11月10日 無電柱化の日セミナー ~無電柱化事例紹介&鼎談~
無電柱化ムーブメントを発信! 新しい流れがここから始まる!

【共催】
国土交通省
無電柱化を推進する市区町村長の会
一般財団法人日本みち研究所
NPO法人電線のない街づくり支援ネットワーク
【後援】
NPO法人「日本で最も美しい村」連合

◆登壇者のご紹介
国土交通省 道路局 環境安全・防災課 交通安全政策分析官  田中 衛
NPO法人電線のない街づくり支援ネットワーク顧問、一般財団法人日本みち研究所 専務理事  森山誠二
NPO法人電線のない街づくり支援ネットワーク副理事長、放送大学教授  松原隆一郎
司会:NPO法人電線のない街づくり支援ネットワーク理事・事務局長  井上利一

今回の鼎談で、多くのことに気づき、これからの施策のヒントになることも多かったかと思います。筆者独断で恐縮ですが、その中のいくつかをご紹介させていただきます。

◆国交省・田中様の事例紹介
事例1 自治体アンケート(1788年実施、自治体回答)より
◎過去5年間において無電柱化事業を実施した(又は実施している)自治体数は全体の約2割
◎無電柱化が進まない主な原因は、コストが高いことや、事業者との調整が困難なこと、工事期間が長いこと等
◎一方、無電柱化を実施しない主な理由は、無電柱化より優先すべき事業があることや事業実施のための予算がないこと等

事例2 無電柱化推進計画策定自治体数の実情より
◎無電柱化を進める前に前提となるのが無電柱化推進計画である。その無電柱化推進計画が東京都以外の自治体ではほとんど策定されていないのが現状である。策定164自治体/全国1718自治体(図参照)。
◆事例に対する意見
▷無電柱化推進計画が策定されていたとしても、無電柱化の予算を確保するため、国からの補助を得るためにとりあえず国の無電柱化推進計画を流用したかたちで済ませている自治体が多い。事例紹介で発表された金沢市のような自治体は稀である(森山)。
※首長会の参加自治体は現在300近くですが、それをかなり下回る164というのが現状。
▷このような現状に関しては、仕方のない面もある。自治体で無電柱化に携わる担当者は多くはない。しかも街づくりの担当は都市計画課、道路担当は道路管理課と部署が分かれていたりして、横の連携がとりづらい。また、現在のマンパワーでは、本格的な推進計画を立てるにしても難しい面がある。首長からのトップダウンの意欲も必要となってくる。今後は、担当者が手軽に便利に見ることができるツールの開発(クックパッドのようなもの)が必要なのでは(松原)。
▷電線共同溝だけだと「コストが高い」で終わってしまうので、多様な手法・整備で無電柱化を進めることが大事。そのためには様々なツールづくり、メニューレシピを用意する必要がある(森山)。

事例3 令和5年度 無電柱化ブロック講習会 概要
◎国、都道府県、市区町村が連携し、無電柱化の重要性の理解を深めることを目的に、地方自治体等を対象に全国10ブロックで無電柱化の講習会を実施。全自治体の4割が参加されました!
〇説明者
・国交省 道路局 環境安全・防災課
・国交省 都市局 市街地整備課、都市計画課
・総務省 基盤整備促進課
・経産省 資源エネルギー庁 電力基盤整備課
・各地方整備局等 ・その他
〇対象者
・国土交通省職員・都道府県職員・市区町村職員
◆事例に対する解説と意見

※第8期無電柱化推進計画以前では国交省道路局が中心に無電柱化を進めていましたが、以降では、国交省都市局、総務省、資源エネルギー庁(経産省)、電線管理者とも連携して取り組むことになりました。
※これにより、縦割りで寸断されていた情報やサービス・問題や課題に対する検証が、横のつながりで共有することができ、様々な無電柱化への政策が打ち出されてきています。
※ただ無電柱化の施策を進めるには、人の問題、予算の問題、専門知識の不足の問題と、まだまだハードルが高い。
※関係省庁から自治体へ色々な法制度や補助金制度、事例紹介、そのような内容を含めた講習会を、無電柱化推進計画を策定する担当者にアプローチしても、現状は厳しい。いい包丁が整ったとしても、料理の方法が分からない状態だ。

◆「無電柱化の日」広報活動紹介(国交省・各自治体)と過去の当NPO無電柱化イベント紹介
〇無電柱化ブロック講習会で無電柱化の日の告知を自治体に促したところ、かなりの自治体がホームページ等で告知されました。
NPO無電柱ネットのホームページで紹介しています。

