平成30年9月25日に全国でも茨城県つくば市と長野県白馬村に次いで3番目となる無電柱化推進条例を発表し、無電柱化を強力に推進している芦屋市。平成30年11月10日(無電柱化の日)に公布されたこの条例はその手助けとなる内容となっています。
その時の記念イベントの詳細はこちら
市町村単位でいうと芦屋市は日本で一番無電柱化されている市でありますし、いま最も勢いのあるのが芦屋市といっても過言ではありません。今回はその注目の内容について「無電柱化に関する法律(以下、無電柱化推進法)」や「つくば市無電柱化推進条例」と比較しながら解説していきます。
参考HP(芦屋市):http://www.city.ashiya.lg.jp/douro/mudenntyuuka-suisinkeikaku-iinnkai.html
参考HP(つくば市):http://www.city.tsukuba.lg.jp/shisei/torikumi/1001966.html
参考HP(国土交通省):http://www.mlit.go.jp/road/road/traffic/chicyuka/chi_20.html
条例内容
第1条(目的)
この条例は、国際文化住宅として、都市防災機能の強化、通行空間の安全性及び快適性の向上、良好な都市景観の形成を図るため、無電柱化の推進に関する基本理念を定め、市及び関係事業者の責務等を明らかにし、並びに市の区域における無電柱化の推進に関する施策を総合的、計画的かつ迅速に推進し、もって公共の福祉の確保並びに住環境の向上および経済の健全な発展に資することを目的とする。
第2条(定義)
この条例において、次の各号に掲げる用語の意義はそれぞれ当該各号に定めるところによる。
(1)無電柱化 電線を地下に埋設することそのほかの方法により、電柱(鉄道および軌道の電柱を除く。以下同じ。)又は電線(電柱によって支持されるものに限る。第14条を除き、以下同じ。)の道路上における設置を抑制し、および道路上の電柱または電線を撤去することをいう。
(2)道路 道路法(昭和27年法律第180号)第2条第1項に規定する道路で、市が管理するものをいう。
(3)関係事業者 道路上の電柱、電線の設置または管理を行う事業者をいう。
第3条(基本理念)
無電柱化の推進は、無電柱化の重要性に関する市民の理解と関心を深めつつ、行われるものとする。
2 無電柱化の推進は、国、県、市及び関係事業者の適切な役割分担の下に行わなければならない。
3 無電柱化の推進は、地域住民の意向を踏まえつつ、地域住民が誇りと愛着を持つことのできる地域社会の形成に資するよう行わなければならない。
第4条(市の責務)
市は、前条の基本理念にのっとり、無電柱化の推進に関する施策を総合的、計画的かつ迅速に策定し、および実施する責務を有する。
第5条(関係事業者の責務)
関係事業者は、第3条の基本理念にのっとり、電柱または電線の道路上における設置の抑制及び道路上の電柱または電線の撤去を行い、並びに国、県及び市と連携して無電柱化の推進に資する技術の開発を行う責務を有する。
第6条(市民の協力)
市民は、無電柱化の重要性に関する理解と関心を深めるとともに、無電柱化の推進に関する施策に協力するよう努めなければならない。
第7条(芦屋市無電柱化推進計画)
市は、無電柱化の推進に関する施策の総合的、計画的かつ迅速な推進を図るため、市の区域における無電柱化の推進に関する計画(以下、「芦屋市無電柱化推進計画」という。)を定めなければならない。
2 芦屋市無電柱化推進計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。
(1)無電柱化の推進に関する基本的な方針
(2)無電柱化の推進に関する目標
(3)無電柱化の推進に関する施策
(4)前各号に掲げるもののほか、無電柱化の推進に関する施策を総合的、計画的かつ迅速に推進するために必要な事項
3 市は、情勢の推移により必要が生じたときは、芦屋市無電柱化推進計画を変更するものとする。
4 市長は、芦屋市無電柱化推進計画を定め、または変更しようとするときは、あらかじめ電気事業法(昭和39年法律第170号)第2条第1項第9号に規定する一般配電事業者及び同項第13号に規定する特定送配電事業者並びに電気通信事業法(昭和59年法律第86号)第120条第1項に規定する認定電気通信事業者並びに市民の意見を聞かなければならない。
5 市長は、芦屋市無電柱化推進計画を定め、または変更したときは遅滞なく、これを公表しなければならない。
ここまでの第1条から第7条までは「市」を「国」と言い換えれば「無電柱化推進法」と全く同じです。国の方針に沿って無電柱化を推進していく姿勢がうかがえます。特に第6条は市民の協力は無電柱化の推進に関する法律でも同じことが言えますが、努力目標として定められています。
市民の協力が何よりも必要
従来は不可能とされていた狭隘道路の無電柱化を成功させた京都先斗町も住民の協力が成功のカギでした。芦屋市もこの事例に学び、無電柱化を進める必要があるでしょう。
先斗町のインタビューはこちら
第8条(市民の理解及び関心の増進)
市は、無電柱化の重要性に関する市民の理解と関心を深めるよう、無電柱化に関する広報活動及び啓発活動の充実そのほかの必要な施策を講ずるものとする。
第8条は「無電柱化推進法」によるところの第9条です。実際に芦屋市では無電柱化推進条例の施行(2018年11月10日「無電柱化の日」)とともに「無電柱化PR大作戦!!」と題して大々的にイベントを行いました。
その時の様子はこちら
