◆企画者
NPOインターン 山内翼
◆企画概要
・企画名:台風災害から考える今後の無電柱化
・企画内容:千葉県内の自治体に無電柱化に関する意識調査のアンケート
・実施対象:千葉県の自治体(全55県市町村)
無電柱化事業の担当者(主に道路管理担当の方)
・実施日:2022/03/09(水)から順次送信
・実施方法:各自治体の問い合わせフォームからにアンケートを送信した。いただいた回答をgoogle formに入力し、集計を行った。
◆質問内容
Q1.市区町村名をご記入ください。
Q2.担当部署・担当者をご記入ください。
Q3.無電柱化推進計画を策定していますか。
Q4.2019年の台風15号のときの被害状況(停電戸数、停電期間など)。
Q5.今後こうした被害を出ないようにするために行っている取り組みがあれば、ご記入ください。
Q6.無電柱化は風災害などの災害に強いといわれています。被害が大きかった2019年の台風15号以降、無電柱化についてより意識するようになりましたか。
Q7.その理由をご記入ください。
Q8.Q6.で“はい”の場合、無電柱化を実施する予定は立っていますか。
Q9.無電柱化事業を実施した際、これからする際、課題となった(なるだろう)ところは何ですか。
Q10.これまでに住民から無電柱化についてどのような意見がありましたか。
Q11.無電柱化事業に対して意見があればお願いします。
◆結 果
Q1.市区町村名をご記入ください。
今回のアンケート調査では千葉県内全55自治体(県市町村)のうち23自治体から回答をいただきました。アンケート調査にご協力いただいた自治体担当者の皆様、ありがとうございました。この場を借りて御礼申し上げます。
Q2.担当部署・担当者をご記入ください。
主に道路管理担当の方
被害状況については各自治体の危機管理担当の方
Q3.無電柱化推進計画を策定していますか。
Q4.2019年の台風15号のときの被害状況(停電戸数、停電期間など)
・停電被害はなかった
・半日程度(3)
・2日~1週間程度(8)→千葉県西部が中心
・2週間程度~それ以上(5)→千葉県南部や東部といった沿岸部が中心
・不明(6)
Q5.今後こうした被害を出さないようにするために行っている取り組みがあれば、ご記入ください。
・支障木の伐採(2)
・東京電力パワーグリッド株式会社との協定を締結(11)→電源車等の電源対策、停電予防のための樹 木の伐採、災害時の迅速な対応など
・無電柱化事業の実施
・従来から県の管理する緊急輸送道路を対象に新設電柱の道路占用を原則禁止
・特になし(8)
Q6.無電柱化は風災害などの災害に強いといわれています。被害が大きかった2019年の台風15号以降、無電柱化についてより意識するようになりましたか。
Q7.回答理由として、その理由をご記入ください。
Q7の意見として
「より意識するようになった」
・県や国の無電柱化推進計画の策定や道路法施行規則の改正、台風15号での被害により災害に備えるため無電柱化の必要性を再認識した。(3)
・無電柱化により、今回の台風15号のような通行阻害、電線被害に伴う長期的な停電・通信障害といった被害が出ないと思われるため。(9)
・「変わらない」
・特に大きな被害はなかったため。(2)
・排水等の道路整備事業が進んでなく、それらより先行して無電柱化を進めることは困難なため。(3)
・以前から無電柱化により災害に強いまちづくりができることを承知しているため。
・費用面で厳しいと思うから。(3)
・倒木による電線被害は郊外や山間部に集中しており、無電柱化を優先したい市街地ではないため。
・無電柱化するための道路用地がなく、現実的でない。
Q8.Q6.で“はい”の場合、無電柱化を実施する予定は立っていますか.
Q9.無電柱化事業を実施した際、これからする際、課題となった(なるだろう)ところは何ですか。
→多くの自治体様より複数の課題をいただきました。
・費用(17)
・専門知識のある職員の不足(5)
・地上機器の設置場所の確保(4)
・無電柱化を実施するまでの各所との協議、検討(9)
・長期間にわたる工期(3)
・実施主体
Q10.これまでに住民から無電柱化についてどのような意見がありましたか。(回答任意)
・大規模停電防止のための無電柱化
・歩行空間確保のための無電柱化(3)
・景観向上のための無電柱化
・新規に開発された住宅地や街のシンボルとなるところなど特定の場所での無電柱化(3)
Q11.無電柱化事業に対して意見があればお願いします。(回答任意)
・東京電力やNTT等、電線管理者が主体となって事業化してもらえるとありがたい。
・省スペースで安価な無電柱化の整備手法の開発をお願いしたい。
◆まとめ
今回の意識調査のアンケートでは、千葉県内の自治体・地域ごとの停電被害の大きさと無電柱化についての考え方の関係について知ることができた。それと同時に、無電柱化の実施状況とその課題点についても見えてきた。Q4より、千葉県南部や東部の沿岸部の自治体で停電被害が大きいという結果を得た。
この地域の自治体では、台風以外にも災害対策としての無電柱化について意識するようになっている。千葉県の北西部の自治体では、2019(令和元)年の台風15号以前から無電柱化事業がすでに進んでおり、そのため、大きな被害を免れた一つの要因であると考えられる。
千葉県南部や東部の台風での風の強度や滞留時間、北部や西部が、台風の進路から少し外れたことによって大きな被害を免れた面もあるかもしれないが、そこの因果関係までは、突き止めることはできなかった。
無電柱化については多くの自治体では肯定的な姿勢でいる。しかし、Q9からわかるように、実際に無電柱化を実施するには多くの課題が残っており、“無電柱化を実施したいけどできない”状況になっている。この状況の解決には、多くの人に無電柱化について知ってもらうことが必要であると感じた。
自治体の方からも「専門知識を持つ職員の不足」を課題に挙げているようにまだ無電柱化が浸透していない部分がある。
無電柱化について知らない人が多い中では無電柱化は進まない。
無電柱化についての知識がなく、後回しされた結果として日本の無電柱化が進まない現状になっていると考えられる。
今後、より多くの人が無電柱化について関心・知識を持つことが無電柱化を進めるために重要である。無電柱化についてさらに広まり、技術研究がより積極的に行われ、低コスト・省スペースの方法が開発されることを期待する。
千葉県では台風によって大きな被害を受けた地域がたくさんあったが、この中でも無電柱化を実施した地区では被害が最小限だったという事例もある。
台風だけでなく、地震、噴火など日本では様々な災害が起こりうるので、その対策は必須である。今回のインターンでの個人企画が災害に強いという面での無電柱化を伝える一助になればと思う。