6 月 24 日、大阪市立総合生涯学習センター第1研修室の第17 回社員総会のあと、以下のスケージュールで総会セミナーが行われました。


今回は、国土交通省の中屋様の講演の一部をご案内せていただきます。

❑ 講 演1❑
日本の無電柱化最新情報と防災対策としての無電柱化
国土交通省 道路局 環境安全・防災課 企画専門官  中屋 正浩 様

◆◆◇ 無電柱化の変遷 ◇◆◆
〇戦前は、電線管理者が自ら一部電線の地下埋設を実施
〇戦後、電柱・電線が義務占用物件として位置付けられ、架空配電・通信網の整備が進展。
〇平成7年の電線共同溝法成立により、道路の掘り返し防止や道路景観の整備の観点から、道路管理者が電線の収容空間等を整備

無電柱化の変遷
S27【道路法】電線・電柱を占用許可の対象(義務占用)
その上で、交通のふくそう、幅員の狭い道路については 37 条で制限できるよう措置
S61 電線類地中化計画(第 1 期)開始(キャブシステム、管路方式、直接埋設方式等から選定)
H7【電線共同溝法】電線共同溝の整備を各種特例で推進(電線・電柱の占用を制限)
⇒道路の掘り返し防止や道路景観の整備の観点から、道路の掘削、管路の購入、管路の設置、道路の埋戻し、道路の舗装を道路管理者が実施
⇒電力・通信事業者は、ケーブルを購入し、道路管理者が設置した管路に通すとともに、地上機器等を購入、設置し、電柱・電線を撤去
H13 内閣に IT 総合戦略本部が設置(光ファイバ網の整備を推進するため、一層多くの架空線を整備)
H25【道路法改正】 防災上重要な道路を 37 条制限に追加
H28【無電柱化の推進に関する法律】 電柱・電線の抑制・撤去、技術開発等の推進
H30 無電柱化推進法に基づく「無電柱化推進計画」策定
R2【 道路法改正 】緊急輸送道路等の沿道区域で、電柱等の工作物を設置する場合の 届出・勧告制度を創設
R3 新たな「無電柱化推進計画」策定
R4 電柱の増加要因を踏まえた新設電柱の抑制に向けた対応方策【 公表 】
R5 既設電柱の占用禁止措置開始

台風による電柱倒壊・折損の事例 (大阪府)

能登半島による電柱倒壊の影響
・国土交通省では、地震発生の翌日 (1/2) から幹線道路の応急復旧に着手。
・法面崩壊や家屋倒壊のほか、電柱倒壊や倒木の電柱接触等により応急復旧作業に支障。
・電柱・電線撤去作業は、道路管理者(土木業者)では対応できないため、電線管理者の協力が必要不可欠であり、電線管理者の作業待ちが発生。
・道路管理者、電線管理者等関係者において「災害時(地震)の電力復旧に向けた連絡調整会議」を設置し、関係者間で復旧作業箇所の調整を行い作業を効率化。

■ 能登半島による無電柱化区間の被災状況(2/13・14 ①)

・能登半島地域においては、輪島市をはじめ、8市町で約20km の無電柱化を実施。
・現地調査の結果、一部特殊部(マンホール)周辺の沈下、地上機の傾き等を確認。
・今後、埋設管路等の損傷状況を確認し、適切な対応方策の検討を行うことが必要。
・現在のところ、断線は確認されていない 。

能登半島による無電柱化区間の被災状況(2/13・14 ②)

■ 令和4年 1 月の降雪に関する解説
最近、豪雨や台風の災害に目が行きがちだが、実は豪雪での断線被害もかなり深刻になっている。最近の降雪は、短時間で何メートルもの高さまで積もるケースが多い。豪雪は、交通のマヒを引き起こすが、それに加えて着雪による架線の断線が加わると停電の長期化や、人の命にもかかわる災害となる(筆者の解説)。

 

 

 

 

 


東日本大震災・阪神・淡路大震災時のライフラインへの被害状況

通信線・電力線における被害率について 上の数字で見る限りでは、架空線よりも地中線のほうが被害は少ないようだ。架空線の延長距離がかなり長いので、今後丁寧に検証を進めてほしい。エビデンスの積み重ねが無電柱化の普及につながる。電柱の倒壊による道路閉塞や電線断線などは地中線では起こりづらい(筆者の解説)。

