皆さん、11月10日が何の日か知っていますか。
実は、「無電柱化の日」なんです。
11月10日の1110。三つの1が電柱をあらわし、残りの0で「ゼロにする」という意味が込められています。
2014年に一般社団法人 無電柱化民間プロジェクト実行委員会(代表理事=絹谷幸二・東京芸術大学名誉教授)が制定しました。
昨年末に制定された「無電柱化推進に関する法律」第10条にも「国民の間に広く無電柱化の重要性についての理解と関心を深めるようにするため11月10日、無電柱化の日を設ける」と明記されています。
最近では、テレビのニュースやお茶の間のワイドショーでも取り上げられている「無電柱化事業」ですが、巷では、まだまだ認知されていないようです。
そこで毎年、この日には、各地でイベントが催されています。
今回は京都の先斗町(ぽんとちょう)の14時から行われた無電柱化推進PR活動の様子と、16時から行われた芦屋市役所の公開FMラジオ放送の収録の内容をまとめました。この公開放送には、京都先斗町のまちづくり協議会のかたも来ていて、その中で先斗町の話も出てきます。楽しい内容で、1時間があっという間でした。
■京都の繁華街、先斗町でのPR活動
京都市の職員が、先斗町に入る前の四条大橋西詰、北側の道路で、道行くひとに京都先斗町での無電柱化事業のチラシを配る啓発活動を行いました。最近では、道行くひとも「無電柱化」と言われて、頷いてパンフレットを手にとるひとも多いようでした。京都先斗町は、飲食店が密集して建ち並ぶ、電力消費量が大変多い通りで、なおかつ道路の幅が狭い特殊な事情を抱えた通りです。この通りが無電柱化されると、全国のどこの通りでも無電柱化ができるのではと思われるほど難しい事業ですが、是非とも工事を完成させて、すっきりとした景観の先斗町を見てみたいです。
■芦屋市役所、公開ラジオ放送の収録
78.7MHzさくらFM公開収録:16時~17時 芦屋市役所 北館1階 市民課前スペースにて
司会:最初に山中芦屋市長、よろしくお願いします。
山中:11/10は芦屋市の誕生日。くしくも無電柱化の日と同じ日です。使命のようなものを感じます。また、22年前に発生した阪神・淡路大震災、先人たちが築いた六麓荘。六麓荘は全国に先駆けてできた住宅地。このような背景もあってか、住民の無電柱化に対する意識は非常に高い。市が政策を打ち出しても、住民の方からまだ手ぬるいと言われるくらいだ。また広告物の規制も今年の4月、京都市に次いで厳しい条例を制定した。世界の主要都市の無電柱化は、パリ、ロンドン、香港はすでに100%。それに比べて、東京は8%、大阪で5%。芦屋市は12~13%。他のアジア諸国の主要都市にも劣る無電柱化率だ。
司会:本日の芦屋市無電柱化推進計画策定委員会(本日13時30分~15時30分開催)の委員長でもある、摂南大学教授の福島教授、一言お願いします。
福島:芦屋市が目指すものは、六甲の山並みがきれいに見える街づくり。それには、電線・架線が問題になってくる。それを具体的に進めるには、市民の理解が大事。無電柱化を進めるには市民が納得できる法律をつくっていく責任がある。市民の理解を深めるには会議の内容を見ていただく。情報公開をしていくことが大事。あと、住民のかたが目に見えて分かるような場所を設定することも大事。きれいにアーケードを保って繁盛しているところも多いが、さびれた商店街でアーケードを取り外したところ、青い空が見える全く違う風景が現れたという意見があった。
司会:収録の前に行われた無電柱化推進計画策定委員会ではかなりのスピードで無電柱化を進めるように感じました。この条例が制定されると、つくば市・東京都に次いで芦屋市が3番目の自治体ということになりますが、山中市長いかがですか。
山中:まだ他の自治体の動向次第の段階ですが、今の段階では、芦屋市が3番目となりそうです。かなりのスピードで進めていく予定。進めていくには、かなりの努力が必要だが、職員一同努力して実現させていきたい。
司会:本日は、京都の先斗町まちづくり協議会から神戸(かんべ)さんに来ていただいています。景観・防災の観点からいかがでしょうか。
神戸:京都は、先程、市長が話された震災の際、大きな揺れを感じましたが、幸いにも壁にひびが入った程度で終わりました。京都での大きな災害で、その震災の前はと遡ると、150年前の禁門の変・蛤御門の変になる。その時、薩摩藩邸からの火が市街地にまで広がり、真っ赤に染まった、いわゆるどんどん焼けといわれる大火災まで遡らないといけない。
私たち先斗町は、京都市の看板条例に伴って、まず看板をとる努力をした。看板をとる前の状況は、恥ずかしながら、京都市が示した違反率は95%(ほとんど違反)。現在は0%とはいえないものの通りはすっきりした。しかし今度は、逆に上の電線・架線が目立つようになった。先斗町の電線・架線は凄まじく、電柱に備え付けている変圧器(トランス)は、わずか500メール足らずの通りに30基もある。要するに先斗町の店の人は電気をよーけ(たくさん)使う。ビールを冷やし過ぎてるんですね(場内笑い)。実際の無電柱化の工事というと、狭いところで幅1m60cm程度しかない(大人の男性が手を広げると左右の店先に手が届きそうな程度の幅)、しかし電力需要の極端に多い特異な事例の通りをどう克服していくか。その変圧器(マス)は地上でもわりと目立つが、実は地下にも深く広く収めなければならない。どこにその大量の変圧器を設置するか、景観を守るために、その変圧器を民家の中に取り込んでもらう住民の理解、関電さんの努力、最新の技術が無電柱化工事に試される。
司会:住民の理解を得るのは、大変だったのでは?
