3/21(木)の祝日。大阪のTWIN21、1階アトリウム特設会場にて、国交省 近畿地方整局の主催で無電柱化シンポジウムとパネル展が行われた。
最初に国交省 近畿地方整備局の橋本道路部長より近畿の無電柱化の現状などが話された後、当NPOの髙田理事長が基調講演を行った。
国交省近畿地方整備局 橋本道路部長
■基調講演:髙田理事長
本日、関係者も来場されているが、無電柱化をこれから学ぶ方を対象とした話をします。
私が言いたいことは三つあります。
①なぜ無電柱化なのか
大きな理由は、防災・災害対策だ。最近では、1か月おきに災害が起こっている。これは日本に限ったことではなく、地球規模で起こっている。この傾向は、今後も続くだろう。まして、日本は、地震列島であり、台風が通過する位置にある。
南海トラフ沖地震は30年以内に70%の確立で起こるとされている。これは30年後ではない。明日起こるかもしれない。首都直下型地震の可能性もある。
昨年の9月に発生した台風21号は電柱をなぎ倒し、緊急車両が通れない状態となった。阪神淡路大震災では約8,000本、東日本・東北沖大地震は約56,000本の電柱が倒壊した。災害が多いにもかかわらず電柱大国である。
当NPO理事長 高田昇
②日本は特殊な国。先進国だけでなく、アジアでも類をみない電柱大国
①の理由だけで、電柱を取り除くわけではありません。通学路で車が電柱に突っ込んだと思うとぞっとする。電柱がないところとあるところの事故の死亡率は、ある方がない方より10倍上がるというデータもある。
次に景観。世界の観光地で電柱・電線があるのは日本だけ。東京都はオリンピックに向けて急ピッチに無電柱化が進められているが、オリンピックがあるからするのではない。
台湾の台北市に電柱・電線はない。日本に来る台湾の観光客は年間3万人にも及ぶが、彼らが空を見上げた時、どう感じるだろうか。日本の食べ物は美味しいので、そちらに目が行っていたらいいのだが…。
空襲によって焦土と化した日本の街。その戦後復興をいち早く推し進めるためには電力を早く供給しなければならず、そのために電柱を仮に立てて進めた。
電柱以外でこの復興のために現在、悪い影響を受けているのが、今の季節、皆さんを悩ませている花粉症である。これも復興のために木材をどんどん伐採し、その伐採された山にてっとり早く植えた杉が、花粉症の元となっている。
ちなみに私は沖縄が好きだが、過度な伐採がなかったおかげで花粉症はほとんどない。当然、外国もない。
会場に併設されたパネル
③ハードルをどう超えていくか
現在、地中化を100メートルするために5300万円かかると言われている。日本も幹線道路は無電柱化が進められている。では、それ以外の道やこの費用のハードルをどうしていけばよいのか。
そもそもアジア・欧米ではそんなにお金をかけてやっているのか?私達はそこから出発して低コストを検討している。
①浅く埋める 1mの深さ→半分の50~60cmでOKとなると、随分コストが違ってくる。水道・ガスなどとかち合うことがないからだ。
②小型BOX 国道などの主要幹線道路では、電線共同溝という巨大な管路を埋めて電柱地中化を進めてきたが、道路の側溝程度のもので進めることができている。
③直接埋設 地中に直接電線を埋めるというもの。諸外国でも用いられている。が、今の電線は埋めるために作られたものではない。
電線共同溝方式では①~③のノウハウが実はなかった。
これらコストを下げる努力をしたとしてもかなりの費用がかかるのは事実だ。ある程度税金は使わないといけない。
今のままでよいかを見つめ直して納得してもらって機運を高めていきたい。
■パネルディスカッション
①橋本道路部長
無電柱化は、防災面からも必要不可欠であり、法律で明文化されている。私は今まで高速道路や国道ばかりを担当してきたが、今後は、無電柱化を含めた身近な道路の整備も考えて行きたい。
②池上三喜子氏(公益財団法人市民防災研究所・理事)神戸に生まれたので、今回懐かしく思います。
新潟の糸魚川で起こった大火災の現場の写真を紹介します。今回が初めて公開するもので、消火活動をされている写真です。画面に電柱・電線が写っていますが、これがなければもっと近くに寄れて、スムーズに消化ができたのではと感じます。
私は、国交省が主催するあり方検討委員会にも参加していますが、小池都知事とも親しくさせていただいています。東京都は独自に条例を出して、オリンピックに向けて予算の負担を政策として行っています。巣鴨の商店街も無電柱化をこれからしていく予定です。
