トレンチャーとは

トレンチャー【trencher】:農業機械。溝掘機の一種で,比較的幅が狭くて深い溝を掘る機械である。コンベヤ型,ロータリー型,ショベル型の3種類に分けられる。

コンベヤ型はチェーン状のコンベヤにカッターをつけて土を切り削りながらコンベヤですくい上げるものである。すくい上げられた土は,排土コンベヤによって側方に送られ堆積する。

トレンチャーはトラクターにつけられ,微速で前進しながら掘削作業をする。専用機もある。

ロータリートレンチャーは大きな円板の周囲にL字形のカッターをつけたもので,円板を回転させながら微速前進させると,カッターは土を切断しながら地上にすくい上げて溝を掘っていく。(※世界大百科事典 第2版)

日本では見慣れないこの機械ですが海外の無電柱化ではよくつかわれている代物です。このトレンチャーは溝を掘ることと電線を敷設することを同時に行うため、非常に効率よく無電柱化を進めていけます。

直接電線を地下に埋めてしまう「直接埋設」やケーブルを保護管の中に入れてその保護管ごと埋める「浅層埋設」は日本では主流の方式ではありませんのでほとんど道路工事に用いられることはありませんでした。

直接埋設や浅層埋設についてはこちらをご覧になってください。

無電柱化とは

しかし従来の手法(電線共同溝)は非常にコストがかかるため長距離の無電柱化には向いていません。ですので日本における直接埋設や浅層埋設の可能性を見つけるために次のような実証実験を行っているのです。

トレンチャーでの無電柱化実証実験

2018年11月8日の木曜日、京都市と関西電力(株)が京都大学正門前(東大路通と東一条通が接する交差点の西側)でトレンチャーによる掘削の実証実験を行いました。

トレンチャーの掘削は、13:30から開始。掘削が始まると2分あまりで完了しました。

下の動画は、その時の映像です(トレンチャー製造会社のVermeer社提供)。

掘削の幅は30cm、深さ50cm、掘削の距離(長さ)は20m。

トレンチャー販売会社のマルマテクニカ(株)に話を伺ったところ、今回使用したトレンチャーは、先の10月31日に北海道の苫小牧寒地試験場での掘削締固め試験で使用されたものと同じものだそうです。今回は深さ50cmだったが、その倍の深さまで掘削できるそうです。

動画では、見られなかったケーブルについて、京都市の方に伺ってみると、6、7、8日(8日は午前中に作業)の3日間で事前に撤去されたそうです。ケーブル撤去が見られず、残念ではあります。

トレンチャーによってどの程度コスト削減できるか

Vermeer Japanによれば、トレンチャーを使うと

1.コンクリートデスクカッターによるアスファルト切断30㎝幅費用

2.アスファルト、トラック運搬、廃物処理費用

3.採掘土、トラック運搬、廃物処理費用

4.砂費用

5.砂利費用

の5点において通常のショベルカーによる工事と差が生じるということです。また、材料の合計や採掘時間は推定で

従来工法とトレンチャー使用によるコスト比較(推定)

従来工法 トレンチャー
材料合計 15.76㎥ 4.25㎥(73%減
採掘時間 6.5時間 3.41時間(47.5%減

※深さ60㎝×50m長さアスファルト厚み15㎝仮定

の差があると考えられるそうです。材料費が73%安くなるとともに採掘時間が短くなるということは工員の人件費削減にもかかわってくる重要な要素ですので非常に興味深い試算といえるでしょう。