令和5年度第3回勉強会 プログラム
会場:北海道登別市「登別市観光交流センター ヌプル」
WEB:Cisco Webex
日時:令和5年 11 月 16 日(木)10:00~16:30
参加者:会場 約 70 名、WEB 18 名

■主催者挨拶
会長:長野県佐久市長 栁田 清二
幹事:北海道登別市長 小笠原 春一
■講演<午前の部>
国土交通省における無電柱化の取り組みについて
国土交通省 道路局 環境安全・防災課 交通安全政策
分析官 田中 衛
北海道開発局における無電柱化の取組みについて
国土交通省 北海道開発局 建設部 道路維持課 課長
補佐 岡山重雄
北海道における無電柱化事業
北海道庁 建設部 まちづくり局 都市環境課 課長
補佐 田中 修
北海道をフィールドにした無電柱化技術の研究開発
国立研究開発法人 土木研究所 寒地土木研究所
主任研究員 大部 裕次
■質疑応答(随時)

■講演<午後の部>
美瑛町における無電柱化の推進について
北海道 美瑛町役場 建設水道課 課長 今瀧 毅
ボールパーク構想における無電柱化の取り組み
北海道 北広島市 建設部 都市整備課 課長 藤本 悟
町道岩尾別南3線無電柱化事業について
北海道 俱知安町役場 建設課 土木係長 菊田 暁人
無電柱化加速化のために、今やるべきこと
一般財団法人 日本みち研究所 専務理事 森山誠二
無電柱化と景観法の活用ほか-法律や制度・ツールを味方につけて景観まちづくりを!-
NPO 法人電線のない街づくり支援ネットワーク顧問 松田泰明
■質疑応答(随時)

11 月 16 日 無電柱化を推進する市区町村長の会 R5-3勉強会 ポイント解説
北海道の無電柱化の話題が盛り沢山!
・各関係者の事例紹介のなかに北海道という地域の特性を活かした無電柱化の好事例あり
・限られた期間で着工しなければいけない施工事情を踏まえ、低コスト・短期間での無電柱化が実現
浅層埋設、角型FEP管、トレンチャーの話題が多かったし、一様にこの商材・施工法を実施してよかったとの評価
・余裕をもった計画の工夫で電線共同溝から単独地中化への検討を
→北広島市のボールパークは、計画段階から施工までに余裕があれば単独地中化の要請を考えてもよかったか。今後の同様の事例に繋げたい。
・現行の法律をいかした無電柱化のアプローチを
→景観法の活用
・低コスト・簡易な無電柱化は、実は、色んなところでやっている
→無電柱化バリアの排除!

コスト縮減_北海道における取組 (浅層埋設)
〇現行の電線共同溝通信線管路の埋設深さは凍土深の確保が必要(As舗装設計に用いる置換厚=凍土深を採用)
〇美深町での浅層埋設試験施工(H30~R1)で得られた実測結果を踏まえ、管路の埋設深さを実測の凍結深さに変更することも検討。結果を踏まえ令和3年3月に北海道電線共同溝技術マニュアルを改訂
〇令和3年以降も、美深町以外の道内各地のデータ集積を継続し、場所に応じた深さ設定を進めていく予

北海道電線共同溝マニュアル改訂
浅層埋設  120cm →60cm

コスト縮減_北海道における取組 (角型 FEP)
➀ 材料費・施工費縮減効果

・電線管路材変更によるコスト縮減(管路材:CCVP 管→角型 FEP 管)
・日当たり施工量増
・【管路工】135 百万円/1km→94 百万円/1km(管路のコスト3割縮減)
② 可とう性による施工性向上効果
・管路敷設作業の生産性向上(支障物件移設の軽減)
・角型 FEP 管の可とう性により、支障物を移設せずに施工が可能
・【支障物件】2百万円/1箇所→百万円/1箇所角型 FEP 管は支障物件をかわすことが可能
CCVP 管 → 角型 FEP 管 = コスト減
コスト縮減_北海道における取組 (トレンチャー掘削)
■トレンチャーとは
・一定の幅と深さで連続的に掘削できる機械の総称で、従来のバックホウ掘削に比べ、飛躍的に掘削スピードが向上するため、郊外部で連続掘削ができるような施工環境においては、特に効果を発揮する。
・欧米諸国で使われるトレンチャー掘削機の国内現場での適用に向け、これまで寒地土木研究所において取り組んできた技術開発を踏まえ、令和3年度に北海道内の電線共同溝工事で初めて導入。

 


〇国立研究法人土木研究所寒地土木研究所(寒地土研)地域景観チームでは、北海道という地域に最適な無電柱化手法を研究されています。
その手法は市街部で進められている電線共同溝方式だけではなく、郊外部に適した多様な無電柱化手法・低コスト手法の必要性(郊外部規定)を提案されている。
〇現在進められている提案は、北海道無電柱化推進協議会低コスト WG への参画で反映。

