愛知県東海市が無電柱化推進計画を今年の3月に策定しました。
同市の無電柱化推進計画策定委員会にはオブザーバーとして当NPOの井上利一事務局長が参加させていただきました。
以下、主要な箇所をご紹介させて頂きます。
※東海市無電柱化推進計画の詳細は下記より
http://www.city.tokai.aichi.jp/secure/43555/honpen.pdf
Ⅰ.無電柱化の⽬的と位置づけ(一部紹介、通し番号は順次変えています)
1.はじめに
戦後の⽇本では、急増する電⼒・通信需要に対応するため、多くの電柱が道路沿いに 建てられてきました。その結果、林⽴する電柱が歩⾏者や⾞いす利⽤者の通⾏の妨げと なっており、更に張り巡らせた電線が景観を損ねています。 また、今後、発⽣が予測される南海トラフ地震や⼤型台⾵等の⾃然災害では、電柱倒壊による道路閉塞等により、避難や救急活動に⽀障が⽣じる恐れがあり、無電柱化による防災機能の強化が必要であることが改めて認識されています。
本市では、中⼼市街地である太⽥川駅周辺を始めとする都市基盤整備や幹線道路網の 整備が進む中、今後、リニア中央新幹線や都市計画道路⻄知多道路、中部国際空港の第2滑⾛路の整備等により訪⽇外国⼈客や国内からの観光客の増加が⾒込まれる等、本市を取り巻く社会情勢は⼤きく変化するものと考えています。
このような状況の中で、災害の防⽌、安全かつ円滑な交通の確保、良好な景観の形成を図るため、無電柱化の推進に関する施策を総合的、計画的かつ迅速に推進すること等を⽬的として、無電柱化の推進に関する法律(平成 28 年(2016 年)12 ⽉ 16 ⽇公布)が施⾏され、同法の第8条では、国及び県の策定する無電柱化推進計画を基本として、市の区域における無電柱化の推進に関する施策についての計画を定めるよう努めなければならないと規定しています。
本計画は、今後の本市における無電柱化の基本的な⽅針等を定めるものです。
2.無電柱化の⽬的
(1)防災 地震や津波、台⾵等の⾃然災害による電柱倒壊は、 道路を閉塞する事態を発⽣させ、避難や救急活動、物 資⽀援等に多⼤な影響を及ぼします。 また、架空線が切断され、電⼒・通信サービスの供 給が妨げられます。 災害時において、緊急⾞両が通⾏可能な道路を確保することは極めて重要です。このため、無電柱化を推進することで防災性の向上を図ります。
(2)安全で円滑な交通確保 駅や公共施設周辺等の歩⾏者や⾞いす利⽤者が多い 歩道上の電柱や、歩道のない道路の路肩部の電柱は、安全で円滑な通⾏を妨げる恐れがあります。このため、無電柱化を推進することで安全で円滑な 交通を確保します。
(3)景観形成 本市の景観は、中⼼市街地である太⽥川駅周辺を始めとする⼟地区画整理事業や⺠間の開発⾏為等によって形成される、それぞれの地区の特性にふさわしい都市景観と、⼭⾞まつりの⽂化を始めとする数多くの貴重な歴史⽂化資源による景観がありますが、電線等が⽀障となり、景観を損ねています。このため、無電柱化を推進することでこれらの良好な景観を保全し、地域の魅⼒向上につなげます。
3.無電柱化推進計画の位置づけ
国及び愛知県の無電柱化推進計画を基本として、本市の上位計画である第6次東海市総合計画後期計画(平成31年(2019 年)3⽉策定)、都市計画に関する基本的な⽅針である東海市都市計画マスタープラン(平成31年(2019年)3 ⽉改定)との整合を図るとともに、関連する東海市地域防災計画(令和2年(2020年)1⽉修正)や東海市⽴地適正化計画(令和2年(2020年)3⽉変更)等の分野別計画を踏まえ、東海市無電柱化推進計画を策定します。
Ⅱ.整備方針(一部紹介、通し番号は順次変えています)
1.無電柱化の基本的な⽅針
無電柱化の現状と課題を踏まえ、効果的・計画的に無電柱化を推進するため、防災、安全で円滑な交通確保及び景観形成の観点から、本市では以下の⽅針に基づいて優先的に無電柱化を推進します。
