【結果 報告】
無電柱化シンポジウム in 石垣 島しょ部 での 無電柱化 を進めるには
◆日時:2023年5月22日(月)16:00~17:30
◆場所:石垣市役所内 コミュニティルーム
◆WEB:Cisco Webex
◆講演:粂野真一郎、神谷大介、宮良直好、井上利一
◆主催:NPO法人電線のない街づくり支援ネットワーク
◆共催:石垣市
◆後援:竹富町、与那国町、(一財)日本みち研究所、無電柱化を推進する市区町村長の会、NPO法人「日本で最も美しい村」連合
◆協力:内閣府沖縄総合事務局
◆取材:八重山毎日新聞、八重山日報、石垣ケーブルテレビ
◆参加者:88名(会場参加46名、WEB参加42名)
❑ 主催者あいさつ
NPO法人電線のない街づくり支援ネットワーク理事・沖縄支部長 伊志嶺 匡
本日の開催にあたり、中山石垣市長をはじめとする石垣市役所の皆様、その他関係者の皆様のご協力に感謝申し上げます。また地元石垣市の皆様にも多数ご参加いただき、ありがとうございます。当NPOは無電柱化を推進する団体です。近年、台風をはじめとする自然災害が猛威を振るっており、防災面の更なる強化は欠かせません。また交通渋滞、交通環境の整備やここ八重山の美しい景観の保全に無電柱化は欠かせない事業だと考えています。本日お越しいただいた登壇者の知見にとんだ講演が、皆様にとって無電柱化の更なる知識の向上につながることを切に願います。
石垣市長 中山 義隆
全国約300近くの自治体を擁する無電柱化を推進する市区町村長の会の中からここ石垣市がシンポジウムを開催することになり、大変うれしく思っています。また当シンポジウムに多くのご参加をいただき、またWEBでの参加も多数いただいていると聞いています。心より感謝申し上げます。本市は人口約5万人の市で、竹富町、与那国町と連携して八重山圏域の地域行政・経済を進めています。その中で本市は、交通拠点としての役割を担っています。平成25年の新石垣空港の開港以降、観光入客者数が年間148万人にまで達しましたが、コロナの影響で激減し、大変厳しい状態が続いていました。しかしながらコロナが落ち着いた状況で、国内はもとより、これからはインバウンドのお客様も回復してくると期待しています。
そのような中、市民生活の安全・安心を確保し、観光客を迎える本市においては、常襲する台風などの防災対策のみならず、リゾート地としての景観形成や快適に観光できる空間の創造力が求められています。まさしく無電柱化は本市にとって重要な課題の一つと考えています。しかしながら無電柱化は、様々は地域で、知識不足、経験不足、人材不足から進んでいない現状があります。当シンポジウムが、本市を含めた自治体の皆様の更なる知見を広め、地域の連携がはかられ、無電柱化が更に進む機会となることを祈念致します。
❑ 来賓 あいさつ
衆議院議員 國場 幸之助
無電柱化は、自然災害、特に先島地域は台風によって電柱が多く倒れ、緊急車両が通れなくなるという問題があるだけでなく、環境・景観の面や子供たちの安全な通学の確保を例とする交通安全など喫緊の課題と捉えている。私個人、党で防衛を担当させている立場として平時における国土強靭化の面でも無電柱化を進めていくことは重要です。島嶼部における無電柱化の推進は、沖縄や本土とは違う様々な課題のある非常に重要な、かつタイムリーなテーマです。このようなシンポジウムの開催に至った関係者の皆様に心から敬意を表します。このシンポジウムを通して沖縄本土や島嶼部での課題についての共通認識を共有し、無電柱化の推進に取り組めたらと思います。
❑ 講演1. 「 無電柱化の現状とこれから」
内閣府 沖縄総合事務局 開発建設部 企画調整官 粂野 真一郎
