第4回無電柱化推進展報告

 

目次

 

出展ブースの展開

無電柱化推進展ブースの準備

私達は、推進展前日に乗り込み、パネル展示とチラシ配布、無電柱化推進展向け小冊子の配布、無電柱化相談コーナーをすることを前提に準備を行いました。前日より会場に出向いて準備から最終日まで、当NPOの面倒をみてくださった小方理事には感謝申し上げます。また、大勢の会員の皆様のご支援・お手伝いをいただき、無事4日間を過ごすことができました。

ブース内で実施したミニセミナー(寒地土木研:岩田氏)

ブース内では、無電柱化に関する相談コーナーの他、15分程度のミニセミナーを1日3回、順番で講演していただいた。初日の松原副理事長から始まって、最後の井上事務局長まで順番に引き継がれていった。持ち時間15分程度のセミナーが、ついつい熱が入り、30分近く話してしまうほど、皆さん、来場者の期待に十分応え熱演となりました。

無電柱化セミナー

挨拶をする小池知事

一日3回、無電柱化に関わる識者の方が50分間講演する無電柱化セミナーを、時間を見つけて聴講させていただきました。個人的には、今まで聞く機会がなかった東京都建設局道路保全担当部長の加藤直宣氏「東京都における無電柱化の取り組みについて」(7/18)、国立大学法人東京工業大学副学長・教授の屋井鉄雄氏「無電柱化推進計画による今後の整備を考える」(7/19)、最終日(7/20)の井上事務局長の講演を聴講することができました。その他、日頃、お世話になっている国交省の蓮見氏、京都市先斗町の神戸氏、芦屋市役所の三柴氏、国研寒地土木研究所の高橋氏、川越市の加藤氏が講演され、無電柱化推進の現状と課題を知る充実したセミナー構成となっておりました。

以下、聴講した内容をかいつまんでご紹介させていただきます。

初めに東京都の加藤氏。講演の前に小池東京都知事が挨拶を行った(上の写真)。知事は都として今後もセンター・コア・エリア内を中心に無電柱化し、その後も進めていく。コストと時間がかかるという問題点を民間の知恵を借りながら解消していき、官民結集して今後も無電柱化の推進に邁進していくと力強く話された。続いて東京都の加藤氏、都が制作したPR動画を視聴。

実際の動画はコチラ↓

電線と電柱にゆかりの深い?スズメと犬が出演し、無電柱化の大切さを理解できるように作成している。都としては、今後10年間で環状7号線内の完全無電柱化を進めていくとともに、都道での新設電柱の設置禁止を条例で定めた。また区市町村道では、財政面や技術面での支援をし、無電柱化を促していく方針だ。

続いて、二日目の東京工業大学副学長の屋井氏。屋井先生は、国交省主催のあり方検討委員会の座長をしておられ、このほど中間とりまとめを作成された。先生は様々な見地から、無電柱化を進めるための提案や最近の事例を

無電柱化セミナーでの屋井先生

紹介された。まず、無電柱化を進めるためには国民の理解が必要であること。2011年3月11日に発生した東北沖地震後、東京電力は、電気料金を1000円値上げした。その際、市民から苦情が出ることがなかった。無電柱化も国民の理解が得られれば、数百円程度の値上げで実現が可能なはずであると。

また、先生は、今後は、自治体が「無電柱化推進法」第11条と第12条を前面に出して、電力・通信会社に働きかけるべきだと説いた。この話は、くしくも初日の当NPOブースでの松原副理事長のミニセミナーでのお話と一致していた。

二日目のミニセミナーで話していた国研寒地土木研究所の岩田氏も、デンマークの電柱地中化政策の話を例にしていたが、三者とも、「電柱を減らすこと」をしながら「電柱を建てさせない」ことに視点をおいていることが興味深かった。

先生が震災後の現地で視察した話を写真で紹介していただいた。震災後、整備された高台の住宅地。わずか3か月後に電柱だけが真っ先に建てられる。その写真は、整備された土地に、電柱だけが何本も立っている(見づらいですが、上の写真がその時紹介されていた現地の写真です)。その2年後に住宅地が完成する。住宅地がびっしり建てられると、日本のいつもの風景として電柱が溶け込んでしまう。これが日本の現状であると。

その他、先生の写真コレクション。北海道の川湯温泉。電柱を白樺の木に見立てている写真。涙ぐましい。海外のオーストラリアのパース。無電柱化するのに1戸当たり30万円程度。続いてカナダのバンクーバー。表通は無電柱、裏通に入ると電柱がある。古い街並みで昔から電柱があった通りは、逆に昔の面影を残すために、あえて電柱を残しているという。

国交省とみちデザイン研究所では、地上機器のデザインも検討している。例えば、京都市内の大通りの地上機器をベンチ型にして座れるようにできないかとか、成田山の沿道のように地域の住民が協力して民地内に置いてもらうようにしてもらえないかとかなど、様々な事例を紹介していただいた。

三日目の井上事務局長の講演。日頃より事務局長の講演は、よく聞いていますが、今回は、特別な感じがしました。無電柱化推進展のセミナーをある程度見据え、海外の無電柱化の現状を視察し、それを紹介。それも、最近感じ始めていた、ヨーロッパだけではなく、アジアの主要な都市がどんどん無電柱化を進めていることを。しかも急ピッチで。

