阪神・淡路大震災の発生から23年が経ちました。その年に生まれたお子さんも大学を卒業したとしたら社会人になっています。そこで今回は「震災と電柱」に関するアンケートで、芦屋市 都市建設部 道路課 無電柱化担当課長の三柴哲也課長様よりご回答いただきました(2018年1月10日)。

 

① 震災時に救助・輸送等で電柱・架線の倒壊・損壊があって苦労したケースがありましたか。
A:市内の至るところで,電柱の倒壊及び電柱の倒壊や損壊による架線の垂れ下がりがあり,救出現場直近へ消防車両が出動できないことが多くあった。
救助資機材を台車に積み,資機材搬送を行ったが道路の陥没等も多くあったため非常に苦労した。

② 震災後の復旧事業の際に電柱・架線の倒壊・損壊があって苦労したケースがありましたか。※①②に対して、具体的な写真・資料がありましたらお借りできますでしょうか。
A:電柱・架線の倒壊・損壊により,苦労したケースはあった。
特に架線については,二次災害防止のため,専門業者による対処が必要であり,道路啓開に支障をきたした.

 

清水町(建物倒壊、電線は被害なし)

清水町(建物倒壊による電柱傾斜)

 

 

 

 

 

 

清水町(道路をふさぐ電柱)

若宮町(倒壊した建物が電柱を倒した)

 

 

 

 

 

 

 

③芦屋市六麓荘などの無電柱化された住宅街で、特に震災の被害が少なかったなどの事例はありましたか。
※先日、お話させていただいた際、無電柱化されていたからという要因よりも地盤の固さなどの他の要因で被災率が落ちている可能性があり、要因として挙げにくいとのお話を伺いましたが、別の住宅地も含めて事例があれば教えて下さい。
A:震災当時、無電柱化された住宅街は六麓荘だけであった。六麓荘に関しては、電柱による被害というより、元々、山を切り開いた地区であり、地盤が強固であったため、被害が少なかったと思われる。
その他、JR芦屋駅北側においては、再開発事業により無電柱化がなされていたが、周囲がビルなどの強固な建物であることや、整備されて間もない頃であり、被害が少なかったと思われる。ただ、再開発区域の周囲の住宅地(主に木造)は、被害が大きかった。

④芦屋市の高い無電柱化率、日本屈指の無電柱化率(12.4%)ですが、23年前の阪神・淡路大震災を契機としているのでしょうか。
A:特に阪神・淡路大震災を機に、無電柱化を進めてきたわけではない。しかし、震災復興事業において、区画整理事業では区域の基幹となる道路を無電柱化し、街路事業では実施した路線の全線で無電柱化を行った。
震災後の平成8年以降に開発が始まった南芦屋浜地区においては,景観・防災の観点から無電柱化が行われている。

⑤震災によって倒壊した電柱の数、架線の切断箇所など、具体的な数字が分かれば教えていただけないでしょうか。
A:記録は残っていない。

⑥「震災(災害)と電柱」についての取り組みについて一言コメントいただけないでしょうか。
A:震災が原因で電柱が倒れたのではなく、震災により倒壊した家屋が電線・電柱に対し外圧を加えた(押した)結果、電柱・電線が道路上に倒れたケースが多いと思われる。
現に、電柱が道路を閉鎖した事例はあるが、電柱が民地側に倒れた事例は、あまり聞かない。
結果的に、倒壊した電柱が、救助・救援活動を遅らせた事は事実である。故に、電柱・電線がない道路が、防災上、好ましいのは言うまでもない。
今回の取り組みについて、電柱・電線がないことが、直接的に、災害の被害軽減につながるわけではないという事実も、併せて伝えるべきと思う。

⑦無電柱化条例を作る予定があるか。ある場合はいつ頃の制定を予定していますか。
A:無電柱化条例を制定する予定がある。
予定としては、平成30年9月を目指している。

⑧「無電柱化の推進に関する法律」の制定を受けて、具体的な取り組みを何かしておられますか。
A:(第8条)無電柱化推進計画の策定
平成29年11月に推進計画策定委員会を設置し、計画策定に向けてスタート。委員には、道路管理者、電気・通信事業者に加え、道路埋設物占用者、市民を加えた。平成30年10月の計画公表を目指している。
(第10条)無電柱化の啓発
平成28年11月10日に無電柱化シンポジウムを開催。
平成29年11月10日には、第1回芦屋市無電柱化推進計画策定委員会を開催。さくらFMによる「無電柱化によるまちづくり」をテーマに、ラジオ対談番組の公開収録を開催。パネル展も11月6日~17日の期間で実施。
(第11条)道路占用の制限
道路防災・交通安全・道路景観の観点から、電柱の道路占用を制限する方向で、関係事業者と協議中。

無電柱化の日イベント:パネル展示(芦屋市役所)

 

無電柱化の日イベント:FM公開放送(芦屋市役所)

◎上記において頂いた回答に対してのNPOからの再質問
「電柱だけ倒れた事例は見られない」とのご回答でしたが、本当にないのでしょうか?
※(参考資料として添付した)熊本地震時の写真など、電柱のみ倒れている例がありますが、
やはり芦屋市では事例はないのでしょうか。
※阪神淡路大震災時の特別な激震で電柱のみというより根こそぎみたいな状態だったのでしょうか。
当時の他の周辺都市での事例を知っていたら教えて下さい。

私自身は,震災当時,在職していなかったため,当時のことは聞いたり,資料で見たりという程度で,お答えします。
市の報告書等の資料では,電柱の倒壊は把握していません。
つまり,電柱だけの倒壊があったのかどうかは,不明です。
しかし,多くの写真で見る限り,電柱だけが倒れている写真はなく,電柱が倒れているところは,家屋も倒れています。
また,(送付いただいた熊本の写真で)のり面崩壊による電柱の倒壊事例がありますが,このような事例は芦屋市でもあります。

熊本地震発生時での電柱倒壊①(国土交通省資料)

 

熊本地震発生時での電柱倒壊②(国土交通省資料)

送付した写真にもありますが,倒れている建物の周囲でも,電柱が残っていたりします。
逆に,木造建物が多く密集し,ほとんど倒壊しているような場所では,電柱も道路側に倒れています。

 

船戸町(右側は再開発地区:無電柱化)

JR芦屋駅と国道2号に挟まれた区域に,市営住宅が集まっている区域があります。(震度7の区域)
市営住宅はRC造なので,倒壊はなかったのですが,電柱も倒れていませんでした。

このような事例から,電柱のみの倒壊は,確認できなかったのです。

以上が,こちらの回答の根拠です。

電柱だけの倒壊を把握するのは,非常に難しいと思いますが,
家屋の倒壊が,電柱の倒壊を併発し,救助活動や道路啓開の支障になったのは,事実であると確認しています。

電柱の倒壊という視点では,上記のような内容になりますが,
私見ながら,「電線の垂れ下がりが支障になった」という事例の方が多くあると思います。(裏付ける資料はありませんが…)

清水町(建物倒壊による電柱傾斜)