はじめに 

東京都(建設局)は、次期「東京都無電柱化計画」の方針を2026年2月18日に発表した。
首都直下地震(30年以内70%)や台風等の災害リスクが高まる中、「首都防衛」に向けて次期5か年(2026〜2030年度)で無電柱化を強化するという内容である。

2024(令和6)年1月の能登半島地震では、約 3,480 本の電柱が倒壊・損壊し道路閉塞を引き起こすとともに、約4万戸が停電するなど甚大な被害が発生しました。
一方、東京においては首都直下地震の発生確率が今後 30 年間で約 70%とされており、切迫性が高まっています。
また、2019(令和元)年9月の台風 15 号では、大島や新島などで電柱倒壊や断線の被害が発生し、2025(令和7)年 10 月の台風 22 号・23 号では、八丈島などで大きな被害が発生し停電が続くなど、激甚化・頻発化する台風が島民の生活に深刻な影響を与えました。
こうした災害リスクの高まりなどの社会的背景を踏まえ、「首都防衛」に向けて無電柱化を強力に推進するため、次期東京都無電柱化計画(以下「次期計画」という。)の改定に向けた方針を取りまとめました。

1.重点整備エリアを環状八号線まで拡大

従来は環七号線の内側が中心だったが、大規模災害発生後の救出救助活動を迅速に進めるため、重点整備エリアを環状七号線の内側から環状八号線まで拡大する。

重点整備エリア拡大のイメージ (東京都次期無電柱化ホームページより)

 2.防災拠点アクセスの強化

これまで東京都は、行政機関の本庁舎や重要港湾、空港などを連絡する第一次緊急輸送道路において、重点的に整備を進めてきた。次期計画では、第一次緊急輸送道路に加え、大規模災害発生後に人命救助や応急復旧の拠点となる「立川広域防災基地」や「災害拠点病院」、「大規模救出救助活動拠点」、「消防署・警察署」等へのアクセスルートとなる都道の整備を重点的に進めていく。 

高速道路ICと立川広域防災基地のアクセス(イメージ) (東京都ホームページより)

3.島しょ地域の強靭化

台風被害のあった八丈島の区間や、主要な港・空港と避難所等を結ぶ区間について整備の優先度を見直し、次期計画では約30kmの区間で新規事業に着手し、現在事業中の区間と併せて整備を進めていく。
主要な港・空港のうち12港5空港については2030年度の完了(令和元年台風15号等を踏まえた4港2空港は2028年度完了)を目標とし、定期船が発着するその他の6港については2035年度の完了を目指して整備を進める。
また、「島しょ地域無電柱化加速化検討会議」を通じ、島しょ地域特有の課題を踏まえた新材料や新たな手法の導入を推進する。 

さらに、利島・御蔵島における「電柱のない島」の実現に向けて事業を推進するとともに、掘削を伴わない簡易工法などの導入により、無電柱化の加速を図る。 

「電柱のない島」の整備目標 

対 象 整備計画
現計画 次期計画
利 島 2030(令和12)年度までにおおむね完了 2030(令和12)年度完了
※利島港は2028(令和10)年度完了
御蔵
2029(令和11)年度完了
(集落部は2028(令和10)年度完了)
※御蔵島港は2026(令和8)年度完了

島しょ地域の復興・強靭化
2025(令和7)年 10 月に発生した台風 22 号・第 23 号では、1週間で2つの台風が通過し、最大瞬間風速 40m 以上の非常に強い風により、八丈島などで電柱の倒壊や断線の被害が発生した。また、島しょ地域には、現地に常駐する電気・通信の技術者が少なく、災害時に停電や通信障害などの被害が発生した場合は復旧作業に時間を要する。
このため、激甚化する台風などの自然災害が起きても、停電・通信障害が発生することのない島しょ地域の実現を目指し、無電柱化をより一層推進する必要がある。

4.DX(デジタルトランスフォーメーション)と同時施工によるスピードアップ

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは
AI、IoT、クラウドなどのデジタル技術を活用し、業務プロセス、製品、サービス、ビジネスモデルを根本から変革すること。単なるIT化や効率化にとどまらず、企業文化や組織風土そのものを変え、競争上の優位性を確立することを目的とすること。

地中レーダー探査や設計データの3D化、無電柱化プラットフォームを活用し、業務の効率化に取り組む。これまで電力工事と通信工事は個別に施工していたが、今後は工事の効率化を図るため、同時施工の拡大を目指す。また、水道工事と電線共同溝工事の同時施工についても試験施工に取り組み、検証する予定である。 