新設電柱調査結果概要(令和4年度)

電柱の占用禁止・制限について

6/24 NPO無電柱ネット 総会セミナー 概要報告

❑ 講 演2❑
無電柱化加速化に向けての提言2.0
一般財団法人日本みち研究所 専務理事
NPO法人電線のない街づくり支援ネットワーク 顧問 森山 誠二

◆◆◇ 無電柱化の推進に必要なこと◇ ◇◆◆
●電線管理者の無電柱化に対する主体的な取組の萌芽も見受けられるようになりつつある。一方で、電線管理者側が積極的に取組むまでのインセンティブは働かないのが現状である。
●道路管理者側による働きかけが重要である。具体的には無電柱化推進計画の策定が一つの好機となる。
●計画の策定にあたり、道路管理者の権限である、道路法第37条による占用制限、無電柱化推進法第12条による同時整備を厳格に運用することは、電線管理者側の主体的な取り組みの動機となり推進力となることが期待される。

地域における候補地の掘り起こし
●電線地域から無電柱化のニーズの高まりを発信していくことが必要
●市区町村無電柱化推進計画の策定の場を設け、電線管理者の参画も得て、幅広く意見交換と検討を行っていく。

令和5年度第1回あり方検討委員会資料による

今後想定されるスケジュール

(一財)日本みち研究所資料より

◆◆◇ 占有制限の積極的活用◇ ◇◆◆
●37条指定の対象は通達により当分の間は新設電柱のみに適用されることになっているが、既存電柱についても、早期に占用制限に着手するべきである。
<平成27年12月25日道路局関係課長通達>
道路法第37条の改正に伴う道路の占用の禁止又は制限に係る取扱いについて
電柱による道路の占用に関する運用指針

6 既存の電柱の取り扱い
道路管理者が公示した日より前になされた法第32条に基づく占用許可がなされた電柱については、当分の間、認めることとして差し支えない。
<令和5年6月28日道路局関係課長通達>
道路法第37条の改正に伴う道路の占用の禁止又は制限に係る取扱いについて
電柱による道路の占用に関する運用指針
第2 占用の禁止を実施する方法
3 既存電柱による道路の占用を禁止する区域
(2) 禁止する区域の優先度について
緊急輸送道路等のうち、電柱倒壊よる道路閉塞の影響が大きい区間について検討することが望ましい。
(ウ) 無電柱化法12条に基づき、道路を掘削する工事(車道拡幅、歩道整備、自転車道整備等)着手の2年前までに道路を掘削する工事が実施される旨の通知がなされた区間
●電力や通信に付与している義務占用の規定を外す道路法37条の活用、特に1号(交通安全)及び2号(バリアフリー)に基づく指定を進めるべきである。

<道路法>
第三十六条 電柱、電線若しくは公衆電話所を道路に設けようとする者は、あらかじめ当該工事の計画書を道路管理者に提出しておかなければならない。
2 道路管理者は、道路の占用の許可の申請があった場合には、許可を与えなければならない。
第三十七条 道路管理者は、第三十六条の規定にかかわらず、区域を指定して道路の占用を禁止し、又は制限することができる。
一 交通が著しくふくそうする道路又は幅員が著しく狭い道路について車両の能率的な運行を図るために特に必要があると認める場合
二  幅員が著しく狭い歩道の部分について歩行者の安全かつ円滑な通行を図るために特に必要があると認める場合
三  災害が発生した場合における被害の拡大を防止するために特に必要があると
認める場合
注)条文は読みやすくするため、著者の責において編集している。

◆◆◇無電柱化推進法12条の厳格な運用の担保◇◆◆
現在は12条前段の規定に基づき、道路事業等の実施にあわせた同時整備と新設電柱の抑制が制度化されている。適切な運用がなされていない事例も見受けられるため、きめ細かい事例研究や説明会、セミナーによる運用改善を行うべきである。

<無電柱化推進法>
第十二条(前段) 関係事業者は、道路の新設、改築又は修繕に関する事業が実施される場合には、これらの事業の状況を踏まえつつ、電柱又は電線を道路上において新たに設置しないようにするとともに、当該場合において、現に設置し及び管理する道路上の電柱又は電線の撤去を当該事業の実施と併せて行うことができるときは、当該電柱又は電線を撤去するものとする。

