皆さん、こんにちは!
今回の東京活動委員会では、東京電力パワーグリッド株式会社 配電部 無電柱化推進グループ チームリーダー 関根様に「東京電力パワーグリッドの無電柱化への取り組み」についてご講演いただきました。今回の講演内容について、事務局の塚田より報告させていただきます。
※かなり丁寧にご説明いただきましたので、ダイジェスト的な内容になっていますこと、ご理解下さい。

1.レベニューキャップ制度(第1規制期間)における整備目標
・レベニューキャップ制度基礎知識
▶第8期無電柱化推進計画では、道路管理者が主体として整備する区間として5か年で約 4,000km(東京電力エリアは約 1,750km:全国比 44%が対象)の事業着手目標が策定され、各地公体と協働し、順次路線合意のうえ無電柱化事業推進に取り組んでいる。
▶同計画では、電線管理者が長期停電の防止区間等の単独地中化を実施していく役割が明文化されたことから、 自治体ニーズ(防災協定等に基づく要請)や予防伐採が膨大となる箇所、発電車設置が困難な箇所などを考慮し、自社計画として無電柱化を実施
▶レベニューキャップ (RC)制度第1規制期間(2023 年度~2027 年度の5年間)では、電線共同溝方式で 822km 、単独地中化方式で 60km を計画値として計上。

『レベニューキャップ制度とは』(経済産業省 電力・ガス取引監視等委員会事務局) https://www.emsc.meti.go.jp/info/pamph/index.html

一般送配電事業者における今後の無電柱化の取組。 各電力会社の目標値。「電力レジリエンスに伴う無電柱化」とは電力会社の単独地中化を指す。

2.無電柱化推進体制と整備実績
(1)無電柱化推進体制……東電 PG と東電タウンプランニング
◎東京電力パワーグリッド
道路管理者との調整窓口、無電柱化計画から工事に至るまでの一元管理
◎東電タウンプランニング
▷東京電力 PG 無電柱化業務対応
・東京都無電柱化事業の機能集中化による窓口対応
▷無電柱化コンサルティング
・再開発や宅地開発の無電柱化まちづくりをサポート
▷無電柱化工事
・電線共同溝施工や工事の提案
▶国の無電柱化に関する法整備、東京都をはじめとする各地公体の推進計画策定の動静を捉え、各都県域に無電柱化対応組織を順次整備、無電柱化推進体制を強化。
▶上記に併せて、東電タウンプランニング(東電 PG 子会社)内へも無電柱化対応セグメントを設置、東京電力 G 内の無電柱化対応箇所を明確化、スキル継承体系を整備。
(2)実績
▶配電線地中化率は、2022 年度末断面で、関東エリア 10.3% 、都心部 88.7% の進捗。
▶電線共同溝単価の低コスト化
・既存管路活用方式の拡大
・仮復旧材の活用
・安価な管路材の適用等……塩ビ管、CCVP→ECVP
→2021 年度は 2019 年度比△ 0.19 億円 /km(11.4 億円)の低コスト化を実現。
(3)電柱増減数
▶東京電力エリアでは、住宅開発に伴うケース、再エネ発電所関連、市街地開発等による設備構築により、2021 年度 +9.9 千基、2022 年度 +7.7 千基
▶緊急輸送道路では、電線共同溝整備等の無電柱化への取り組みにより、2021 年度△ 0.2 千基、2022 年度 2Q 迄△ 0.02 千基と着実な減少トレンドを継続。

工事着手の基準日の考え方

約款改定による負担軽減イメージ

3.新設電柱抑制と既設電柱減少への取り組み
(1)託送供給等約款変更規定(工事費負担金)~新設電柱抑制~
▶市街地開発事業等において無電柱化を行う場合は、これまで開発事業者にて全額費用負担をいただいていたが、一般送配電事業者が地上機器・電線等にかかる費用を負担するよう託送供給等約款を見直し、開発事業者の費用負担が軽減され無電柱化を選択しやすい仕組みが構築され、2022年 1 月からの供給申し込みより運用を開始。
ただし、供給地点が行政庁から認可、認定等を受けている市街地開発事業等であることが条件。
なお、道路局から発出されている「道路事業に併せた無電柱化を推進するための手引き Ver.2 」にもとづき、原則として、道路を掘削する工事着手基準日の 2 年前までの通知に協力願いたい。