現在、国交省が進めている無電柱化推進計画(令和3年からの5か年計画)について、色々理念を掲げているが、無電柱化事業は、通常の道路事業に比べて、道路をより質の高いものにしようというもう一段高い次元で取り組まないといけない事業と考えている。地域の魅力を吸い上げ、また引き出し、活性化をはかるもの、つまり、一段高いモチベーションや街づくりにかける情熱をもたないとなかなか進まない(現場は動かない)。沖縄においても、令和3年12月に第8期無電柱化推進計画(97.325km)を策定している。国が用意した様々な政策的な手段を使って、合意形成をはかりながら無電柱化を進めていかないといけない。今回、沖縄での無電柱化整備事例(整備前と整備後の写真)を用意したが、インフラ整備の効果はアピールしづらい。その効果を積極的にPRすることが大事で、沖縄総合事務局はその役割を担っている。国では、緊急輸送道路における電柱倒壊リスクを避けるために「占用制限措置の必要性」を進めている。道路法第37条に基づく新設電柱の占用を禁止する占用制限の措置は、緊急輸送道路約9.5万kmのうち、全線で6の措置に至っていない都道府県・市町村で、現在、手続きを進めており、令和4年度末には約9.3万km(約98%)となる見込み(令和5年1月調査)だが、残念ながら沖縄県が一番進んでいない。改善に取り組んでいきたい。その他に無電柱化推進計画事業での補助金制度や自治体職員に向けたガイドラインの作成、また沖縄総合事務局が無電柱化に関する相談窓口になっているので、是非活用していただきたい。
❑ 講演2. 島嶼部の災害対策としての無電柱化について
琉球大学 准教授 神谷大介
■地震に関しての石垣島(津波・避難路)
石垣島で地震が発生した場合、約12分で津波が襲来すると予想されている(沖縄本土では約40分)。これは甚大な被害をもたらした東北沖地震時の津波(約1時間くらい)よりもはるかに短い通達時間である。
石垣市では、他の地域にくらべるとかなり多く防災マップや避難路が掲示されていて、市民の防災意識が高いと感じている。また、本学の学生を使って調査をしたが、石垣島の人の分布(住民・夏の観光客)と浸水想定区域を掛け合わせると、約7割の人が浸水する区域にいるという結果も出ている。
これらの結果から、津波からの避難という観点からどの道路を無電柱化するべきかを考えていかないといけない(様々な検証をした結果、旧市役所からの道路が一番避難者が多かった)。現在、石垣の中心部には約3,000本の電柱(電力・通信柱)が建っている。これらの電柱が地震発生時に1本も倒れないというのはあり得ない。とすると、どの電柱を無くしていけばいいのかを検証し、有効な避難路中心に電柱地中化および電柱のない道路を進めていかないといけない。
■台風に関しての石垣島(停電)
近年、猛烈な台風(スーパー台風)が増えている。スーパー台風とは、地上の平均風速が1分平均で67m/sのものをいう。実は、猛烈な台風が増えているものの、1年間の降水量・発生量は昔と比べてそんなに変わっていないし、台風の発生数はむしろやや減っている。
停電の長期化も我慢すればというだけでなく、広域災害救急医療情報システム(EMIS)での電源の確保も重要である。調査の結果、2日後でも停電している病院が多い。各病院では、ある程度緊急に備えて電力の備蓄を行っているが、一般の企業と違い、病院は災害時になるとむしろ電力消費量が増える。暴風域に達しているとき、「いかに電力を復旧させるかではなく、いかに停電させないか」を考えないといけない。
■提 言
石垣においては、緊急輸送道路に加えて避難路の無電柱化や医療機関周辺の無電柱化を進めるべき。無電柱化はしてほしいが、他の様々なことも視野にいれて進める必要がある。例えば、他の島々との連携や無電柱化だけではなく、通学路内では、法定速度30kmで(ゾーンサーティ)を守ってもらうとか。
