『電線のない街づくりセミナー』
~住宅会社の無電柱化の取り組み~

2012年2月27日(月)15時よりキャンパスポート大阪において当NPOは「電線のない街づくりセミナー」を開催いたしました。「住宅会社の無電柱化の取り組み」というテーマのもと、大規模なまちづくりプロジェクトの設計を実際にご担当された方にご講演いただきました。

第一講演:サステナブルなまちづくり

最初の講演は、宝塚市のコモンステージ逆瀬川のまちづくり業務に携われた、積水ハウス㈱の土井信氏に、「サステナブルなまちづくりのために不可欠な要素である『経年美化』」についてお話しいただきました。

土地を活かす、電線類地中化の可能性

厳しい経済状況と少子高齢化に伴い、ニュータウンが衰退するなか、人が住み続けるまちを創出するためには、美しく、便利で、安全な環境にする必要があります。そのために土井氏が取り組まれたのが電線類の地中化でした。電線類地中化をすることで快適なスペースが生まれ、「かけがえ

のない資源」である土地を活かすことが可能になります。無電柱化を行なうと、道路が曲線になり、また、電線同士の干渉等を考慮する必要がなくなるため、設計(コモンスペース計画)の幅が格段に広がります。特に道路を円形(クルドサック)にする場合は、無電柱化したほうがよく、逆に、道路が曲線でも無電柱化されていない場合は、視界の中央に電柱が位置する形となり、景観を損ねることになります。◇宝塚市との基本協定締結までの道のり

地上機器の権利問題や、前例がないという理由から腰の重い行政との協議など、様々な問題を乗り越えられました。無電柱化が実現した美しい環境が、資産価値を増価させ、住民の景観への意識を高めることで、
さらにまちなみの美しさに磨きがかかっていく。この相乗効果が、時が経つほど評価される「経年美化」を支えることを、実践を基にお話し頂きました。第二講演:宅地分譲地における無電柱化について

続いての講演は、阪南市の阪南スカイタウンプロジェクトの事業コンペおよび実施設計のプロジェクトリーダーをされた大和ハウス工業㈱の柴垣保平氏に、「美しい街並みの創出を目指した、池田緑丘開発事業での電線類地中化」についてお話し頂きました。

◇無電柱化実現までの道のり

池田市緑丘で無電柱化が検討された経緯として、開発道路形状が複雑で、区域内に建柱すると景観が雑然とし、住宅地として好ましくなかったという理由がありました。無電柱化実現までの道のりでは、幾度となく思考錯誤が重ねられました。

まず、無電柱化のコスト増の最大要因である地上変圧器を極力減らすため、電線共同溝方式、共有地併用方式、架空線供給方式という3つのパターンの供給・接続方式が採用されました。そして、地役権設定を可能にするため、またコストの削減のために、背中合わせになった住居と住居の間に地下埋設し、共有地として取り扱うという方針が決定されました。開発完了後、池田市にて電線共同溝路線認定を受ける予定で、それにより区域内道路には電柱を設置することが不可能になるため、永続的に区域内道路の景観、環境美化が守られることになります。

 

◇事業性から見たハードル

許認可・造成工程において時間がかかることや、販売エリアの土地価格の上限のクリアが難しいこと、地中化コストを抑える手法が提案できる計画地を見つける必要があることなどが挙げられました。

 

今後、今までの経験を基に、開発区域の形状や土地価格を考慮した上で、実施の可否や手法を決定し、提案していくという方針を掲げられています。これらの活動により、緑豊かな美しい街並景観を形成することができたと結ばれました。

 

◇コモンステージ逆瀬川/積水ハウス◇

 

◇池田緑丘/大和ハウス工業◇