(2)既設電柱占用制限の対応 ~既設電柱減少~
▶2023 年 6 月 28 日、経済産業省資源エネルギー庁電力・ガス事業部電力基盤整備から一般送配電事業者宛てに「道路法第 37 条による占用制限通知に関して(事務連絡)」が発出され、既設電柱に対しても占用の禁止が示された。
▶既存電柱の占用制限は、地方ブロック協議会にて合意している路線(無電柱化事業の事業中または予定している区間)において地域防災計画上、電柱倒壊による道路閉塞の影響が大きい区間など防災上の優先度の高い区間から順次指定されるため、道路管理者、関係事業者と連携のうえ対応する。

4.無電柱化整備方式(単独地中化方式)
(1)無電柱化整備方式には
▶地中化:電線共同溝
1)電線共同溝方式、2)電線共同溝 PFI 事業、3)包括発注方式
▶地中化:電線共同溝に基づかないもの
1)自治体管路方式、2)要請者負担方式、3)単独地中化方式 ⇒
⇒3)単独地中化方式
a)電線管理者が全額負担するもの ←東電 PG
b)官民連携無電柱化推進事業
c)観光地域振興無電柱化推進事業
▶地中化以外:電線共同溝法に基づかない
1)裏配線管路方式、2) 軒下配線方式
(2)単独地中化方式
工事着手の基準日の考え方
▶(東京電力 PG 様が考えておられる)単独地中化方式の対象については、無電柱化ニーズが電線管理者であり、自ら計画し行う整備事業主体・費用負担が電線管理者であり、レジリエンス強化に資する路線を優先し計画 、対応を進めている。

(3)単独地中化方式事例と課題
▶静岡県香貴山
【概要】香貫山は、山頂には気象レーダー局等の重要施設があり、台風接近の都度、樹木接触による断線が多発。国土交通省レーダーへの通信回線地中埋設化の計画と、当社単独地中化計画を工程調整し共同施工にて実施。
【効果】浅層埋設の適用、配管施工、掘削費用、道路復旧費用を分担することで、両者コストダウンを実現。
【課題】山間部は、急勾配、階段等により作業車、重機の入所が困難(不可)等、通常の施工方法が適用出来ないため施工目線での、整備手法、工法(資機材運搬方法含め)を検討する必要がある。
【懸念材料】電柱共架者が当社のみの箇所は、単独の意思決定で進めることが可能であるが、他社設備が共架するケースでは、共架事業者との合意形成が必要となることで、進捗への影響を懸念。

5.無電柱化事業スピードアップ、低コストへの取り組み
(1)無電柱化事業コスト低減への取組~東京都例~
▶無電柱化事業のコスト削減、スピードアップに向けた取り組みは従前より継続的に取り組んでおり、東京都の例では、無電柱化低コスト技術検討(東京都・東電・NTT・CATV 等参画)を協働実施し、低コスト管路材(ECVP)、特殊部内空高さの見直し(1.8m⇒1.6m)等により、2020 年度(令和 2)には、道路管理者負担コストの 1/3 カット(3.5 億円/km から 2.3 億円/km)達成。
〇東京都無電柱化推進計画(改定)
https://www.kensetsu.metro.tokyo.lg.jp/content/000052901.pdf

