取材報告者 濱田桜
取材内容 「電柱・電線の有無における景観の意識調査」
2月22日(火)メールにて、富山県射水市 観光協会事務局長の春日哲男様に取材させていただきました。富山県の観光HPでは様々な魅力あふれる写真を掲載しており、その中の1枚に電柱・電線が写る写真を選択していることを拝見いたしました。その舞台が富山県射水市の内川の写真であったことから、射水市の観光協会、春日様に御意見をお伺いすることにいたしました。3月2日(水)メールにて、観光や旅行を含めた広告代理業務の企画制作等を担当する方(匿名希望により以下「A様」と称する)に取材させていただきました。2月22日(火)~3月8日(火)Google Formを利用し、日本を訪れたことがある外国人7名を対象にアンケートを実施しました。回答者は全員、出身国よりも日本の方が電柱や電線が多いと感じている方です。
以下、質疑応答は取材・アンケートのご回答を一部抜粋し、まとめて紹介いたします。
Contents [show]
- Q1 観光webサイトの「景観」の写真を選択する際にこだわっていることは?
- Q2 電柱や電線が写りこまない写真を掲載する観光サイトが多い中、電柱・電線が写りこんでいる写真を選んだ理由は何か?
- Q3 電柱や電線のない景観は美しいと思うか?
- Q4 その他のご意見またはコメントがあれば教えていただけることはあるか?
- Q5 webサイトや広告、パンフレットの写真にこだわりはあるか?
- Q6 撮影や写真を選択する際に電柱または電線の有無を気にしたことがあるか?
- Q7 パンフレットやwebサイトに記載している写真や電柱・電線について観光客や住民から寄せられたことのあるご意見はどのようなものか?
- Q8 日本の景観についてどう思いますか?(複数選択可)
- Q9 日本で美しいと思う場所や景観は?
- Q10 日本の景観について、ネットやガイドブックの写真と実際の様子で違うと思ったことがあれば教えていただけることはあるか?
- Q11 無電柱化に対してどのようなご意見があるか?
- まとめ
- 全体まとめ
Q1. 観光webサイトの「景観」の写真を選択する際にこだわっていることは?
A1. 〔春日様〕①オンリーワン ②コンセプトにあっているか ③不自然でないか の3点。
Q2. 電柱や電線が写りこまない写真を掲載する観光サイトが多い中、電柱・電線が写りこんでいる写真を選んだ理由は何か?
A2. 〔春日様〕内川の景観についてかと存じますが、内川のコンセプトを「昔懐かしい昭和のレトロ感漂う湊町」としておりますので、昔懐かしい画像を使用しているものです。
Q3. 電柱や電線のない景観は美しいと思うか?
A3. 〔春日様〕撮影場所・その風景の立ち位置(コンセプト)などにもよると思います。単にきれいな風景ということであれば電線が無いほうがきれいといえるでしょう。
Q4. その他のご意見またはコメントがあれば教えていただけることはあるか?
A4. 〔春日様〕先にも述べましたが、撮影対象となる風景のコンセプトが一番重要かと思います。
一例>以前JRのCM・ポスター制作に際し内川で立山連峰をバックに「吉永小百合さん」の動画とポスターを制作したことがあります。その際の画像修正において、「東電の煙突・煙の削除」をしましたが電柱についてはそのまま残したものになっておりました。景観的な配慮
Q5. webサイトや広告、パンフレットの写真にこだわりはあるか?
A5. 〔A様〕旅行に関する広告展開が多いので、その観光地・観光施設がより伝わりやすい写真の選定を心がけています。
Q6. 撮影や写真を選択する際に電柱または電線の有無を気にしたことがあるか?
A6. 〔A様〕消費者に伝えたい物に大きく被っている物は避けるようにしている。ただし実際にある電柱を加工して消してしまう等、消費者が訪れた際に見る景観と大きく変えてしまう事はしないようにしています。
Q7. パンフレットやwebサイトに記載している写真や電柱・電線について観光客や住民から寄せられたことのあるご意見はどのようなものか?
A7. 〔A様〕昔に「実際にその場所に訪れたらパンフ掲載写真と違って電柱が邪魔で同じような写真が撮れなかった」といったクレームがあったようです。
Q8. 日本の景観についてどう思いますか?(複数選択可)
A8. 〔外国人の方〕
Q9. 日本で美しいと思う場所や景観は?
A9. 〔外国人の方〕・普通の街並みでも十分きれいだと思います!行ったところを挙げると、厳島神社です!
・街が綺麗で伝統的な建物が多いです。
・海岸、里山など自然の景観
・富士山と洞爺湖
・白川、富士山、高山、勝浦
・函館山、大阪城、二条城、明治神宮、伏見稲荷大社、ラジオ会館、大阪の町中と橋
・長野県の上高地や新潟県の雪山
Q10. 日本の景観について、ネットやガイドブックの写真と実際の様子で違うと思ったことがあれば教えていただけることはあるか?