第9条(無電柱化が特に必要であると認められる道路の占用の禁止等)
市長は都市防災機能の強化、通行空間の安全性及び快適性の向上、良好な都市景観の形成を図るために無電柱化が特に必要であると認められる道路について、道路法第37条第1項の規定による道路の占用の禁止または制限そのほか無電柱化の推進のために必要な措置を講ずるものとする。
第9条は「無電柱化推進法」における第11条と同じです。芦屋市はまだ専用の制限・禁止は定められていないようですが、各地の制限・禁止指定の状況はこちらから確認いただけます。
第10条(電柱又は電線の設置の抑制及び撤去)
関係事業者は、社会資本整備重点計画法(平成15年法律第20号)第2条第2項第1号に掲げる事業(道路の維持に関するものを除く。)または都市計画法(昭和43年法律第100号)第4条第7項に規定する市街地開発事業そのほかこれらに類する事業が実施される場合には、これらの事業の状況を踏まえつつ、電柱または電線を道路上において新たに設置しないようにするとともに、この場合において、現に設置し及び管理する道路上の電柱または電線の撤去を当該事業の実施と合わせて行うことができるときは、当該電柱又は電線を撤去するものとする。
第10条は「無電柱化推進法」における第12条と同じです。ここに書いてあることは「道路法に規定されている道路の新設・改築・修繕の際に行える場合には無電柱化を行ってください」ということです。ここでポイントなのは「行える場合には行ってください」であって「必ず行いなさい」ではないということです。
福知山駅前
あくまでこの条例は努力目標ですが、福知山市などはこの方法を活用して無電柱化を成功させたということです。芦屋市もぜひ積極的にこの条例を適応してほしいです。
第11条(宅地開発による無電柱化の推進)
市長は、芦屋市住みよいまちづくり条例(平成12年芦屋市条例第16号)第2条第1項第7号に規定する特定宅地開発(※1)により道路の新設が行われる場合には、道路を新設しようとする者に対し、電柱または電線を道路上において新たに設置しないよう求めるものとする。
※1 宅地開発のうち,開発区域の面積が500平方メートル以上のものをいう。
第11条は法律の条文にはない新しい条文です。日本で初めて無電柱化の条例を施行したつくば市では「1ヘクタール以上の開発行為を行う場合」として定められています。1ヘクタール=10000平方メートルですからこの条文の「500平方メートル以上の宅地開発」の適応範囲の広さは無電柱化条例随一といえるでしょう。
六麗荘
第12条(無電柱化された地区の維持)
下表に定める地区内の私有地について次の各号に掲げる整備を行うときは、それぞれ当該各号の定めるところによる。
(1)私有地の一部または全部を道路に供するための整備 当外私有地の所有者において無電柱化を図るものとする。
(2)私有地の一部または全部を公園その他の公共用に供するための整備 当外私有地の所有者は無電柱化された地区の維持に協力するものとする。
地区 区域 六麗荘地区 六麗荘町3番の一部、5番の一部、6番の一部、7番の一部、8番から26番まで 高浜松韻の街 高浜町12番から20番まで 南芦屋浜地区 陽光町、海陽町、南浜町、涼風町の全域
高浜松韻の街
第12条は国の法律にもつくば市の条例にも当てはまるもののない条文であります。これまで無電柱化を行うことに比重を置いていた地方自治体も多いと思いますが、芦屋市はその維持にまで目を向ける姿勢を示しました。また六麗荘地区、高浜松韻の街、南芦屋浜地区は既に無電柱化された箇所も多いのでこういった条文を追加したのでしょう。
第13条(良好な景観を維持する道路)
市民は、景観法(平成16年法律第110号)第61条第1項に基づく芦屋川特別景観地区内の小道路について、関係事業者に対し、電柱または電線を道路上において新たに設置しないよう求めるものとする。
芦屋川の風景
芦屋川特別景観地区内の小道路(詳細はこちら)の電柱抑制の条文です。筆者は芦屋川に実際に行ったことはありませんが、写真を見る限りこの条文をいつまでも守っていてほしいです。川沿いの電柱・電線は増水や津波時に甚大な被害を受けること疑いありませんので、防災の観点からも非常に重要なことです。
第14条(調査研究、技術開発等の推進等)
市及び関係事業者は、電線を地下に埋設する簡便な方法そのほかの無電柱化の迅速な推進及び費用の縮減を図るための方策等に関する調査研究、技術開発等の推進及びその成果の普及に必要な措置を講ずるものとする。
第15条(関係者相互の連携及び協力)
市、関係事業者そのほかの関係者は、無電柱化に関する工事(道路上の電柱又は電線以外の物件等に係る工事と一体的に行われるものを含む。)の効率的な施工等のため、相互に連携を図りながら協力しなければならない。
第16条(財政上の措置等)
市は、無電柱化の推進に関する施策を実施するため、必要な財政上そのほかの措置を講ずるものとする。
第14,15,16条は無電柱化推進法における第13、14、15条と全く同じものです。これらの条文を要約すると「技術開発に重点を置きながらも潤沢な予算を用いて無電柱化を円滑に行います。」ということです。
まとめ
芦屋市の条例を一緒に見てきました。基本的には無電柱化推進法にのっとりながら、芦屋の個性を活かす部分ではその長所を伸ばし、時にはほかの条文には見られないような大胆かつ果敢さをもって無電柱化を断行する決意に満ち満ちていました。完全無電柱化が達成される日までそう遠いものでもないかもしれません。
芦屋市の事例も紹介した新刊をお得に購入できるページはこちら↓