方針1 都市全域の防災性の向上
災害時の救急活動、物資輸送を円滑に⾏うためには、被災地と防災拠点等を結び、緊急⾞両の通⾏する道路を早期に確保することが重要であることから、緊急輸送道路等について、無電柱化を推進します。
方針2 安全で安心な道路空間の確保
⾼齢者や障害者等を含む不特定多数の⼈たちが利⽤するしあわせ村や公⽴⻄知多総合病院等への駅からのアクセス道路や周辺道路及び、乗降客数や歩⾏者通⾏の多い駅周辺において、安全で安⼼な道路空間を確保するために無電柱化を推進します。
方針3 良好な景観の形成
太⽥川駅周辺を始めとする市街地開発事業等の都市景観や⼭⾞の主要な運⾏ルート等 の良好な景観づくりに必要な地域⼜は路線を選定して、地域の魅⼒向上につながるよう に無電柱化を推進します。
Ⅲ.これまでの整備実績
1.市内の状況
東海市内の道路は、市道のほか国道が3路線(⼀般国道155 号、⼀般国道247 号、⼀般国道 302号)、県道が8路線(主要地⽅道名古屋半⽥線、⼀般県道東海緑線、⼀般県道⻑草東海線等)により構成されています。これらの道路の⼀部で無電柱化が実施されており、それぞれの道路管理者により管理されています。
2.市内の無電柱化の実績
(1)⼤⽥地区
太⽥川駅周辺は、市の⽞関⼝にふさわしいにぎわいと魅⼒を感じられるまちを⽬標とし、⼟地区画整理事業を始めとする総合的な整備を進めています。
また、本地区は⼤⽥まつりが盛んであることも踏まえ、平成24年度(2012年度)から都市景観や歴史⽂化資源による景観、防災⾯に配慮し、太⽥川駅周辺の都市計画道路では電線共同溝⽅式による電線類地中化、太⽥川駅⻄歩道では裏配線による無電柱化を実施しています。
【事業概要】 ※事業中
延 ⻑:1,570m
事業期間:平成24年度(2012年度)〜令和2年度(2020 年度)(予定)
事業主体:市
(2)横須賀地区
横須賀地区は、江⼾時代から⾏われている尾張横須賀まつりや愛宕神社、横須賀御殿跡等の歴史⽂化資源が多数分布しています。本市では、平成27年度(2015年度)に「横須賀⽂化の⾹るまちづくり基本計画」を策定し、無電柱化による道路美装化計画を位置づけました。 また、狭あい道路での整備となり、全国的にも施⼯事例がないため、中部電⼒㈱と共同研究を⾏い、狭あい道路で実現可能な地中化⽅式を検討し、「⼩型ボックス活⽤埋設⽅式」を採⽤し、電線類地中化を実施しています。 なお、横須賀駅⻄通線街路整備事業と合わせて、電線類地中化を実施します。
【事業概要】 ※事業中
延 ⻑:510m
事業期間:平成27年度(2015年度)〜令和3年度(2021 年度)(予定)
事業主体:市
(3)その他
⼀般国道 302 号(東海 JCT〜⼤府市境)及び⼀部の駅前広場において、電線共同溝⽅式や裏配線による無電柱化が図られています。
Ⅳ.整備計画
1.無電柱化推進計画の期間
令和2年度(2020年度)から令和11年度(2029年度)までの10年間とします。
2.無電柱化の推進に関する⽬標
無電柱化の基本的な⽅針に従い、無電柱化を推進する箇所において、多様な整備⼿法 の活⽤によるコスト縮減や関係者間の連携の強化を図りながら、10年間で市の管理する道路の延⻑3kmの無電柱化の推進を⽬指します。下記の対象路線等について、地元や関係事業者等と連携を図りながら、無電柱化の合意や整備に向けて推進します。
<対象路線等>
・緊急輸送道路のうち「南海トラフ地震における愛知県広域受援計画(平成31年(2019年)3⽉改正)」に位置づけられた広域物資輸送拠点から地域内輸送拠点、災害拠点病院から航空搬送拠点の拠点間の標準アクセスルート(将来的に(都)養⽗森岡線が開通することを⾒据えたルートを指定)
・(仮称)東海太⽥川駅⻄⼟地区画整理事業や(仮称)東海加⽊屋中部⼟地区画整理事業区域内及び周辺における幹線道路等
・その他、優先度の⾼い無電柱化推進箇所