5.コスト縮減の深化

東京都はこれまで、新たな管路材料の採用による材料費の削減や施工性の向上、さらに管路を浅く埋設することによる掘削土量の削減により、約3分の1のコスト縮減を実現してきた。次期計画では、これに加え、特殊部のさらなるコンパクト化や設置間隔の拡大等を検討するとともに、新たな低コスト材料の導入も検討するなど、さらなるコスト縮減を図る。 

 6.区市町村との連携強化 

(1) 区市町村への財政支援・技術支援
都内の道路延長の約9割を占める区市町村道の無電柱化を促進することも重要です。
事業主体となる区市町村では、財政負担が大きいことや、無電柱化事業に関する経験やノウハウの蓄積が少ないことが事業推進上の課題となっている。このため、引き続き財政支援および技術支援を行い、無電柱化を積極的に後押ししていく。 

(2)都・区市町村無電柱化検討会議の活用
2024(令和6)年度に立ち上げられた「都・区市町村無電柱化検討会議」では、防災上重要な拠点となる区市町村道を抽出し、無電柱化計画に位置付けるよう働きかけている。今後は、東京都の支援により事業化を促進し、防災拠点まで無電柱化を進めていく。 

※都道から防災上重要な拠点につながる区市町村道は設計費等の補助率を3/4に引き上げ(令和7年度より) 市区町村への財政支援 (東京都ホームページより)

(3)通学路等における無電柱化の支援
ゾーン30プラスエリア内の通学路等における無電柱化については、チャレンジ支援事業制度等により支援を行っていく。
【参考資料】https://nponpc.net/info/20260206_13osaka_zone30/ 

7.電柱新設禁止の拡大

「電柱を減らす」取組に加え、「電柱を増やさない」取組として、2025(令和7)年度中には、区市町村道の緊急輸送道路における電柱の新設禁止措置が完了する見込みである。今後も区市町村に対し、電柱の新設禁止の拡大を働きかけていく。

8.宅地開発条例の制定

 さらなる無電柱化の推進に向けて、東京都は2025(令和7)年9月に「(仮称)東京における宅地開発の無電柱化の推進に関する条例の基本的な考え方」を公表した。パブリックコメントの実施を経て、令和8年の第一回都議会定例会において審議されることとなった。
この条例では、規制区域※1内で行われる宅地開発について、開発区域内への電柱等の新設を原則として禁止するとともに、開発事業者に対して無電柱化の実施計画の届出を義務付ける。また、指導・勧告および公表の制度を設けることとしている。

※1 規制区域:本計画の重点整備エリアや都の防災都市づくり推進計画において都市の防災機能向上に資する位置づけのある区域 

ポイント 

1.防災力の向上
第一次緊急輸送道路に加え、立川広域防災基地や災害拠点病院、消防署・警察署などの防災拠点へつながるアクセスルートの無電柱化を進めることで、災害時の道路寸断を防ぎ、救出・救助活動の迅速化を図る。 

2.宅地開発における無電柱化制度の導入
条例により、規制区域内で行われる宅地開発では電柱等の新設を原則禁止とし、開発事業者に無電柱化の実施計画の届出を義務付ける。これにより、都市開発の初期段階から無電柱化を進め、電柱が増えない都市構造の実現を目指す。 

3.DX活用と同時施工による工事の効率化
地中レーダー探査や設計データの3D化などのDXを活用するとともに、電力・通信・水道工事の同時施工を進めることで、道路の掘り返し回数を削減し、工事の効率化やコスト縮減を図る。 

 見 解 

防災面では、重点整備エリアを環状七号線の内側から環状八号線まで拡大するとともに、従来の第一次緊急輸送道路に加え、立川広域防災基地や災害拠点病院、消防署・警察署等の防災拠点へのアクセスルートを重点整備の対象とした。これにより、大規模災害時に電柱の倒壊による道路の寸断を防ぎ、救出・救助活動を迅速に行うことが可能となり、結果として首都圏全体の災害対応力の向上が期待される。
また、DXの活用や同時施工の拡大は、道路の掘り返し回数の削減や施工期間の短縮、コスト縮減につながるため、担い手不足や施工コストの高さといった課題への対応において非常に重要である。
さらに、宅地開発段階における制度改革により、道路整備後に無電柱化を行う従来の方式ではなく、都市開発の初期段階から無電柱化を進める仕組みが導入される。この制度は、新興住宅地における電柱の増加を抑制することを目的としている。「電柱が増えない都市構造」を目指し、将来世代に引き継ぐことのできる都市の形成を図るものである。
以上のように、この計画は、無電柱化を通じて首都圏の防災力の向上と、将来を見据えた都市形成の実現を目指す政策である。 

次期「東京都無電柱化計画」の方針