皆さん、こんにちは。
今回は、7月開催のイベントになりますが、一般社団法人日本能率協会(JMA)さま主催のメンテナンス・レジリエンスTOKYO・第13回無電柱化推進展について、特にNPOブースで企画したミニセミナーについて報告したいと思います。
今回のミニセミナーは、無電柱化に関わる様々な識者に声をかけさせていただき、ご講演いただきました。
法人会員企業さまにご協賛いただいた製品・工法紹介も含めて、計14講演も実施させていただきました。
スペースの都合上、概略となりますが、以下の文にて失礼します。
本セミナーは、無電柱化を推進する市区町村長の会の令和7年度第1回勉強会も兼ねて実施しています。
無電柱化推進展ミニセミナー 各講演の概要報告
7/23(水)の講演
「面整備における無電柱化の推進」
― 国土交通省 都市局 江川亜由美 企画調整官
- 無電柱化推進計画は来年度以降の新計画へ向けて準備中であり、各所で制度の継続・見直しが進行中。
- 開発許可や事前相談の早期段階で、施工者・開発事業者が電線管理者へ無電柱化の検討を通知・相談するよう指導・働きかけを徹底。
- 電線管理者が開設費用の約 1/3 を負担する制度(2022 年 1 月以降)
- 「無電柱化街づくり促進事業」による国の間接補助(国費負担 1/2)などで、民間事業者の負担を 1/3〜1/5 程度まで軽減。
- 自治体によって補助制度の有無・整備状況に差があり、補助制度未整備の地域では早めに自治体への制度導入や相談を行うことが推奨されている。
【資料】 市街地開発事業における無電柱化推進のためのガイドライン【Ver. 1.3】(令和7年7月)
👉https://www.mlit.go.jp/toshi/city/sigaiti/content/001899416.pdf
【資料】 開発事業における無電柱化推進のためのガイドライン【Ver.1.2】
👉https://www.mlit.go.jp/toshi/city_plan/content/001611894.pdf
🎞【動画紹介】 国土交通省都市局さまの講演(限定公開) https://youtu.be/toKFq-daH2A
「無電柱化の海外事例~ヨーロッパを中心に~」
― NPO無電柱ネット 東京支部 前川充 理事
- 欧米でも 100 年前は架空(かくう)線が標準だった。
- 景観と防災の観点で海外は地中化に切り替えた。
- 水道、排水、ガス、は地中なのに、なぜ電線・通信線は架空のままか。
- 架空線と電柱は、空を汚す「公害」である。
- 電力会社・通信会社は「公害」を垂れ流して利益を得ている。
- 日本の地中化は海外の 3 倍割高。
- 地中化する義務は電線事業者にある(道路事業者ではない)。
- 電線事業者は海外の手法を真似て低価格化、短期事業化を進めるべし。
- 行政と住民が声をあげ、推進しよう。
- まずは行政、住民、電線事業者で勉強会を
- 国土は北海道の半分ほどで人口 600 万人。
🎞【動画紹介】 前川理事の講演(限定公開) https://youtu.be/OKz9tItsONo
※無電柱化推進展の際、音声不良により 8/7 の東京活動委員会でのダイジェスト版を案内いたします。
「デンマークの無電柱化の歴史と施工事例」
― (デンマークから中継) 寒地土木研究所地域景観チーム 岩田圭祐 主任研究員

オンライン講演でのモニター画面
- 国土は北海道の半分ほどで人口 600 万人。
- 低圧配電線の大半が地中化されている。
- 1970 年代に幹線道路で地中化が進行。
- 住宅街は 1999 年の大規模ハリケーンを契機に地中化が加速。
- 電力事業者主体で進め、自治体との連携で道路管理・照明更新と併せて施工。
- 費用は電気料金収入を中心に賄われ、市民の環境意識が高い。
- 法的根拠として電力事業法や自治体条例が存在。
- 水流や空気圧を用いて管路にケーブルを通す最新工法も採用。
- 安全管理は日本より緩いが効率性重視(結果的に安価)。
- EV 充電施設の整備も並行して進め、クリーンエネルギー社会を推進。
🎞【動画紹介】 岩田さまの講演(限定公開) https://youtu.be/J_SclH6DWZE
7/24(木)の講演
「北海道における無電柱化の日イベント」
― 北海道開発局 建設部道路維持課 矢野洋介 係長
- 北海道全体で市町村の約 3 割が無電柱化に取り組んでいるが、地中化率は約2%。
- 「無電柱化の日」に合わせて全道 31 か所でイベント展開。
- ビフォー・アフター写真、目的・仕組み・コスト等の解説。
- VR で電柱のない街並みを体験。
- AR で地下埋設物を 3D 可視化。
- ミニチュア模型で無電柱化の街を再現。
