今回は、4月18日の東京活動委員会で、東京都 建設局 無電柱化推進担当課長の中田様に「東京都における無電柱化の取組について」と題して講演いただきました。その内容をご紹介させていただきます。
皆さんも周知の通り東京都は潤沢な予算を背景にしっかりとした無電柱化の戦略を進めていますが、課題も色々お聞かせいただきました。

東京都の基本的な無電柱化の目的は
無電柱化の目的は、国の目的と同じく
・都市防災昨日の強化
・安全で快適な歩行空間の確保
・良好な都市景観の創出 である。

東京都の無電柱化の課題は
➀時間がかかる
②コストがかかる
➂区市町村の無電柱化
④民間事業者の無電柱化
⑤都民の関心
で特に、➂④の都道以外の市区町村道の無電柱化をいかに進めるかが課題である。
課題➀の「時間がかかる」で、東京都特有のものとして、水道管・ガス管などの既設埋設管が輻輳。調整に時間がかかる。交通量が多くて、原則夜間施工。渋滞対策や工事離隔の調整が必要。

区市町村道は歩道がない、または狭いことが特徴だ。
電線共同溝の整備は地上機器を置くスペースが限られ、加えて2.5メートルの歩道幅員が必要であり、難しい課題となっている。

区市町村の多くは無電柱化の財政負担が大きいことや無電柱化の技術的なノウハウを持っていないことから、無電柱化が進まない。東京都の支援が必要である。
都道は交通量が多いため、交通規制が難しい。そのため、ほとんどの工事が夜間に行われる。

東京都の無電柱化の取組のあゆみ
1986年度:東京都無電柱化推進計画(第1期)

2017.9:東京都無電柱化推進条例(施行)都道府県で初
電柱新設の禁止(施行)
 ➡都が管理する道路全線において電柱の新設を禁止
技術開発の推進
 ➡事業者間の競争や技術開発を促し、整備コストを縮減
広報活動の充実
 ➡「無電柱化の日(11/10)に合わせた啓発イベント
2018.3:東京都無電柱化計画(策定)
 都内全域で無電柱化を進めるための基本方針や、今後10年間の整備目標等を定めた計画
2019.3:東京都無電柱化推進計画(第8期)
2021.2:無電柱化加速化戦略(策定)
2021.6:東京都無電柱化計画(改定)
2022.1:東京都島しょ地域無電柱化整備計画(策定)
2022.9
:利島・御蔵島無電柱化整備計画~電柱のない島に向けて~(策定)
https://www.kensetsu.metro.tokyo.lg.jp/jigyo/road/kanri/gaiyo/chichuka/mudentyuuka-top.html
(参考)国
2016.12 無電柱化の推進に関する法律(公布・施行)
2018.1 無電柱化推進計画(策定)
2021.5    新たな「無電柱化推進計画」(策定)


平成29(2017)年の無電柱化推進条例(都道県初)から、無電柱化推進計画の策定を経て、現在は、無電柱化の加速化戦略を策定し、進めている。
この背景には、度重なる自然災害、例えば近い将来に発生する可能性のある南海トラフ沖地震や首都直下型地震への備え、大雨や台風などに備えた防災の必要性に起因している。
都道における整備延長の推移グラフは、歩道幅員2.5メートル以上で完成している都道を前提としている。地中化比率は区部では66%、多摩地域では23%、都道全体では46%。

これまで順調に進めてきている東京都だが、更に無電柱化を加速化するには、資料にあるように
A電柱を減らす
Bこれ以上電柱を増やさない
C無電柱化の費用を減らす
無電柱化3原則が重要となってくる。
それには無電柱化加速化戦略~7つの戦略~が大事!

東京都では、都道の整備延長を倍増し、取り組んでいる。もともと令和2(2020)年度まで年間25㎞の工事だったが、設計の工事を着実に進め、現在は年間50㎞を目標に拡大した。令和7(2025)年度には年間50㎞の工事に入れるよう、整備を加速化している。

東京都では、政策連携団体という団体があり、東京都道路整備保全公社と無電柱化の施工について協定を締結している。道路管理者の業務の一部を委託し、無電柱化事業を加速化している。
電線共同溝の整備にあたって地下埋設物の移設工事の負担が非常に大きいことが課題。その取り組みの一つとして、電気事業者や通信事業者が所有する管路やマンホールといった既存ストックを電線共同溝の一部として活用し(既存ストック活用) 、他の埋設物の移設を回避する。東電PGやNTTインフラネットに本体工事と引連管工事の一括発注を行い、工期短縮・コスト縮減に積極的に取り組んでいる。
既存ストックの活用は、国の部会である低コストワーキンググループでも取り上げられている。

東京都の無電柱化の取組のあゆみ東京都全体を無電柱化するためには、都道だけでなく都の約9割を占める市区町村道の無電柱化を進めなければならない。国と都からの援助で無電柱化支援をしている。
青色で示したものが東京都の補助金であり、オレンジ色が国の補助金。チャレンジ支援を積極的に区市町村に活用してもらい、無電柱化推進を後押しする。
防災、緊急輸送道路、木造住宅密集地域内、公道などの無電柱化整備に使う。
「無電柱化チャレンジ支援事業」
「市町村土木補助事業」
「防災に寄与する路線」に対する支援
「防災生活道路機能維持事業」
などの支援事業がある。

東京都の電柱禁止の拡大(電柱を増やさない)
無電柱化の占用許可の禁止施策によって
都道では、年間約800本の電柱撤去
市区町村道では年間約100本の電柱撤去が進んでいる。

東京都電線共同溝整備マニュアルの改定(R5.4)(無電柱化の費用を減らす)
👉ホームページで「東京都電線共同溝整備マニュアル」を検索。
・特殊部の縮小化
・曲管レス継手の導入
・鉄蓋開口部の縮小
などで技術開発・コスト縮減をはかっているが、更なる民間技術の導入が今後も必須!

東京都無電柱化推進計画の改定(無電柱化の費用を減らす)

東京都島しょ地域無電柱化整備計画
令和元年9月の台風15号の被害にあった東京都新島若狹地区の様子。この台風によって家屋の一部損壊や送電線の断線被害が多数発生した。
島しょ地域では内地に比べて電力需要が低いため、地域の特性を踏まえた整備方法でコスト削減を狙う。例えば収容する電線が少ない箇所では管路数を少なくする、簡易な構造での送配電を検討する。
また、特殊部の設置間隔も通常よりも広くできるのではないか。大島では特殊部の設置間隔を250メートルに拡大して整備をしたり、沿道需要が少ないため短管路を採用したりしている。

実態として島しょ地域の電線共同溝工事はこれから。実際、採用事例がないため、電線事業者と協議をして今後進めていきたい。
防災のため、特に区市村町道路は支援強化したい。区市のほうに働きかけが必要。

東京都 無電柱化事業のPR
11月10日は無電柱化の日。
この日に合わせて様々な無電柱化啓発イベントを実施している(俳句や無電柱化フォトコンテストを開催)。
右の写真は、昨年7月にビッグサイトで行われた無電柱化推進展の様子である。
このような展示会は、企業や行政担当者様向けのPRの絶好の機会でもある。

https://www.kensetsu.metro.tokyo.lg.jp/jigyo/road/kanri/gaiyo/chichuka/mudentyuuka-top.html

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https://www.youtube.com/watch?v=LL2Sofh-wBg