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無電柱化と占用料との関係

無電柱化において占用料という言葉を耳にしたことはありませんか?例えば「地下埋設管の道路占用料の減免措置」という一文。

道路上の何かであることは間違いないとは思うでしょう。一歩踏み込んで調べようと思っても法律関係の話は難解ですし、体系的にまとめられているところはありません。

これさえわかればどうすれば電柱の増殖に歯止めがかかるのか?という問いの回答が示されます。無電柱化への理解の一助になれば幸いです。

占用料とは?

そもそも占用料とは何でしょうか。まずは関係する条文を見ていきましょう。

道路法(昭和二十七年六月十日法律第百八十号)
(占用料の徴収)
第三十九条 道路管理者は、道路の占用につき占用料を徴収することができる。ただし、道路の占用が国の行う事業で政令で定めるもの及び地方公共団体の行う事業で地方財政法(昭和二十三年法律第百九号)第六条に規定する公営企業以外のものに係る場合においては、この限りでない。

2 前項の規定による占用料の額及び徴収方法は、道路管理者である地方公共団体の条例(指定区間内の国道にあつては、政令)で定める。但し、条例で定める場合においては、第三十五条に規定する事業及び全国にわたる事業で政令で定めるものに係るものについては、政令で定める基準の範囲をこえてはならない。

道路法施行令(昭和二十七年十二月四日政令第四百七十九号)
(指定区間内の国道に係る占用料の額)
第十九条 指定区間内の国道に係る占用料の額は、別表占用料の欄に定める金額(第七条第十号及び第十一号に掲げる施設にあつては、同表占用料の欄に定める額並びに道路の交通量等から見込まれる当該施設において行われる営業により通常得られる売上収入額に応じて国土交通省令で定めるところにより算定した額を勘案して占用面積一平方メートルにつき一年当たりの妥当な占用の対価として算定した額。以下この項及び次項において同じ。)、法第三十二条第一項若しくは第三項の規定により許可をし、又は法第三十五条の規定により同意した占用の期間(略)に相当する期間を同表占用料の単位の欄に定める期間で除して得た数を乗じて得た額(その額が百円に満たない場合にあつては、百円)とする。ただし、当該占用の期間が翌年度以降にわたる場合においては、同表占用料の欄に定める金額に、各年度における占用の期間に相当する期間を同表占用料の単位の欄に定める期間で除して得た数を乗じて得た額(その額が百円に満たない場合にあつては、百円)の合計額とする。

条文が長いのは意味の正確さを期してでしょうが、これだけ長いと意味が伝わりにくいですね。

まずは道路法第39条について。

「道路管理者」「道路の占用」につき「占用料」を徴収することができ、「占用料の額および徴収方法」「道路管理者(地方公共団体の条例or国の政令)」が定める。

ここで大事なことは道路管理者が額と方法を指定できるということです。つまり道路を使うなら使用料を払ってください。額はこちらで決めますということです。ここに言う使用料を占用料と呼んでいるのです。

いわば税金のようなもの

次に道路法施工令第19条について。

「(指定区間内の)国道」に係る「占用料の額」は、

占用料の額」=「別表に定める金額」×「占用の期間」÷「別表に定める占用料の単位

で決められているということです。具体的なことは後述しますが、国道に関してはそういう形で占用料を決定しています。

先述した「占用料の額」は国や地方公共団体の裁量によって決まる。

また占用料の算定に当たっては、土地の使用について現に明確な受益が発生していることに着目して、対価説公共要物の利用によって占用者が受ける利益を徴収するという考え方)を基に占用料額を定めているようです。

しかしこと電柱に関しては「土地の使用に利益が発生している」上に「社会に対して不利益を発生させている」という声もあります。その当たりのことも後述していきたいと思います。

占用料の計算方法

占用料の額は具体的には、「道路価格×使用料率×占用面積(×修正率)」により算出されています。

また全国様々な物件に対応できるように算出方式が2種類あります。

パーキングエリア

まず、占用料の額は、物件を設けようとする場所の道路価格に一定の率を乗じて算出するのが基本で、この方式のことを定率物件と呼んでいます。

定率物件に当てはまるものとして地下街高架下建築物SAの休憩所等があげられます。

電柱

一方で、電柱やガス管、突き出し看板等については占用申請が膨大となり、個別に道路価格を算出することが実務上困難であることは想像に難くないでしょう。

このため、23区及び市町村を甲、乙及び丙の所在地区分に分類したうえで、所在地区分ごとに分類したうえで、所在地区分ごとに道路価格を設定し、当該価格に一定の率を乗じた得た金額を物件1本ごとに、1mごとの占用料額としています。

