概要

無電柱化推進法の施工からはや3年が経ち、緊急輸送路の電柱占用禁止の措置が行われるなど、無電柱化を取り巻く情勢はめまぐるしく変化しています。
四国地方においても今後、さらに無電柱化が加速すると予想され、今回、道路管理者の立場から四国地方整備局の無電柱化担当者に「無電柱化を取り巻く最近の情勢」、また、当NPOから「無電柱化の最新事例」と題して講演していただきます。

詳細情報

日時 2020年2月17日(月)16:00~17:30
場所 高松商工会議所 201会議室
住所 香川県高松市番町2-2-2
主催 NPO法人電線のない街づくり支援ネットワーク
後援 一般財団法人 日本みち研究所
一般社団法人 無電柱化民間プロジェクト実行委員会
無電柱化を推進する市区町村長の会
参加費 無料(※資料が必要な場合のみ1,000円/部頂戴します)
交流会 18:00~20:00
会場:未定
費用:4,500円

スケジュール

16:00~16:02 開会
16:02~16:07 主催者挨拶          当NPO法人理事 佐伯康二
16:07~16:17 来賓挨拶
16:17~16:47 講演1「無電柱化を取り巻く最近の情勢」
国土交通省四国地方整備局道路部道路管理課長 大西良明
16:47~17:17 講演2「低コスト無電柱化の手法と最新事例」
当NPO法人理事兼事務局長 井上利一
17:17~17:25 質疑応答
17:25~17:28 NPOからお知らせ      当NPO法人理事 伊津元博
17:28~17:30 閉会

結果報告

高松商工会議所外観

❖ 開会あいさつ

当NPO理事 佐伯康二

3年前に無電柱化推進法が施行されたが、実際の進捗状況は悪い。この原因として資金・技術力共になく、行政・電力事業者・市民の三者の合意形成が成立していない。個人的に四国はほかの地区よりもスムーズに合意形成がなされているのを感じた。1~2年の遅れはすぐに取り返せると思う。

❖ 無電柱化を取り巻く最近の情勢

国土交通省 四国地方整備局 道路部 道路管理課長 大西良明

1)防災面での無電柱化の重要性
近年、平成30年9月に関西地方を襲った台風21号で電柱が約1700本倒れ、昨年9月に発生した台風15号では、千葉県で長期間の停電が生じた。四国地方でも平成30年の7月豪雨では電柱が倒れ、道路が寸断される事態となった。防災面での重要性が叫ばれる中、無電柱化の必要性が増している。

2)無電柱化推進計画・国土強靭化3カ年計画に関わる全国や四国での対応
特に平成30年は前述の西日本豪雨や台風21号など大きな災害が相次ぎ、それを受けて政府は緊急輸送道路約1,000kmの延長を計画した(国土強靭化3カ年計画)。
この数値目標は、かなりハードルが高いもので、その計画は粛々と進められてはいるが、無電柱化の推進で最大のネックとなっているのは、コスト高である。
かつ地上機器の下に巨大な特殊部を設置することも課題となっているが、そのコスト高を改善するために低コスト手法の検討が行われ、今年の1月に電線共同溝マニュアルが作成され、関係者に配布している。
道路占用については、直轄かつ国道において占用を禁止する法律ができている。四国では香川県と高松市、愛媛県ですでに実施されている。
徳島県・高知県については今年度中に実施、県以外のいくつかの市でも随時進められている。
道路占用に関しては、直轄国道から、県道・市道においてはバリアフリーを進めないといけない道路など、徐々に範囲を広げる政策を進めている。

3)ワンストップ窓口
全国1700ある自治体の中で、無電柱化を実施した自治体は、まだ400にとどまっている。その要因としては、専門の部署や予算配分、電線管理者との協議のノウハウが不足している点があげられる。その相談先をワンストップ窓口として設置。四国では、四国地方整備局が窓口となっている。

