
山梨県富士吉田市で見られる二つの富士山の風景
無電柱化のメリットとして地震、台風といった災害に強いことが挙げられますが、もう一つのメリットとして、「景観がよくなること」があげられます。このレポートでは特に景観に焦点を当てて解説していきたいと思います。
政府がインバウンド(訪日外国人旅行/訪日旅行)を推進している影響で、近年、外国人観光客がますます増加しています。2014年の外国人観光客は年間で1,341万人であったのに対し、2024年の外国人観光客の数は年間で3,686万9,900人と、この10年間で約36%増となっており、今後も増加すると考えられています。
そこで問題になってくるのが観光地の景観です。海外では電線類の地中化が当たり前の都市もあるため、日本の電柱・電線が乱立した風景に違和感を覚える観光客も多いようです。実際、過去のインターン生の取材では「日本の風景はあまり美しくない」と答える観光客も多く、「景色はいいのに電柱・電線が台無しにしている」という意見が多く見受けられました。日本の街中を撮った写真では、いたるところに電柱・電線が写り込んでおり、確かに古き良き日本の風景には似合わないと感じられます。インバウンドを進める以上、景観の向上も進めていかなければなりません。
無電柱化が観光客増加につながる?
無電柱化を進めて観光客が増加したケースがあります。例として島根県太田市・石見銀山、埼玉県川越市・一番街、福島県下郷町・大内宿などがあげられ、これらの観光地は無電柱化整備後から年々観光客が増加しています。今回そんな無電柱化事業に力を入れた観光地をいくつか紹介します。
島根県大田市 石見銀山

大森の街並み(左)と竜安寺間歩 坑道内(右)
自然に囲まれた石見銀山は、2007年ユネスコの世界遺産に登録され、採掘坑道である間歩や銀により栄えた町並みを散策しながら観光できることから、「歩く世界遺産」として世界的にも珍しい観光スポットとなっています。石見銀山は16~17世紀頃、世界屈指の銀の産出量を誇り、産出された世界の銀の約3分の1を日本が占め、その多くが石見銀山のものと言われているそうです。
大森の街並みは無電柱化が進み、江戸時代に建てられた歴史的な建造物や文化財が並び、落ち着いた雰囲気が感じられる人気スポットとなっています。
【しまね観光ナビ】https://www.kankou-shimane.com/spot/452.html
【じゃらんnet】https://www.jalan.net/news/article/639078/
埼玉県川越市 一番商店街

川越一番商店街の街中
こちらも無電柱化により観光客が増加したスポットです。「小江戸」とも呼ばれる川越は電線の地中化により情緒溢れる蔵造りの街並みが魅力です。電線類の地中化により、街の風情がより魅力を増しました。川越大火【1893(明治26)年】の後、防火建築である蔵造りの商家が建ち並ぶ姿は圧巻で、江戸景観を受け継ぐ重要な歴史的遺産として、「時の鐘」をはじめとするこの一番街周辺は、平成11年12月1日に重要伝統的建造物群保存地区に選定されました。
【川越一番商店街】https://kawagoe-ichibangai.com/story/
【小江戸川越観光協会】https://koedo.or.jp/spot_002/
福島県下郷町 大内宿

冬の大内宿(左)と塔のへつりから見える紅葉(右)
下郷町は、全国でも屈指の広大な面積を誇り、その自然の豊かさが魅力の町です。四季折々に豊かな自然が魅せる、絶景撮影スポットが点在し、季節によって異なる景色を楽しめるのが魅力の一つです。
【下郷町観光協会】 https://photonavi-shimogo.jp/
奈良県橿原市 今井町

今井まちなみ交流センター華甍(左)と夕暮れ時の今井町(右)
私の地元にある観光スポットです。今井町は寺内町といって浄土真宗により建設された仏教寺院、道場を中心に形成された自治集落で、現在も江戸時代の風情が残り、多くの古民家が現存しています。重要伝統的建造物群保存地区内には、約500件の伝統的建造物が大切に保存され、国の重要文化財9件を含む多くの文化財が存在します。
【じゃらんnet】https://www.jalan.net/news/article/736662/
【今井町を歩いた動画】
まとめ
電柱や電線がないことで街並みが美しくなり、観光や地域の魅力向上に貢献しています。しかしコスト面や工事期間の長さなどの課題が残されているため、 全国約 1,700 の市区町村のうち、無電柱化を実施したことがある自治体は約 400(1/4 程度)にとどまり、無電柱化の整備状況は最も高い東京都でも5%台とまだまだ課題は残っています(下記「無電柱化推進計画の概要説明」より)。景観の保全、地域の特性に応じた無電柱化の推進が求められます。
先日作成した防災面のBlog記事も合わせてご一読下さい。
インターン生が無電柱化のメリット(防災面)を解説。