◆興味深いお話が聞けた、岡山県矢掛町視察会(11/24)
11月24日(日)に岡山県矢掛町で、70周年式典のイベントが行われ、井上事務局長が登壇者の一人として講演を致しました。
イベントの前に、矢掛町建設課の渡邊課長に矢掛町の無電柱化についてお話をうかがい、意見交換をさせていただきました。
大変興味深い内容でしたので、その一部をご紹介させていただきます。
◆はじめに◆
矢掛町は、岡山県の南西部に位置し、旧山陽道18番目の参勤交代の宿場町として栄え、江戸時代の本陣と脇本陣が国の重要文化財に指定され全国で唯一揃って残る歴史と文化の溢れる町である。
人口は13,200人で、過疎地域にも指定され、人口減少・流出への対策が喫緊の課題となっている。そこで町の施策として定住人口ではなく、豊富な観光資源を活用した交流人口の増加へ着目した。
このような状況の中、道の駅「山陽道やかげ宿」は、矢掛の中心市街地で、重要伝統的建造物群保存地区に隣接する場所に、令和3年3月に開業した。道の駅の南側は幹線道路である国道486号に面し、北側には古い建造物が建ち並ぶ旧西国街道が通り、現代の国道とかつての街道を結ぶ場所に位置している。
道の駅というと、地元の野菜や名産品が販売されていたり、地元食材を活かした飲食コーナーがあることが一般的であるが、これらをあえて設置せず、隣接する矢掛商店街が物販や飲食を担うという新しいスタイルに挑戦している。
このような型式をまち全体が道の駅と捉え、「矢掛まるごと道の駅」のコンセプトに基づき、町民と行政が一体となって観光振興に取り組んでいる。(2024.9「道路」)
◆渡邉課長のお話から◆
無電柱化支援事業
概 要・・・地方公共団体が行う道路事業と一体的に
電線管理者が(道路上の電柱又は電線の撤去と併せて)行う単独地中化事業 に対し、国が必要な支援を行う。
〇事業区間:矢掛町小林~矢掛
〇延長:0.97km(重点区間:0.51km)
〇電線管理者:中国電力・NTT(単独地中化)、エネルギア・コミュニケーションズ、矢掛放送、JA倉敷かさや(裏配線・軒下配線)
※矢掛西商工会は廃止するかわりに、町が街路灯に音響設備を新設し、商工会が利用する。
〇事業実施年度:H30~R2年度
事業計画
H30年度 調査、協議会設立、裏配線工事
R1年度 地中化詳細設計・工事
R2年度 地中化工事、舗装復旧工事、街路灯工事
◆質疑応答・意見交換から(一部紹介)
うまくいった理由
・タイミングや運もよかった。
・官民連携事業で中国地区の候補に選ばれて、その補助金をもとに事業をすることができた。
・前町長の考え方も大きい。
➾お金のやりくりをしっかり整えてくれたら、事業を進めていい。しっかり予算組立をすること。←このマインドが職員に浸透している。
・様々な補助事業を検討して、それでやりくりを考える。
➾県は財政的に厳しいが、国は、政策として様々な補助金事業を提案している。それを色々調べて、予算に組み込む。申請をすると、国は案外協力してくれる。
➾自治体の多くは、補助金を使用するのをためらうが、矢掛町では、それを積極的に活用する。町にとって無駄なものはつくらず町や町民にとって効果的な事業を立案する。
官民連携無電柱化支援事業
電線管理者に対する対応と検証・事前説明段階での問題点
項 目 | 課題点 | 検証および対応 |
事業について | 事業そのものに疑問がある 矢掛町が何か道路事業をすべき 工費が足らない 電柱が全て民地にある |
・国土交通省と協力し、丁寧な事業説明を重ねる ・舗装復旧工事は矢掛町で実施 ・計画延長970mを480mに減 |
電線管理者間調整 | 他社との検討はできない 電線管理者ごとの工事となる 管理者からのデータ提供についてなかなか応じてもらえない |
・工法・工事方法については、各電線管理者独自で了承 ・電線管理者の調整は矢掛町が実施する ・提出可能な範囲で可とする(国土交通省) |
地元調整 | 地元調整は矢掛町が実施すべき 商店街の同意が得られない 以前のアンケート調査で賛成が少ない もともと協力が困難な地域 水害等災害に関する懸念 |
・地元調整はすべて矢掛町において対応する ・地元商工会及び議会も全面的に支持しているので地元への説明は町が行う ・結果、電線管理者の協力も得られ、プラス30mの延長が実現! 480m➾510m |
電線管理者との協議について
・電線管理者が7事業者あって、大変だった。
➾その時点で、できないと思ったらだめ。
➾中国電力とNTTは単独地中化。しかも別々の管路工事で、東西両端の起点から工事を始める。
➾引込管のときは、両社が協力←住民に迷惑をかけない点では、両者一致。
➾地元ケーブルテレビは、裏(迂回)配線・軒下(屋側)配線で行う。地中化の詳細設計が確定する前に進めていってもらえた。
住民との協議について
・地元調整は自治体がするのが一番!