技術開発によるコスト縮減

(2)既存管路活用方式(既存ストック)
▶既存管路活用方式は、電線管理者所有の管路設備を電線共同溝の一部として活用することで、配管工事規模縮減、事前支障移設回避等により事業スピードアップ、低コストとなる。
▶東京電力 G は、無電柱化整備路線に 既存管路が存在する全ケースで、道路管理者に対し既存管路活用方式の採用検討(経済性比較)を提案することを継続し、包括受託できる実施体制を準備し確実に対応する。
(3)小口径カーブ工法、常設作業帯
非開削での管理敷設を可能とする小口径カーブ工法 をグループ会社にて研究開発。地上構造物の解
体復旧が不要となり、 施工時間は 1/3 程度に短縮の見込み 。(現場適用済)
【適用箇所例】
・高い塀・盛り土など地上構造物により容易に開削できない住宅供給
・道路横断や植樹帯等、地上構造物を解体できないケースの管路
【コスト効果】
・塀+タイル舗装有ケースの概算想定値→△ 0.5~1 百万円/箇所程度
▶管路、特殊部の敷設作業工程の中で 道路開放前後に実施する仮埋め戻し、仮復旧、再掘削を不要とする常設作業帯の適用を志向 適用可否は、道路管理者、交通管理者との協議による。
【適用箇所例】
・車道規制を伴わない、歩道部での設置
・歩行者通行に支障のない広幅員の歩道
【コスト効果】
・仮設+誘導員追加無ケースの概算想定値→△ 0.2~0.5 百万円/日程度
(4)東京都チャレンジ支援制度 (狭隘)における無電柱化への取り組み
▶東京都チャレンジ支援制度を活用し、狭隘路線を無電柱化する高難易度な事業では、電力ノウハウを
駆使し、従来の発想にとらわれない手法の検討 、 配線計画の工夫 、 民地・公共用地を活用した地
上機器配置等により無電柱化整備の実現に向け取り組んでいる。
▶巣鴨地蔵通り⇒トータルマネジメント体制による一貫施工
設計段階で試掘の実施、 施工者協働設計により設計精度を向上し、事業の手戻りを回避して事業期
間7年→4年へ短縮。
(5)掘削を伴わない工法(地上設置)による無電柱化の検討
▶山間部や島しょ地域等の特有な環境を踏まえた、簡易な構造による整備手法の検討をエネ庁主体で
実施しており、電線管理者として検討委員会に参加。(下図)

「無電柱化事業における合意形成の進め方ガイド(案)」【基礎編】より

6.島しょ地域の無電柱化への取り組み
(1)島しょ地域の無電柱化整備計画
▶2019 年(令和元年)台風第 15 号により、一部の島にて電柱の倒壊や断線が発生。激甚化する台風等の
自然災害に対しても停電・通信障害が発生しない島しょ地域の早期実現に向け、2022 年 1 月 28 日
に「島しょ地域無電柱化推進計画」を策定。2030 年代の整備完了に向け、都道 170km 及び 18 港、
5 空港の無電柱化整備計画が示された。
▶上記に加え 2022 年 4 月 9 日には、都道のみならず町村道も含め、一島丸ごと電柱のない島の実現に
向け、「利島・御蔵島無電柱化整備計画」が策定され、東京電力グループで道路管理者業務、電線共
同溝設計・施工を包括受託し、電気事業者ノウハウを活用し事業の促進に取り組んでいる。
(2)島しょ地域の無電柱化への取り組み~母島小型 BOX、トレンチャー~
▶島しょ地域の無電柱化整備にあたっては、島しょ特有の環境を踏まえた簡易な構造による整備手法
の検討導入することを目的とし、東京電力 G が包括受託により整備。事業スピードアップ、低コス
ト化の実現を目指す。
▶整備を先行する母島では、現場環境、需要状況を踏まえ考案した母島小型 BOX の採用を決定。また
施工面ではトレンチャー(掘削重機)の島しょ地域での適用を検討中。
【参考】トレンチャーを使った試行の様子
国土交通省北海道開発局函館開発建設部では、寒地土木研究所の技術協力の下、令和 3 年 9 月に国
道 5 号赤松街道電線共同溝において、無電柱化施工の新たな低コスト手法を試行しました。