日本では、地震・台風・豪雨など自然災害が頻発しており、都市インフラの脆弱性が常に問われている。
その中で無電柱化は、防災力を高める施策として注目されている。
電柱や電線を地下に埋設することで、災害発生時に電柱倒壊による二次被害を防ぎ、交通確保や復旧の迅速化につながると期待されている。
まず、防災面での効果について考える。
一般に、強風による電柱の倒壊や電線の断線は、停電だけでなく道路をふさぐことで救急・消防の活動を妨げる原因となる。
実際、台風などで倒れた電柱が避難や物資輸送の妨げになった例も多い。
世間ではあまり知られていないが、倒壊した電柱を処理するのは、消防や自衛隊では処理できず、電柱の所有者である電力(または通信)会社が処理しなければならない。
一刻を争う人命救助に支障をきたすのだ。
無電柱化が進めば、こうした物理的障害が減少し、交通の確保や迅速な避難行動が容易になる。また、電線の断線による火災や感電事故のリスクも低下するため、安全性の向上に寄与する。さらに、電線が存在しないことで、倒木や落下物による断線が起こりにくくなり、結果として停電リスクも減少する。特に大地震時は、電柱の傾斜や倒壊が各地で発生しやすく、道路閉塞の大きな要因となるため、無電柱化の効果は大きいと考えられる。
次に、災害復旧の面にも無電柱化は利点を持つ。
地上の設備が少なくなることで、被害状況の確認がしやすくなり、復旧作業の迅速化に寄与する。また、地中化された設備は風水害による直接的な損傷を受けにくく、台風などの気象災害後に大規模な停電が発生しづらい点も注目される。これは、電力・通信インフラの安定性を高める上で非常に重要である。
しかしながら、無電柱化には多くの課題も存在する。
最大の問題はコストである。電線や変圧設備を地下に埋設するには、大規模な工事が必要であり、従来の架空方式と比較して十倍の費用がかかると言われる。また、工期も長く、道路の掘削に伴う交通制限や騒音など、住民への影響も避けられない。
特に既存の市街地においては、地下にはすでに上下水道やガス管など多数のインフラが埋設されており、電線類地中化には高度な施工技術が求められる。
さらに、地中化された設備は故障箇所の特定が困難であり、いったん障害が発生すると復旧に時間がかかる可能性がある。
豪雨災害で地中設備が浸水した場合、乾燥・交換作業に時間を要することもあり、架空線より復旧が遅れるケースも指摘されている。また、地震によって地盤が液状化した地域では、地下設備が損傷したり浮き上がったりする危険性があり、必ずしも「万能の防災策」とは言い切れない。
以上のように、無電柱化は防災効果が大きく、安全で快適な都市環境の実現に貢献する施策である一方、高コストや施工面での制約、障害時の復旧の難しさなど、様々な課題を抱えている。
今後は、地域の特性や災害リスクを踏まえ、どこにどの程度無電柱化を進めるべきかを慎重に検討することが必要のように思う。
また、技術革新によってコストが低減され、施工が効率化されることが期待される。
無電柱化は単なる景観改善を超え、都市のレジリエンスを高める重要なインフラ整備であり、長期的な視点に立った取り組みが求められている。(T塚田)
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