A10. 〔外国人の方〕・ちょっと古い建物が意外に多いです。
・裏通りなどを通ったら、ネットやガイドブックにある綺麗な写真と違いますが、地味を味わえて最高だと思います。
・ネットやガイドブックの方がキレイな気がするが、角度と光線の問題かなと思います。
・加工でガイドブックでの写真の方が綺麗かも。
Q11. 無電柱化に対してどのようなご意見があるか?
A11. 〔外国人の方〕・とても素晴らしい理念だと思います!環境や安全などにとどまらず、防災まで心掛けているなんて、本当にいろいろ考えさせられました!ぜひ、皆様にも注意喚起ができるように、頑張ってほしいです!
・無電柱化は街の風景に役に立つと思います。
・景観よりは安全性に大きなインパクトがあるかと思います。
・珍しい意見かもしれませんが、日本の電柱はどちらか言うと好きな方です。街の景色の一部だと思います。逆になくしたら不自然だと思いますが、これはあくまで自分の意見です。
・まぁあ地震があったらないほうがいいと思いますが、今の社会ではありふれたものになっていましたから、今時気になっていないかもしれないです。
◆まとめ
春日様、A様、外国人の方々への取材・アンケートを通して、景観をどのような存在として見せ、どのように受け止めているのかを知ることができた。住民、観光客、その土地を知ろうとするお客様など知識の差がある中でも、統一したコンセプトが存在すると地域性という強みになると感じた。国内ではそれを理解し、各地のイメージを確立させていることも実感する。外国人の方々へのアンケートでは日本は現代的と古風両方がある、つまり都会と田舎両面の美しさがあると回答した人が多く、地域性を考えて売りにしている実態があらわれているのではないだろうか。
また、webサイトや広告、パンフレットなどに掲載する写真は発信する立場を考慮し、より美しい場所や画角、主にメイン通りを選んでいることがわかった。しかし、現地を訪れてあまりにも違和感がある状態を避けるために繊細な加工、工夫を凝らしているようだ。実際に電柱や電線のない場所の選択や避けての撮影が行われていることや外国人が美しいと感じる場所は基本的に電柱や電線が目立たない配慮がなされている場所であることから、無電柱の世界が美しいと感じているという予想は適している。また、そのような美しい場所は単に景観が自然的であるだけでなく、賑わいのある都会的な風景も含まれている。しかし、日本の電柱や電線の存在は無電柱化の後進国であることを示すように、珍しく情緒ある日本らしい景観としてプラスに捉えられる興味深い意見もあった。地域の魅力を発信するためにどこを切り取るのかは非常に重要だ。一時的な美しさから実際に訪れ、見渡しても美しいと言えるようにするためにはその場所の実態を知る人が景観問題に声を上げていく必要がある。それが、国内、国外からの集客を増やし、地域をさらに盛り上げるきっかけになるのではないだろうか。
今回は、アンケートの回答数がかなり少なく、偏った回答であった可能性が見られる。そのため、外国人の意見としてまとめる際には母数の確保と地域の偏りが起こらないように今後意識していきたい。
◆全体のまとめ
電柱・電線の有無における景観の意識調査として取材やアンケートを行うことで、現状と今後の課題を見出すことができた。景観はその場を象徴するものとして、非常に重要視され、中でも写真を撮る際に電柱や電線が写らない場所、角度を一部分の切り取りとして選んでいることは予想通りであった。しかし、あまりに異なる景観は求められておらず、誰もがその場所を変わりない美しさと感じられる絶妙なラインをせめたものが私たちの目には多く届いていることを感じた。また、必ずしも、無電柱化の世界が美しいとは言い切れるものではなく、その場に適した景観が各地存在することも知れた。それでも今回の調査を通して、私は無電柱化の世界が広がってほしいと考える。無電柱化についてはまだ無知な人が多く、防災や安全面としての認識がほとんどで景観に着目する人はわずかであるのが現状だ。すぐに景観向上のための無電柱化は難しいだろうが、防災や安全面が入り口であったとしても、無電柱化が完了すれば、将来的に考えて地域はより住みやすく、アピールしやすく、そして明るくできる材料になるのではないだろうか。
無電柱化の認知拡大のために、まずはありふれた景観にもっと興味を持ち、日常の変化に気づくことができる人を増やさなければならない。そして、景観問題の一部には電柱や電線が関わり、無電柱化について正しく情報開示・提供する場としてNPOが存在し、この機関に情報を自発的に求める人が増えることを期待する。
2022春 インターン生取材報告① 国際日本文化研究センター 所長 井上 章一 様
2022春 インターン生取材報告② 国立研究開発法人 土木研究所 寒地土木研究所 地域景観チーム 松田様・大部様・岩田様
▲無電柱化の目的
今春受け入れさせていただいたインターン生は、コロナ禍でもあり、オンライン中心で行いましたが、取材先のご了解もいただきながら、オンラインでの取材、直接訪問させていただいての取材、更に自治体や大学生を対象としたアンケート調査を実施するなど、色々まとめています。今回はその第1弾で、まだまだ続編がございます。随時ご紹介させていただきますので、乞うご期待下さい!ご感想もお待ちしております!(塚田)
メール先は、nponpc.t@gmail.comまで