インターン生の上水口です。
9月4日(水)10:00~11:00
芦屋市役所に行き、基盤整備課 主査 平野 様に取材させていただきました。
◆取材の目的
日本では、無電柱化率100%、つまり電柱が一切ないパリやロンドンに比べて無電柱化が遅々として進んでいない。
そんな日本国内の中でも、無電柱化率15.5%(2004年6年4月時点)を達成している地域がある。
それが兵庫県芦屋市だ。
同市六麓荘町では、昭和3年という早い時期に株式会社六麓荘が「東洋一の別荘地」というコンセプトで開発を開始した。
現在でも南芦屋浜地区や、さくら参道の抜柱を完了させるなど、無電柱化を進めている。
無電柱化が進んでいると言われている東京都でさえ約8%の無電柱化率の中、芦屋市では無電柱化に関する取組をどのように進めてきたか、また、今後の政策も知りたいと考え、取材を申し入れ、承諾をいただき、意見を伺った。
記事にすることで住民または他市の無電柱化を推進する意識を高めることが出来ると考えた。
◆質疑応答
Q1.過去に住民の方に無電柱化アンケートをとったことがありますか。
資料のご提供は可能でしょうか。
A1.芦屋市無電柱化推進条例、芦屋市無電柱化推進計画の策定時にパブリックコメントを実施し、市民から意見をもらっている。https://www.city.ashiya.lg.jp/douro/documents/pabukome_kaitou_keikaku.pdf
Q2.現在でも、芦屋市として六麓荘町の無電柱化に関わりはありますか。(ex.維持管理など)
A2.単独地中化として整備した地域のため、維持管理などは電線管理者が行っている。
Q3.現在行っている施策があれば教えてください。
A3.六麓荘町南側の地域の無電柱化工事を公共工事で実施中。
Q4.現在の目標とその進捗状況、達成率を教えてください。
A4.数値での目標はなく、着実に無電柱化を進めること。
Q5.政策の面で芦屋市独自で考えられていることはありますか。
A5.無電柱化推進条例では、法を基本に独自部分を設けている。
・芦屋川特別景観地区内における電柱の占用禁止を要請
・無電柱化地区の指定
・開発行為に伴う無電柱化
・財政上の措置
Q6.無電柱化率を計算する際、(国道)二号や山手幹線も含まれていますか。
A6.芦屋市道、山手幹線含む。(国道)二号は含んでいない。
Q7.東京では、民間住宅の無電柱化の際、設計費・工事費の補助金が出る。「宅地開発無電柱化推進事業」が設けられていますが、今後補助金制度を作るご予定はありますか。
A7.芦屋市では新しく面的に開発されることが少ないため、今は考えていない。
Q8.他の自治体の無電柱化率は意識されていますか。
他市の無電柱化率は把握していない。
Q9.無電柱化にかける年間の予算はどのくらいですか。
A9.実施している事業の進捗によるが、数百万~数億程度。
Q10.無電柱化をする際(計画・施工・抜柱)に支障となる点は何ですか。
A10.地域住民の合意(地上機器の設置場所、無電柱化端部で必要となる支持柱・支線、引込設備)、マンパワー、信号線の地中化、事業費。
Q11.無電柱化をする際、工夫されている点はありますか。
A11.地域住民の合意(地上機器の設置場所、無電柱化端部で必要となる支持柱・支線、引込設備)を得るために住民説明を行う際に、各電線管理者の設備であっても、各社がばらばらで説明に行くと住民の負担となるため、市が率先して説明に伺っている。
Q12.予算面での工夫として、「芦屋市無電柱化推進基金」が設けられていますが、成果はどのような感じですか。
A12.平成30年~令和5年で6千万程度。
Q13.南芦屋浜地区で、2018年の台風21号被害で地上機器が水没し、停電が発生したことについての御市のHPなどで拝見しましたが、その後芦屋市役所の方で対策等とられましたか。
A13.兵庫県が護岸を設置するなど、再発防止の対策を行っている。
◆まとめ