※なお、国道、県道については、当該道路管理者と調整を図りながら、協⼒を要請します。
Ⅴ.無電柱化の推進に向けた施策等
1.無電柱化の推進に関し総合的かつ計画的に講ずべき施策
(1)占⽤制度の運⽤
ア 占⽤制限制度の適切な運⽤
平成25年(2013年)6⽉に道路法第37条が改正され、防災上の観点から重要な道路について、災害が発⽣した場合における被害の拡⼤を防⽌するために特に必要があると認める場合には、道路管理者が区域を指定して道路の占⽤を禁⽌し、または制限することができるよう措置されました。
国及び愛知県は、既に新設電柱の占⽤制限措置を緊急輸送道路等において実施して いることから、本市においても電線管理者への意⾒聴取を⾏ったうえで同様の措置の 実施を検討します。
また、国において運⽤⽅針の検討が進められている新設電柱に係る占⽤制限措置の対象拡⼤等について、国及び愛知県の動向を踏まえて検討します。
イ 占⽤料の減額措置
道路の地中に設置されている電線等について、国及び愛知県の動向を⾒ながら、占⽤料の減額措置を検討します。
(2)関係者間の連携の強化
ア ⼯事の連携
道路管理者、関係事業者が集まる占⽤者会議等を活⽤し、各種⼯事間の調整を積極的に図ることで、コストの縮減や、⼯事期間の短縮を図り、地域住⺠への影響の軽減を図ります。
また、整備する際には、地域住⺠の⼗分な理解や協⼒が必要なことから、無電柱化の意義や必要性について説明し、事業を進めます。
さらに、無電柱化を図る際には、可能な限り地下埋設物の更新時期と調整を⾏うこ とで、道路の掘り返し回数を減らすよう努めます。
イ 地上機器の⺠地活⽤及び有効活⽤
地上機器の設置場所について、道路空間に余裕がない場合や良好な景観形成等の観点から道路上への機器の設置が望ましくない場合においては、公共施設の公有地及び ⺠地の空地等の活⽤を管理者等の同意を得て進めます。 また、必要に応じて地上機器に付加価値を加えることで、道路利⽤者にとって、有益な施設になるよう、電気事業者と協⼒しながら検討します。
ウ 他事業との連携
無電柱化の実施に際し、地域の課題を踏まえて道路事業等と連携して総合的、計画 的に取り組むよう努めます。 また、無電柱化の推進に関する法律第12条に基づき、道路の維持に関するものを除く道路事業及び市街地開発事業等が実施される際に、電線管理者と調整して無電柱化の検討を⾏い、無電柱化が実施可能な場合は、電線管理者と連携して、効率的に無電柱化事業を推進します。
(3)財源の確保
国の補助制度である社会資本整備総合交付⾦等の活⽤及び占⽤予定者による建設負担⾦により、整備にかかる費⽤負担の縮減を図ります。
また、整備には時間と多額の費⽤が掛かるため地⽅債も活⽤し、世代間での公平性を 図ります。
2.施策を総合的、計画的かつ迅速に推進するために必要な事項
(1)市⺠等への啓発
無電柱化を推進するためには、市⺠等の理解や協⼒が不可⽋であることから、「無電柱化の⽇(11⽉10⽇)」等の様々な機会を活かした広報・啓発活動を検討し、無電柱化事業への理解を深めていただくよう啓発に努めます。
(2)無電柱化に関する情報収集・共有
国及び愛知県と連携し、低コスト⼿法や施⼯事例、最新技術等を始めとする無電柱化に関する情報収集に努めるとともに、本市の取組について、国や他の地⽅公共団体との情報共有を図ります。
(3)計画の進⾏管理
着実に無電柱化を推進するために、事業の進捗状況を適切に管理するとともに、実施状況や上位計画の状況等を踏まえて、計画の⾒直しの必要性等を検討します。 進⾏管理の⼿順は、PDCAサイクルを基本として実施します。Plan(計画)で計画の策定・改定、Do(実⾏)で整備⼿法の検討及び事業の実施、Check(評価)で実施状況 確認・評価及び国等の動向確認、Action(⾒直し)で社会情勢の変化等を踏まえた計画の⾒直しを検討し、必要に応じて公表します。