このような大量一括処理を行っている電柱、管類、看板、露店等の物件定額物件と呼んでいます。

今回は電柱について説明したいので「定額物件」の説明を中心に行っていきたいと思います。

修正率について

ここで先の「(×修正率)」について疑問に思った人がいるでしょう。

占用料の基本的な算定は、特段制約のない土地において地上を使用する場合を想定しています。

地下駐車場も道路の地下にあるので占用料が発生する

しかし実際問題として道路空間の一部のみを使用する物件や、土地利用に制約を受ける物件については、修正率を乗ずることにより、占用料を調整するのです。具体的には下の表にまとめました。

箇所別の修正率

上空 5/10
地下 3/10
地下街または地下室(1階) 5/10
地下街または地下室(2階) 8/10
高架下等の建築物(甲地) 3/7
高架下等の建築物(乙地) 4/7
高架下等の建築物(丙地) 7/10
高架下等の底面利用 5/7
道路上空に設ける建築物 7/10

 

定額物件

先ほども述べましたが定額物件とは占用件数膨大な電柱、電線、ガス管などのことを言います。

占用料の額は先述した通り

占用料の額=道路価格×使用料率×占用面積(×修正率)

で定められています。これらを一つずつ見ていきましょう。

道路価格

まずは道路価格について説明していきます。

所在地区分

初めに所在地区分について。

物件ごとの単価を定める際、基礎となる道路価格を定める必要があります。この際、全国一律価格とすると、当然ながら大都市部と地方部とで不公平が生じます

したがって市町村単位で区分し、区分ごとに道路価格を割り出します。この区分を「所在地区分」といいます。

現在所在地区分は

・甲(東京23区+人口50万人以上の市)

・乙(甲地以外の市)

・丙(町村)

に区分されています。

地目

次に地目(土地の現状・使用目的などによってその種類を示す分類名)について。

定額物件は、専ら商業地域に置くことが想定されるもの露店、看板等)と、どこにでも置かれえるもの電線、電柱等)が存在します。このため、道路価格も前者に適用する「商業地目」後者に適用する「平均地目」の2種類を設定しています。

いずれも固定資産税評価をもとに算出されます

商業地目は固定資産税評価における「商業地区」の地積と決定価格を用いて決定します。

平均地目は固定資産税評価における「宅地」、「田」、「畑」、「山林」の地籍と決定価格を用います。

細かい計算は省きますが、これによって決まった道路価格は次の通りです。

平均地目 商業地目
51,482円/㎡ 700,705円/㎡
25,148円/㎡ 60,888円/㎡
20,516円/㎡ 29,323円/㎡

使用料率

使用料率とは、地価に対する1年あたりの賃料の割合に相当する率です。算定は国土交通省道路局が行っています。

ここでも平均地目と商業地目で使用料率が違い、

平均地目に用いる使用料率:3.99%

商業地目に用いる使用料率:3.36%

で設定されています。

占用面積

1個単位、1m単位で占用料額を定めている物件については、標準モデルを設定し、その垂直投影面積を占用物件としています。

《例》

第1種電柱は、電柱そのものに変圧器と添架されている電柱3条×30mを基本として算定しています。

①電柱・・・(半径0.155m)2×π(3.14)=0.08㎡

②変圧器・・・縦0.16×横0.37m×上空に設ける物件の修正率0.5=0.03㎡

③電線・・・直径0.01m×3条×30m×上空に設ける物件の修正率0.5=0.45㎡

①+②+③=0.56㎡

甲地の第一種電柱一本当たりの年間占用料額51,482円/㎡×平均地目の使用料率3.99%×0.56㎡≒1,200円

(①は電柱の接地部分の面積で円を元に導出、③は垂直投影したとき長方形に見えることから縦×横を面積を導出しています。)

