無電柱化のまち・大阪府高槻 ニュータウン見学報告書
2009/08/26
今回見学した高槻のニュータウンでは、自分の目で街を見て、実際住んでいる方々数人にお話しを聞いてきました。印象としては、興味のある方は地中化によってその場所に住むことを決定されたようですが、それ以外の理由で決定した人も多いと感じました。やはり電柱の地中化に対して認識している人はまだまだ少なく、実際に住んでいる人ですらあまり注目していないという現状があるようです。
今回は、
地中化された街とそうでない街に住んでいる方2人ずつにお話しを伺うことが出来ました。お聞きした意見を、以下のようにまとめました。
■地中化された街にお住まいの方より■
<メリット>
・雷が落ちるから電柱はない方がよい
・景観がよい
・木に電線が触れないから緑がよく育つ
・電柱の上で工事をされないから気にならなくて
・子供がのびのび出来る環境
・車を止めたりするのに邪魔にならない
<デメリット>
・景観を気にしすぎてプライベートがない等の問題がある(塀がない等、家と家を仕切るものがない)
・インターネットの種類が制限される
・地中化によってよりお金がかかる
■地中化されていない街にお住まいの方より■
□地中化をしたいと思う→理由:景観がよい
□それでもしない理由は?
・お金がかかる
・あまり考えたことがない→関心がない、特に必要性を感じない
上記の意見の中で、特に注目したのは、メリットの中の「子供が育つのによい環境」という意見と、デメリットにある「景観にとらわれすぎて、プライバシーがない」という意見です。
私たちがこの街に入った当初、家の周りには大人の方が一人もおらず、子供さんばかりだったので、子供さんにも質問してみました。すると子供さんも自分の家の周りが電線を地中化していることは親御さんから聞いているようで、地中化について肯定的でした。子供からすると、電線がないおかげで空がすっきりしていて、思う存分サッカーや遊びができるからだそうです。親御さん世代にもお話しを聞くと、子供がのびのび育つことができるとおっしゃったので、空に電線がないことは子供にとっては好影響なのだということが分かりました。
一方、実際に住んでいて感じることの中で「外観がきれいなのは良いが、それによって生活に支障がある」と挙げてくださったのが「プライバシーがない」という点です。これは、直接電柱の地中化についての問題点ではないのですが、この街では「1mより高いものは建ててはいけない」、「塀は作ってはいけない」等の規定があり、隣の家との間に仕切りが何もない状態です。このことにより、近隣の子供が勝手に敷地内に入ってきたり、通路との間に隔たりが何もないのですぐ窓やドアがあったりと物騒なイメージがあります。確かに、実際私たちも周りを歩いてみて、家の中の様子が見えたり聞こえたりしやすかったので、この点は住人ならではの悩みだということを発見しました。
■まとめ■
住人の方々の意見を総合して考えると、皆さんの地中化に対するイメージは良いということが分かりました。地中化された街に実際に住む方は、例えその家に住んでから地中化のことを知ったとしても肯定的な考えを持っているようです。地中化されていない街の方も、地中化された街に憧れは持っていることは確かです。しかし、コストの問題や手間の問題、住んでみて感じる不便もあります。
住人の方々にお話しを聞いて思ったのは、やはり住むのは「一般市民」であるということを忘れてはいけないなということです。いくら国が地中化を否定しようと、推進しようと、住む人にしか分からない、考えられないことがたくさんあると思います。その声こそが、地中化を進める側としては最も考慮すべきことだと思います。
●興味を団体に、どのように地中化を説明するかについて●
電線が地中化された街に足を運び、実際に住んでいる人にお話を伺いました。そこで思ったのは、やはり地中化も国や団体がしたいからするというものではなく、住んでいる人がどうしたいかが一番重要であるということです。
もちろん、重要文化財などの歴史的に重要な建造物などについては国が決めることではありますが、国も一般市民の集まりであるので、一般市民が最も重要だと私は考えます。
このような考えにより、一般市民の考える地中化のメリット、デメリットに注目して考えていきたいと思います。実際に住んでいる人が考えるメリットとは、景観がよい、歩行や通行の邪魔にならない、雷が落ちない、木の成長の妨げにならない、子どもが遊びやすい等があります。逆にデメリットは、費用がかかる、インターネットの種類が制限される等があります。また、デメリットに含まれるものとして、景観を気にするあまりプライベートがないという意見もあります。
このようなデメリットをどうすれなくすことができるか、ということを考慮しながら、当NPOは活動しています。費用がかかるということに関しては、国からの補助金を獲得し、また当NPOの会員が増えることにより、皆で協力して少しずつ地中化を進めていければと考えています。ちなみに、諸外国では電線が地中にあるのが普通とされており、「地中化」という概念すらないそうです。日本は、これから地中化をしようとしているために、諸外国より費用がかかってしまうのです。
今、日本では電柱が増え続けています。今ある電柱をなくすためには、何千年という時間がかかります。しかし、少しでも今進めることで、その時間が短くなります。だから今こそ、皆さんに関心を持ち、ご協力いただければと思います