無電柱化を推進する市区町村長の会 無電柱化に関する勉強会(東北ブロック)
日時 令和4年2月22日(火) 9:30~11:20
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参加・申込者数 146名
Contents [show]
◆挨 拶
無電柱化を推進する市区町村長の会 会長 長野県佐久市長・栁田 清二
このたび、無電柱化を推進する市区町村長の会会長を務めさせていただくことになりました。無電柱化を推進する市区町村長の会は、平成27年に設立され、令和4年2月22日現在、292自治体に加盟いただいている。無電柱化推進に関する法律をはじめ、無電柱化推進に向けて国から数々の施策が打ち出されていることは喜ばしい。一方で、地方公共団体が無電柱化を進める上では、低コスト手法の導入・技術革新の推進・技術力の向上・先進事例の情報共有などが必要である。そして、住民・自治体・電線管理者といった関係者すべてにインセンティブが働くような制度設計が重要であると考える。法改正をはじめ我々の活動において、超党派においてご協力いただいていることは大きな後押しとなっている。ご関係の市区町村長の皆様においても、関係の国会議員に働きかけていただき、初期の目的達成にご協力いただけるとありがたい。
無電柱化を推進する市区町村長の会 東北ブロック幹事 岩手県陸前高田市長・戸羽 太
東北ブロックの幹事を務めさせていただいております。東日本大震災を通じて、電柱がいかに災害を大きくしてしまったかを痛感した。今世界の中で日本は先進国であるが、他の国はできているのになぜ日本は無電柱化ができないんだということをいつも思っています。政治があと推しし、皆様の理解が深まれば、日本の無電柱化もより進んでいくと考える。しかしコストの問題等々があり、そういう意味で全国の仲間の皆様方としっかりと一つになって無電柱化に取り組んでまいりたいと考えている。
◆無電柱化に関する国からの情報提供 「無電柱化の最近の取り組みについて」
国土交通省 道路局 環境安全・防災課 交通安全政策分析官 真田 晃宏
今年度5月に策定した無電柱化推進計画(R3~7)のポイントは、新設電柱を増やさない・徹底したコスト縮減・更なるスピードアップの3点である。
まず1点目について。無電柱化を推進して既設電柱を減らしても、電柱が新設されてしまうことで、年7万本ペースで増えてしまっている。電柱の新設は、主に市町村道において発生している。電柱新設の抑制策として、電柱を道路区域に立てさせないための占用禁止措置が有効と考える。現状、直轄国道は100%占用禁止措置を適用しているが、市町村道では4割ほどにとどまっており、道路法37条に基づく占用禁止措置を進めていきたい。緊急輸送道路の路線名の告示により、市町村道においても占用禁止措置が有効になるのでご協力お願いしたい。一方で、道路区域に占用禁止措置を適用しても、沿道民地に逃げられ設置されてしまうことがある。そこで、「届出・勧告制度」を創設した。沿道民地に電柱を新設する際に、事前に立てる場所の届け出を義務付けるもので、電柱倒壊による道路閉塞の防止効果が期待される。今後具体的な指定区域を検討していく予定である。
2点目について。各整備局において、低コスト手法導入のためのマニュアルを作成し、市町村の皆様へ配布しているので、積極的な導入をお願いしたい。
3点目について。設計の仕事と電線共同溝工事の仕事を、同会社に1本でまとめて発注をしようという包括発注の仕組みを試行中である。また電線共同溝事業におけるPFI方式を導入している。設計・工事・維持管理を1本にまとめて仕事を発注できる。工事終了後に費用を分割し平準化して負担できる。自治体職員が従来やっていた他専用物件との調整業務を、受注者に任せることができる。といったメリットがある。来年度より補助事業においてもこの方式を活用していただけることになりましたのでご活用いただきたい。
予算との関係について。国と地方公共団体より電線管理者へ資金を貸し付ける、電線敷設工事資金貸付金という制度を創設。しかし平成25年度に創設後、現在まで制度活用の実績がない。ヒアリングを通じて、ケーブルテレビなど資金的体力がない小さな会社にはニーズがあることを確認。各自治体において民間へ資金貸付をする制度づくりが、本貸付金制度の導入のボトルネックとなっているので、ご協力お願いしたい。
電線管理者の皆様に電線共同溝地中化を実施いただくインセンティブを付与する目的で、占用料を減免する措置を国では行っておりますが、各自治体管理の道路についても同様の措置をしていただいているところもありますので、積極的な活用をお願いします。
これまでにご説明した各種事業導入に際しご不明な点がございましたら、各地方整備局の登録道路管理課にワンストップ相談窓口を設置しておりますので、ご活用ください。