無電柱化セミナーでの井上事務局長

電柱地中化の工法は、さておいても無電柱化を進めると決めたら、ドンドン進めていく。どっちが先進国、どこの国が環境・景観に配慮した国なのか分からないような現状を、毎年起こる災害被害の数字や、実際、アジアの街で収集してきた写真を基に説明していく。いつもの、関西人としての聴衆を引き込む?ギャグも折り込みながら…。また、推進展に出展されている会員企業の製品も紹介。その紹介も単に宣伝するのではなく、国交省が主催する民間WGで取り上げられた製品を中心に、今後低コスト化に期待できるものを取り上げていった。無電柱化の現状を把握している井上局長ならではの講演内容だった。

無電柱化推進展向け小冊子の配布

最後に今回の無電柱化推進展でお話をしておかなければならない企画があります。無電柱化の現状とその進め方をまとめた小冊子『脱・電柱社会~日本の空を取り戻そう~』です。e-セレス野原氏の原稿案のもと、国交省との交渉や責任編集を井上事務局長が行い、会員企業様の協賛も募り、なんとか推進展の前日に間に合うことができました。ご協力いただいた皆様、ありがとうございました。今回の推進展では600冊あまりの配布をすることができました。初日より、前川理事をはじめ、理事・会員の皆様よりブースを通る参加者に声をかけて渡していただきました。今後もアピールできる効果的な企画品を検討していく所存です。

会場の声

★一番多かった意見は、やはり「なぜ無電柱化が進まないのか」でした。

→電柱・電線を無くすことは、「いいことだ」「悪い要素はあまりない」のになぜ進まないのか。ヨーロッパや、アジア諸国でも無電柱化が進められているのになぜできないの。という意見が多かったですね。

☆それと双璧なのが、「なぜ無電柱化にコストがかかるのか」でした。

→この意見と並行して、日本は細かすぎるのではないか、規制がきつすぎるという意見が続く方も多かったです。

逆に、最初から「どうせコストがかかるんでしょ」「電線が無いのがいいのは分かっているけど、あったからといって日常生活に不便している感じがしない」という意見も聞かれました。ここに来場されている参加者はどちらかと言えば無電柱化の推進に肯定的な方なので、このような意見がまだ少なかったかもしれません。世間一般を代弁した意見なのかもしれません。

☆「日本で一番無電柱化が進んでいるところはどこですか」という質問をされる方も多かったです。

→恐らく東京都を期待して答えを待っているところに「芦屋市です」と答えると、そうなんだと感心される方が多かったです。たまたまこの後セミナーで芦屋市の方が講演されると伝えると、「見に行ってみます」と言われた方が二人、講演が終わった後にセミナーをされたことを伝えると残念がられた人が一人いました。

☆(パネル・配布資料をみて)無電柱化が叫ばれているのに、他国でも無電柱化が進んでいるのに、日本は、まだ年間7万本も本当に増え続けているの?

☆国道などの主要幹線道路・緊急輸送道路ばかりするのではなく、私達が実際に暮らしやすい、狭隘な道路、通学・通勤に使う道路に立っている邪魔な電柱のほうに目を向けるべきではないか。また、そのような道路を無電柱化できて初めて実感できるのではないか。

などの意見もいただきました。

無電柱化推進展での来場者意見の続きをお伝えします。

☆商店街の活性化には、是非無電柱化をとり入れてほしい。

→商店街の活性化には無電柱化は効果的だと思うが、電柱・電線以上に看板の規制が必要だ。

★あとちょっと違った角度からご意見をいただいた方もいました。

☆NPO法人電線のない街づくり支援ネットワークさんも別の団体や運動を参考にしてみたらどうか。例えば禁煙活動。禁煙活動は世界的に広まっている。無電柱化も世界的に広まりつつある。何かヒントになるものがあるのではないか。もっと世論を動かしてほしい。

☆ヨーロッパと日本では景観に対する意識が違う。日本は景観に対する意識が無さすぎる。☆展示している屋久島や北海道の電柱のないパネルをみて、「やっぱり景観のない風景はいいね」と言われる人が多かった。

→それとリンクした意見として、「日本は今まで自然の美しい、景観面では世界一の国だと思っていたが、世界的にみたら景観後進国であったことに改めて気づかされた」。

☆もう一度クラウドファンディングをして、屋久島を無電柱化してほしい。

☆海外に行ったら、電柱・電線のない風景のよさを実感する。

☆日本の景観のよい風景を見ると、電柱よりも電線の方が気になる。

★ハード面での意見・質問もよく聞かれました。

☆一番多かったのが、電線を地中に埋めたらメンテナンスが大変なのでは…。

☆浅層埋設や直接埋設なんかして、大丈夫なの?

☆直接埋設を実際に実施している場所を教えてほしい。

→「直接埋設に関しては、現在、実証実験の段階です。」と回答すると、「えっ、まだやってないの?」とビックリされました。

★あと、やはり無視できない意見として

☆地方自治体のやる気が無さすぎる。

→「コストがかかる」「手間がかかる」で逃げている。定年までそう言っていたらなんとか自分はなるだろうと考えているのではないか。どうすれば無電柱化が進められるかを前提に考えていかないと先に進まない。

☆電力会社・通信会社のやる気・協力が無さすぎる。

→電力会社・通信会社が「無電柱化します」と言えば、一気に進むと思う。

→電柱をつくっている会社とのしがらみがあるのだろうか?という意見も…。

☆戦後復興期に電柱を建てて、そのまま何もしなかった政府(国)に責任がある。

確かに、無電柱化推進展に各電力会社や通信会社がもっと積極的に参加してこそ、無電柱化推進展の意義が高まるのかもしれません。国・行政・電力・通信・メーカー・市民皆が一体となって取り組んでいける場として、無電柱化推進展を今後も続けられれば、よりよい情報提供の場となるのではないでしょうか。