今回、芦屋市市役所様を取材して、芦屋市での無電柱化に関する取組や、工夫されていることをうかがうことが出来た。
無電柱化率の高い芦屋市では、条例に独自部分が設けられていた。また、無電柱化する際に支障となる点では、地域住民の合意や事業費などが挙げられた。これは日本全国に共通することである。無電柱化率の高い芦屋市でも支障となる点は同じということが言える。
芦屋市では地域住民の合意を得るための工夫がされていた。また、芦屋市無電柱化推進基金を設けることで事業費の負担を減らしている。これらが芦屋市の無電柱化率が高い理由の一つなのかもしれないと考えた。
最後にお忙しい中、取材にご協力いただいた芦屋市役所 平野様に感謝申し上げます。
◆参考資料
パンフレット(芦屋市の無電柱化)2019年11月作成
https://www.city.ashiya.lg.jp/douro/documents/pamphlet.pdf
芦屋市の無電柱化に関する取組
以下、芦屋市様から頂いた資料を紹介します。(令和6年8月)
1 芦屋市の現状
1 これまでの無電柱化
(1) 六麓荘地区
昭和3年、(株)六麓荘が「東洋一の別荘地」というコンセプトで開発を開始。開発当初から地中による電気・通信の供給。
平成7年より都市基盤整備事業の実施に合わせ、地中設備の再整備を実施。震災により事業を休止した期間を経て、平成20年12月に完了。
■地区内道路延長電力事業者による事業単独地中化方式 4.58km
(2) 南芦屋浜地区
開発面積 125.6ha
平成8年、地区内の土地利用基本計画を策定。都市景観上の配慮に加え、災害に強いまちづくりという視点から無電柱化の方針が示された。平成9年、南芦屋浜の開発事業者である兵庫県企業庁と芦屋市、電気事業者、ケーブルテレビ事業者の4者で、電線類を共同で地中化することについて、協定を締結。以降、地区内の開発はすべて無電柱化で進められている。
■地区内幹線道路 市道路事業 電線共同溝方式 6.05km
■地区内生活道路 開発者事業 要請者負担式 11.27km
(3) 山手幹線
路線延長2.45km 幅員 22m(歩道4.5+車道 13.0+歩道4.5)
平成5年の事業着手時より、全線において無電柱化による整備を計画。事業完了は平成22年10月。緊急輸送道路。
■市街路事業 電線共同溝方式 2.45km
(4) その他
再開発事業(JR 芦屋駅北地区)、区画整理事業(中央地区、西部第一地区、西部第二地区)、街路事業(川西線)において、無電柱化を実施。
■市街地再開発事業 電線共同溝方式 0.68km 市施行・組合施行
■区画整理(中央) 電線共同溝方式 0.61km UR施行(委託)
■区画整理(西部一) 電線共同溝方式 1.06km UR施行(委託)
■区画整理(西部二) 電線共同溝方式 0.60km 市施行
その他、民間による開発事業においても、部分的に無電柱化を実施している地区がある。
2 数値で見る無電柱化
無電柱化率(令和6年4月現在)
市道延長 221.48km
無電柱化路線 34.46km 無電柱化率: 15.5%
2 芦屋市の目指すもの
1 無電柱化の推進に関する法律
無電柱化の推進に関する法律が平成 28年12月に施行
2 無電柱化担当課長
市内の無電柱化を推進する担当課長を平成29年4月に新設
3 無電柱化推進条例の制定(別添資料)
無電柱化の推進に関する法律(平成28年12月)の施行を受け、市条例を制定。
法を基本に、独自部分を設ける。
・芦屋川特別景観地区内における電柱の占用禁止を要請
・無電柱化地区の指定
・開発行為に伴う無電柱化
・財政上の措置
平成30年9月25日公布。11月10日(無電柱化の日)施行。(全国4例目)
4 無電柱化推進計画の策定
市の方向性を明確に示し、市民・事業者とのコンセンサスを得るため、芦屋市無電柱化推進計画策定委員会を設置し、計画内容について審議。
計画では、目的・整備実績・整備方針・整備計画・推進にむけた方策を明記。
