11月10日の「無電柱化の日」に合せて発刊しようと、NPO事務局の企画で本の編集がスタートしました。髙田理事長、松原副理事長に執筆を分担いただき、11月初旬に店頭に並ぶことができました。
その名も『見あげたい日本の空★復活へのシナリオ 無電柱化の時代へ』。
出版元のかもがわ出版様にも無理を言って、ブックレット形式のものでは、異例の巻頭16pをカラーにしていただき、充実した内容のものに仕上がりました。
それを受けての発刊記念イベントです。今回、大阪で行いましたが、2018年12月12日でも新宿文化センター3階小ホールで発刊イベントを行います。
◎詳細はコチラから
■そもそもブックレットを刊行しようと思ったのは?
2016年12月に「無電柱化の推進に関する法律」が施行され、2018年4年に無電柱化推進計画が発表された。2007年4月より当NPOを立ち上げ、他の関係団体や、国・自治体、会員の皆様と取り組んできた成果だと感じてはいる。が、しかし、電柱・電線類に覆いつくされた日本の空を、美しく、安心して仰ぐには、ほんの第一歩に過ぎず、その実現には余りにも多くのハードルがあり、特殊な事情を抱えていることも痛感している。
本書は、このハードルをしっかりと捉える入門書として、髙田理事長に目次構成を検討いただいた。
それが、以下の項目である!!
1.なぜ無電柱化が必要なのか
→無電柱化の目的:防災、安全・安心、景観・観光
2.日本の電柱の現状
→世界との比較、日本で電柱が進まなかった理由
3.無電柱化への大きな流れ
→国、地方、民間の動き
4.無電柱化のハードルを越える
→意識改革、適切な手順、低コスト化、合意形成
5.無電柱化の実現へ
→当NPOや関連団体が取り組んだ事例紹介と各自治体の無電柱化事例
※更に、本書の項目とは別に経済学的視点や法解釈的視点での無電柱化の提言を、松原副理事長が、無電柱化の低コスト化・合意形成というハードルを越えるヒントとなる事例紹介を井上事務局長が、巻末に各自治体や地域で取り組んでいる事例紹介を髙山理事とNPO事務局がそれぞれ担当し、無電柱化の理解向上になるようにしている。64ページという限られたページ数の中にできる限り、読者に役立つ図版や写真を取り込み、「無電柱化の手引き」決定版と自負するものとなっております。
少々本書の内容が長くなってしまいましたが、本題のイベントに移らせて頂きます。
■「無電柱化ブックレット」トークインin大阪
出演者は、コーディネート役として髙田理事長、芦屋市無電柱化担当課長の三柴氏、京都先斗町まちづくり協議会副会長兼事務局長の神戸氏、関西電力(株)送配電カンパニー配電部配電計画グループマネージャーの守屋氏。関西の無電柱化を牽引する皆様のお話に深く興味を持たれた方も多かったと思われます。冒頭で、井上事務局長がブックレットの内容説明とともに、今年の大阪での災害と、それに伴う電柱・電線の被害について説明。今後も増える自然災害に備えて、無電柱化を進めるべきだと解説をした。
以下、簡単にご紹介させて頂きます。
三柴氏 芦屋市は無電柱化率14.0%という全国屈指の無電柱化推進都市である。その要因は、古くからの別荘地、高級住宅街である六麓荘の住民が自主的に無電柱化されたことと、南芦屋浜地区という埋立地の造成の際に無電柱化した住宅地をつくろうと進めた、この二つの無
電柱化された地区と国の施策(無電柱化推進計画)に基づいて無電柱化を進めた幹線道路から高い比率となっており、市としての施策というよりは、自ずと無電柱化された経緯が大きい。これからは芦屋市も携わっていく。
※詳細な路線図は、芦屋市のHPから閲覧できます。http://www.city.ashiya.lg.jp/douro/documents/08_05yuusennrosen.pdf(第3回芦屋市無電柱化推進計画策定委員会の資料より。2018.5.10)
芦屋市の風景
芦屋市の無電柱化の推進をまとめると、
①国が作った無電柱化推進計画をベースに丁寧にまとめられて計画を作り、それを実行していること。
②現在、無電柱化が保たれているところには新設電柱を建てさせない、宅地開発により道路が新設される場合は、その事業主に対し、電柱及び電線を新たに設置しないよう求める(1ha以上が基準)。強制ではない。
③新設道路に関しては、すべて無電柱化を前提とする。
④住民同意のもとでの無電柱化が進められていること。
が挙げられる。特に④は、11月10日の無電柱化の日にイベントを開いて、キャッチフレーズの公募をしたり、無電柱化推進計画策定会議を広く市民にも見られるように開放したり、住民要望による無電柱化検討地区を設けたり、財源を確保するために「無電柱化推進基金」を設けたりしている。
このような施策が進められるのも、市民の無電柱化に対する意識の強さがベースにあるように思える。
