8月7日、台風で開催が危ぶまれたが、無事、無電柱化シンポジウムが沖縄のパレット市民劇場でスタートした。東京(1月)、大阪(2月)に続く、ここ沖縄の会場は400名近い入場者が来場し、大盛況。
「沖縄では台風が来て、電柱が倒れても、新しい電柱が立つのを我慢強く待つ」と地元の人が話されていた。このような台風などの被害の多い沖縄で無電柱化シンポジウムが開かれるのは、必然の流れなのかもしれない。
シンポジウムでは、無電柱化推進法が成立するまでの流れと今後の取り組み、パネルディスカッションで、電柱・電線に歯止めをかける、安全・円滑な交通の確保、良好な景観の形成などをテーマに活発なトークが繰り広げられた。風光明媚な観光地や自然豊かな島々と無電柱化との関わりについても識者からお話があった。当事務局長の井上も登壇に立ち、無電柱化率100%のロンドンでは、ドクターヘリが市街地に離着陸するという話も出て、会場を沸かせていた。
◆日時:2017年8月7日(月)14:30~17:00
◆場所:パレット市民劇場 パレットくもじ 9階
◆コーディネーター:高田 昇(NPO法人電線のない街づくり支援ネットワーク理事長)
パネリスト:松原 隆一郎(東京大学大学院教授)、仲宗根 斉(沖縄電力取締役)、古謝 景春(南城市長)、井上 利一(NPO法人電線のない街づくり支援ネットワーク事務局長)
◆主催:NPO法人電線のない街づくり支援ネットワーク
◆後援:内閣府沖縄総合事務所 沖縄県沖縄市長会 沖縄町村会 沖縄県建設業協会 沖縄県舗装業協会 沖縄タイムス 沖縄建設新聞 一般財団法人日本みち研究所 一般社団法人無電柱化民間プロジェクト実行委員会 無電柱化を推進する市区町村の会
高田昇 NPO法人電線のない街づくり支援ネットワーク 理事長
沖縄は思いやりのある土地で、40年間に100回以上訪れている。少子高齢化が進み、日本が閉塞状態となっている中、沖縄という地に日本の希望を見出している。そのため、今回主催のシンポジウムをさせていただけることを非常に喜ばしく感じ、誇りとしている。
私たちは長年電線電柱を見慣れているので、あって当たり前という感情があるが、アジアの多くの都市や先進国のほとんどの街の中では電線電柱が覆うことはない。観光の面で日本をリードし、また台風などの自然災害で電柱被害を受けやすい沖縄を、ぜひ電柱の無い地域にしていただきたい。
昨年12月に「無電柱化推進法」が成立した。しかし、法律を作ったからといって、世の中から電柱がなくなるわけではない。これを機に、多くの方に無電柱化推進について、今まで以上に関心にもっていただき、私たちと手を握り合って、一日でもはやく今の日本の状態を内側から直していただきたい。
(シンポジウム中のあいさつ・無電柱化推進法案説明より)
国場幸之助 衆議院議員
無電柱化の事業というのは、沖縄向けの内容であると考えている。台風を始めとして自然災害が多い沖縄であるし、また、観光地をより美しい景観とするためにも無電柱化の推進は必要であると考えている。無電柱化を推進する一つの大きな必然性は通学路の安全であり、バリアフリーを実現する歩道を確保することにある。電柱は歩道に立っており、車道には立っていない。残念なことだが、日本は先進諸国の中で、車道と通行者の交通事故の割合が極めて高いという統計もある。そのため、子供たちの安全やこれからの超高齢化の中で、無電柱化の推進は非常に必然性の高いものとなっている。ただし、法律ができていても、国民や県民の意思が変わらなければ無電柱化の推進をすることはできない。沖縄が全国で最も無電柱化推進に熱心な地域になる最初の一歩として、シンポジウムが成功しますよう、急遽参加させていただいた。
(シンポジウム中のあいさつより)
菊地春海 沖縄総合事務局 次長
シンポジウム三番目の開催地であるということは、沖縄が無電柱化にとってたいへん必要であるということを意味している。電線は日本人にとっては当たり前のものである。しかし外国を訪れると、ふと電線がない光景だと気づかされ、電線が地上にある日本はとても不思議だと感じる。無電柱化が色々な都市で進む中、日本はまだまだ進んでいないのが現状である。平成24年時点で日本の電柱は桜と同じように立ち、その数3552万本、さらに、毎年7万本ずつ増え続けている状況であった。
無電柱化の整備は、全国で最も東京が進んでいるが、それでも5%程度である。沖縄は頑張っている方で、全国でも9番目ではあるが、依然2%未満となっている。現在、無電柱化の整備方法の9割は電線共同溝で行われている。それらは、国、県、市の公共土木関係者と、電線管理者と、国からの補助金でおおむね3分の1ずつ費用負担している。このような中、無電柱化の第一の課題は、コストが高いことである。続いて、電力会社との調整が非常に難しいこと、地上機器があるのが大変であるということが挙げられる。
無電柱化の目的は大きく分けて三つある。石垣島では夏の台風被害により、電源が来なくなり、クーラーや冷蔵庫が動かなくなるという事態が生じている。そうした中、無電柱化は防災面での向上という目的を備えている。また、バリアフリーや小学生の安全を守るという観点から、安全性・快適性という目的を備えている。さらに、沖縄での観光客は毎年10%ずつ増えており、2030年には現在の2倍になると想定されている中、安全性の向上に留まらず、良好な景観形成という目的も備えている。
低コスト化に向けた無電柱化の取り組みとしては、浅く埋める、小型ボックス活用埋設、直接埋葬といった手法が展開され始めている。今までよりも浅く埋められるようになったことで、コストを抑えることに繋がっている。
幅員が著しく狭い道路や緊急輸送道路など、無電柱化が特に必要とされる場所についての電柱の占用を禁止する動きもある。それに伴い、直轄国道の緊急輸送道路において電柱の新設を禁止する措置を開始するといった、無電柱化の推進も進めている。
(シンポジウム中の無電柱化推進法案の概要とこれからより)