また実践的無電柱化研究委員(顧問:屋井鉄雄 東工大副学長、座長:大庭哲治 京都大准教授)が立ち上げられ、近いうちに提言書が出される予定である。
❑ 講演3. 石垣市での無電柱化の取り組み
石垣市 建設部 都市建設課 課長 宮良 直好
本市においては、沖縄ブロック無電柱化推進協議会において第8期(令和3年~令和7年)の無電柱化推進計画で2路線が採択され、本年より推進計画の策定、実施設計、工事着手に向けて無電柱化に取り組んでいく予定です。そのような中で、本日「島しょ部での無電柱化を進めるには」をテーマに無電柱化シンポジウムがここ沖縄県石垣市において開催されますこと、無電柱化を推進する市区町村長の会会員として、大変光栄に思います。
■石垣市について
本市は琉球弧及び日本列島の最南西端に位置し、県都那覇市との距離は約410㎞、東京都は約1960㎞、台湾(台北)とは約280㎞となっています。
沖縄県で沖縄本島、西表島に次いで3番目に広い面積をもつ有人の石垣島と無人の尖閣諸島で構成されており、石垣島の全域(地先公有水面や小島を含む)22,381haが都市計画区域に指定されています。
空港・港湾を中心に八重山圏域の行政、文化、経済等の中枢機能を有しており、19の島々からなる八重山諸島の拠点都市です。
本市は、県下最高峰の於茂登岳(526m)を中央に八重に重なる連山を背にして、於茂登岳の山稜より西へ流れる名蔵川、南へ流れる宮良川沿いに低地が広がり、河口に湿地帯、名蔵アンパルや宮良川のヒルギ林を形成しており豊かで貴重な動植物の生息域が広がり、海岸域ではサンゴ礁が発達しています。
石垣市への入域観光客数は、新石垣空港の開港以降、令和元年度には147万人を記録し、昨年はコロナ禍からの回復もあり、約91万人ではありましたが観光都市としても有名な地域です。
気候学的には、亜熱帯海洋性気候に属していますが、熱帯の指標となる北回帰線に極めて近い位置にあるため、気温、湿度、降水量など全国と比較してもいずれも上回っており、明確な四季の区別がなく熱帯のイメージが強い地域であり、また、近年は直撃の回数は減少しつつありまますが年8~9個の台風が接近する台風常襲地帯としても有名な地域です。
■沖縄県における無電柱化の整備状況
沖縄県においては、沖縄ブロック無電柱化推進協議会において、令和3年12月に合意した第8期無電柱化推進計画(令和3年~令和7年)の延長はこれまでで最も大きくなっている。
沖縄県では、平成3年度から(石垣市における国道、県道については平成18年度から)無電柱化事業に着手しており、沖縄県の全道路における無電柱化率は約1.8%で、都道府県別無電柱化率順は全国の中で8位と比較的高い状況にある。本市の市道については、これからの整備となっており少し遅れ気味である。合意が得られた路線については今後低コスト・工期短縮につながる計画が必要なものと考えている。
■石垣市における無電柱化の整備状況
本市における無電柱化の整備状況については、先程も述べたとおり県道、国道での整備が沖縄県によって第5期計画(平成18年から平成22年)より実施されており、国道390号線を中心に約7kmの道路において無電柱化が整備されています。
また、沖縄県八重山合同庁舎前の国道390号線、新石垣空港から市役所庁舎前を通過し平得交差点までの県道石垣空港線については、現在事業実施中です。本市の市道については、「旧空港跡地線」及び「空港跡地内区画整理事業」2路線のL=0.5kmで合意がなされ、本年より「石垣市無電柱化推進計画」の策定に着手し、令和6年度より無電柱化推進計画事業補助制度を活用し事業を実施していく予定です。
❑ 講演4. 無電柱化★最前線!
