◆京都市内には言わずと知れた名所旧跡の観光地が点在します。それぞれの観光地区は市の条例に基づき、あらゆる景観保全活動などが施され、見事な歴史的街並みを再現しています。
しかしそれは、観光地区内の限られた地域に過ぎず、一歩エリアを外れると本当にここが京都?などと疑ってしまうような場所さえあります。
そこで私達は、人気観光地の上位10地域に足を運び、周辺地区の景観状況を電線、電柱にスポットを当てて、調べに参りました!
加えて、観光地の方々に京都の観光地周辺における景観で良い、悪いと感じるものについてのアンケート調査も行って参りました!
以下、人気観光地の順番に周辺地域の現状とアンケート結果の詳細についてご紹介いたします。
第1位 清水寺地区
清水寺に行くまでに、五条坂を通って登ったが、松原通と五条坂がぶつかる分岐点くらいのところまでは、地中化はあまりなされていなかった。ただ、それを過ぎて清水寺の前まで行くと、地中化がされているところもあり、視界がひらけて美しい街並みを展望することができた。また、裏配線がなされているものが多く、裏道は電線が張り巡らされていた。
第2位 嵐山地区
◆電線類地中化されていたのは?
桜と紅葉の名所として多くの観光客を集めている嵐山地域で主に二ヵ所あった。
一ヵ所目は渡月橋北側の桂川沿いの道路で、こちらは歩道もコンクリート平板に舗装されて、見事に周りの建物と一体感を醸しだしていた。二ヵ所目は渡月橋を渡った道沿いの府道29号線で、こちらは嵐山のメインストリートでもあり平日にもかかわらず、大変賑やかな様子だった
◆その他の地域では?
電線類地中化は行なわれていなかった。特に人力車やアクセスの拠点として人々が行き交う、
JR嵯峨嵐山駅と京福電車嵐電嵯峨駅を結ぶ嵯峨商店街、渡月橋南側の阪急嵐山駅などは地中化されていてもおかしくない地域だと感じた。
◆世界遺産の密集地域では
金閣寺周辺では地中化が達成されていない要所は、五山の送り火として知られる左大文字を背景に持つ西大路通や北側の北大路通。また世界遺産に登録されている仁和寺、龍安寺、金閣寺と続く観光スポットが目白押しのきぬかけの路では、地中化が進んでいるのは仁和寺周辺のみで、立命館大学衣笠キャンパスから金閣寺にかけては達成できていなかった。きぬかけの路は歴史的風土保存地区域に指定されているだけでなく、周辺には大学、カフェ、和菓子店、ギャラリーなどが集まり、一つの観光スポットとしても知られているので仁和寺周辺だけでなく、是非とも地中化の延長を実現してもらいたいですね!
第4位 二条城周辺
◆主要道に囲まれた二条城では
二条城は京都のほぼ中央に位置しており、東西南北、4つの幹線道路に囲まれていて、道幅も広く、スッキリしていた。 今回訪問した観光地の中でも電線類地中化は進んでいた地域であった東側の隣接する堀川通りは京都市の南北を結ぶ主要道ということもあり電線類地中化が達成されていた。南側の押小路通りも同様に地中化は達成されていた。
一方で北側の竹屋町通りと西側の美福通は二条城側の道沿いは地中化が達成されているのに対し、反対側の歩道は電線、電柱は残っていた。
■地中化が完了している堀川通周辺
第5位 銀閣寺周辺
銀閣寺の回りは、今回観光地を巡った中で唯一、ほとんど電線地中化がされておらず、電柱・電線がそのままの状態であった。それでも、観光客が数多く訪れるということは、それだけ歴史的価値が高いのだろうということが考えられる。なぜ、何も手を付けないのかを今後調べる必要があると思った。
第6位 南禅寺周辺
南禅寺前の白川通・仁王門通は地中化されていて、見通しの良い景観だった。今回観光地を巡った中で、一番広範囲で地中化が行われているように思えた。唯一気になったのがトランスの置き場所で、あまり幅のない歩道に設置されていたので、ここは改善すべきだと思った。
第7位 祇園周辺
