プロローグ~震災対策技術展の概要~
2019年2月7日(木)第23回「震災対策技術展」横浜へNPOとして取材へ行ってまいりました。当NPOとしましても無電柱化と震災は切っても切り離せない関係にありますので興味深い技術展となっていました。
会場図
出展者には当NPOの会員であるVermeer Asia Pacific PTE LTD様やマルマテクニカ株式会社様が出展されていたのをはじめ、民間WGなどでお世話になっている国土交通省関東地方整備局や寒地土木研究所、そして通信柱の総本山NTTコミュニケーションズなどが出展されていました。
会場内の4つのブースでセミナーが行われている。
また会場特設のセミナーブースにて当NPOの井上利一事務局長とVermeer Asia Pacific PTE LTDの井出様とが「電柱倒壊を防ぐ 無電柱化と無電柱化に向けたライフライン地中化施工機械によるコスト低減」をテーマに講演をするということでしたのでそちらにも取材に行かせていただきました。
ブース紹介
Vermeer Asia Pacific PTE LTD、マルマテクニカ株式会社、株式会社リスト合同出展ブース
ブースの様子
入り口を入ってすぐにVermeer Asia Pacific PTE LTD、マルマテクニカ株式会社、株式会社リスト様のブースがあり、まずはそちらにお邪魔させていただきました。
ブースには2機のトレンチャ(溝掘削機)が設置されており、迫力満点の展示となっておりました。
PTX40は男の子の心をくすぐるクールな外見
1機目はトレンチャ・ブラウ仕様のPTX40(トレンチ(溝掘削)作業に特化したモデル)で重量1.8トン、出力35kWの機体がトレンチ幅15㎝深さ1mの溝を掘削できるというものです。
RTX550は女の子のハートをつかむパワータイプ
2機目はロックホイール仕様のRTX550(従来のコンクリートディスクカッターを使用することなく、アスファルトやコンクリートの固い地盤を直接掘削することができ、掘削時間を低減することができる。)で重量4トン、出力50kWの期待がトレンチ幅30㎝深さ1.2mの溝が掘削できる機体です。
またブースには出展企業様のご厚意で当NPOの展示も行っていただいた上にパンフレットまで置かせていただきました。ご配慮に感謝するとともに震災対策の一助を担えるように無電柱化を推進していきたいと思います。
個人的に興味深かったブース
そもそも震災対策技術展は実際に震災が起った時の対策(衛生問題、食糧問題、水問題、通信問題等)や起こりそうになった時の予測(地震速報等)に重点が置かれたブースが非常に多いため、地震が起こる前のインフラ整備(無電柱化など)のブースが非常に少ないです。
したがって直接無電柱化には関係ありませんが、個人的に興味深かったブースを簡単に紹介させていただきます。
免震のブース
免震のブース
まずは反対側の入り口に入ったところに設置してありました「免震」の装置の展示です。免震とは建物と地盤とを切り離すことで、建物に揺れを伝えない技術のことを指します。こちらの装置は非常に大がかりで、実際に震度7の地震を「免震機能なし」と「免震機能あり」で体験してもらうというブースでした。
一目みただけで免震機能ありのほうが明らかに揺れが少ないことが判るので、地震大国の日本において非常に有用な技術であることがわかりました。個人的には免震の技術を用いれば地中線の断線を防ぐことができるのではないかと思いました。将来の技術的展望が非常に楽しみです。
「防災先進県」高知ブース
高知県のブース
次に高知県が大規模なブース出展を行っていました。高知県は防災先進県として防災関連産業の振興に取り組んでいることをこのブースにきて初めて知りました。
ブースの中には災害用トイレや備蓄用不織布毛布、大規模なもので言えば港湾・河川などにおける災害復旧工事に使用する汚濁防止フェンスなどまで出展していました。
しかしながら高知県の無電柱化率は平成25年度末の時点で1%。特に高いわけではありません。県の無電柱化推進計画や条例についても現時点では何も進展がありません。「防災先進県」と銘打つからにはぜひ無電柱化においても積極的な展開を期待します。
なお四国の無電柱化で言えば、香川県では無電柱化推進計画案を策定し一歩抜きんでています。うどん県と高知家のどちらが無電柱化のレースを制すかは個人的に興味深いと思います。
非常食試食体験コーナー
最後に災害時のグルメについて触れたいと思います。災害が起こっても工夫の凝らしたグルメが存在することはあまり一般的に知られていません。非常食のイメージといえばパサパサで氷砂糖を舐めて何とか飲み込む乾パンや屑米で作った冷えた粥のような非常用ごはん等を思い浮かべると思います。
非常食=まずい??