 

〇北海道無電柱化推進協議会低コストWG への参画により、様々な無電柱化法の実証実験や検証が進められ、その成果を電線共同溝技術マニュアルに反映させている。
〇地域景観チームとして、景観に配慮した無電柱化のデザイン(本誌では地上機器の設置についての考察)を研究している。
〇また貴所では無電柱化の啓発活動も行われている。未来を担う子供たちに分かりやすく無電柱化の良さを授業を通して伝えている。

 

 

美瑛町 建設水道課 今瀧 毅
本通り土地区画整理事業 無電柱化
・施工地 本通地区
・施行者 本通地区土地区画整理組合
・施工期間 令和元年から平成14年(施工面積 10.82ha)
・事業に至る背景
昭和 30 年代後半より離農者を中心として、人口減少の一途をたどり町内全般的購買力が低下。旭川市への購買力の流出などにより中心商業地である本通り地区は衰退の一途を。
「丘のまち びえい」にふさわしい自然と調和のとれた「びえいの玄関口」として人々が集い憩える街並み整備が必要。活気あふれる商店街へ。
・事業の概要
地区内を5つにゾーニングし各ゾーンに変化を設け、建築協定による建物デザインの統一や建築物のセットバックを行い魅力ある商業空間を創出する。また、集客性を高めるため、イベント広場としての活用可能な「ポケットスペース」を整備して快適な都市空間の充実を図る。

美瑛市空撮

北西の丘展望公園 町道村山大久保線 無電柱化
・無電柱化の経過
「丘のまち びえい」として脚光を浴び、景観を楽しみ写真家や写真愛好家が美瑛町を訪れるようになり、当時からオーバーツーリズムの問題と相反して、観光客から電柱や電線が丘の景観を阻害しているとの指摘が多く寄せられるようになり、電線電柱の新設にあたっては、景観審議会などの意見を尊重した中で慎重に電線類の設置を進めてきた。同時に景観を阻害する既存の電線電柱については、移設や地中化などの検討がなされてきており、本事業は、景観形成モデル事業の形で郊外の観光地における電線類の地中化が行われた。

 

 

北広島市 建設水道課 建設部 都市整備課 課長 藤本 悟
北広島市で建設されたエスコンフィールドHOKKAIDOは、プロ野球球団・日本ハムが主催するゲームを行うボールパークだけでなく、宿泊施設・レジャー施設・ショッピング施設など、魅力あるさまざまな施設を擁して、プロ野球開催時以外でも多くのひとが訪れている。また施設建設の際、電線共同溝方式で無電柱化が進められている。

会場で出た意見として、市街地開発地の無電柱化の場合、義務占用を利用して、単独地中化(電線管理者に要請して、電線管理者が無電柱化を進める)で進めることもありとのこと。
大規模な商業施設においては、短期間で設計・施工を進めないといけないケースが多く、義務占用の知識を事前に備えておかないと難しいところはあります。また進めてもらうにしても事前の通知が必要にはなってきます。

俱知安町役場 建設課

Ⅱ  事業の目的
(1)G20 観光大臣会合の開催
平成30年4月、G20 観光大臣会合が倶知安町で開催される事が決定。
会場はニセコ HANAZONO リゾート、出席者の宿泊地はニセコヒラフエリアとなった。宿泊地から会場までは、道道蘭越ニセコ倶知安線を経由し町道岩尾別南3線がアクセス道路となるため、環境整備を目的に北海道、倶知安町それぞれ無電柱化事業を行う事を決定した。
(2)地域住民及び観光客の安全性・利便性の確保
一方、町道岩尾別南3線は市街地と HANAZONO リゾートを結ぶ主要な道路であることから、近年多発する豪雨や暴風雨による電柱倒壊や停電の危険性を排除することで住民及び観光客の安全性・利便性の確保、向上を図ることも目指した。

Ⅲ  無電柱化事業の流れ
平成30年 4月 G20 観光大臣会合の開催が決定
平成30年10月  町道岩尾別南3線の無電柱化を計画
北電・NTT と構造について協議開始
令和元年 4月 工事契約
令和元年 7月 北電・NTT と自治体管路方式に関する協定を締結
令和元年 8月 工事竣工
令和元年 9月 北電・NTT の入線及び抜柱が完了
令和元年10月  観光大臣会合開催

 

 

 