神戸氏 京都先斗町は一番狭い幅員の道路であれば、1.4mと大人が手を伸ばせば届くような通りである。京都五花街の一つで、古くからの町屋も多く残っている。それは、江戸・明治時代にまで遡る。狭い通りに飲食店が密集しており、民家も意外と多い※。
※片側70軒、もう片側70軒。区域で考えると、木屋町通まで350軒ある。住人も意外と多く、神戸氏も含めて120名ほどが住んでいる。四代目・五代目の社長さんも多い。
この狭い通りに店舗や民家が密集するという独特の地域ゆえに電線が上空にはびこることとなった。
折しも、京都市が制定した景観条例により、当初95%(ほぼ違反)あった通りの看板・ネオンが改善された。皮肉なことに、それが逆に上空の電線を目立たせる結果となってしまった。
電線の”あった”先斗町
電柱の地中化に関しては、古くから顔見知りが多く、地域に住んでいる人も多かったことが住民の合意形成が得られ易かったようだ。狭隘な道路でも地上機器の設置を民有地に置く工夫※をして確保できたのも街の皆さんの日頃からの繋がりがなせることだと痛感した。
※犬矢来の中、店の看板やショーケースの下、町屋の中の坪庭の角、お地蔵さんの祠の下等に配置されている。
先斗町の詳しい事情はこちらをクリック
街づくりでの合意形成で賛同が得られるコツ、秘訣について神戸さんは、とにかく書くことです。書類の作成とは違います。お互いが言った言わないにならないように、とにかく書く。あと発信することです。しゃべりたくることです。それによって現実になることもあります。あとご近所同志で愚痴も聞いてあげる。夜間の工事がうるさかったとか、今度うちに来るみたいなどの不安を聞いてあげるのも大事なようです。
電線のなくなった先斗町
守屋氏 今まで手掛けた無電柱化の事例を紹介。大阪市中心部の四ツ橋筋(主要幹線道路)や宗右衛門町通(人通りの多い商店街。歩道のないところでの無電柱化)、清水寺近くの二年坂・産寧坂(観光地)など、様々な無電柱化の取り組みを紹介。また11月8日に京都市と共同で実施した京都大学正門前のトレンチャーを使った実証実験の様子も紹介された。直接埋設の足がかりとなる実験なので今後注目される。
※実証実験の様子は、下の動画をクリックして下さい。
あと、先斗町の狭隘道路や夜間での工事の効率化の取り組み事例も説明。その中でも埋め戻しの効率化を図るため、発泡ポリスチレンを網目状の袋に入れたもの(写真下)を埋設された穴の中に入れ、上をラバーで覆い、いちいち土を入れ戻さなくても済むような工夫をされていると説明いただく。
関西電力としては、国が定めた無電柱化推進計画に従って取り組んでいく。無電柱化を進めるためには、地上機器の置き場所や工事への理解(騒音や一定期間不自由をかけることなど)が必要だ。今後益々住民との合意形成が必要となってくるだろう。無電柱化に反対する人は、あまりいないが、総論賛成、各論反対といったケースが多いのが実情だ。今後は、正しい啓蒙活動を通じて無電柱化の理解を深めていきたい。
実際の地元の方との相互理解の場、京の三条まちづくり協議会の無電柱化勉強会についてはこちら
髙田理事長 誤解に基づいて反対するケースが多い。まさに無電柱化において先斗町のように皆できちんと話し合いができればいいが、そこで専門家が入って、合意形成の役に立てればと思っている。
宣伝にはなるが、この本にそのヒントが書かれている。無電柱化はやろうと思えばどこでもできる。住民・行政・電線管理者の三者一体に専門家をまじえ、また低コスト化も進めながら無電柱化をはかることが必要だと思う。
■NPOからのお知らせ
荒関本部長 2年前に無電柱化推進法が成立したが、なかなか進まない。それはなぜか? 電線共同溝という大きな桝を使い、1キロ当たり5.3億円の費用をかけて進める。予算がいくらあっても足りない。しかも電柱は、国内に3600万本もある。このままでは無電柱化は進まないのではないか。
そう思われるが、必要なところに予算を引っ張り、見事道路を整備した例もある。冒頭で井上事務局長が触れたように、先の北海道での地震の視察後に安倍首相が国土強靭化計画のもと、無電柱化を進めると明言し、そのすぐあとの財政諮問会議で石井国土交通大臣が、オリンピックが開催される2020年までに1400kmの無電柱化をすると明言し、新聞各社にも発表している。
国土交通省の無電柱化推進計画はこちら
がしかし、関西に目を向けると国交省からの発注件数も関東とは各段の差がある。つい3日前に決まった大阪万博では、会場に電車を通すのとは別に、これから建設する会場へのアクセス道路を無電柱化するとの話も出ています。
当NPOでは、勉強会、セミナー、シンポジウムなど様々な活動を行っていますし、情報をメールで会員様に配信しております。是非ご入会いただいて当NPOの情報を活用していただきたい。