【インタビューの動機・目的】
私は、このNPO法人電線のない街づくり支援ネットワークのインターンシップに参加している高橋です。無電柱化は景観の保持・改善や安全な通行につながるだけでなく、防災面にもさまざまなメリットをもたらすことを学びました。
今年の日本は特に、地震、台風、集中豪雨など、災害や異常気象の影響を大きく受けていると思います。そこで、無電柱化と防災面での効果について、さらに理解を深めたいと思い、幅広い知識と経験をお持ちであるNPO北海道支部の村山支部長へインタビューを依頼しました。
【村山支部長への13個の質問】
取材にのぞむ前に色々検討し、13個の質問を用意いたしました。
無電柱化への関わり・目的について
① 村山支部長が無電柱化に取り組まれたきっかけは何ですか?
② 現在、無電柱化についてどのような取り組みをされていますか?
③ 無電柱化には、どのようなメリットや目的があると考えていますか?
防災との関わりについて
④ 防災の観点から、無電柱化を優先して進めるべき場所にはどのような特徴がありますか?
⑤ これまでに起きた災害の中で、無電柱化の重要性が改めて感じられた事例はありますか?
⑥ その他、無電柱化と防災に関して、村山支部長のご意見をお聞かせいただけますか?
実際の取り組み・現場について
⑦ これまで無電柱化に関わる中で、印象に残っている取り組みはありますか?
⑧ 資料だけでは分かりにくい、現場ならではの苦労はありますか?
一般の人々の認識・情報発信について
⑨ 一般の人にはあまり知られていない、または誤解されやすいと感じることはありますか?
⑩ 一般の人々に、無電柱化について知ってほしいことはありますか?
⑪ またそれをどのようにして伝えれば良いでしょうか?
今後の無電柱化について
⑫ 無電柱化をさらに進めていくためには、どのようなことが必要でしょうか?
⑬ これからの無電柱化について、どのようになっていくと良いと考えていますか?
これらの質問に対して、村山支部長が資料を用いて、一つひとつ丁寧に回答をしていただきました。
取材は1時間15分に及びました。
村山支部長および関係者の皆様に感謝申し上げます。
ご回答の中で、特に重要、印象に残ったものを紹介させていただきます。
【無電柱化への関わり・目的について】
現在、村山支部長は、
・北海道開発局が発注する国直轄の電線共同溝工事の施工
・地中探査、試掘、現地の地盤や道路条件の確認といった調査
・トレンチャーを活用した単独地中化、共同施工
・北海道支部主催で、無電柱化北海道フォーラム2026(2026.5.14)を開催し、行政・市民との対話を通じた情報を発信
などに取り組まれています。
通信土木の仕事がその原点となっており、通信ケーブルを収容する地下管路やマンホールの施工、高度成長期の東京での山手線沿線の道路・商店街などの電線類地中化工事、北海道の電線共同溝工事の施工などに携われてきました。
また、国は、無電柱化をする目的を、①防災・②安全な通行・③景観の向上・観光の振興としているが、その中でも、「命を守ること」を重視されています。
またお話を伺うなかで、無電柱化は、単に地中化するだけではなく、地上機器を含めた道路の維持管理も必要だということが分かりました。
【防災との関わりについて】
今の御社の防災を考える上でのきっかけになった出来事は、やはり、1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災です。
これをきっかけに、道路閉鎖を防ぐ無電柱化の防災上の重要性を認識され、現場の技術と課題を社会へ伝えることも役割だとお考えになっています。

防災には、耐震化や避難計画、消防・救急・インフラの整備など、さまざまな備えが必要である一方、道路が通れなくなる要因には、建物・構造物の損壊、自然災害による被害などを指摘されていました。
資料であげて下さった神戸大学・旧神戸商船大学の学生の悲劇は、古い家屋での倒壊が招いた面があり、この災害をきっかけに全国で建物の耐震化が見直されました。
無電柱化は、防災の手段の一つであり、電柱倒壊や電線の断線による垂れ下がりによる道路閉鎖を減らすことができます。地域の危険性や緊急性を考慮して、最適な対策を選び、関係者が連携して取り組むことが重要であると考えているとのことです。

無電柱化を優先するべき場所としては、緊急輸送道路と避難所までの地域道路の両方を挙げられていました。
防災上重要な道路だけでなく、避難経路となる生活道路も含め、地域の状況に応じて無電柱化の優先順位を決めていく必要があることを知りました。