委員会は、学識経験者2名、市民委員2名、道路管理者3名、交通管理者 1名、関係事業者7名、市職員3名で構成。オブザーバーとして国・県から各1名も参加。
第1回は平成 29年11月10日(無電柱化の日)に開催。平成30年10月計画公表。
実施計画を和4年3月に公表し、具体的な取り組み内容と年計画を示す。その後、実施を和4年 12月に改定し、住民要望による無電柱化検討地区(六麓荘地区)を追加。
■無電柱化を進める目的と方針
防災・安全・景観の目的から、無電柱化を推進する。
対象路線を選定するにあたり、下記の方針を定める。
(方針1)安全・安心な道路空間の構築
(方針2)美しい景観の形成
(方針3)にぎわいの創出
最終的には、「電柱・電線のないまち」を目指す。
→ 『国際文化住宅都市』としてのブランド力の向上につながる
3 関係事業者との合意形成
1 無電柱化推進協議会の開催(平成30年9月~)
条例制定・計画策定に関係した地下埋設物管理者、電線管理者、市道路管理者で組織。毎月 1回は定例で協議会を開催し、事業区間の工程や埋設位置の調整など、情報共有を行う。
特に、地中設備完成後のケーブル切替えから抜柱までも、この協議会にて工事調整を行う。
事業中の路線に関する連絡調整だけでなく、実施計画の進捗管理や、次期事業化路線の立ち上げ準備も行う。
2 電気通信事業者との調整会議の開催(平成29年5月~平成30年8月で24回開催)
無電柱化条例の制定、無電柱化推進計画の策定に向けた調整会議を平成29年5月より月1~2回開催。これまでに、市の目的、方針を説明するとともに、電気通信事業者の意見を聞きながら、無電柱化整備路線の優先順位の設定方法や、無電柱化に関する規制内容について協議を重ねてきた。
4 無電柱化の広報・啓発活動
1 これまでに実施した活動
平成28年11月10日 芦屋市無電柱化シンポジウムの開催
平成29年4月 無電柱化パネル展の開催(近畿地方軽備局主催)
平成29年11月10日 第1回芦屋市無電柱化推進計画策定委員会の開催
さくら FMによる対談番組の公開収録と放送
無電柱化パネル展(別添資料)
平成30年11月10日 「無電柱化PR大作戦!」を開催(別添資料)
公募したキャッチコピーの発表
小池東京都知事からのビデオメッセージの紹介
県立芦屋高校書道部によるパフォーマンス など
令和元年11月10日 無電柱化に関する写真コンテストを開催
令和2年11月10日 無電柱化AR体験、パネル展を開催(別添資料)
令和3年11月10日 無電柱化パネル展を開催(別添資料)
令和4年11月10日 無電柱化パネル展を開催(別添資料)
令和5年 11月10日 無電柱化パネル展を開催(別添資料)
5 無電柱化推進基金の活用
1 基金へは寄附金のみ
ふるさと納税の使途選択として、無電柱化を設定し寄附金を募っている。
寄附をいただいた金額は以下のとおり。
平成 30年度 3,665,000円
令和元年度 10,075,000円
令和2年度 10,075,000円
令和3年度 6,160,000円
令和4年度 9,084,000円
令和5年度 3,564,000円
計 58,808,000円
2 基金の活用
無電柱化の啓発、地域の合意形成のためのアドバイザー派遣、マンション管理組合が所有する電波障害線の移 設費、地上機器設置のための用地費、などに活用している。
6 無電柱化を進めるうえでの課題
1 整備コスト
電線共同溝方式による整備では、一般的に3億/kmのコストがかかるとされている。
国土交通省で低コスト手法(浅層埋設、小型ボックス、直接埋設など)について、検討が重ねられており、一部では基準も整備されている。対象路線の状況に応じて、より低コストな手法を採用していく必要がある。
芦屋市では、電線共同溝方式による無電柱化を基本とし、低コスト手法との比較検討を行っている。現在のところ、浅層埋設方式を採用することで、事業費の縮減に取り組んでいる。
現在は、国の補助金を活用して事業を進めており、道路管理者が負担する金額の約半分は、国の無電柱化推進計画事業を活用している。