- マインクラフトを用いた電柱撤去・地上機器設置体験。
- 投票結果(ビフォー・アフター人気投票)
1 位:倶知安町羊蹄山を望む景観
2 位:札幌市西 5 丁目線(住宅街・大学近接)
3 位:小樽市中央通り(観光客の多いエリア)
- 投票結果(ビフォー・アフター人気投票)
- アンケート 917 件 85%以上が「無電柱化の必要性を理解できた」と回答。
🎞【動画紹介】 北海道開発局さまの講演(限定公開)https://youtu.be/gaD6oToFV10
「あり方検討委員会で問題になっていること」
― NPO 無電柱ネット 松原隆一郎 副理事長
- アジア諸国に比べて大幅に遅れており、先進国で唯一“電柱国家”のまま。
- 地中化コストが高く(1km あたり約 1.65 億円)、利益にならない。
- 国の補助が手厚すぎ、技術革新の必要性が低下。
- 占用許可・道路管理権限を自治体が十分に行使できていない。
- 強い規制とインセンティブの組み合わせが必要。
- レベニューキャップ制度(コスト削減分を事業者利益に)。
- 占用料を現状の 200 円から引き上げ(例:1 万円以上)、電柱設置を抑制。
- 電力会社の配当制限 → 無電柱化への投資を優先。
- 法律上は「10 年予告で既存電柱撤去命令」が可能であり、通達強化が鍵。
- 役割分担の見直し、事業者責任の明確化、自治体との協調が不可欠。
- 国が強い指導力を発揮し、事業者に実質的負担と利益誘導を両立させる政策転換が必要。
🎞【動画紹介】 松原副理事長の講演(限定公開)https://youtu.be/jGVlIGgOsAc
「官民連携事業における無電柱化」
― 千葉県芝山町役場 企画空港政策課 市街地整備係 平山健太郎 係長
- 芝山町は人口約 6,500 人で、成田国際空港に隣接。
- 都市計画マスタープランを策定し、住宅拠点の川津場地区で無電柱化を実施。
- 国の「無電柱化街づくり促進事業」補助金の活用。
- 民間事業者(山万(株)):設計・施工・開発許可・宅地販売、施工費の負担。
- 電線管理者(東京電力・NTT):地上機器の設置・管理。
- 官民連携により協議・調整がスムーズに進行。
- 令和 6 年度:造成・無電柱化工事開始。
- 令和 7 年度:工事完了、設備町移管予定。
- 電力会社との協議や費用分担も制度活用で円滑化。
- 本事例をモデルケースとし、今後も無電柱化を推進。

🎞【動画紹介】 千葉県芝山町さまの講演(限定公開)https://youtu.be/z0-sZK16QZM
「トレンチャーを活用した施工の手続き(第2版改訂)の概要」
― 寒地土木研究所 永長哲也 寒地機械技術チーム主任研究員
- 2024 年 3 月に「ケーブル埋設用掘削機械(トレンチャー)を活用した施工の手引き」を改訂。
- 改訂にトレンチャー詳細や施工ポイント、導入検討手順を追加。 【参考資料】 https://kikai.ceri.go.jp/download/
- 国内使用事例:赤松街道(函館)、北海道高速道路など。 【参考動画】https://www.youtube.com/watch?v=Zp8evShshSg
- 掘削幅:200~610mm、掘削深さ:700/1,000/1,200mm
- 施工速度:1 日 40m 程度(従来工法は 15m)
- ベルトコンベア付きにより掘削土砂を自動排 し、作業効率が大幅向上。
- 冬季施工は困難(積雪・凍結でタイヤが滑る)。
- 精度:掘削幅・深さの精度は高く、二段掘削も可能。
- コスト削減:掘削断面が さいため土量削減・コストダウン。
- 新技術登録を進め、普及促進と改良を継続。
🎞【動画紹介】 寒地土木研 寒地機械技術チームさまの講演(限定公開)https://youtu.be/3_q_wfokjaM
「宅地開発における無電柱化推進」
― 東京都 都市整備局 市街地整備部 阿部茂 指導調整担当
- 国の無電柱化街づくり促進事業に合わせ、補助率 4/5、上限 2000 万円に拡大。
- 電線管理者が地上機器費用を負担する制度を導入。
- 令和 5 年度:面積要件撤廃:3000 ㎡以上の開発も対象(上限 6000 万円)。
- 住宅を主用途とする開発(マンション・複合ビル含む)まで対象を拡大。
- 制度利用は令和2年度2件 → 令和6年度 18 件に増加。
- 認定表彰制度(令和5年度~):積極的な事業者を認定・公表(現在7社)。
- 事業件数がまだ少なく、電力・通信会社との調整も難航する場合がある。
- 経済的支援が進んだ一方、時間的コスト(協議の長期化)が課題。
- 私道での無電柱化は任意事業で 100%同意が必要なため進みにくい。