<道路法施行令>自治体による取組に期待
第十一条(略)
一 道路の敷地外に当該場所に代わる適当な場所がなく、公益上やむを得ないと認められる場所であること。

<道路法施行規則>自治体による取組に期待
第四条の四の二 公益上やむを得ないと認められる場所は、当該事業の実施と併せて当該電線を道路の地下に埋設することが当該道路の構造その他の事情に照らし技術上困難であると認められる場所に限るものとする。
注)条文は読みやすくするため、著者の責において編集している。

未措置となっている12条後段についても、事例研究を重ね、電力側への支援策も検討のうえ、早期に省令改正を行うことが必要である。
<無電柱化推進法>
第十二条 関係事業者は、道路の新設、改築又は修繕に関する事業が実施される場合には、これらの事業の状況を踏まえつつ、電柱又は電線を道路上において新たに設置しないようにするとともに、当該場合において、現に設置し及び管理する道路上の電柱又は電線の撤去を当該事業の実施と併せて行うことができるときは、当該電柱又は電線を撤去するものとする(後段)。

<平成31年4月1日道路局関係課長通達>
道路法施行規則第4条の4の2の改正に伴う電線の占用の場所に関する技術的細目の取扱いについて
4 その他
(5)既設電線の取扱い
既設電線については適用されず、既設電線の更新についても適用されるものではないことに留意すること。
⇒令和5年6月28日道路局関係課長通達により、緊急輸送道路等において望ましい区間として明示。今後、さらなる展開を期待。
注)条文は読みやすくするため、著者の責において編集している。

◆◆◇市無電柱化推進計画 見直しイメージ◇◆◆
※太字は特に検討を求めたい項目
第1章 はじめに

第2章 計画策定の背景と目的
第3章 無電柱化基本計画
第4章 計画の位置づけと無電柱化の現状等
(1)無電柱化計画と各種経計画との関連性
(2)〇〇市における無電柱化の現状
(3)無電柱化の整備手法
 ア 無電柱化方式の分類
 ・地中化と地中化以外
 ・37条占用制限
 ・12条一体整備
 イ 電線地中化の方式

 ウ 地中化以外の方式
第5章 無電柱化推進路線
(1)対象路線選定の考え方
(2)整備方式の選択の考え方
(3)独自の無電柱化手法の検討
(4)37条占用制限の考え方
(5)道路・開発一体整備の考え方
第6章 無電柱化の実施目標

 →〇km完成
第7章 推進に向けた取組

 (1)低コスト手法の導入と財源の確保
 (2)地上機器設置の工夫 →税法上の工夫
 (3)市民啓発

 (4)良好な景観の保全
 (5)電柱を増やさない取組
 →具体的な路線明示(第6章の再掲)
 →開発許可制度上の連携
 (6)占用制限制度の適切な取り組み

 →具体的な路線明示(第6章の再掲)
 →道路占用料の減免
 (7)国や県への要望

 (8)推進体制
 (9)道路・開発事業にあわせた無電柱化
 →具体的な路線明示(第6章の再掲)

◆◆◇無電柱化推進計画策定にあたっての基本スタンス(復習)◇◆◆
無電柱化推進法に定められた電線管理者の責務
 電柱又は電線の設置抑制及び撤去の責務を有する。(無電柱化推進法第5条)
・ 行政からの電線管理者への一方的な依頼ではなく、道路管理者としての義務や権限も考慮して計画策定を推進。
・ 具体的には、
〇義務占用の除外規定を定めた道路法37条に基づく指定
〇道路事業や開発事業と一体的に無電柱化を行わないと単独施行となる旨を規定した無電柱化法12条の活用