あと名刺の裏に「11月10日は無電柱化の日」とスタンプをして、皆さんに知ってもらえるよう努めています。
消火活動の様子を開設する池上理事(中央)。右が神戸副会長。
③神戸啓氏(先斗町まちづくり協議会・副会長・事務局長)
1.4m~2mの道幅という狭隘な道路での無電柱化を行っています。無電柱化工事をする前に水道・ガスの工事もしていたので、先斗町の住人は工事に慣れています。平成32年(新元号になっていますが)に完成する予定なので、この貴重な夜間工事が見られるのもあと数年です。ただし夜中の1時からです。狭い道路に無理やり電気を引き込むということをしているため、他では見られないS字型の電柱や1本に3個柱状トランスがついている電柱(1個500kg以上あるので、1.5tのものが乗っていることになる)などがあります。電線もよく判別できるなと感じるほど芸術的に張りめぐらされています。
先斗町無電柱化視察会
地上機器の設置については、立て看板やショーケースをいったん壊してそこに地上機器を設置し、ショーケースをかぶせて見えないように工夫するなど、無電柱化をするには住民の協力は欠かせない要素です。
④髙田理事長
11月10日の「無電柱化の日」を是非覚えて欲しい。火災が災害でも怖いとの感想を抱いた。橋本部長や国がはっきり無電柱化をすると明言したのは心強い。昨年の無電柱化の日に発行した無電柱化ブックレットは、ノウハウがしっかりと入った本だ。是非買ってほしい。
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⑤八木アナウンサー
最後に皆さんから一言お願いします。
・芦屋の六麓荘や大阪の御堂筋など、関西では法律が出来る前から無電柱化を前提として進めている事例はある。東京日本橋付近も高架の高速道路が景観を損ねているとのことで、高速を地下に走らせることになった。
小池都知事の言葉を借りると日本人は「電線病」にかかっている。電柱・電線があるのが当たり前だと感じずに、電柱がないことが当たり前になるようにしたい(橋本部長)。
・復興の更地に電柱を建てないようにしたい!パリに住んでいる友人も帰って来てビックリしたのが電柱・電線だ。無電柱化の地図、無電柱化の見える化を是非行ってほしい(池上理事)。
・先斗町だけでなく、小型BOXをどんどん使って単価を下げてほしい。
京都では古くから無電柱化しているところがあるが、今の技術を使うともっと景観や街並みがよくなるところがある。改善を検討してほしい。
地上機器でも街で見かけるジュースの自販機、小型BOXでもドブと思ってもらったらもっと手軽に進められるのではないか(神戸副会長)。
・国だけでなく、自治体もつくば市や芦屋市のようにどんどん無電柱化を進めてほしい(髙田理事長)。
■Q&Aコーナー
Q1:日本ではなぜ地中化が進まないのか。
A:根本は制度。電柱は毎年1万本減っているが、7万本増えている。新しい開発の際は、電柱を建てない、建てさせない。我々NPOのメンバーで住宅関係の会社のものもいるが、法律で制限されたらそれはそれで覚悟はできていると言っている。無電柱化された住宅地は資産価値も上がるという検証結果も出ている。あと日本人は空をあまり見ない。視野を広げ、上を向いて空を見てほしい(髙田理事長)。
Q2:無電柱化の方法は。
A:昔に比べて電柱にくっついているものが増えているように思う。ケーブル線もそうだ。これらの線は無くすことはできないだろう。電線を地下に埋めること以外でも軒下を利用したり、メインストリートだけ無電柱化して、裏に配線を集中させたりすることもできるが、現状は管路にケーブル線を入れて地中に埋めることが妥当だろう(橋本部長)。
Q3:低コストについて
A:低コストについては、今までの費用ではダメなのは間違いない。ただ国は法律をつくっただけで終わらせようとしていない。低コスト化に向けて民間の知恵を集めて低コスト化を進めようとている(髙田理事長)。
Q4:目下の無電柱化を推進している具体的な事例は?
A:小型BOXの実証例は、いくつかは事例がある。直接埋設の実証実験も去年、京都大学前で行われた。今後もどんどん増えるだろう(橋本部長)。
Q5:無電柱化のデメリットは。
A:コスト高が一番の課題。住民の理解も必要。コスト高を解消するために昼間に工事をする理解をお願いしたい。騒音や往来が出来ない、交通の不便はかけるが、人件費を抑え、効率よく作業ができる(髙田理事長)。