皆さん、こんにちは!
本日は、令和6(2024)年3月に 国土交通省 道路局 環境安全・防災課から発出された「無電柱化 のコスト縮減の手引き」にある「多様な整備手法」について紹介します。
地中化構造と非地中化構造の概要
無電柱化の構造は、電線類を地中に埋設する「地中化構造」と屋側配線・迂回配線等の「非地中化構造」に大別される。これまで無電柱化は、「電線共同溝方式」により進められてきたが、今後は、現場状況を考慮し、非地中化構造も含めた様々な方式により整備を推進していくことが重要である。
※今回の手引きでは、用語の変更も行われている。
これまで無電柱化における地中化の構造は、その普及の状況に応じて「電線共同溝」の呼称を一律に使用してきたところである。これまでの技術開発から、小型ボックスや直接埋設等の新たな構造が生まれてきたこと等を踏まえ、以下の通り、構造の名称を改めて整理した。
地中化構造は、電線類の収容空間として地中に管路等を埋設する構造である、地中に配置されるので、台風等の災害に強靱である。
非地中化構造のうち、屋側配線は沿道の需要家の軒下等を利用して配線する構造である。迂回配線は、無電柱化を行う道路の裏道等を利用して配線する構造である。
非地中化構造の特徴・留意事項
非地中化構造(屋側配線、迂回配線)は、以下の特徴を有する。
【非地中化構造の特徴】
・狭小な道路幅員、既存埋設物の錯綜や地上機器設置箇所が不在等、電線共同溝の実施が困難な場所において、非地中化手法による無電柱化は有効である。
・特に迂回配線の場合、地上機器の設置が不要となるため、設置箇所の確保が困難なケースに有用である。
・非地中化手法は、交通規制等が必要最小限で済むため、工事期間の短縮にも有効である。
・非地中化手法による無電柱化を確実なものとするためには、当該手法の適用性や活用に支障が生じる等の実施条件を、あらかじめ把握しておくことが重要である。 他方、非地中化手法を活用する際には、次の点等に留意する必要がある。
【屋側配線】
・屋側配線の場合、幹線系統の迂回または地中化が必要となることに留意が必要。
・沿道家屋の軒、庇等が連続する区間に適する。不連続な区間でも適用は可能であるが、不連続な箇所は屋側(壁面)配線となり、美装化等への配慮が必要。
・屋側配線の実施後に家屋の更新が生じた場合、当該家屋だけではなく、連続する家屋の配管・配線に影響を及ぼす。 ・屋側配線の場合、軒下等への配線・配管が、各戸にまたがり連続するため、該当する家屋の地権者・建物所有者等との合意形成が不可欠である。
【迂回配線】
・迂回配線の場合、迂回ルートの確保が不可欠であり、迂回ルートに新たな電柱等の設置が生じる場合がある。
・需要家の受電・受信設備の位置変更が生じる場合があり、そのための費用が発生する。
・迂回配線の場合、需要家への配線を後背地から通過させる必要があるため、配線が通過する後背地の地権者等との合意形成が不可欠である。
非地中化構造の適用条件
非地中化構造(屋側配線、迂回配線)の適用条件は、以下の通りである。
【屋側配線】
・無電柱化の対象となる道路に、支道(枝道)が多く取り付き、当該道路の後背に道路(公道)が存在し、幹線系統の迂回が可能である。
・需要家屋の軒下への配管・配線に対し、需要者の合意を得ている。
・需要家屋の更新(建替え等)は、当該家屋以外の配線をやり直すこと等が必要とされるため、将来的な家屋の更新が生じない、または極めて低い箇所に適用する※。
・屋側配線では、高圧線の配線及び需要変動による配線の敷設替え等が困難なため、将来的に需要変動が生じない、または極めて低い箇所に適用する。
※屋側配線は、重伝建地区(重要伝統的建造物群保存地区)や伝建地区(伝統的建造物群保存地区)の家屋が適しているが、保存地区の管理が文化庁の担当なので、連携が必要である。
【迂回配線】
・無電柱化の対象となる道路の後背に道路(公道)が存在し、幹線系統の迂回が可能である。
・需要家の後背地において、電柱・電線の民地使用(架空配線・電柱設置)に対する合意を得ている。
・迂回配線では、将来的に高圧線の配線等が生じた場合、後背地からの引込設備(電柱、架空線等)の変更が生じ、後背地の地権者等とのトラブルが生じること等が想定されるため、需要が少ない箇所に適用することが望ましい。
非地中化構造における財産区分・費用負担
一般的な戸建て住宅等の配線は、電線の取付点により財産が区分され、それに応じて電線管理者、需要家の費用負担が生じる。屋側配線や迂回配線の非地中化手法においても、一般的な戸建て住宅等と同様な財産区分・費用負担を基本とする。ただし、電線管理者・需要家、自治体・事業者等の協議により、これによらない場合も存在する。