はじめに

2025年4月1日、鎌倉市が無電柱化推進条例5番目の自治体になりました。
そこで、当NPOの井上事務局長と、同市が無電柱化推進条例を制定したいきさつや今後の展望などをう
かがいたいと感じ、市役所を訪問させていただきました。

鎌倉市さまとの取材概要
日 時:2025年3月26日(水)13:00~
出席者:鎌倉市 都市整備部 道路課 山本様・佐野様
当方 井上事務局長・大竹

さっそく取材へ

Q&Aでご報告します。
Q1:無電柱化条例を策定することになったきっかけは?(市民からの要望が多かった等)
A:今回条例として策定したのは、国の無電柱化推進計画に追従することで、これまで既に無電柱
化されたところの維持や、さらなる推進につなげるためです。

Q2:なぜ小町通りと芸術館通り周辺、深沢地域の3エリアを先行対象としたのでしょうか?
A:既に無電柱化されている小町通りと芸術館通りは、継続的な維持を目的に対象としました。深
沢地域は新たに区画整理事業において、無電柱化を実施する予定の地域であるためです。

Q3:市議会での条例採決時に反対はありましたか?
A:賛成は19名、反対は5名でした。反対した議員の意見は、条例化は無電柱化の推進のポーズに
過ぎず、関係機関との協議・調整を行う場づくりが必要であるなどでした。

Q4:電線管理者とどのような調整をしましたか?
A:電線管理者にも条例(概要)について意見を求めましたが意見はありませんでした。

Q5:パブリックコメント実施時の条例(概要)に「市街地区域において、開発行為をする土地の面積が
5,000㎡以上の場合」と記載がありますが、この経緯について教えてください。
A:一定規模の開発での無電柱化を実現したかったため暫時的に記載しましたが、その後の検討の
中で、この条例文は削除しました。

Q6:参考にした都市や地域はありますか?
A:つくば市、芦屋市、白馬村、東京都を参考にしました。

Q7:無電柱化条例を制定するまでに苦労したことは何でしょうか?
A:市民からの意見や要望等はありませんでしたが、区画整理事業や景観など市の他の事業と関
連することから市内部(審査会や課・部)の調整が大変だったと感じています。

Q8:無電柱化条例施行により、景観面や防災面での改善・利点の他に、以前からあった課題の解決や地
域活性化等、期待することがあれば教えてください。
A:既に無電柱化された箇所に新たに電柱が建てられなくなるため、良好な環境が維持されます。

Q9:鎌倉市無電柱化推進計画において17路線が選定されましたが、今後条例の指定を拡大する計画
はありますか?
A:今後、17路線のうち無電柱化が完了した路線について、本条例の対象としていく考えです。

Q10:無電柱化を今後PRしていきますか?
A:現状、無電柱化について市民の認知度は低いと感じています。行政側としては、市民の認知度を高めるため、昨年度も“無電柱化の日(11/10)”にPRを行いました。また、ラジオでも無電柱化に対する市の取り組みを紹介しています。今後も認識度アップにつながるPRを継続していきたいです。

無電柱化推進条例に関する参考資料

・無電柱化の取り組み(鎌倉市)
https://www.city.kamakura.kanagawa.jp/douro/mudennchuukanotorikumi.html
・無電柱化の推進に関する条例(地方自治研究機構)
http://www.rilg.or.jp/htdocs/img/reiki/116_pole-free.htm

◆ 鎌倉市無電柱化推進計画における17路線◆

 

無電柱化推進条例に取り組まれた自治体の概要

茨城県つくば市(2016.9.30制定)                                            無電柱化推進法(2016.12.16施行・交付)よりも早く制定。もともと都市計画で無電柱化された街が官舎などの売却とともに電柱が建てられ出した。その電柱建柱を抑制するために条例を制定。
この条例では、つくば駅周辺など既に無電柱化が進んでいる区域を「無電柱化区域」と定めています。これらの区域では、新たに電線類を敷設する際、電柱の設置を禁止し、電線類を地下に埋設することが義務付けられています。
【参考URL】
つくば市無電柱化推進条例
「美空」第182号p.7-10

東京都(2017.3.30制定)
この条例は、都市防災機能の強化、安全で快適な歩行空間の確保及び良好な都市景観の創出を図るため、無電柱化の推進に関し、  基本理念を定め、東京都(以下「都」という。)及び関係事業者の責務等を明らかにし、並びに都の区域における無電柱化の推進に関する計画(第七条において「東京都無電柱化計画」という。)の策定その他の必要な事項を定めることにより、無電柱化の推進に
関する施策を総合的、計画的かつ迅速に推進することを目的とする。                            【参考URL】                                                     東京都無電柱化推進条例
東京都無電柱化推進計画(改)
NPO 無電柱ネットHP記事
2024.4.18 東京活動委員会 東京都における 無電柱化の取組について

