※この記事は当NPOのインターンシップに来ていただいた学生によるものです。
京都の外国人観光客の方に、電柱のある日本の風景についてインタビュー
インターンの一環として、無電柱化の啓発、調査に関する企画をすることにしました。
初めに、ここ数年にわたり写真や動画を投稿するインターネットサービスが、世界中で人気となっています。その中でも、「Instagram」は利用者が大変多く、その影響力はとても大きいものとなっています。写真に映えるものやスポットには人が集まり、投稿された写真を見た人がまたそこに集まって来る、というサイクルが起きます。
そのため、「写真に映える風景」は今まで以上に集客効果があると考えられます。
次に京都が世界からどれほどの人気を誇っているかを見ていきましょう。ここでは世界でも有数の観光地であるニューヨークのタイムズスクエアのInstagramへの投稿数と京都のInstagramへの投稿数を比較してみます。
なんと京都は1300万投稿でタイムズスクエアの投稿数の3.5倍以上の値をたたき出しました。いかに京都が世界から注目されているかの証であると思われます。
しかしながら海外からの観光客の方の中には日本にある電柱に嫌悪感を持つ人も少なくないはずです。そこで、今回は京都に訪れている海外の観光客のみなさんに、電柱がある風景の印象について取材をしました。
まずは、桜の写真を撮っていた、デンマークからお越しのこちらの男性からお話を伺いました。京都に訪れるのは初めてだそうです。
「日本の電柱については、あまり美しいものだとは思えないけれども、一方で日本の特徴的な光景として興味深いものだと感じる」とおっしゃっていました。また、「京都のような伝統的な風景には似つかわしくないのではないか。」ということでした。
京都はちょうど桜の季節で、この日もきれいに咲き誇っていましたが、川沿いの桜並木には電線が架かってしまっていて、写真を撮るには決していい条件とは言えません。せっかく海外から訪れてくれる方々に、しっかり美しい風景をカメラに収めていってもらうためにも、無電柱化が必要です。
こちらの二人はスイスから訪れたそうです。
スイスでは電柱はほとんど見当たらないそうです。やはり「日本の風景はあまり美しくない」と感じるそうです。改めて頭上の電線に目を向けて驚かれていました。また、逆に「なぜ地中に埋めないのか」という質問をされました。ヨーロッパの国々は電線類の地中化が当たり前の存在として定着しているのだな、ということを改めて実感しました。
日本人にはまだまだ「地中化」という言葉も定着が十分ではないと思うので、もっと意識を向けられたらいいな、と思います。
京都のような有名観光地から、無電柱化をしていく事で、私たち日本人も無電柱化に意識を向けるきっかけになるのではないか、と思います。
こちらはフランスから来られたお二人です。
他のみなさんと同様、「日本の電柱のある風景は美しいものとは思えない」という意見でした。「日本の景色はインドのようだ。先進国なのになぜ電柱をそのまま残しているのか」という疑問を持たれていました。
インタビューの結果から、日本が世界から持たれているイメージと、実際の風景とのギャップが生まれていると考えることができるのではないでしょうか。特に京都など、伝統的な街並みを期待している方々に対しては、そのニーズにこたえられるような街並みづくりが必要であると感じました。
今回は、特に日常に電柱・電線のない欧米系の外国人旅行者を中心に、22人の方にアンケート、およびインタビューをさせていただきました。国はイギリス、スイス、フランス、アメリカ、オーストラリア、カナダ、デンマーク、オランダで、欧米の国が多かったです。
ほぼすべての方が、電柱のある日本の風景についてネガティブな印象をもっていました。
意見として、「数が多すぎる。」「景色はいいのに、電柱は悪すぎる。」「伝統的な景色を損なっている。」等の意見が多く寄せられました。
風景に電柱、電線が乱立している姿は、外国人観光客にとっても好ましく思わない、ということが明らかになりました。