◆◆◇無電柱化推進計画委員会の設置事例◇◆◆
金沢市・芦屋市の委員会を参考に
委員会まではハードルが高ければ連絡協議会に参加してもらえるようにしたい。

金沢市 平成24年4月1日~

芦屋市 平成29年10月1日~平成30年8月8日※終期:計画策定終了まで

 ■□ 適切な手法の選択 □■
◆◇電線共同溝方式と単独方式◇◆
岡山県真庭市(単独方式、官民連携無電柱化支援事業、510m、8億円、電線管理者分を含む)、石川県金沢市主計町(単独方式、要請者負担方式、150m、4.5億円、電線管理者分を含む)は単独方式を活用したため、電線管理者が創意工夫を発揮し、安価かつ迅速に完成。
・ 一方、電線共同溝方式では全体コスト削減の動機が発生しにくい。
・京都・先斗町(電線共同溝方式、490m、26億円、電線管理者分を除く)は、電線共同溝方式で、高コストになったが、技術の結集が詰まっている。かなり狭隘な道路でも無電柱化できる事例をつくった。

 ◆◇電線共同溝方式による工夫◇◆
 同じ電線共同溝方式の場合でも、沿道条件、既設埋設物の有無や道路管理者、電線管理者及び地元住民の3者の協力体制によって、全体コストや事業期間は大きく変化する。
・ 長野県白馬村(電線共同溝事業、路線延長830m、事業延長1,660m、事業費1km当たり17億円(予定)、電線管理者分を除く)
消雪施設が設置してあり、工事が複雑になることが高コスト、長期間の要因と思料
・ 北海道俱知安町(電線共同溝事業、路線延長2,180m、事業延長4,360m、事業費1km当たり3億円、電線管理者分を除く)
G7会合にあわせるため地元協力により常時作業帯を確保できたことが低コスト、短期間整備の要因と思料

◆◇側溝を活用したピンポイント無電柱化(提案)◇◆
・ 部分的な電柱の撤去であっても、歩行者の移動の円滑化が図られる事例が散見。
・ 電柱に地上器がない場合には、電線のみを側溝を活用して地中化することで、低コストかつ短期間に無電柱化が可能。歩道整備の一環として実施。
・トランスのない電柱の撤去。特に狭い道路での交差点は有効ではないか。

■□ 無余地性運用の厳格化 □■
◆◇道路占用における無余地性について◇◆
・ 道路法第33条で、一般の道路占用(一般占用)許可における無余地性を規定している。
・ 道路法第36条で、電柱・電線の道路占用(義務占用)許可においても政令で定める基準に基づき、無余地性を規定している。→義務占用であっても無余地性は条件を与えれる。(新設、更新を問わない)

道路法
(道路の占用の許可)
第三十二条 道路に次の各号のいずれかに掲げる工作物、物件又は施設を設け、継続して道路を使用しようとする場合においては、道路管理者の許可を受けなければならない。

一 電柱、電線、変圧塔、郵便差出箱、公衆電話所、広告塔その他これらに類する工作物
二 略
(道路の占用の許可基準)
第三十三条 道路管理者は、道路の占用が前条第一項各号のいずれかに該当するものであって道路の敷地外に余地がないためにやむを得ないものであり、かつ、同条第二項第二号から第七号までに掲げる事項について政令で定める基準に適合する場合に限り、同条第一項又は第三項の許可を
与えることができる。
(水道、電気、ガス事業等のための道路の占用の特例)
第三十六条 電柱、電線を道路に設けようとする者は、第三十二条第一項又は第三項の規定による許可を受けようとする場合においては、これらの工事を実施しようとする日の一月前までに、あらかじめ当該工事の計画書を道路管理者に提出しておかなければならない。

2 道路管理者は、前項の計画書に基づく工事(略)のための道路の占用の許可の申請があった場合において、当該申請に係る道路の占用が第三十三条第一項の規定に基づく政令で定める基準に適合するときは、第三十二条第一項又は第三項の規定による許可を与えなければならない。

◆◇一定規模の沿道開発における無電柱化(提案)◇◆
・大規模民地開発の場合、地権者との交渉により民地の前面に立地する電柱・電線を、地上配線を条件に民地へ移設することも検討してほしい。

今回は、国交省の講演の一部を紹介させていただきました。
講演は、国交省・中屋様、森山顧問とも、分かりやすく解説していただきました。その内容を YouTube に限定公開しています。是非ご視聴下さい!
1 国土交通省 発表  https://youtu.be/ObedvydzjJU
2 国土交通省 質疑応答 https://youtu.be/rTaYZ5cjHwA
3 森山顧問 発表  https://youtu.be/aU9V5HKeh4A
4 森山顧問 質疑応答  https://youtu.be/hylx6ssFUw8