Ⅳ事業概要
(1)整備方式 自治体管路方式
(2)参画事業者 北海道電力株式会社、東日本電信電話株式会社
(3)整備延⾧ 1工区 L=267.60m 2工区 L=211.75m
〇〇〇合 計 L=479.35m
(4)工事内容 電力管路材 角型 FEP 管(幹線 φ130×3 条)
〇〇〇通信管路材 PV 管(幹線 φ50×3 条)
〇〇〇特殊部の構造形式 Ⅰ型構造(電力線と通信線を一体収容)
〇〇〇通信用分岐桝 1基
(5)事業費 1工区 43,632,000円
〇〇〇2工区 42,876,000円
〇〇〇合 計 86,508,000円

「無電柱化と景観法の活用」ほか~法律や制度・ツールを味方につけて景観まちづくりを!~

 

NPO 無電柱ネット北海道支部 顧問 松田泰明

1.本日お伝えしたいこと・「景観法」の概要

▷本日お伝えしたいこと
・無電柱化による景観まちづくりにおいて、景観法の活用はとても有効。
・例えば、道路などを景観重要公共施設に指定し、電線類の占用制限を定める など…。
・しかし、これがほとんど活用されていない。
・そこで、無電柱化を進めるにあたって、景観法における景観計画を 上手く活用することについてお伝えしたい!
さいごに・・・・無電柱化に対するアタマとココロのバリアをなくしていこう!

▷景観法と景観計画

▷景観計画の特徴
・景観行政を進めるに当たっての基本的な方針を定めた計画
都市計画区域外も含めて計画を定めることが可能
景観計画区域を対象に、景観重要建造物、景観重要樹木、景観協議会、景観協定等の規制誘導の仕組み活用が可能
・景観計画区域内にて、一定の建築行為等を行う場合には、景観行政団体自治体)の長への届出が必要
・必要に応じて、勧告・変更命令等が可能(H28~30実績=勧告94件、変更命令0件)
条例等で定めることにより、地域の実情に応じた計画が可能
※国土交通省都市局資料を基に著者がレイアウト編集。


▷景観計画のシステム
ある行為に「No」ということを目的とした制度ではない。
300㎡の住宅を建てたい
– 高さは7m以下にしてください。
– 屋根は瓦っぽくしてください。
– カルデラ外輪山への見通しを遮らないように道路から下がってください。
太陽光発電・風力発電をしたい
– 主要な道路や眺望点から見えない位置にしてください。
– 敷地の周囲は植栽にしてください。
– 巨大なものを1個立てるより、小さなものを3個にしてください。
10,000㎡のホテルを建てたい
– 村と入念に協議をした上で、景観の価値を損なわず、高めるものならいいですよ。

2.無電柱化への景観法の活用について
▷活用のポイント
景観計画に、対象としたい道路や街路などを「景観重要公共施設」(景観重要道路など)に指定し、目指したい景観形成の方針を示すとともに、景観向上や防災に効果が期待できる具体の景観基準や占用制限を明記する。
▷留意点
道路やその区間の指定の範囲にとどまらず、その内容が重要!

横浜市景観計画における景観重要道路(日本大通り)に関する占用許可基準(抜粋)

占用許可の基準は次のとおりとする。

ア 良好な街並みを維持するために、新たに設ける電柱・電線等、公衆電話所等、広告塔、彫刻・碑等、突出看板、立看板等、添加看板、添加広告及び上空通路は、設けることはできない。
イ 新たに設ける街灯等、公衆用ごみ容器、フラワーポット、ベンチ、掲示板又は案内標識等の形状は、歴史的建造物が多く立地し、開港の歴史を伝える格調高い街並みに調和するものとすること。
ウ 新たに設ける変圧塔等、光アクセス装置等の形状は、これらの機能を確保又は維持できる範囲で歴史的建造物が多く立地し、開港の歴史を伝える格調高い街並みに調和するものとすること。
エ 街灯等、変圧塔等、光アクセス装置等、公衆用ごみ容器、フラワーポット、ベンチ、掲示板(表示面は除く。)、案内標識等及び道路標識並びにこれらに付随する柱等及び器具の色彩は、マンセル表色系で色相2.5G明度4.0彩度1.0 を目安としたものを基調とすること。
※国土交通省都市局資料を基にレイアウトのみ著者編集

3.景観法活用の現状と課題(調査結果から)
調査対象 全国すべての景観計画(2019 年 3 月時点)
調査方法 国土交通省 HP、都道府県と市区町村のHPから収集
調査内容 ①策定(改訂)時期 ②景観重要施設への道路の指定の有無 ③指定している道路・路線名・区間 ④具体の内容(目標や方針、具体の景観向上策など)⑤道路景観を観光資源と捉えているか否か
参考文献:松田・笠間・田宮,景観計画からみた観光資源としての道路景観の活用に関する課題,土木学会論文集 D3,Vol.76,No.5,2021.1

景観計画における景観重要道路の指定状況(2019年3月時点)

▷景観重要道路の指定割合が少ない →指定割合:21%
▷景観計画を策定していない自治体も含めると →約 7%
▷優れた沿道景観の道路や世界遺産エリア →多くは指定外

都道府県ごとの景観計画策定市町村数とそのうち重要景観道路を定めている市町村数を調べてみると
▷北海道・東北・九州・沖縄など、Road Tourism の盛んな地域が少ない
▷一方、東京・神奈川など都市部が多い(街路として位置づけ?)