4)無電柱化の日・無電柱化推進計画
四国では、各県庁でパネル展を実施した。
また、香川県では地域の理念にもとづいて無電柱化推進計画を作成している。推進計画の中には、栗林公園や金毘羅宮周辺の無電柱化をうたっている。
先日、私自身、出雲大社に行く機会があった。出雲大社周辺が無電柱化されたが、年間の参拝客が200万人から600万人、参道のお店の客数が40万人から60万人、店の数も22店から70店に増えている。

出雲市神門通り 島根県観光写真ギャラリー提供

出雲大社神門通り観光マップ https://www.izumo-kankou.gr.jp/cmn/pdf/shinmon.pdf

評価が見えやすい観光面での話となってしまったが、四国地整では、防災・交通安全面での無電柱化も意識した整備を進めていきたい。

❖ 低コスト無電柱化の手法と最新事例

当NPO理事兼事務局長 井上利一

本日の強風が風速10m/sで、台風15号の最大風速が50m/sだったので電柱が倒れるのも頷ける。これからますます防災という意味で無電柱化の価値が高くなってくると思う。実際、地震にも地中化が強いことが知られている。平成30年の台風21号では、関西圏を中心に260万戸以上が停電し、私自身も恐怖を感じた。一方、昨年の台風19号では地中化された地域が30㎝程度冠水したが、地上トランスに問題がなかったそうだ。今年は無電柱化推進展を7月29日~31日の日程で行う。ビッグサイトが使えないのでインテックス大阪で開催される。
私たちのNPOは無電柱化を進めるためだけのために存在している唯一のNPOで、地方の担当者から相談されることがある。地方の担当者は無電柱化をやりたいが、お金もノウハウもないことの方が多いので、そういう方のお手伝いをしている。また低コストな材料を国交省に提案し、コストダウンのための工夫をしている。
無電柱化の最新情報として、経産省がついに本腰を入れて無電柱化に取り組み始めたそうだ。電気料金の制度改革や設備仕様の統一化などが検討されているという。
低コスト手法の先行事例として東海市と先斗町がある。両者とも無電柱化のために様々な工夫をしている。特に先斗町では道路が狭いため、民家に地上機器を設置したり、小型ボックスを半分に切って搬入したりするなど並々ならぬ苦労があったようだ。
今後、無電柱化は道路管理者・電線管理者・住民商店・専門家の四位一体で進めるということが重要になってくるのではないかと思う。

❖ 質疑応答

Q.経産省は具体的にどのように無電柱化に参画するのか?
A.私たちとしては「設備仕様の統一化」を推進してほしい。具体的な話はまだ聞いていないが電気料金の見直しについても、太陽光の賦課金のように個人の電気料金に上乗せするのかもしれない。

Q.海外の無電柱化はどうなっているのか
A.タイやベトナムなど東南アジアで急激に無電柱化が進んでいる。視察に行ったところ、かなり簡単な方法で行われていた。国の制度によって強制力の強い命令として無電柱化が行われているところもあった。安全への配慮が行われているとは言えない状況だった。

Q.四国の無電柱化を行う上で苦労等がありましたか。また好事例などありますか。
A.電線管理者との合意形成がやはりネックで、お互いの利益になるように裏配線などを活用している。景観区域に指定された地域の狭隘道路では技術的に無電柱化が難しいところもあるが、国や電線管理者等と相談している。

当日の会場の様子:高松商工会議所

❖ 閉会あいさつ

当NPO理事 伊津元博

5月25日にサンポートホール高松にて四国シンポジウムを開催する。無電柱化を推進する市区町村長の会の副会長である八幡浜市長が登壇されるので、行政担当者も多数参加される予定。

※5月25日に開催される無電柱化まちづくりシンポジウムin四国は、コロナウイルスの影響で延期することとなりました。再開の目途が立ち次第、ご案内させていただきます。

四国地区における電線類地中化延長の推移 国土交通省四国地方整備局資料による。