NPO法人電線のない街づくり支援ネットワーク 理事・事務局長 井上 利一
以前、2018年6月に宮古島でシンポジウムを開催させていただき好評だった。その後、石垣でもという話が出たが、コロナの影響があり、今回ようやく開催することができてうれしく思っている。
■最前線の情報として
2022年9/28、米国フロリダ州で発生したハリケーン「イアン」は、瞬間最大風速約67m/秒で、停電戸数が約240万戸以上にも及んだ。その中で、ハリケーンの通り道にあたる「バブコックランチ」という住宅地では、電線類を地中化していたため、停電がなく済んだ。ちなみにここの住宅地の住宅戸数は19500戸、約5万人が居住予定。価格帯も手頃なものから高級なものまで幅広い。ここでは電力を自給自足していて、ハリケーン襲来時は、他の居住地に電力を供給していた。
■日本の事例に当てはめると
日本でも、近年では、沖縄・南西諸島に限らず猛烈な台風が本州にも襲来している。令和元(2019)年の台風15号では、千葉県の房総半島で1か月近くの停電が発生している。ここまでくると迅速な復旧対策というよりは、そもそも復旧しなくていい対策に切り替えないといけない。また、電柱自体が頑丈につくられていたとしても強風によって吹きとばされる飛来物が原因で電線類が断線する場合が多い。
一方、この首都圏を通過した猛烈な台風に対して、停電の発生しない場所があった。千葉県印西市と同県睦沢町の無電柱化された住宅地で、まさに日本の「バブコックランチ」といえる。
■国の無電柱化推進に対する動き(無電柱化推進技術検討会や民間サブワーキンググループなど)
国交省では、組織を再編成して無電柱化推進技術検討会を設置。「無電柱化にかかるコストを20%削減」を目標に各部会で検討されている。
例えば、合意形成ガイドの作成や、無電柱化は国交省道路局が担当しているが、それに加えて、市街地開発地、いわゆる面整備の無電柱化は、同省都市局が担当し、連携することとなった。また、無電柱化の施工材料に関して規格が統一できないか。特殊部や地上機器が各地整ごとにまちまちなので、統一がはかれないかなど、今後の議論の対象となっている。
また施工作業による効率化に関しては、常設作業帯の検討や地下埋設情報の三次元化が進められている。
更に東京都や電力会社・通信会社が島嶼部で検討している新たな配管方式の例として、交通量が少ないところやエンドユーザ―が少ないところでは、簡易な配線方式にしたり、特殊部を減らすことなどが検討されている。更には民間サブワーキンググループで低コストに関わる民間技術の募集を受け付けている。
❑ NPO無電柱ネットからのお知らせ
NPO法人電線のない街づくり支援ネットワーク 理事 伊津 元博
当NPOでは。6月22日(木)に大阪駅近くの大阪市立総合生涯学習センター第1研修室で社員総会・総会セミナー&情報交換会を開催、また7月26日(水)~28日(金)に東京ビッグサイトで、メンテナンス・レジリエンス展/第11回無電柱化推進展に出展致します。ご参加いただきますようよろしくお願い致します。
◎総会セミナー&情報交換会のHPでのご案内 ←ここをクリック
昨年の無電柱化推進展、NPOブースの様子
YouTubeに限定公開 ※リンクを知っているかたのみ視聴できます。
1 開会 挨拶 伊志嶺支部長、石垣市長 https://youtu.be/Ai1IYyeKasY
2 粂野 企画調整官 https://youtu.be/mjVBFNIK5Gc
3 挨拶 國場議員 https://youtu.be/WsfD4n7-cvc
4 神谷先生 https://youtu.be/G1SV0_OYnGg
5 石垣市役所 https://youtu.be/vkZtEPEX808
6 井上事務局長 https://youtu.be/ME1vTDe-rgE
7 原﨑市長 コメント https://youtu.be/gyARk7vDnm4
8 閉会 https://youtu.be/QOayt11-TSo