7期無電柱化推進計画が策定され、その後発生した度重なる地震や台風の被害を抑えるために内閣府主導で国土強靭化計画が示され、予算が上積みされた。この法律は画期的で、施行前は、行政(道路管理者)が主体となって単独地中化方式にかわって電線共同溝方式を用いて無電柱化を進め、電線管理者がそれにお付き合いしているような状況だった。 無電柱化推進法の施行によって、その立場が代わり、無電柱化を施工するのは電線管理者が主で行い、行政はそれを管理する立場となった。 が、しかし、現状の日本では、電線管理者が無電柱化するのに矛盾する要素がある。 それは、架空線で整備するほうが、地中化するよりもはるかに安いのだ。東京電力パワーグリッドでの調査では、架空線の費用は地中化するのと比較して約10分の1で済むとのことだ。 企業にとって無電柱化することが必然的にマイナスとなるので、どうしても消極的になってしまう。 日本の無電柱化の費用は、ヨーロッパと比べても、各段に高い。 このような状況を踏まえ、今年度出された第8期無電柱化推進計画は低コストを視野に入れた内容になっている。
以上のような背景のもと、本日は、四国で低コスト無電柱化をどのように進めてよいかを議論していきたい。
2.各パネリストの自己紹介
誌面の都合上、割愛させていただきます。
詳しい内容に関しては、下記のユーチューブ動画でご覧ください(限定公開)。
https://www.youtube.com/watch?v=ZeZI-Zu62Nk
3.無電柱化の取り組みと課題
佐久市の取り組み 佐久市長 栁田清二
佐久市は、1998年の長野オリンピックの際、北陸新幹線の開通とともに発展した。
下の写真及び数値で示しているように、新幹線効果の最も大きな影響を受けた地区と言える。
現在は、佐久平駅南土地区画整理事業を進めている。
四国電力の取り組み 四国電力送配電株式会社 配電部長 青井久治
当社管内の無電柱化実績
無電柱化に対する日本みち研究所の取組
一般財団法人日本みち研究所 専務理事 森山誠二
第5・6期無電柱化推進計画では単独地中化という用語がなくなっていたが、無電柱化法にも記載されているように、本来は電線管理者が主体となる単独地中化をする必要がある。第7期無電柱化推進計画では、単独地中化方式が明記され、官民連携事業での単独地中化方式が実施された。
市街地開発事業における無電柱化(補助金制度の紹介)
NPO法人電線のない街づくり支援ネットワーク 理事兼事務局長 井上利一
4.無電柱化を早く安く進めるためのポイント
レベニューキャップ制度と無電柱化 佐久市 栁田市長
今後の議論のポイント
・無電柱化を事業計画に明記
・事業計画の中での無電柱化の重要度を上げる
・事業者が自発的に無電柱化を推進するインセンティブ
無電柱化推進に向けた関係者の皆さまへのお願い事項について
四国電力送配電株式会社 青井配電部長
① 昼間工事の拡大およびソフト地中化方式の適用について
無電柱化の更なる推進およびコスト低減に向けて、昼間工事の拡大およびソフト地中化方式の適用について、これまで以上のご理解・ご協力をお願いいたします。
・交通状況などの制約から、夜間の施工が必要となるケースもありますが、工期の短縮化のほか、コスト削減の観点からも昼間施工を拡大させていただきたいと考えております。
・また、電線共同溝方式においては、ソフト地中化方式(ソフト地中化用変圧器)の適用によってコスト低減が期待できることから、引き続き、変圧器が施設可能な照明柱(共用柱)の設置について、道路管理者さまのご理解・ご協力をお願いしたい。
② 関係者が一体となった無電柱化の推進
・今後無電柱化を進めていく第7期計画・3ヵ年緊急対策や第8期計画は、過去に比して整備距離が大きく増加しますが、適切に推進していく所存です。実施にあたっては、これまでと同様に、道路管理者さまの工程に合わせて遅滞なく対応していく観点から、関係者間の密な情報連携についてご配慮をお願いいたします。
