8月29日、全国技術委員会OSAKAにおいて、「小型ボックスあれこれ-その2-」と題して、井上理事に解説 していただきました。
次の日、参加したインターン生と北村理事、事務局:塚田で、小型ボックス勉強会を行い、その中でいくつかの疑問が浮かび、井上理事に質問することにしました。
井上理事より、質問に回答していただくとともに、さらに、事務所にお越しいただいて、メーカーとしての立場での解説をしてくださいました。
その内容についてご紹介させていただきます。
小型ボックスと法律
小型ボックスの実証例としていくつかのケースがあるが、電力線と通信線を分ける2条のものが存在した。しかし、国土交通省の「道路の無電柱化低コスト手法導入の手引き(案) -ver.2-」によると、小型ボックス内に電力線と通信線を1条で納める事になっていることから小型ボックスの法整備についてお聞きした。
Q.小型ボックス内に1条で収まる事を制度化したり、国のほうで奨励したりすることはできると思いますか。
A.具体的な電力線、通信線の本数の基準を設けなければいけないため、法律にはできないが、技術指針として推奨していくことは出来るだろう。
また、その際に無電柱化の様々な施工の実証実験や検証が行われている。国土交通省 国土技術政策総合研究所(国総研)のお話もお聞きすることが出来た。
新しい手法と設計
平成30年に「道路の無電柱化低コスト手法導入の手引き(案) -ver.2」が国土交通省から発表された。しかし、事例がほぼ無いことに対して、把握するには時間がかかり、井上理事曰く、小型ボックスの施工を担うコンサル企業が把握するだけでも時間がかかるとのこと。
現在ある事例のほとんどは上記の手引きが発表されてすぐに設計したものばかりである。
そのため、数年後には手引きの内容を把握した上での設計事例が出てくることから、現状の施工から改良・改善された、よりよい例が出てくるだろう。
電線共同溝について
電線共同溝には意味合いとして制度としての電線共同溝と手法としての電線共同溝があるというお話をしていただいた。
制度としての電線共同溝はある道を無電柱化工事しようと思ったときに道路管理者(自治体等)の提案で国や電線管理者の同意のもと電線共同溝の手法で工事が行われるときに電線共同溝法に基づいた負担をそれぞれ負う制度の事である。
一方、手法としての電線共同溝は、電力線と通信線を収容するため、道路管理者が道路の地下に設けるということであるそうだ。
ちなみに、同時にガス管や上下水道などのライフラインも収容すると共同溝という名称になる。
そしてその収容方法として管路方式や小型ボックス活用方式等があるということだった。
小型ボックスと地中化施工
小型ボックス以外にも国土交通省の「道路の無電柱化低コスト手法導入の手引き(案) -ver.2」によると、浅層埋設などの手法が存在している。
しかし、実際にそれらを比較するとどうなるのかということをお聞きした。
まず初めに従来の管路方式は地下深くに管路を設置している。その場合、掘削量が多くなり、費用も高くなる。
次に浅層埋設は従来の管路方式を用いて、従来よりも浅い場所に管路を設ける手法だ。
しかし、従来よりも浅い位置に管路を設置しているため、クッションの役割をしていた土の量が減ってしまい、強度がどうしても従来の管路方式に比べると劣ってしまう。
小型ボックス活用方式の場合は小型ボックス内に直接電力線や通信線を収納することによって断面積が小さくなり、掘削量も浅層埋設よりもさらに減る(次頁図を参照)。また、小型ボックスは基本的に路面に露出している構造なので、蓋を開けるだけで整備が出来るという整備の容易さもある。しかし、新規の引き込みの際に収納している複数の事業者のお互いの線を傷つけてしまう可能性や、特殊部との深さが合わない、景観に良くないなどの問題も生じる。
つまり、それぞれの手法にはそれぞれの利点と欠点が存在し、その土地に合った手法で施工していくことが重要であるのだ。
埋設型小型ボックスについて
また、インターンの中で埋設型の小型ボックスも検討されているということがわかった。
しかし、埋設型の小型ボックスを用いた例は少なく、露出型の小型ボックスに比べたメリットがよくわからなかったため、そのお話もお聞きした。露出型の小型ボックスの場合、蓋を開けると電線収納が可能であるという整備・メンテナンスの容易さがあり、それは埋設型にすると損なわれてしまう。
反面、埋設型の小型ボックスの場合は地面に埋めてしまうので露出型の蓋が見えて景観が損なわれるという欠点はない。
また、露出型の小型ボックスは蓋に特殊なセキュリティを付ける必要があるが、埋設型は特殊なセキュリティは必要なく、しっかりと守られている。
さらに、露出型の小型ボックスは特殊なセキュリティを付けるため小型ボックスそのものの設計が複雑になる一方、埋設型はシンプルな設計になるため、表面を舗装したとしてもトータル的には、埋設型の方が費用は安くなる可能性がある。
また、強度の面でも露出型は土のクッションがないため、埋設型に劣ってしまう。
最後に、道路のメンテナンス手法である、切削、オーバーレイの際に埋設型は特に移設の必要はないが、露出型は底上げをする必要があり、その際に臨時で電柱を立てて施工をする必要が出てくる可能性があるなど、無電柱化の意味がなくなってしまう懸念がある。
昼間工事で工期も工費も大幅ダウン!?
現在小型ボックスも含め、電線共同溝工事は夜間に行うことが多い。さらに、騒音の問題があるため、防音シートを張って慎重に工事をしている。視界も悪い中、工事を進めるのは効率が悪い。そこで、工事を昼間に進めるのはどうだろうか。昼間に行うと確かに交通の不便は起こるだろう。しかし、視界が良い中で、騒音にも夜間程気を遣うこともなく、工事を進めることが出来る。そうすると、作業効率が上がり、施工期間は短くなる。そのことによって施工費用は大幅に削減されるだろう。しかし、このことは周辺住民の理解と協力が必要不可欠だ。
心の寛大さが低コストにつながる!?
私たちの生活は電気があって当たり前だ。朝、顔を洗おうにも蛇口から水を出すのに電気を使い、夏の暑い日や冬の寒い日はエアコンをつけて室温を調節するのにも冷蔵庫にも電気を使う。スマートフォンを充電するにも電気を使い、夜に本を読むにも電気で明かりをつける。そしてその供給が絶えず続くように完璧を求めすぎている点がある。しかし、少しくらい停電してもいいじゃないかという気持ちでいれば、現在実験段階の直接埋設だって可能になるだろう。
インターン生の感想
👉メーカーとしての立場で中立的な意見は難しいと仰っていたが、私たちにわかりやすく無電柱化について教えていただき、ありがたかった。
👉無電柱化を進めるときにどのように事業が進んでいくのかを詳しく解説してくださったため、勉強会で話していただいたことが良く分かった。
👉井上様の講義を受けさせていただいて、電線類の地中化に小型ボックス施工の必要性を強く感じました。安全性、耐久性、メンテナンス性など様々な面で、現状では、埋設型の小型ボックスにも利点があることもよくわかりました。
あとは検証を積み重ねていけば、今後の小型ボックスに改革を起こせると思いました。