【実際の取り組み・私たちの認識について】
無電柱化は、「景観のためだけに行われる」「電柱・電線を埋めるだけ」「災害に絶対強い」といったような単純な事業ではないといえます。無電柱化は、景観以外にも、防災や安全な通行等にも関係します。また、ただ地下に埋設するだけでなく、インフラの調整も必要であり、地中設備も自然災害の被害を受けることがあるため、費用だけでなく、非常時の社会的損失も考慮しなければならないと述べられていました。
また、夜間・冬季施工、地下埋設物の確認、住民・関係者との調整など、実際の工事には現場ならではの苦労や努力があることが分かりました。
例えば、夜間に工事を行うためには、騒音、振動、交通規制、店舗への出入りへの配慮など、地域の住民や関係者に説明し、理解を得る必要があります。住民からは工事に対する苦情もあったそうです。
また、地下の設備は、図面だけでは分からないこともあり、地中探査と試掘で確認をします。
さらに、北海道では、冬に工事を行う場合、除雪、凍結地盤、低温下での作業環境も考慮して安全と品質を確保しなければなりません。
また、工事が完了したとき、いままでの努力の上で完成したすばらしい設備は、消え去った電柱とともに見えなくなってしまうことが多く残念だとのことでした。
私はこの点が特に印象に残りました。
普段は完成した状態しか見ることがないため、その裏側にある多くの人の仕事や努力について考えるきっかけになりました。
【一般の人々の認識・情報発信について】
では、防災や無電柱化を自分事として考えるためにはどうすれば良いのでしょうか。
村山村山支部長は、
・施工前後や災害時の写真を「見る」
・実際に避難路を「歩く」
・行政・専門家・施工会社・住民など、多様な立場の人と「話す」
これらの取り組みが大切だと示されていました。
村山支部長から、「自宅から避難路までどのように行けばよいか実際に歩いてみてね。」とアドバイスをいただきました。
いただいたお言葉を参考に実践することが、「防災の第一歩」につながると感じました。
「見る・歩く・話す」という実際の体験を通して、無電柱化が自分たちの暮らしや災害時の安全とどのようにつながっているのかを知ることが、自分事として考える第一歩になるのかもしれません。
【今後の無電柱化について】
無電柱化をさらに進めていくためには、以下の5つの条件が重要だとされています。
・防災上重要な区間の選定
・早期の連携
・事前調査
・地域に合う工法の選択
・制度の構築・市民理解
特に、②の早期連携を重要視されていました。行政だけでなく、一般市民の視点も取り入れ、計画段階から道路管理者や電力・通信事業者なども含めて共通理解を得る必要があるとのことです。

さらに、地域防災計画や津波避難計画などと連携し、幹線道路と避難路を切れ目なく機能させ、無電柱化を、地域防災を支える取り組みの一つとして進めていくことを目指されています。
【まとめ】
今回のインタビューを通して、無電柱化と防災のつながりや、実際の現場ではどのような工夫や苦労があるのかということ、これからの取り組みについて知ることができました。
特に
・電柱をなくし、電線類を地中化することで、地上からは見えなくなる一方、そこに至るまでの仕事や努力が見えにくくなること
・北海道などの寒冷地では、凍結や除雪などを考慮する必要があるなど、地域の特性によって、無電柱化を進める上での課題が異なること
・無電柱化を防災対策の一つとして適切に位置付ける姿勢が重要であること
が新たな気づきとなりました。
この学びを活かし、無電柱化を防災の観点からも捉え、自分たちの暮らしと結びつけて考えていきたいと思います。
最後に、取材に応じていただいただけでなく、記事作成の際、大変参考になる資料のご提供やご協力くださった村山支部長ほか、皆様に感謝申し上げます。
【村山支部長より】
10月17日・18日に鳥取県で開催される「ぼうさいこくたい2026 in 鳥取」に、NPO法人電線のない街づくり支援ネットワークとして初めて出展します。
全国の防災関係者や自治体の皆様と直接お話しし、無電柱化の取り組みについてご意見やご質問、助言をいただける貴重な機会になると考えています。
無電柱化だけで、すべての防災上の課題を解決できるわけではありません。
しかし、災害が起きる前に備え、電柱の倒壊や電線の垂れ下がりによる道路の通行障害を減らし、避難や救助の道を守るための大切な手段の一つです。
「その道、逃げられますか?」をテーマに、自分たちが普段使っている道が災害時にも通れるのか、どのような備えが必要なのかを、全国の皆様と一緒に考えていきたいと思います。
今回、高橋さんからいただいた13の質問に答える中で、私自身も初心に返り、約50年間携わってきた無電柱化の現場経験を振り返りながら、その必要性と、これから伝えていくべきことを改めて考えることができました。
高橋さん、こちらこそ、丁寧で素晴らしいインタビューをありがとうございました。
