道修町周辺の風景

取材報告者 星川裕志
取材内容  「大阪船場地区の無電柱化事業による景観形成」

道修町まちづくり協議会の山口様に取材させて頂きました。
日時:3月4日(金)10:30~11:30

Contents [show]

Q1 道修町とはどのような場所でしょうか。

道修町は、大阪北船場の真ん中を東西に通る「道修町通」を中心に発展してきた、歴史と伝統のある「くすりのまち」である。江戸時代初頭から薬種商が集まり始め、現在も薬に関連する会社が多く集まったり、「くすりの神様」として知られる少彦名神社があったりする。

少彦名(すくなひこな)神社

 

Q2 道修町まちづくり協議会様の主な活動内容についてお聞かせいただいてもよろしいでしょうか。

・健康を願う人々が集う活気ある街をつくる。
・まちで暮らし、働く人びとが信頼し協力しあえる活動をする。
・くすりの道修町の歴史と未来が調和した街並みを維持・発展させる。
この3つをまちづくりのコンセプトとしている。

道修町まちづくり協議会は歴史ある道修町をさらに魅力あふれるまちへと発展させ、未来につなげるまちづくり活動を行うために2015年9月に発足した。
ハード面では、電線の地中化、無電柱化、道路空間のデザイン・整備や維持管理などを行い、ソフト面では道修町からの情報発信や健康と歴史に関連したイベント開催などの活動をしている。

Q3 道修町で無電柱化を進めはじめるに至った経緯をお聞かせいただけないでしょうか。

近年、災害や気候変動による被害が問題となる中で、安心・安全な通りを実現させるため、それらの対策となることができないかということを考えた結果、無電柱化事業を進めるに至った。また大阪市が行っているかんまち事業も無電柱化事業のきっかけとなった。
かんまち事業の詳細はコチラをクリック

Q4 船場地区全体における無電柱化事業についてお聞かせいただけないでしょうか。

船場地区はエリアが広く、まちの美化にも力を入れている。道修町通以外にも船場地区の一部で無電柱化事業が行われているが、道修町まちづくり協議会のような団体が仲介となることは少なく、企業と行政の連携のみで進められることが主となっている。

船場地区の無電柱化済み地域

Q5 SDGsに関連した取り組みについて教えていただけますでしょうか。

道修町まちづくり協議会が行っている活動がSDGsに含まれる活動の一部につながっている。無電柱化・電線類地中化の実施をはじめ、道路の整備事業や屋上の緑化などの活動もこれに当てはまる。また地域景観づくり協定にも取り組み、大阪市との連携による官民協働のまちづくりを進めている。

Q6 無電柱化事業が行われる流れについて教えていただけますでしょうか。

まず、無電柱化事業を進め始めるにおいて警察との協議や住民との話し合いを行った。それから関西電力さんによる電線共同溝の施工を行い、そして最後に電柱の抜柱を一気に行うといった流れで進められている。
無電柱化を含む道路整備のデザインの決定や工事を行う際には、その影響などを考慮して、住民にアンケートを実施したり、説明会を開いたりして“地元ニーズ”にこたえるための活動も行った。

Q7 施工にかかった期間がだいたいどれくらいなのか教えていただけないでしょうか。

2019-2020 電線共同溝工事
2020-2022 道路整備工事・地上機器設置工事
2022      架空線から地中への停電・切替工事
2023      電線類地中化工事・電柱抜去

Q8 無電柱化を進める上で苦労された事は何でしょうか。

道修町では無電柱化に反対したところがなく、無電柱化を進めるうえで苦労したところはあまりなかった。区画の分け方など船場特有のルールがあり、複雑な面もあったが、利用者とコンタクトを取り解決した。

Q9 現状、無電柱化を進める上での1番の問題点は何でしょうか。

地上機器の設置場所の確保が一番の問題であった。地上機器を置くにもある程度のスペースが必要となり、道路や歩道の幅も十分に確保しなければならないので、そこが課題となった。それを解決するために土地所有者に承諾を得て一部民間地を利用し、地上機器の設置スペースを確保した。企業の街であるからこそ可能となった解決策であった。

Q10 無電柱化によって変わったことがあればお聞かせいただけますでしょうか。

まだ完全には無電柱化を完了できていない。
2023年に電柱を一気に抜く予定。

Q11 今後取り組もうとしている無電柱化事業についてお聞かせいただけないでしょうか。

2丁目、3丁目 → 電柱の完全抜柱
1丁目、4丁目 → 地元の意向確認

実際に訪問してみて

企業のまちというだけあって背の高いオフィスビルが連続して並んでいる反面、複数の近代建築も立ち並んでおり、歴史も感じることができる空間であった。全体的にきれいで整えられた景観となっているが、それだけに電線・電柱が残っているエリアではそれらの乱雑さが目立ってしまい、せっかくの景観が生かしきれていないように感じた。
またこの地域は車通りが非常に多く、路上駐車している車なども多くみられた。しかし、道路幅が特別広いわけでもないので、電柱が存在し、なおかつ歩道がないところは交通上、安全性に問題があると感じた。
このような地域にとって無電柱化は多大な効果を発揮すると思われる。今後、船場地区で無電柱化が進み、さらにすっきりとした街並みを歩けるようになることに期待したい。

乱雑に張り巡らされた電線・船場

最後に

無電柱化事業に力を入れている地域の一例としてとても参考となりました。地上機器用の用地の確保方法など、企業が多く集まっているまちとしての利点が生かされているというところが強く印象に残りました。そこを利用する住民や企業とも連携し、まち全体が一体となって無電柱化を始めとするまちづくり事業を行っているところがとても魅力的でした。来年、電柱を完全抜柱されるということで、その後のきれいになった道修町通を訪れてみたいと思いました。山口様、取材のためにお時間を取って頂いたこと、丁寧に回答して頂いたこと有難うございました。