◆森山NPO無電柱ネット顧問の提言
◎ここ数か月、NPOの井上事務局長と電力会社の一部とNTT東日本を訪問し、今回のレベニューキャップ制度についてどう考えているか、無電柱化について前向きなのかをヒヤリングした。
◎各社ともレベニューキャップ制度に伴い事前に発表した今後5年間の実施目標には、達成が前提との姿勢を示しながらも、「無電柱化の推進には協力する」という姿勢で、自主的に無電柱化を進めるという感じまでには至っていない。
◎今回の電力会社が示した5か年計画は、数字的にはまだまだ物足りないが、計画を出した以上はそれを期間内に達成させるという義務が生じた。
◎しかも、この数字は着手までではなく、電力会社の所有物である電柱抜柱までを含めた数字であることだと解釈する。これは大きな成果である。
◎第8期無電柱化推進計画と電力各社の5か年の事業計画はすでに出ているので、自治体からアプローチするのは、次回、第9期無電柱化推進計画が始まる前に地元案として要望を出さないと盛り込むことはできない。さらに言うと、その後の電力会社の事業計画に上乗せすることもできない。
◎以上の点を踏まえると、次年度が自治体にとって無電柱化推進計画の正念場となる(図参照)。
◎地元案を検討する際には、各自治体が無電柱化推進計画を策定し、どの路線を無電柱化するのかを踏まえたものにしないといけない。
◎策定の際には、道路法第37条と無電柱化推進法第12条を活用すべき。現行の計画の再考も検討を。
◎NTTは、今後も議論を継続(利益還元がない)。

道路法 第37条・・・占用制限の積極的活用
電力や通信に付与している義務占用の規定を外す道路法37条の活用。現在、3号(緊急輸送道路)に比重が偏っているが、1号(交通安全)及び2号(バリアフ-リー)に基づく指定も進めるべきである。(一財) 日本みち研究所より

無電柱化推進法 第12条・・・厳格な運用の担保
現在は12条前段の規定に基づき、道路事業等の実施にあわせた同時整備と新設電柱の抑制が制度化されている。開発許可に無電柱化を要件、努力義務化を検討すべき(ただし2年前に通知が必要)。適切な運用がなされていない事例も見受けられるため、きめ細かい事例研究や説明会、セミナーによる運用改善を行うべきである。

注)条文は読みやすくするため、著者の責において編集している。((一財)日本みち研究所)


◆松原NPO無電柱ネット副理事長からの提言
◎日本は高度経済成長期に様々な公害を生み、それを徐々に解消・解決していった。がしかし、唯一公害として残っているのが電柱・電線で、日本の道路に悪影響を及ぼしている。
◎無電柱化するにしても、ただすればいいというわけではなく、街づくりの一環として無電柱化を考えないといけない。
◎東京都の無電柱化はかなり進んできてはいるが、セットバックしてせっかく道路が広くなっているのに電柱が残っていたりする。私の知り合いで、車椅子のお年寄が夜間に歩行していると、電柱に当たって大怪我をしたこともある。
◎外国では、近年、自転車を交通手段にする考えが定着し、専用道路が整備されている。歩道を有効に使うために、街路樹がかなり少ない。そのかわりに憩いの場としての広大な公園を設け、そこに多くの樹木を植え、CO2削減対策をしている。
◎日本の街路樹は電柱・電線を隠すため の存在となっている。日本でも街路樹の配置を調整して歩行空間や自転車通行ゾーンを確保することなど無電柱化後の道のデザインまでを検討する必要がある。
◎SNSのおかげで、最近は、日本人が知ら ないところまで外国人観光客が訪れている。先日、ある地方都市の居酒屋で食事をしていると、多くの外国人が来ていて「どうしてここに来ているの?」とたずねてみると、「sightseeing」と回答された。
地方の首長さん、是非お考え下さい。ふるさと納税などの使途に無電柱化事業を入れるなどしていただいて、更なる経済効果が得るようにしてはどうでしょうか。

◆鼎談のまとめ
◎第8期無電柱化推進計画の状況は、今折り返し地点なので現状把握から。次期無電柱化推進計画では目的が「電柱を抜く」だけでなく街づくりのデザインも含めた計画をしないといけない(田中分析官)
◎好事例としては、以前私が担当した長野県白馬村で無電柱化して、更に看板等も整備され、景観がきれいになって、「無電柱化してありがとう」と多くの住民から言っていただけたこと(田中分析官)
◎現状では、無電柱化は防災面が主になっているが、本当は景観面も大事。電柱は今も年間5万本余り増えていて(通信柱は微減)、しかも民地で増えている。電柱の減少に至るまでは、一筋縄ではいかないが、本日のお話で少しずつ無電柱化の機運が高まっている気がいたしました(井上事務局長)

◆ユーチューブ動画(限定公開)のご紹介
鼎談 話題提供 森山顧問  https://youtu.be/Au8HeW6pQpY
鼎談 つづき https://youtu.be/F9La1hX1PaI