詳細はこちらhttps://www.mlit.go.jp/road/road/traffic/chicyuka/soudan.html
◆経済産業省の無電柱化の取り組みについて
経済産業省 資源エネルギー庁 電力・ガス事業部 電力基盤整備課 課長補佐 干臺 峻
電柱新設の原因を詳細に探っていく必要がある。足元の感触ではあるが、住宅への供給申込が全体の7割ぐらいである。また数軒単位で申し込む際に、電柱を数本単位で建てる傾向があることも電柱新設を加速させている。
低コスト化に向けた取り組みとしては、①ケーブル:高圧ケーブルと低圧ケーブルの仕様統一、および電力10社全体でのケーブル共同調達、②ソフト地中化:全国での仕様統一(2021年度完了)、③地上機器:コンパクト化・浸水対策・仕様統一、があげられる。電力側からもこういった取り組みをデベロッパーや開発事業者の方々にアピールしていっている。経産省では2019年度に、これまでの低コスト手法の導入実績をまとめた「無電柱化ベストプラクティス集」を公開している。
詳細はこちら https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2019FY/000113.pdf
電力レジリエンス強化の観点からの無電柱化推進については、優先順位をつけて取り組むべき。病院や医療センター、無線基地など停電の際に電源車を派遣しなければいけない重要施設について、さらに単線で供給されているようなところを率先して進めていくべきと考える。
太陽光発電所において、保安規制を回避するために1つの発電設備が分割設置される事例がある。この場合、分割された各区画についてそれらの名義の方々にメーター含めて電線をつながないといけなくなり、電柱の数が増える要因になる。そこで、保安規制回避ための分割設置を規制することを決定。2022年4月より施行予定である。
レベニューキャップ制度の導入にあたり、託送料金制度を改正した。現行は、向こう3年に発生する費用を算定し、料金単価を設定していた。これを2023年4月からは、料金単価の設定根拠となる事業計画の提出を求め、発生する費用を算定した上で、収入上限を設ける。無電柱化計画が取り込まれているかなどの観点から、経産省として事業計画を確認していき、計画の達成状況についても評価していく。
市街地開発事業などにおいては、電線共同溝方式以外においても送電事業者が全体費用の1/3を負担する仕組みを、2022年1月から運用開始する。
詳細はこちら https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/other/pole/
◆PFI事業の事例紹介 「宮城県富谷市の事例について」
国土交通省 東北地方整備局 道路部 道路管理課 課長補佐 佐々木 靖
国においては、PFI事業を通じて、無電柱化推進に向けた法整備・推進施策・規制緩和・民間技術の提案の選択肢拡大に取り組んできている。平成29年度より、各地方整備局において、一括発注効果・財政の平準化による財政負担の低減・民間ノウハウを取り込むなどによって、低コストで迅速な無電柱化の推進が可能となるPFI手法を試行的に実施している。
電線共同溝PFI事業の目的は、調査設計から施工および一定期間の維持管理まで含めた、包括的かつ長期間に渡る契約方式を適用して、効率的・効果的な事業推進を実現することにある。包括的契約とすることで、①各種工事工程の最適化、②高精度の詳細設計による手戻りの最小化、③早期合意形成による円滑な事業推進、の3つの工期短縮効果が期待されている。さらに、調査・設計・施工・維持管理業務を包括して発注し、長期国債を活用した割賦払いによる予算の平準化を図っていくこととなっている。従来、本体工事の期間で予算もピークを迎え、短期集中投資する必要があった。PFI事業の場合は、本体工事の完成までは民間資金を投入し、事業予算は工事後の維持管理の期間に平準化した額を負担していくことになり、予算確保の観点では非常に有利になる。
東北地方整備局管内で実施されている富谷地区電線共同溝 PFI事業について。PFI の対象範囲としては、管路部・特殊部に関する調査設計・工事業務・維持管理業務となっている。PFI事業の実施状況は、平成29年度の中国地方整備局を皮切りに、令和3年度までに7つの地方整備局で契約締結し、事業を実施している状況となっている。手続き開始年次や延長などによって、工事期間・維持管理期間にばらつきがあるが、試行的に実施している。平成31年以降は、最大30年までの国債設定が可能となっている。