一般財団法人日本みち研究所 森山専務理事
・栁田市長の話にあったように、レベニューキャップ制度は無電柱化を進めていくにあたって非常に重要。電力会社が自ら事業計画を立て、無電柱化推進計画の中に目標距離を盛り込むことは、画期的だ。ただそれがうまくいくかどうかは、事業計画に対する国の承認や、事業達成状況の国の評価の如何に関わってくる。
・第8期無電柱化推進計画においては、電力会社も様子をみなければならない。大事なのは電力会社みずからが無電柱化の計画を立てていけるかだ。
・先に行われたレベニューキャップ制度についてのパブリックコメントにおいて、私も井上事務局長(NPO無電柱ネット)も提案したが、電力会社への評価をあまり厳しくせずに、今後の計画以降も着実に進めていけるようにしていってほしい。
①無電柱化は地中化にこだわらない
裏配線、軒下配線など、電線類地中化以外の低コストでの無電柱化も進めていきたい。場合によっては路面・地上に置くことなどができないかを考えてみる。
②上下分離ではなく全体コストを管理
電力・通信は地上だけという考えではなく、トータルでコストを考えないといけない。電力会社はさほどかからなかったが、自治体はべらぼうに費用がかかったみたいなことになってしまう。
電力会社に包括的にコストを考えてもらうようにしていかないといけない。
③配電・通信技術管理者がコスト意識、技術力を発揮
道路管理者は、あくまで土木技術者で、配電技術者ではない。低コストの工夫は電力会社に頑張っ てもらいたい。ただ、コストダウンして頑張った分の成果が得られる仕組みが電力会社になければいけない。
④道路管理者はモノではなく資金支援、柔軟な占用
道路管理者は技術的なことよりも調整役としての役割に重きを置きたい。
NPO法人電線のない街づくり支援ネットワーク 井上理事兼事務局長
追加説明 メガソーラーの建設について 佐久市 栁田市長
電柱増加の要因に再エネ発電設備への電線の接続に係るものがある。
国土交通省の令和3年4月から12月までの調査では、約1.0万本 ( 増加分の20% )増えているという結果がでた。佐久市では、メガソーラー建設の際、低コストでできるケーブルドラムの手法を採用し、送電施設まで無電柱化をする計画で進めている。
道路占用も柔軟に対応し、延長15kmの地中化を工事業者にお願いし地中化を進めていただいた。
電線共同溝ではなく、簡易な工事で進めてもらっている。メガソーラー建設に伴う無電柱化については、他の自治体さまの参考につながると思うので、機会をみて示唆していきたい。
パネルディスカッションのまとめ 当NPO松原副理事長
架空線に比べて地中化する費用が10倍にもなる現実。あまりにも差が莫大すぎて、無電柱化する気力が電線管理者に湧かないというのが実情である。 ところがレベニューキャップ制度を導入し、コストを下げれば利益が生じる。 これは電線管理者にとってはモチベーションにつながる心強い制度であり、今年度から来年度にかけて注目すべき話題である。電力会社の事業計画に対しての査定が今後行われるが注目していきたい。
既存電柱を減らせば、託送料金に転嫁できるという制度も注目したい。
今まで考えてこなかった、台湾での地中データ化ですが、恐らく1990年代から取り入れて、驚異的なスピードでデータ化を実現している。一気に行った感があり、目覚ましい。
日本は今まで地中を何度も掘り返してきていて、データ化をするチャンスがあったはずなのに、まだまだ立ち遅れている。地下埋設データも進めていってほしい。
佐久市の栁田市長からメガソーラーに関してのお話をいただいた。
最近顕著になった再生エネルギーの送電で、電柱が増加していることが、これからの宿題となることを示唆していただいた。
1.第1部:無電柱化勉強会につきまして 評価はいかがでしたか?