長野県白馬村(2018.6.18制定)
白馬村内の道路に立ち並ぶ電柱は、本村の貴重な観光資源であり財産といえる良質な自然景観を損ねています。また、災害時には電柱の倒壊により避難、救急活動や物資輸送の妨げとなること等が予想されています。 国では、これまでの無電柱化は、防災性の向上、安全性・快適性の確保、良好な景観形成等の観点から実施してきましたが、近年、災害の激甚化・頻発化、高齢者・障害者の増
加、訪日外国人を始めとする観光需要の増加等により、その必要性が増しており、無電柱化をめぐる近年の情勢の変化を踏まえ、「無電柱化の推進に関する法律( 以下「 無電柱化法」という。)」 が定められました。このような背景を踏まえて、本村の無電柱化を総合的・計画的に推進するために「白馬村無電柱化推進計画」を策定します。
【参考URL】                                                     白馬村無電柱化推進条例
白馬村無電柱化推進計画
「美空」第116号p.4-9(つくば市の内容も含んでいます)

兵庫県芦屋市(2018.11.10制定)
本市では,「電柱・電線のないまち」を目標にし,継続して無電柱化に取り組むため,無電柱化推進計画を策定します。本市における無電柱化は,民間による宅地開発時に行われた埋設ケーブルによる電気・通信の供給(六麓荘地区)に始まり,公共による宅地開発事業(南芦屋浜地区・松韻の街)や街路事業(山手幹線・川西線),市街地再開発事業・土地区画整理事業において整備が行われ,市道の無電柱化率は14.0%(平成30年4月現在)となっています。しかしながら,目標である「電柱・電線のないまち」を実現させるには,多額の費用と時間を要します。限られた予算の中で,計画的かつ効果的に事業を推進するためには,対象路線に優先順位を設け,整備を行う必要があります。 以上のことから,本推進計画では,無電柱化を進めるうえでの整備方針を定めます。整備方針に沿った優先順位を設け,短期目標路線(10年以内に着手する路線)及び中期目標路線(10~20年先に着手を目指す路線)を明らかにすることで,市民の理解・協力を得ながら,電気・通信事業者や地下埋設物管理者との連携を図り,より円滑な無電柱化の推進につなげます。                                                 【参考URL】                                                     無電柱化の推進について-芦屋市-
芦屋市無電柱化推進条例
NPO 無電柱ネットHP記事
2024 夏 インターン生企画 芦屋市役所無電柱化取材

鎌倉市(2025.4.1制定)
道路上の電柱や電線は、景観を損なうだけでなく、歩行者や車椅子使用者の通行の妨げとなります。また、地震時には、倒壊した電柱が緊急車両等の通行を阻害するリスクがあることに加え、長期停電のリスクもあり、こうした状況に鑑み、無電柱化の必要性が増しています。このため、良好な都市景観の形成に加え、安全かつ円滑な通行の確保、都市防災機能の向上のため、無電柱化の推進は必要な取組みです。電線類を地下に埋設することにより無電柱化を図り、都市の防災機能の向上、安全かつ円滑な交通の確保及び景観の保全に資することを目的として鎌倉市無電柱化条例を制定しました。                          【参考URL】
無電柱化の取り組み(鎌倉市)      

最後に(まとめ)

今回の取材を通し、無電柱化に対する一般の方の認知度・関心度が低いのではないかと改めて感じました。
その理由は、鎌倉市が事前にパブリックコメントを投げかけた際、市民からの意見・要望がとても少なかったためです。
そもそも無電柱化自体が比較的新しい工法であり専門的、かつ市民主導で進めることが難しい内容であることから、この結果は妥当だったと言えるかもしれません。
そのため今後は、無電柱化の目的や利点等を市民に伝え、理解してもらうようなPR活動をさらに強化していくべきだと思いました。
鎌倉市では、無電柱化とそれに対する市の取り組みについて、ラジオや“無電柱化の日(11/10)”を利用しPRを行っているため、今後も継続してほしいです。
令和9年度から第9期無電柱化推進計画がスタートします。よりよい街づくりのため、他の自治体でも無電柱化推進計画・無電柱化推進条例の制定が促進されることを願います。

無電柱化推進計画の現状と今後の予定

無電柱化推進計画の現状と今後の想定されるスケジュール(一般財団法人日本みち研究所 資料による)

ボランティア・インターン生の募集!!

当NPOではボランティア・インターン生を随時募集しています。無電柱化は社会課題ですが、他国と比べ日本の地中化率は依然として低く、大幅に遅れています。日本の無電柱化を進展させていくために、一緒に取り組んでいきましょう!
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