富谷地区の電線共同溝PFI事業の進捗状況について。昨年度末に契約締結をしていて、今年度は設計業務ということで、国側からの貸与資料の整理・現地での地形測量・埋設物の調査試掘などを実施している。これらを踏まえて詳細設計を進めていく予定。また調整マネジメントとして、地元関係機関との調整や地元住民との会議なども実施している。地形測量は、BIM/CIMを考慮して3次元測量を実施しており、既存埋設物の調査結果と統合させ、設計の品質向上や地元調整への活用が図られている。試掘調査については、特殊部予定箇所については直接掘削による確認を、それ以外の箇所については予備設計や既存埋設管の幅輳箇所を抽出し、非破壊による埋設物調査により埋設物を把握している。
BIM/CIMの詳細はこちら http://www.nilim.go.jp/lab/qbg/bimcim/bimcimsummary.html
◆無電柱化の事例紹介 「山形県酒田市の事例について」
国土交通省 東北地方整備局 酒田河川国道事務所 工務第二課 課長 坂田 亨
今回ご紹介するのは、酒田みなと~遊佐の区間。高速道路構築にともない、並走する国道7号の付替えが発生。国道7号には既に情報ボックスという通信管路が埋設されていて、移設に伴いこの管路を山側へ移設し、その後に高速道路を建設する。①高速道路の供用予定が迫っており迅速な施工が必要、②国道を供用させながらの作業で施工ヤードの省スペース化が必要、③農地と隣接するため工事に伴う安全確保・効率的施工が必要、といった事情から、材料および施工方法も含めた情報ボックス施工の検討を行った。
管路方式の検討と選定について。従来の情報ボックス管路は、ボディ管とさや管(高密度ポリエチレン製)から成るものを使用していたが、大掛かりな施工設備が必要だった。一方、さや管に繊維さや管を用いたものでは、ボディ管の直径サイズの低減・mあたりの単価低減・施工スペースおよび施工時間の低減、が可能となっている。繊維さや管には、①複数条数をまとめて一括敷設が可能、②柔軟でジョイントレス、③軽量かつコンパクト、という長所がある。これらの特徴により、施工期間の短縮、施工効率向上、輸送コスト低減、施工スペースの削減、が可能となっている。また、耐寒性・耐熱性・耐薬品性・低摩擦性といった特徴も有している。一方で、①敷設時にねじれが発生しうるので、牽引車に搭載したカメラで確認が必要である、②信頼性などの点で新技術に対する民間事業者の理解が必要、③管路メンテナンスの基準確立が必要、④材料調達の問題で納期が長い、⑤巻き癖がついた場合は修正しづらく、ケーブル敷設にも影響が出る、といったデメリットもある。
新技術普及に向けた活用策としては、まず先ほど述べた、ボディ管の小型化に伴う省スペース化・工期短縮があげられる。また、セパレータ管などを柔軟に運用することで、色々なサイズのさや管を組み合わせて設置することが可能である。さらに、情報ボックスなどの既存通信設備の余剰スペースを有効活用した、繊維さや管の後入れ増設が可能である。
◆NPO法人電線のない街づくり支援ネットワークからの話題提供
特定非営利活動法人電線のない街づくり支援ネットワーク 事務局長 井上 利一
我々、NPO法人電線のないまちづくり推進ネットワークと申しまして、今回の勉強会の運営等をお手伝いさせていただいております。現在15年目に入ったところでございます。
資源エネルギー庁の方からもお話があった通り、新規の住宅開発地で毎年5万本くらいのペースで電柱が増えていると言われています。新規の住宅開発地で無電柱化する際に、一区画あたり150万円程度費用がかかるとされています。このうち、電力ケーブルや地上機器に関する約3割相当について、今年1月より電力会社の方で負担していただけるということになりました。
次に、国土交通省の都市局からの情報になります。東京都がパイロット事業として、3000平米以内の住宅開発地について、無電柱化にかかった費用を補助する制度を設けております。これがさらに来年度からは、国が半額を補助していただけるということになり、事業者負担は実質1/5になるということです。この制度を活用するにあたり、各自治体の方で補助金の制度を創設する必要があるということですので、是非ご協力いただきたいと考えております。
◆挨 拶
無電柱化を推進する市区町村長の会 会長 長野県佐久市長・栁田 清二
今日皆様からお話を伺い、少しずつ様々な動きが進んできているということを実感しております。今後も、無電柱化を推進する市区町村長の会員においては、情報共有をしていくということが大変重要なことになろうかと思います。今回東北で行いましたけども、それぞれのブロックの役員の市区町村長さん、また職員の皆さんにおかれましても、令和4年度においては、具体的事例の紹介や視察申し入れなど、今後の活動のアドバイスをいただけたら嬉しいと思っております。無電柱化を推進する市区町村長の会・NPO法人電線のない街づくり支援ネットワーク・経済産業省・国会議員の方々、それと日頃一方ならぬお世話をいただいている国土交通省との連携を深め、活動を活発化させながら、私どもの役割を新たに探って行きたいと思っております。