2024.2.15 東京活動委員会、海外事例報告(アイスランド)の学生レポート

2024年2月15日、一般財団法人日本みち研究所分室にて、東京活動委員会が開催されました。その中で講演された東京支部の前川理事の海外無電柱化事例紹介-アイスランド-の内容を大竹が紹介させていただきます。青文字は追記部分です。

1.海外事例-アイスランドの概要

・首都:レイキャビク(Reykjavík)

・人口:約36万人(外国人は65,000人で、年々国際移民数が増加傾向にある)。この数値に近い日本の主要都市・区は、神奈川県港北区…354,558人。愛知県一宮市…374,479人、群馬県高崎市…368,945人、愛知県豊橋市…365,346人、長野県長野市…364,712人、埼玉県川越市…354,205人、奈良県奈良市…349,774人など。
・国土面積:約10.3万km(北海道の面積の約1.2倍)

・主要産業:漁業、観光業
・観光客数:年間220万人(観光産業は年々発展しており毎年多くの観光客が訪れるため、年間の観光客数が人口よりもはるかに多い)。

2.アイスランドの気候と自然

・「氷と炎の国」と呼ばれるアイスランド国土の約11%は氷河で覆われ、ヨーロッパ最大の氷河が存在する。
・30もの活火山が存在し北アメリカプレートとユーラシアプレートの境界に位置している。広がる境界(発散境界)によりできた2つのプレートの隙間からマントルの上昇が起こるため、活火山が多い。
・レイキャビクの北緯:64度(北海道稚内市…北緯45度)
→高緯度に位置するため寒さが厳しい国であるように思われるが、メキシコからの暖流(北大西洋海流)により冬の間もそれほど寒くなく積雪も少ない。
・森林面積:非常に小さく「荒れ地」のような景色が広がる。
→9世紀末は国全体に森林が広がる緑豊かな国であったと言われているが、時代が進むにつれ人の手により森林破壊が進み、現在のアイスランドは欧州で最も森林の少ない国であると言われている。
「海嶺」が陸上に表れている唯一の国
北アメリカプレートとユーラシアプレートの境界である大西洋中央海嶺が島内を南北に分断している。境界の裂け目は「ギャウ」と呼ばれ、北米プレートとユーラシアプレートの二つが生まれる場所となっている。

3.アイスランドの電力事情
再生可能エネルギー100%
水力発電7割、地熱発電3割
一般家庭暖房の約9割は地熱エネルギー源を利用している。
→活火山が多く、地熱活動が非常に盛んなため。

・送配電の電圧
:高圧=220, 132kV(日本は500, 275, 154 kV)
:中圧=20, 10kV(日本は66, 6.6 kV)
・ 宅送電圧:230V(ヨーロッパ均一)

日本はアイスランドを上回る世界第3位の地熱資源国とされるが、総発電量に占める地熱発電の割合はわずか約0.3%に留まる。この理由として、地熱資源が国立公園や温泉地付近に集中しており、発電所の開発に制約がかかることや、開発から運転開始まで約10年以上の年月と、膨大な費用を要することが挙げられる。地熱発電は環境に対し大きなメリットを持つが、課題も多くある。しかし、無電柱化と同様に実現する未来は決して遠くないと思う。今後さらなる国の積極的な支援が必要である。

風力発電や太陽光発電といった他の自然エネルギーによる発電方法では、発電の時間が限られてしまったり、天候や季節によって発電量が上下したりといったデメリットがある。

主要国の地熱発電の活火山数・地熱資源量・地熱発電設備容量とそのシェア

一方、地熱発電は、1,0003,000mもの地下に掘削した深い井戸から昼夜を問わず天然の蒸気を噴出させており、それによって発電も連続して行われ、つねに一定量の発電が可能である。また、優れた安定性だけでなく、設備の高い利用率によるコスパの良さも特徴となっている。

・無電柱化工事の様子
日本と同じ地震大国のアイスランドだが、無電柱化工事の様子は日本と比べてかなり簡易的に見える。無電柱化の事業主体に関しては、国内では道路管理者が行うが、海外のほとんどの都市では管路・特殊部の整備や管理を電力・通信事業者が行う。加えて日本は2016年から架空線・電柱等の法的規制において、国直轄管理の緊急輸送道路の電柱の新たな占用を禁止している。

・街並みの様子
都市部や郊外は無電柱化が進み、電柱・架空電線がない。

・ケーブルが直置きされている様子
人や車の往来が少ない場所(郊外部や山間部など)では、ケーブルの直置きも一つの手法である。上記に挙げたような場所は都市部や観光地と比べ無電柱化されにくい。しかしこのような場所であっても、自然災害などによる電柱の倒壊によって被害が拡大する恐れがある。ケーブルの直置きが有効となる地域をよく検討し、実行することが防災・減災に繋がると思う。