神戸:看板撤去の時もそうでしたが、街自体が無茶苦茶になりかけているなと住民自身が意識し始めていた時だったので、ほとんど反対はなかった。
司会:山中芦屋市長、今の神戸さんのお話を聞いて、芦屋市としてのご意見はありますか。
山中:芦屋市では大きな道路。都市計画道路を中心に、街がすっきり見える場所を中心に無電柱化の計画を立てています。
司会:福島先生、ご意見はございますか。
福島:都市計画道路でも地上機器の配置は大事である。空き地にポケットパークを設けて、そこに地上機器を入れるような工夫をしないといけない。最近では、幅広いすっきりとした道路が求められている。
山中:インフラ整備に合わせての無電柱化を考えていかないといけない。つまり、水道・ガスなどインフラ整備の際に、工事で掘り起こしたついでに無電柱化事業を進めるなどの工夫をしなければならない。教育・福祉の予算を削ってでも無電柱化を進めることはできない。
神戸:無電柱化のよいところは、単に電線・電柱が無くなってすっきりすることだけではない。京都市さんがイメージ化しているパネルも後ろにありますが、電柱が無くなると、その影が無くなるんですね。影が無くなるということは非常に大事。建物本来の姿が見えてくる、わかってくる。
福島:それなりの幅員のある道路に関して、住民がどれだけ関わるか。バリアフリー、ユニバーサルデザイン的な道路。車椅子のかた、体の不自由なかたが、安全・安心して歩ける道路。六甲の山並みがきれいに見える道路。芦屋は、バスに乗る人も多いので、安心に歩ける、安心に乗れる道づくりをしていきたい。
司会:将来の芦屋市を担う小学生、浜風小学校4年生の生徒さんに来てもらいました。お二人からの質問を芦屋市長に聞いてみよう。
浜風小:将来、完全無電柱化ができたら。よいことは。
山中:あこがれの芦屋市がさらに魅力的な芦屋市になることです。
浜風小:無電柱化で困ることはありますか。
山中:鳥がとまるところが無くなるのと、犬かな(場内笑い)。大きな災害が起こると困るので電柱は無い方がいいね。電線があることで救助ヘリが降りられないという事態も発生するからね。無電柱化は人の命に関わる大事なことなんだよ。
神戸:先程の話で出てきた電柱の上に付けてあるトランス(変圧器)は1個で530kgと聞いています。2個一緒に付いている電柱もよく見ますが、そうなったら1トンです。
福島:将来、「私の街」という題名の絵を描いた時にすっきりした絵が描きたいですね。
司会:今の話を聞かれて、今後もこのような機会をお作りになられますか。
山中:子供たちに限らず、市民の色々な意見を聞いていきたい。
司会:最後に三人のかたにお話しを伺います。神戸さん、芦屋市に一言お願いします(以下、順番に)。
神戸:芦屋市は今でもすごくきれいな街です。芦屋市が掲げる無電柱化率100%を是非進めていってほしい。
福島:これからの無電柱化は、やはり市民の声を聞くこと。これからの無電柱化推進計画策定委員会で、できるだけ市民の声をうかがってほしい。経費は、山中市長の仕事で(気にすることはせず)、まず市民のかたがたがどのような街をつくりたいか、住民にとって住みやすいかを考えて欲しい。
山中:芦屋市は狭い都市。この狭い地域をもっともっと「住むことに特化する」ことが芦屋市の取り組みです。大きな工場の誘致を市民は望んでいない。世界に誇れる憧れの街にしていきたい。
「芦屋」という街が「東京」よりも世界で名の知られる都市にしたい。
※収録の内容は、12月3日(日)午後12:30~13:00に放送する予定 78.7MHzさくらFM