※垂直投影面積

引用元:http://garden-leaf.sakura.ne.jp/outi/koutei/haiti.htm

読んで字の如く

具体的な占用物件と占用料

ここでは具体的な物件と占用料の関係を表に記しておきます。

占用物件 占用料
法第32条第1項第1号に掲げる工作物 単位 所在地
甲地 乙地 丙地
第一種電柱 1本につき1年 1,200 560 460
第二種電柱 1,800 860 700
第三種電柱 2,400 1,200 900
第一種電話柱 1,000 500 410
第二種電話柱 1,600 800 650
第三種電話柱 2,300 1,1oo 900
その他柱類 100 50 41
共架電線その他地上空に設ける線類 長さ1mにつき1年 10 5 4
地下に設ける電線その他線類 6 3 2
路上に設ける変圧器 1個につき1年 1,000 490 400
地下に設ける変圧器 占用面積1㎡につき1年 620 300 250
変圧塔その他これに類するもの及び公衆電話所 1個につき1年 2,100 1,000 820
郵便差し出箱及び信書便差し出箱 860 420 340
広告塔 表示面積1㎡につき1年 24,000 2,000 990
その他のもの 占用面積1㎡につき1年 2,100 1,000 820

無電柱化と占用料

占用料がどのようなものでどうやって算出しているかがお分かりいただけたと思います。さてここからは、無電柱化とのつながりを考えていきましょう。

そもそも占用料とは国や地方公共団体が徴収するいわば税金のようなものでした。つまりタバコなどと同じで税金(=占用料)を引き上げれば電力会社は電柱という方式を捨てざるを得ません。

ここで別の話を持ち出してみましょう。2018年に制定された「無電柱化推進法」では、第1条の目的で「災害の防止、安全・円滑な交通の確保、良好な景観の形成」を掲げています。これを逆に言えば柱は災害を拡大し、交通を阻害し、景観を破壊している」ということになります。

つまり電柱は社会に対して費用を負担することなくそれらを阻害してきました。このことを外部不経済といいます。

外部不経済への対処方法として「外部不経済の内部化」というものがあります。これには2つ種類があります。

1つ目は行政が補助金を支出することによって、無電柱化を行う方法です。これはすでに行われつつあります。2つ目は外部不経済の原因を作っている人に問題解決のための税金を払ってもらう方法です。

電柱の外部不経済性は直接的ではないにせよ法律で認定された今、2つ目の方法を占用料という形で応用してみればどうでしょうか。

具体的に考えてみます。前述の占用料の算出式に戻ってみましょう。占用料の算出式に外部不経済の修正倍率をかけるという案をすぐに思いつきます。またこの倍率を無電柱化の進捗によって変化させれば電気事業者の主体的な無電柱化が行われるかもしれません。すぐには実行不可能でしょうが、有効な手段だと思います。

また無電柱化推進法の第5条には

道路上の電柱または電線の設置及び管理を行う事業者電柱または電線の道路上における設置の抑制及び道路上の電柱または電線撤去行い、並びに国及び地方公共団体と連携して無電柱化を推進に資する技術の開発を行う責務がある。

と明記されています。

つまり無電柱化を行うことは電力会社の責務であるという法律がすでに存在しているのです。しかしながら今もなお日本の無電柱化はほとんどが行政主導です。

もちろん現実的にいきなりすべての道路で無電柱化を行うことはできません。実際、占用料に外部不経済の項目を追加するのは、電気事業者の激しい抵抗にあって難しいでしょう。そこで国や地方公共団体はまず緊急輸送道路の無電柱化を優先するために、道路法第37条によって緊急輸送道路について新たな電柱の占用を禁止しました今後占用制限・禁止を拡大していくことによって、電柱を抑制していくことが可能です。しかし今の方法では長い年月がかかることは間違いありません。

まとめ

占用料が何か、占用料がどういう原理で算出されているか。また電柱が外部不経済をもたらしていることを書いてきました。一つずつ紐解いていけばそれほど難しい話ではありませんでした。電柱をなくすには占用料を引き上げることが一番の近道ですが、現実的ではないので現在は緊急輸送道路に絞って、新設電柱の占用そのものを禁止しています。

この詳しい話は当NPOから出版された「見あげたい日本の空☆復活へのシナリオ 無電柱化の時代へ」が詳しいです。

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