日本の観光地における、無電柱化の効果についてのアンケート調査
次に、無電柱化された観光地が無電柱化する前とそのあとでどのような変化があったのかを調べてみることにしました。
観光地における無電柱化の効果について、ほかの観光地では、どのような効果があったでしょうか、各地の観光協会や、商店街の方にアンケートを答えていただきました。
【質問内容】
1.無電柱化後に観光客が増えたか | 2.観光客の増加と無電柱化の関係について | 3.無電柱化してよかった点 | |
埼玉県川越市川越一番街 | 増えた。前年比15%位。 | 影響している要因の一つ。 川越の一番街商店街は、昭和50年ごろから街並みの保存活動に取り組んで来ており、その流れの中の一つとして無電柱化があった。 一番大きな要因は、伝統的建造物群保存地区に指定されたこと。 |
街並みがより美しく見えるようになった。 |
三重県伊勢市おかげ横丁 | おはらい町通りの無電柱化につきましては、平成4年に事業がj完了しています。 おはらい町通りの環境客数は、昭和54年には年間20万人程でしたが、無電柱化を含めたハード整備や地本企業による開発の効果により、平成6年には約200万人に増加しました。 その後も観光客数は増加し、平成29年には約570万人の方にお越しいただきました。 |
おはらい町地区においては、無電柱化だけでなく、おはらい町通りの石畳舗装、地下参道の整備、交通広場・公衆トイレ等の整備などのハード整備や、「街並み保全事業」による歴史的町並みの再生などを行いました。 また、平成5年には地元企業の開発による「おかげ横丁」がオープンしました。 観光客数の増加は、これらの事業による相乗効果によるものと考えています。 |
電柱とともに雑多な看板類もなくなったことで、歴史的町並みの再生に寄与するとともに、観光客等の歩行者の快適性向上にもつながったと考えています。 |
大分県由布市湯布院温泉 | 無電柱化したことが直接の要因で観光客が増えたとは感じていません。湯布院温泉で無電柱化したエリアは、もともと観光客の通りが多いエリアですので、無電柱化が観光客の増加に与えた影響を図りにくいことも事実ですので申し添えます。 | 回答なし | ・無電柱化エリアで写真を撮る人が増えた。 ・無電柱化を反対していた人達が、景観等をよくなったといわれることによって、無電柱化エリア拡大に賛成するようになった。 ・無電柱化に興味を示す地元の人たちが増えた。(特に商工、観光業者) |
神奈川県鎌倉市小町通 | 地中化前の平成18年鎌倉市野辺観光客数は18,455,281人で、地中化完了後の平成25年は23,083,038人だったため、観光客数は増加している。(メイン部分は22年に完成しており、22年は19,486,481人) | 小町通自体の観光客数自体を把握していないため、増減についてはわかりません。 なお、平成25年に観光客数が増加した要因は世界遺産登録への機運が高まり、メディア露出も増加したことがあげられます。 |
無電柱化に合わせ、夏場の暑さ対策として、路面を熱がたまりにくい遮熱舗装にした影響か、夏場での環境客数の落ち込みが軽減したように思われる。 |
以上の結果から、無電柱化と並行して、街並みの保全等の活動や、石畳舗装などの景観の整備を行うことにより、観光客の増加につながった、という一連の流れを見ることができます。
無電柱化は、観光地の景観を向上させる動きの中の一つとなっているといえます。
先に述べたように、現在は「写真に映える風景」を意識した街づくりが、集客のために効果的になっている時代です。無電柱化によって得られる広い空や道、そしてそれに伴って整備される街並みは人を呼び寄せる効果が大いに期待でき、これからの時代、より求められると考えられます。
無電柱化が街並みの美しさに大きく起因している言うことは、言われてみて初めて気が付く人も多いのではないでしょうか。「無電柱化」というワードをしっかり世の中に定着させていく必要があると思います。そしてそこから、身近らの地域を美しく安全なものにするべき、という世の中の思いが広がっていったら、と思います。