景観計画策定(改定)年別件数と景観重要道路を定めている計画策定年別の件数を調べてみると
▷景観計画に占める景観重要道路の指定割合は、増えていない!
▷今後も増えない??

景観重要道路の指定割合について(数や割合)→とても少ない
▷特に、沿岸景観の優れる郊外部の道路の指定が少ない

景観重要道路の景観形成方針や基準当の内容について(質)有効な事例はとても少ない
▷特に、有効な占用制限に関する基準の記述はほとんど見当たらない!

指定が少ない、あるいは有効な記述がない理由(仮説) 

▷なぜ景観重要道路の指定が少ないか?
・自治体職員にとって沿道景観の保全や改善の必要性は理解していても、道路空間の改善の有効性が十分理解されていない可能性がある
その理由として、道路空間や道路施設の具体の景観改善方法やその効果がイメージしにくいからでは?
さらに、計画策定の自治体が国や都道府県の道路管理者の立場を意識し、道路管理者との調整を敬遠して指定していない可能性も考えられる
▷なぜ有効な方針や基準等が示されていないのか?
・景観法活用の情報不足とこれによるノウハウ不足
・他の自治体の参考となる事例が少ない
電線管理者の理解が得られないのではと考えているから?
参考文献:松田・笠間・田宮,景観計画からみた観光資源としての道路景観の活用に関する課題,土木学会論文集 D3,Vol.76,No.5,2021.1

4.景観法活用に関する自治体の課題

景観法活用に関する自治体の課題 
・認知不足

小規模団体を中心に、国の法制度や支援施策等の認知度が低い
・知識やノウハウ不足への対応
全体で約7割の地方公共団体において知識やノウハウが不足
・職員不足への対応や体制づくり
小規模団体を中心に、全体で約7割の地方公共団体において専門的な知識を持つ職員の不足が課題と認識
・地域の協働、理解、関心の不足への対応
約4割の地方公共団体が、地域の担い手不足や地域住民の関心の低さを課題と認識
・予算不足への対応
約6割の地方公共団体が財源の不足を課題と認識

提案:法律や制度、ツールやノウハウをもっと活用しよう!

法律やシステムを味方につける(力を借りる)が重要
▷中でも、景観法と景観計画は、景観まちづくりの効果を高めるために国から与えられた有効な武器?
▷これを使いこなすことが効果的。まずは、国交省発行のガイドラインや手引きなど各種のツール(無料)を入手し、ノウハウを獲得
▷専門家の知見の活用はとても有効
(ただし、景観法の活用と無電柱化の両方に詳しい専門家は少ない?)

5.さいごに伝えたいこと「無電柱化のバリアをなくそう!」
~日本でも当たり前に行われてきた電線地中化~
▷日本でも無電柱化の歴史は古い(戦前から)一部では戦後も積極的に行われてきた
▷よく見ると、電線共同溝事業以外にも地中化は広く・多く存在
▷例えば、公園や河川敷などには電線電柱は見当たらないが・・・?
▷他にも、港や空港、大学や学校施設、ビルや団地、工場なども・・・

皆さん、身近な電柱・電線のない場所を見つけてみませんか。きっと見つかるはずだし、そこは心地よい空間だと思いますよ。(イラストAC)

・無電柱化は、日本においても特別なこと、珍しいこと、贅沢なことではない、のでは?
・無電柱化に対するアタマとココロのバリアをなくしていこう!

 

ご紹介できなかった講演の内容も含めまして、今回の勉強会の各講演の内容を動画にまとめました。
映像を編集し、YouTubeに限定公開でアップロードしています。
なお、北広島市の方のご発表の最初の3分くらいの音声が録音できていないので、途中からの映像となっています。
ご了承下さい。

1 国土交通省 https://youtu.be/09wC4D_nX84
2 北海道開発局 https://youtu.be/C-aASfnpzmk
3 北海道庁 https://youtu.be/1sQMFEB2rZc
4 寒地土木研究所 https://youtu.be/aV9-r40aBZo
5 美瑛町 https://youtu.be/d4uxnLTQ4mE
6 北広島市 https://youtu.be/wvSGY1Hg_aA
7 倶知安町 https://youtu.be/mBQAL0cZ7MY
8 森山顧問 https://youtu.be/qpGXRNSpNY0
9 松田顧問 https://youtu.be/NHPtKQRoBpw