四条通はほとんど地中化がされていた。東大路通は道路と並行して電線が張られていた。また、四条通・東大路通の裏の道には電柱・電線が大量に乱雑していた。しかし、八坂神社へ行く道の途中にある、花見小路通は歴史的風景特別修景地区に指定されているだけあって、電柱・電線が一つもなく、美しい景観が保たれている。
第8位 高台寺周辺
高台寺も清水寺と似たような景観だった。高台寺の目の前の道路は地中化されているところや、裏配線がなされているところもあったが、裏道には電線が張り巡らされているし、それ以外の場所でも、電柱・電線ともにそのままの状態であった。
第9位 平安神宮周辺
平安神宮の前の丸田町通は電線地中化がなされており、とてもきれいな景観であった。しかし、その脇にある道路、岡崎通ではあまり景観の邪魔にはなっていないが、通と並行して電線が張られていた。この時気付いたのが、このように並行して電線を張るときは、その観光地と反対車線のほうに電柱を建てるということに気付いた。
第10位 下鴨神社周辺
下鴨神社前の御蔭通は、地中化はほとんどされていなかったが、道路と並行に電線が張られていた。もう一つの下鴨本通は電柱・電線が全く触れられておらず、乱雑であった。神社内は、とても落ち着いた雰囲気で、趣のある空間だったので、神社の周りの電柱を地中化すれば、より観光客が訪れるのではないかと思った。
京都の観光地周辺における景観で良いと感じるところ
・電線、電柱が無くすっきりしている
・落ち着いた色合いの建物で古風な街並みが見られる
・時間帯によってその都度変化する風情のある風景を見られるところ
・観光地周辺に山や川が見られ、
・歩道も石畳に舗装されていて十分な幅があり、すっきりとしている。
・街灯に風情を感じられる
京都の観光地周辺における景観で悪いと感じるところ
・放置自転車、路上駐車及び交通渋滞が原因でせっかくの落ち着いた雰囲気の街並みが台無しになる
・広告、看板などの人工物が古い建物が隣接する箇所では特に目立つ
・道幅が狭い箇所が多く、圧迫感がある
・建物など、街並みの色が統一されていないとごちゃごちゃした雰囲気になる。
・街中には緑が少ない
・路地裏に外れるとどこにでも見られる雑多な雰囲気になる
・一部では規制されているようだが、建物の高さがばらばらである
・観光地で綺麗な場所でも賑やか過ぎると景観の印象を悪くしてしまう。
大まかに以上の点を指摘いただいた。
これらの回答に基づいて
景観を保全する為にはどのような対策が必要、或いはどうすれば多少なりとも改善できるのか?
という質問を、得られた回答は
・歴史的な景観と現代的な景観の地域を区別して整備するべきだ
・時代の変化で様々な建物や広告、看板が出てくるのは仕方がないが、昔からの情緒深い建物がある場所には新たに建物を増設しないようにすることが重要ではないか?
・狭い道路も含めて電線、電柱がなくなればすっきりとした良い景観になるのではないか?
・京都でも海外の様にパークアンドライド方式を制定して、交通渋滞の緩和を計る
・駐輪場を整備して放置自転車を無くすべきだ
といった回答を得ることができた。
京都に限らずこれまで訪れたことがある観光地でどのような景観、風景が一番印象的だったか?
という質問に対しては、
自然に囲まれた観光地を取り上げて紹介して下さる方々が多数だった。
つまり人々が良い景観について真っ先に頭に浮かべるのは山や川、森林、植物群落などといった自然物に囲まれた場所で
あくまでも人工的な都市景観というのも自然と調和して、はじめて良い景観とみなされるのではないかとアンケート結果を通じて分かった。
今回のアンケートでも電線、電柱をなくすことが出来れば、景観改善に繋がると答えて下さった方々もいたが、人々の景観に対する意識を高める為には電線や電柱を地下に埋めるだけでなく、その後道路に植林したり、街路樹を植えたりするなどの自然を取り入れることも必要ではないか?