はじめに

沖縄県は2017年の観光客数におきまして、ハワイとほぼ同水準に並びました。沖縄県はハワイを目指して観光政策を行ってきましたので、一定の到達点に達したといっても過言ではありません。

2017年の入域観光客数

沖縄県 ハワイ州
939万6200人 940万4346人

引用元:琉球新報、「沖縄の観光客数 「ハワイ超え」が幻 17年、HTAが上方修正」、https://ryukyushimpo.jp/news/entry-828528.html

しかしながら、平均滞在日数ハワイが8.95日に対して沖縄県は3.78日と半分以下です。他にも平均消費額ハワイは1787ドル(約19万6千円)に対して16年の沖縄県では7万5297円でした。まだまだ観光地としての成熟度が発展途上にあることの証でしょう。

ではどうすれば沖縄がハワイを超えることができるのでしょうか。

 

両者のメインストリートの違い

沖縄県那覇市県道39号線

 

ハワイ州ホノルル市カラカウアアヴェニュー

ここで2つのリゾート地のメインストリートの写真を見比べてみましょう。両者とも南国特有の見事な青空が広がっています。しかしながらこの2つには決定的な違いがあります。それは電線です。

歩道側にヤシの木を配置することで非日常感を演出しているハワイに対して、沖縄では無機質な電柱と空にまたぐ電線が景観を阻害しています。たとえ日本人が電線を見慣れているとしても両者の差は歴然たるものでしょう。

ではこの電柱の問題をハワイはどのようにして解決したのでしょうか。また沖縄の電柱の現状はどうなっているのでしょうか。

両者の電線事情

沖縄県郊外の海岸線

 

ホノルル市郊外の海岸線

まずは両者の電柱事情を探っていきましょう。ハワイ電力へのヒアリングによりますとホノルル市の配電ケーブルのうち63%が地中に埋設されています。

次に沖縄県について、国土交通省の「全道路の無電柱化率」の資料を見てみますと無電柱化率は2%のみにとどまっています。なぜこのような差が生まれてしまったのでしょうか。

ホノルル市の政策

イオラニ宮殿

ハワイ州の州都であるホノルル市は日本で言ってみれば沖縄県那覇市と似ている部分も多いと思います。ホノルル市では電柱に対してどのような対応をしたのでしょうか。

ホノルル市改正条例(The Revised Ordinances of Honolulu)の22.5-1「ケーブルの設置(Installation of utility lines)」では

いかなる場合でも電気・通信・街路照明・ケーブルテレビ及びその他の用途のケーブルは市内の区画ごとに地下に設置しなければならない。その時の方法や規格は各公益事業業者が指定する。

ただし、区画が3つ以下で500フィート以内の区画であれば、上記の規定に合致していても架空線で敷設することができる。

また2エーカーの最小地域を含む農業地域や区画条例の1~109条と道路インフラ建設に関する市の規定が免除される区画では地中敷設を行わなくてもよい。

区画責任者はこの条項の要件に従って、ケーブルや関連設備を関連会社と共同して敷設しなかればならない。

ケーブルや関連設備の敷設に関しては他の地下設備に干渉しないようにしなければならない。

(※1)

とあります。また同じく22-5.7「罰則(penalty)」では

以上の条文に違反したいかなる個人、団体、企業も1000ドル(約11万円)以下の罰金もしくは1年以下の懲役またはその両方に処する。(※2)

と厳しい罰則も用意されています。ハワイ電力によればこうした条例は1966年に制定されてきました。(※3)

一方で沖縄ではそういった条例は特に制定されておらず、平成28年に制定された「無電柱化の推進に関する法律」に基づいて、平成31年にようやく「沖縄県無電柱化推進計画」を発表し、平成32年度までに合計10㎞の県道の無電柱化に着手することを決定しました。

少なくとも現状では沖縄は、電柱や電線という点においてハワイよりも出遅れていると言わざるを得ません。

 

以下原文のままで掲載します。略以降は例外について書かれてあり、興味のある方はホームページ(https://www.honolulu.gov/ocs/roh/rohonline.html)に英語で掲載されています。

(※1)

 Notwithstanding any ordinance or regulation to the contrary, utility lines, including but not limited to those required forelectric, telephone, street lighting, cable television services and other related facilities, shall be installed underground in allsubdivisions laid out within the city in accordance with the applicable standards and methods employed for such underground installation by the public utility companies involved; provided,
 however, if a subdivision consists of three lots or less and if no other lot situated within 500 feet of such subdivision is provided with utility lines and related facilities installed in accordance with theprovisions of this article for underground installation, the subdivider may, at the subdivider’s discretion, arrange to have such utilitylines and related facilities installed overhead in accordance with the standards and methods employed for such overhead installation bythe public utility companies;
 and provided further, that the underground installation of utility lines shall not be required within agricultural subdivisions consisting of lots with minimum area of two acres and which are exempted under Section 1-109 of the subdivision rules and regulations of the city from the requirements applicable to the construction of street improvements and utilities.

 The subdivider shall be responsible for making the necessary arrangements with the public utility companies concerned for the installation of such utility lines and related facilities in accordance with the requirements of this article.

