詳細
日程 | 2019年11月27日(水) |
時間 | 14:00~17:30 |
場所 | 東京文具共和会館 浅草橋 2階ABC室 |
住所 | 〒111-8611 東京都台東区柳橋1-2-10 |
参加費 | 無料(講演資料が必要な方は1,000円/部) |
交流会 | CONA浅草橋店 東京都台東区浅草橋1-8-6
18:00~20:00 費用:4,500円 |
スケジュール
14:00~14:05 | 開会 主催者挨拶 | 当NPO東京支部長 高山登 |
14:05~14:15 | 来賓挨拶 | |
14:15~14:45 | 報告1「台風15号の被害状況と無電柱化を取り巻く現状」 | 国土交通省道路局環境安全・防災課 |
14:45~15:05 | 報告2「アジア三か国の無電柱化最新事例」 | 一般財団法人日本道研究所 福地良平 |
15:05~15:35 | 基調講演「無電柱化推進への筋道」 | 放送大学教授 松原隆一郎 |
15:35~15:55 | 休憩(企業展示ブース見学) | |
15:55~16:25 | 講演1「住宅開発地の景観に優れた街づくり」 | アーバンセクション代表 二瓶正史 |
16:25~17:15 | 講演2「無電柱化事業の可視化と効果計測研究への挑戦」 | 京都大学大学院工学研究科准教授 大庭哲治 |
17:15~17:25 | 質疑応答 | |
17:25~17:30 | NPOからのお知らせ | NPO事務局長 井上利一 |
17:30 | 閉会 |
講演内容
以下講演のみの紹介となります。その他の講演に関してもっと知りたい方は事務局までお問い合わせください。
講演1 「住宅開発地の景観に優れた街づくり」
講師:二瓶正史
法政大学工学部卒、東京都立大学工学研究科修士課程修了。(有)宮脇檀建築研究室を経てアーバンセクションを設立。
著書に「東京の町を読む」、「街並を創る」。「コモンで街をつくる」(以上共著)他
私は40年近く電線・電柱の問題に取り組み続けてきた。電線・電柱による景観への影響は非常に大きなものだ。
まず住宅地の町づくりにおける電線・電柱の弊害として、分譲事業や街づくり計画、環境管理(エリアマネジメント)に対する弊害が存在する。私の専門はまちづくりだが、その一環として、コミュニティ道路を作ろうとすると特に電線・電柱が目立ってしまう。
典型的な戦後の分譲住宅地として、定型化された宅地開発による造成街区(ハーモニカ型と呼ばれる)の区画道路に建柱され電線が引かれていった。
景観に対する問題として電柱・電線が最も大きいものであることは間違いなかったが、対処するのが難しい問題であったため、建柱位置を工夫して街並みを作り上げることにした。「公」と「私」の境界を「共」として、住民の方に協力してもらうことにより、なんとか街並みといえるものを創ることができた。
また共用柱を使うことにより電柱の数を減らしたり、背割り建柱や宅地の奥に建柱することによって道路に見た目上電線・電柱のない景観にしたりすることができる。他にも、地中化すると地上機器が高いので、電柱の上で分岐して、低圧線のみを地中化する手法も用いている。しかし分岐の近くでは配線が目立ってしまうので、結局のところ苦肉の策である。
結局景観という意味では完全埋設が最も優れている。電線は直線に張ることを前提としているため、曲線の道路では成り立たない。しかし完全埋設は何かしらインセンティブがないと実行がかなり難しい。美しい景観は住民の環境に対する意識を育むため、自主的にイベントを開き周囲の人たちの関わり合いが深まっていくという良い循環が形成される。
講演2 「無電柱化事業の可視化と効果計測研究への挑戦」
講師:大庭哲治
京都大学大学院経済管理研究部准教授、京都大学大学院工学研究科博士後期課程修了博士(工学)、三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)研究員、京都大学大学院工学研究科助教、准教授を経て現職。
専門は土木系の都市計画などであるが、3,4年前に無電柱化と接点を持った。
まず一般的な問題点として無電柱化の整備は非常にコストが高いことが挙げられる。
これまでこのコストをいかに下げるかが焦点となって議論されていて、実際に京都市では直接埋設方式による電線地中化の実験が行われた。実験の内容として、施工方法の検証や埋設によるケーブル品質への影響の確認、舗装への影響の確認、常設作業帯のコンパクト化の影響、トレンチャーの施工性の検証などである。京都市は寺社仏閣が多いため、土地利用の変化が少ないところでの直接埋設の有効性を検討されている。
(編注:トレンチャーに関する記事は以下をご覧ください。)
こうした低コスト化を進める一方で、より費用対効果の高い場所で無電柱化をすることが重要となってくるが、それを検証するためには無電柱化がどのような効果を持っているかを洗い出さなければならない。無電柱化の効果や影響として法律に記されているものは「災害の防止、安全かつ円滑な交通の確保、良好な景観の形成」であるが、実際にそのような効果が存在するかどうかを検証することによって他のさまざまな議論に繋げることができるようになる。
ここで無電柱化の学術研究の動向として、無電柱化・電線類地中化に関する研究報告の多くは、法制度の概要報告や各地の整備事例・手法の紹介であり、効果や影響の把握または、経済評価を見据えた実証研究の蓄積は極めて浅いことが分かった。
ではなぜ、このような先行研究が少ないかについて、そもそも基礎情報やデータが極めて乏しいうえに、そもそもの実績データ自体が未整備であることが挙げられる。
したがって私は、まず、無電柱化実績データを整備するとともに、距離と価格を考慮した無電柱化が地価に及ぼす影響と、着手・完了・抜柱時点を考慮した周辺地価に及ぼす影響を調べた。
(編注:詳しい内容については以下を参考にしてください。)
まず無電柱化実績データの整備として、京都市無電柱化事業の実施状況を明らかにするため、京都市と連携して、昭和61年度~平成30年3月末時点までの電線類地中化実績に関するデータ(区間、整備延長等の属性情報と実施箇所の位置情報)を収集・整理した。これによって地理情報による実績データの可視化を行った。これにより京都市無電柱化事業の第4期~第6期五カ年計画では、官僚から抜柱までに、最大で11年を要する路線があり、地上機器の設置スペースを確保できない区間での民有地への設置に、合意形成も含めて長い期間を要していることが明らかになった。
さて本題だがまず初めに、近年ではエビデンス(因果関係に関する実証的根拠)に基づいて政策を立案しているので、無電柱化の推進のためになんらかの因果関係(≠相関関係)が存在しないかというところを調べていく。
私が調べた結果、無電柱化が地価にプラスの因果的効果(編注:「無電柱化をすれば地価が上がる」と読み替えていただいて結構です。)を与えていることが明らかとなり、2010年~2018年度に限定すると距離やタイミング(着手・完了・抜柱)によって因果的効果が鮮明化している。特に無電柱化された場所の0~50mかつ抜柱後であれば地価が最大21.9%上昇することが分かった。つまり無電柱化事業を行っても抜柱まで完了しなければ最大の効果を発揮しないことが分かった。抜柱に長い年月を要し、抜柱年度が未定な区間も少なくない。地域住民を含む関係主体間の円滑な合意形成と迅速な抜柱の実施が示唆される。
最後に、無電柱化整備の推進に当たっては、費用と効果の両面を捉えていく必要があり、課題把握、科学的検証、効果/影響の計測に向けては、因果関係の把握が重要である。特に、無電柱化整備においては、因果関係を示唆するエビデンスの創出・蓄積とそのための実績データの整備が急務であると考えられる。