しかし震災対策展の非常食試食体験コーナーでは揖保乃糸が有名なのマルキ株式会社やお茶づけ海苔でおなじみの株式会社永谷園、はてはあずきバーの井村屋株式会社まで出展するという盛り上がり様です。
非常食に舌鼓を打つ来場者の方々
たとえばアルファフーズ(株)の「おいしい防災食」シリーズでは湯せんでサバの味噌煮からハンバーグまで様々なラインナップがある上、保存期間が5年という便利さを誇っていました。
ほかにも紹介しきれないほどのグルメやスイーツなどがずらりと並んでおり、たとえ災害が起こっても食に関してまずいと思うことはないだろうと感じました。
ずらりと並ぶ非常用グルメ
講演
ほかにも多種多様なブースが出展されており、一つ一つ見て回るとあっという間に時間が過ぎて、井上事務局長の講演の時間となりました。我々としてはVermeer Asia Pacific PTE LTD様や株式会社マルマテクニカ様の共同ブースに次いでのイベントですので、そちらに向かいました。
講演はVermeer Asia Pacific PTE LTD環境機械担当井出謙一氏と当NPO事務局長の井上の2人で「電柱倒壊を防ぐ無電柱化と無電柱化に向けたライフライン地中化施工機械によるコスト低減」というテーマで45分間行いました。
まず初めに井出氏がVermeer本社の説明から行いました。主に農業やライフラインなどの施工機械の製造販売を行っている会社だったが、ライフライン用施工機械の需要が2015年ごろから増加し、積極的に販売活動を行っているそうです
そしてトレンチャを使えば効率的に無電柱化を進められるということを説明されていました。
実際に無電柱化の直接埋設の施工機械としてトレンチャは世界中で使われておりますし、日本でも最近国内初の施工実験を行い、そのスコアで一般の施工方法を圧倒したという話もあります。
そちらを詳しく書いた記事はこちら
続いて井上事務局長の講演です。まず2018年9月4日から5日にかけて列島を襲った台風21号の体験から。襲来したとき自身は家にいたが、家の中でも電柱のきしむ音が聞こえ、大変な恐怖を味わったという話から始まり、電柱は震度7以上になれば簡単に倒壊するという話や、地域住民の方が「無電柱化を行えば地震の被害が拡大する」という誤解を持っている人が多いという話なども飛び出しました。
実際会場には地震に興味がある人や防災に興味がある人が多くいたので震度7以上や風速40m以上で電柱が倒壊する話は新鮮かつ興味深い話だったのではないでしょうか。
電柱と災害の関係についてはこちら
質問の時間ではトレンチャについての質問が多く寄せられました。
・トレンチャに日本製はあるのか?(→あるにはあるが生産を取りやめているところが多いので主力は海外製)
・地中埋設物はどうするか?(→誤切断を防ぐためロケーターを使用予定)
等様々な質問が飛び交いました。
講演会場にいた人達のなかにはもちろん無電柱化に興味を持っている人もいたでしょう。しかしながら地震が起こる前に何ができるかという所謂「減災」という考えを「防災」よりも重視している人は決して多くはなかったはずです。
新しい考え方を得た日本の地震対策が無電柱化に触れ、新しい発想が生まれることを望むばかりです。