・逆にいうと、住民への説明はこちらでしっかりするから施工はそちらでしっかりして下さい。というかたちにすると、お互いの責任がはっきりし、話がスムーズに進む。
・そこが曖昧だと、責任のなすり合いになって進まない。
・あとは、予算をしっかり管理すること。そこから知恵が出てくる。低コストにつながる。
・中国電力さん、NTTさんの一番の懸念は、費用がかかること以外に、住民から苦情がくること。そこを自治体が責任をもって説明すると、一緒に動いてくれる。
・この機会を逃すと、この先無電柱化する機会はなくなると住民を説得。3回の住民説明会を経て、住民の合意を得ることができた。➾地元の代表を味方につける。
➾関心がある人3割、ない人7割。その3割を説得させること
・住民との合意がしっかりとれていたおかげで、昼間工事のみで進めることができた。
・工事の際の住民からの苦情は、些細なもので3件のみ→警備員の態度が悪かったとか、コーンの位置をずらしてほしい程度のもの。
下水の整備がポイント!
矢掛町の無電柱化マップ(「道路行政2020.5」より) |
・無電柱化したいという計画を事前に考えていたので、下水道の老朽化工事の際、道路の中央に下水管を予め配置しておいた。
➾渡邉課長が以前、下水を担当していて、下水・配水に精通していた。
・官民連携事業がスタートしたH30年のときに大雨の被害があり、矢掛宿が水没しなかったこと、矢掛宿一帯は水没を逃れた。
➾矢掛町一帯は、以前より小田川の氾濫に悩まされていた。配水設備を新しいものにすると同時に防災に強い無電柱化もするという説得力が加わった。
・その他に以前携わった水道管や配管の流水量の限界点の計算をもとに住民に丁寧な説明を行った。
➾いきなり数式を出したら、住民の皆さんは聞いてくれない。具体的な例を出しながら、分かりやすく説明をすることを心掛けられた。
その他、ご提供いただいた実績など
・以前は、道路標識も合わせて60本あったのが、街路灯20本だけになった。警察も極力立てないように協力してくれた。
・年間の訪問客30万人→50万人
・新旧の店舗数30店舗→60店舗
・矢掛町は平成の大合併でも合併せず、町の体制がまとまっていた。また課をまたぐ縦割りがなく、課内で調整が進められる。加えて専門集団になれる。
・町民の気質も影響している。矢掛はもともと宿場町なので、他のひとを受け入れるのに寛容なところがあり、町外からの出店希望者に対しても抵抗なく迎えるケースが多い。
・残っている970m-510m=460mは?
現在は、「矢掛町小田川(嵐山)かわまちづくり計画」を始動し、道の駅の南側を流れる小田川の対岸にオートキャンプ場や水上アクティビティ等のアウトドアを楽しめる施設整備を実施している。残りの460mは、その事業が終わったときに考えたい。
・重伝建地区など、他の地区で無電柱化を進める際のポイントは?
➾とにかく短い距離でもインパクトのあるところを、無電柱化する。
➾地元の代表者を味方につける。
矢掛町の風景は、写真でよく見ていましたが、実際行ってみると、すごくきれいな町並みでした。皆さんも是非一度訪れて下さい!