 The utility lines and related facilities shall be installed in such a manner so as not to interfere with other underground utilities of the city or the proposed locations of such underground utilities.

(※2)Any person, firm or corporation which violates the provisions of this article shall be fined not more than $1,000.00 or imprisoned not more than one year, or both.

(※3)しかしハワイにおいても住宅地などでは架空線があることは事実である。厳しい制限がかけられているのはホノルル市のみであり、それ以外の市では普通に電柱や電線が存在する。

沖縄が無電柱化を行うべきもう一つの理由

ハワイと比べて沖縄が電柱を無くしたほうがいい理由はもう一つあります。それは台風です。「同じ南国だからハワイだって台風が来るじゃないか」と思われている方もいらっしゃるとは思いますがそこには意外な違いがあります。

アメリカ国立気象局(National Weather Service)によりますと「台風などの異常気象は来ないことはないが、ほとんど来襲することはない(※1)」とハワイの気象の特徴を記載しています。(こうは記述しているものの、超巨大台風が数年に一度のペースで来襲しています。2018年には「Hurricane lane」というカテゴリー5の台風が来襲し、大きな被害を出しています。この時の最高風速は260㎞/h、最低気圧は922hPaという日本では見ない巨大な台風です。)

台風ピーク時の那覇空港の日常

一方で、沖縄の気象は皆さまご存知の通り、毎年何度も台風が通過し、大きな被害を被っています。実際に気象庁のデータによりますと、2018年に沖縄に接近した台風の数は13個。当然、電柱・電線は野ざらしですから台風が来るたびに電線の断線や電柱の傾斜、最悪の場合折損することにもつながります

電線が断線すれば大規模な停電が起きますし、電柱が傾斜・折損すれば通行の妨げとなり緊急輸送の妨げにつながります。

平成15年に来襲した台風14号によって倒壊した電柱の様子

引用元:https://www.pref.okinawa.jp/site/somu/miyako/shinko/saigai.html

そもそも電柱は風速40m/sまでしか耐えられないように設計されてあります(人家に建てられているところであれば、28m/s)。沖縄県のように毎年のように大型台風が来る場所で大規模停電が起きて住民の方もうんざりされているのではないでしょうか。(※2)

電柱や電線がなくなれば台風の度に停電することはなくなりますし、その他日本で頻発する災害(地震など)にも強くなります。また旅行客にとっても安心できる旅になるでしょう。

そういったことを詳しく書いた記事はこちら

電柱と災害との関係

(※1)引用元URL:「https://www.prh.noaa.gov/hnl/pages/climate_summary.php

(※2)引用元URL:相次ぐ台風、もううんざり 沖縄県内、復旧遅れに懸念の声、琉球新報、「https://ryukyushimpo.jp/news/entry-814690.html

沖縄の電柱を無くすためには

電柱がなければより美しい沖縄本来の魅力が引き出せる

沖縄の電柱を無くす方法ですが、ハワイのような厳しい条例をいきなり作るのは難しいと思います。まずは東京都のように「無電柱化推進条例」を策定するのが早いかと思われます。独自のルールで電柱の占用を制限していくのです。他にも国から交付される「防災・安全交付金(※1)」で無電柱化のための資金を用意する手段もあるでしょう。

しかし何よりも大事なことは地域住民の協力であると思います。ブランド総合研究所が行った「地域ブランド2011(※2)」によりますと、全国で3番目に強い郷土愛を持っている県は沖縄です。

地元を大事に思っていて世界に沖縄のことを伝えたいという人が多いのではないでしょうか。美しい沖縄の魅力を引き出すためには地元の人々が「電柱を無くしたい」と思い、行動しなければなりません。当NPOはそのお手伝いの一部をさせていただいています。

(※1)情報元:http://www.mlit.go.jp/common/000998338.pdf

(※2)情報元:http://tiiki.jp/news/05_research/survey2015/2815.html

実際のNPOの活動

当NPOとしましても、沖縄県での無電柱化を盛り上げていきたいと考え、活動を行っています。2017年8月に沖縄県那覇市のパレット市民劇場において「無電柱化シンポジウムin沖縄~防災と景観まちづくり、島の現状と課題」を開催しました。

シンポジウムの様子

その後、沖縄県の会員企業様のご協力で当NPOの沖縄支部を立ち上げました。当NPO沖縄支部では、台風の被害が多い宮古島で2018年6月にセミナーを開催しました。本年は世界遺産である首里城周辺の道路の無電柱化を働きかけようと検討しています。

首里城前交差点

まとめ

最後に今まで書いてきたことをまとめてみましょう。

沖縄はハワイの観光客数に追いつくほどの発展を遂げました。しかし消費額や滞在日数等ではまだまだハワイに及びません。この違いは無機質な電柱や空を覆う電柱にあるのではないかと思われます。電柱に対してホノルル市では厳しい制限をかけてきました。しかしながら実際に沖縄が電柱を抑制していく意思表示をしたのはごく最近です。

この問題の解決策としては行政が様々な施策を行うことが可能ですが、何よりも大事なことは地域住民の方が電柱を無くしたいと思い行動していく事です。「ここの電柱を無くしたい」等ありましたら当NPOにご連絡ください。

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