2.第2部:無電柱化シンポジウムにつきまして 評価はいかがでしたか?
(回答数・回答率は同じ)
3.今回の勉強会&シンポジウムで特によかった点やご意見をご記入下さい。
・道路管理者、電線事業者の本音の話が聞けたこと
・様々な手法について理解を深められた
・必要性がよく理解できた
・森山さんの話が将来の無電柱化が推進されていくかが良かった
・様々な観点からの無電柱化情報が得られ、大変勉強になりました
・実績写真を沢山見せて頂いた点
・他市の無電柱化事例や様々な関係機関からの観点による無電柱化への考え方を知ることができたこと
・地方自治体の首長より、無電柱化事業に関する生の意見が聞けたこと
・四国地整の取組みについて
・パワーポイントなどわかりやすかった
・電力の地中化に伴うトランスの小型化や工夫、デベロッパーとライフライン整備の調整の必要性
・無電柱化への取り組みに対する現状が理解できて良かった
・各事業主体のかたの相互意見交換
・無電柱化についてのノウハウ・経緯を知ることができた
・四国内外の最新動向を確認できてよかった。「四国における無電柱化事業」内の共架照明柱の太さに加えて点検開口部が歩道横断方向、さらに歩道の有効幅員を圧迫においては、今後活かす事案であった
4.今回の勉強会&シンポジウムについて改善する点、ご意見がございましたらご記入下さい。
・時間配分。一部時間を守っていないかたがいた。厳守でお願いしたい。
・時々、映像・音声の乱れ、遅延がありましたので、改善できれば良いと思います
・このような機会は大変貴重だと思うので、今後も行って貰いたい
・無電柱化の工事の問題点に対して具体事例を詳しくお聞かせいただけたらと思いました
・継続的な開催をお願いします。
・会場の人からの質疑や意見を収集できる時間があったら良かった
5. 無電柱化に関してどのような情報が必要ですか?
・整備手法。低コスト手法や無電柱化推進に関する環境整備に関する最新情報
・周辺施設の協力により無電柱化が更に推進された等の好事例の紹介
・法案改正された話が聞きたい
・一般市民に対しては、その意義や良さを分かりやすく伝えることだと思います。自治体の努力が最も大事ですが、国など他プレイヤーの働きもますます重要になっていると思います
・地方自治体の具体的な計画事例・傾向、実施事例など地方毎の取組みの違いや、なぜそうなっているかの情報があれば大変参考になります。
・実際の施工着手・完了⇒電柱抜柱時期(無電柱化完了)の年度別の規模感
・今後の計画・工事発注路線情報など
・新製品
・新たな道路による周辺の開発を見越したライフライン計画(後からの民地への電柱設置がなくなる)
・工事の簡素化に必要な技術とはなにか
・各工程における費用感
・国の最新動向(無電柱化の方針がわかる)
・各地方での課題点、そして改善点の事例
6.無電柱化のコスト低減についての提言があればご記入下さい。
・佐久市の太陽光の事例は衝撃的でした。もっと知りたいです。
・行政側より、もう少し適用箇所の明確化をしてほしい。(Ex.需要増減見込等)⇒小型ボックス等の低コスト手法は需要小もしくは増減ないところでの適用
・小型ボックスの採用を本気で検討したことがあります。小型ボックスは、「採択条件として条数が少ない場所であること(そもそも、ボックスのサイズに選択肢が少ない)」「電線類の管理が大変であること(ふたの開け閉め。ボックス内で電線類が重複すると、入替時に取り出せない)」など、課題が多く不採用となりましたが、改善の可能性はあると考えています。メーカーとの協力(技術開発)が必要と感じました。
7.無電柱化視察地区のご推薦・ご提案があれば是非ご意見・ご回答ください。
・愛媛県松山市東垣生地区
・香川県内の玉藻・琴平・木太地区
8.御回答者様の年齢を選択してください。