2 事業期間
電線共同溝方式による整備では、一般的に計画から工事、電柱の抜柱まで7年を要するとされている。計画から工事完了まで、関係する事業者が多く、現場での作業期間が長くなるため、沿道への負担も大きい。
芦屋市では、市が担当する工事(電線共同溝本体工事)が終わった後も、複数の電線管理者が電線の切替えや、抜柱を行うため、事業の最後までスケジュールの調整を行っている。また、設計段階から、特殊部の配置決定のための試掘調査や、沿道各住戸と引込設備の調整を電線管理者と一緒に行うなど、工事着手後の再設計を最小限にする工夫を行うことで、早期に事業が完了するよう努めている。
3 地上機器
電力事業者が必要とする機器。一定間隔で必要な機器であり、地下に埋設できないため、地上に設置せざるを得ない。
歩道がある際には、歩道上に設置するが、歩道がない道路においては、民有地に設置するか、近隣の公共用地に設置することになる。たとえ歩道があっても、設置するとなると、沿道の同意が得にくいため、設置場所を確保することに時間を要する。
他にも、ケーブルテレビ事業者が地上機器を必要とする場合がある。
4 民有地内の工事
基本的には電線管理者が対応する内容であるが、沿道への説明・合意形成に時間を要することから、市も積極的に関わって調整を行っている。
5 関係事業者との合意形成
無電柱化に多大なコストをかけるのは、行政だけでなく、電線管理者も同様である。しかし、電線管理者は、上空からの供給でも、地下からの供給でもお客様から徴収する料金は同額であり、営利企業として大きなコストをかけることに積極的ではない。同じ姿勢で事業に取り組む形を見せないと、市民に迷惑をかけることになるため、まずは共通理解を構築し、同じ考え、同じ姿勢で取り組む必要がある。
6 電柱の占用制限
芦屋市では、道路法第 37条第1項による電柱の占用制限を令和5年3月から実施。
緊急輸送道路の他、狭隘な道路環境における電柱についても対象として占用制限を実施。
7 電線共同溝整備工事
1 さくら参道(H29~R元年度) 【R6.3 抜柱完了】
整備延長 585m 幅員9.0m(歩道2.0+車道5.0+歩道2.0)
事業費約5.1億円 (うち電線共同溝 約3.4億円)
さくらの並木道であったが、さくらの下に埋設されているガス管の更新が必要となったため、木調査を行った。調査の結果、9割の街路が枯死もしくは枯死寸前であったため、植え替えを検討。歩道形態等にも課題があったため、ガス管の更新や道路改良に合わせて、無電柱化を実施。
2 芦屋川地区(R2~R4年度) 【電線の切替え中】
整備延長 1,376m 幅員 11.0m~15.0m
事業費.約4.5億円(うち電線共同溝約4.3億円)
芦屋川特別景観地区に指定されているため、景観配慮を目的として無電柱化を計画。
令和2年度より工事着手。低コスト手法(浅層埋設)を採用。
3 :精道中学校南側(市道314号線) 【抜柱完了】
整備延長 130m 幅員 8.0m(歩道 2.8+車道 5.2)
事業費 0.23億円(道路改良)+0.1億円(電線管理者へ補助金交付)
精道中学校建替事業に伴い、学校南側の道路のバリアフリー化を実施。
併せて、官民連携無電柱化支援事業にて、電線管理者が無電柱化を実施。
平成30年度に調整・設計を実施し、和年度に工事着手・完了。
現地工事は半年間のみ。
4:精道中学校北側(市道319号線) 【完了】
整備延長 160m 幅員 5.1m
精道中学校建替事業に伴い、学校南側の道路のバリアフリー化を実施。
令和3年にNTTに道路法第七十一条に基づく電柱移設を依頼。
電力線と通信線の共架をすることで、道路片側の電柱を抜柱。
5:六麓荘地区 【工事中】
自治会から無電柱化の要望があり、勉強会等を開催。
地域で地上機器の設置場所などを協議し、課題解決が図られたため事業化。
1.4kmを対象に和5年度に詳細設計、和6年度から工事着手。