- 制度の普及により事業規模が拡大すれば、関係事業者の体制整備も進み、円滑化が期待される。
🎞【動画紹介】 東京都 都市整備局さまの講演(限定公開)https://youtu.be/GO12qeRDsHY
7/25の講演
「無電柱化の取組について」
― 国土交通省 道路局 環境安全・防災課 藤井久暢 課長補佐
- 第8期無電柱化推進計画は2024年度末で終了した。
- R3〜R7で完了延長559km。
- 令和6年度末の整備延長は約9,975 km。
- 次期・第9期計画(令和8年度以降)を現在策定中。
- 合意済み3,727 kmも含め、目標総延長は15,815 km。
- 特に緊急輸送道路(約2.2万km)や市街地を優先。
- 未撤去電柱は全国で約5,800本残っており、撤去促進が必要
- コンパクトなマンホールの採用、トレンチャーや地中探査技術の活用で コスト削減。
- 浅層埋設、側溝利用、低コスト管路材導入を進める。
🎞【動画紹介】 国土交通省 道路局さまの講演(限定公開)https://youtu.be/Mt7etuLfJnk
「無電柱化最前線~住宅開発での無電柱化事情~」
― NPO無電柱ネット 井上利一 事務局長
- 道路の無電柱化だけでは削減が進まないため、住宅開発段階での対応が必要。
- 令和4年:国(都市局)が「無電柱化街づくり促進事業」を 設。
- 3000 ㎡未満の開発:事業者負担は1/5(例:1000万円→200万円)。
- 3000 ㎡以上の開発:事業者・自治体・国で1/3ずつ負担(上限6000万円)。
- 採用例:東京都、 葉県芝山町、長野県御代田町など。
- 要請者負担方式(デベロッパー主体の共同工事でコスト削減・工期短縮)。
- 関係事業者(電力・通信会社)との調整が複雑で時間がかかる。
- 制度の活用により住宅無電柱化は進展しているが、予算制約や自治体間の対応差が課題。
- コスト削減のため規制緩和・仕様の柔軟化が必要。
- 浅層埋設の普及、管材選択の自由度拡大、関係機関の協力強化が期待される。
🎞【動画紹介】 NPO無電柱ネット 井上事務局長の講演(限定公開)https://youtu.be/AJY8oosEvbk
「無電柱化の防災・減災における役割と推進に向けた合意形成のポイント」
― 国土技術政策総合研究所 道路交通研究部 道路環境研究室 根津佳樹 主任研究官
- 2018〜2019 年の関東地方の台風で1,000〜2,000本の電柱が倒壊し、復旧に最長280時間。(約10日)を要した。地中化区間では被害・復旧時間とも大幅に軽減された。
- 無電柱化は水没に弱いとの懸念があるが、防水措置・地上機器の嵩上げ・設置位置の工夫によりリスクの低減を可能。
- 道路管理者を中心とした合意形成の手順や法制度、事例集をまとめたガイドラインを公表。地方自治体の経験不足を補う狙い。
- 防災性に加え、観光地や都市部での景観向上、歩行空間の確保、街並み形成の観点からも無電柱化の意義が強調された。
- 課題:
- 自治体による導入格差
- 水害対策のさらなる強化
- 財源確保(電気料金上乗せ方式などの検討)
- 地元住民・事業者との合意形成の重要性

- ヨーロッパは電線敷設の初期段階で無電柱化。
- 北米・オセアニアは、暴風雨被害を契機に無電柱化推進している都市が多い。
- アジアは経済成長にともない、無電柱化を推進している都市が多く見られる。
🎞【動画紹介】 国土技術政策総合研究所(国総研)の講演(限定公開)https://youtu.be/X15p2c3InFk
「法定第3期無電柱化推進計画の策定に向けて」
― 日本みち研究所専務理事 NPO無電柱ネット 森山誠二顧問
- 無電柱化推進の法律に基づく計画は平成28年以降で、次は法定第3期。
- レベニューキャップ制度を活用し、電力・通信双方の費用負担とインセンティブ(利益付与)を整理する必要がある。
- 「一緒に埋めなければ次回は自力で埋設」とする12条規定を強く運用すること。
- 道路管理者・電線管理者・自治体間で認識が乖離しており、共通理解と運用ルールの整理が急務。
- 第3期計画は「完了ベース」での目標設定へ転換し、優先区間を明確化。
- 無電柱化推進には、制度改正・費用負担の適正化・現場運用の徹底が不可欠。
- これらが整えば、10年以内の大幅な無電柱化の進展が期待できる。
🎞【動画紹介】 NPO無電柱ネット 森山顧問の講演(限定公開) https://youtu.be/HWTzVu5q3sI
【協賛企画・製品発表】エイテック株式会社
- 7/23(水) ジェッティング技術 https://youtu.be/n39wIitUvus
- 7/25(金) フローティング工法 https://youtu.be/tygBi_PvV6Q

