つくば市の無電柱化推進条例は日本で初めて導入された「無電柱化に関する条例」で平成28年9月30日に公布・施行されました。

このタイミングのすごいところは「無電柱化の推進に関する法律」ができる前に作ったという点です。日本全国で無電柱化をやりたいと思っていても現在のように法律も手引きもない状態で一市町村が条例を作るのは無電柱化に対する情熱といってもいいでしょう。

その情熱ほとばしる無電柱化推進条例の内容を一緒に見てみましょう。

条例内容

第1条(目的)

この条例は、電線類を地下に埋設することによる無電柱化を図り、もって都市の防災機能の向上安全かつ円滑な交通の確保及び景観の整備に資することを目的とする。

第2条(定義)

この条例において,次の各号に掲げる用語の意義は,当該各号に定めると
ころによる。

(1) 電線類:電気事業法(昭和39年法律第170号)第2条第1項第18号に規定す
る電気工作物のうち配電のために設置する電線路及び電気通信事業法(昭和59
年法律第86号)第2条第2号に規定する電気通信設備のうち電気通信を行うた
めの線路をいう。

(2) 内線:道路以外の土地にある電気事業法第2条第1項第17号に規定する電気事業者又は電気通信事業法第2条第5号に規定する電気通信事業者以外の者が所有する電線類で,電気使用場所相互間又は電気通信事業法第2条第2号に規定する電気通信設備のうち電気通信を行うための機械若しくは器具相互間のものをいう。

(3) 開発行為都市計画法(昭和43年法律第100号)第4条第12項に規定する開発行為をいう。

(4) 道路道路法(昭和27年法律第180号)第2条第1項に規定する道路をいう。

この定義では無電柱化の定義がなされていません。無電柱化という言葉が一般的な言葉として認識され始めたのはこの条例と無電柱化推進法によるところが大きいので、条例内で積極的に使うのを控えたのはまだ浸透していない言葉を使うのに抵抗があったからではないかと思っています。

第3条(無電柱化区域における義務)

別図に掲げる区域(以下「無電柱化区域」という。)において電線類の敷設を要請しようとする者は、電柱を設置することなく、電線類を地下に埋設することにより敷設するための管路その他の規則で定める設備を整備し、および電線類を敷設するものに対し、費用(電柱を設置することなく、電線類を地下に埋設することにより敷設するために必要な費用のうち規則で定める費用に限る。)負担しなければならない

ただし、次の各号のいずれかに該当する場合は、この限りでない。

(1)電線類を敷設する区域において、電柱を設置することなく、電線類を地下に埋設することにより敷設することが技術的に困難な場合

(2)工事等により電線類または電通を一時的に使用する場合

(3)その他市長がやむを得ないと認める場合

2 無電柱化区域において自ら内線を敷設しようとする者は,電柱を設置することなく,内線を地下に埋設することにより敷設しなければならない。ただし,前項各号のいずれかに該当する場合は,この限りでない。

3 前2項の規定は,電柱を設置することなく,電線類を地下に埋設することにより敷設するために最低限必要となる電線類又は電柱については,適用しない。

無電柱化区域

引用:http://www.city.tsukuba.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/001/966/jyorei.pdf

この条例の最大のポイントであり、最も強力な条文です。無電柱化区域において電線類の地中化を義務化していることはつまり従来点や線でのみ行われていた無電柱化を面で行いかつ維持しているということです。

今までならある路線を無電柱化したとしてもまた新しく電柱が建てられていました。しかしこの条例の効力のあるうちは永遠に無電柱化区域が保たれるということです。

研究学園駅(Google Earth)

とはいえ、そのように義務化という拘束力の強い条例を作るとほかの法律や電気事業者の約款に抵触してしまうのではないかという疑問が浮かびます。しかしながらこれは日本国憲法第94条の「地方公共団体の権能」に保障されていますし、ほかにも

・憲法第29条(財産権)
・都市計画法、建築基準法等
・電気事業法

これらの法には抵触していないと判断されています。(現にすでに幾年か経過していますが、まったく問題なくつくば市の無電柱化区域は維持されています。

つくば駅周辺(Google Earth)

このような義務を日本で初めて作ったつくば市の気鋭と英断を私たちは見習わなくてはなりません。

第4条(無電柱化の促進)

無電柱化区域を除く区域において、次の各号のいずれかに該当する場合は、電線類の敷設を要請しようとするものは、電柱を設置することなく、電線類を地下に埋設することにより敷設されるよう努めなければならない

(1)敷設する電線類と既設の電線類との接続箇所がすでに地下に埋設されている場合

(2)都市計画法第7条第1に規定する市街化区域において、開発行為をする土地の面積が1ヘクタール以上の開発行為を行う場合

2 無電柱化区域を除く区域において、前項各号のいずれかに該当する場合は、自ら内線を敷設しようとするものは、電柱を設置することなく、内線を地下に埋設することにより敷設するように努めなければならない

3 前条第1項ただし書の規定及び同条第3項の規定は、前2項の規定による電線類の敷設について準用する。

1ヘクタールはこの約1.5倍

この第4条は無電柱化を促進するという一般的な無電柱化推進条例の先駆けとなった条文です。ただし1ヘクタール以上の開発行為を行う場合にもその努力義務が発生するというのはつくば市だけのものです。1ヘクタールといえばサッカーコート約1.5面分ですから土地開発で言えばよくあることです。

まとめ

つくば駅周辺

無電柱化推進条例の先駆けとなったつくば市の条例はいかがだったでしょうか。特に全国で初めて無電柱化を義務付けた条文を盛り込んだというのは素晴らしいことだと思います。直接無電柱化とはあまり関係ないので本文では割愛させていただいた第5,6,7,8条と附則を付録として下記に記しておきます。興味がある人はご覧いただければ幸いです。不足な情報や疑問に思ったことはぜひ下のお問い合わせフォームからご相談ください。

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    付録

    第5条は街路灯に関して、第6条は違反者に対する勧告の仕方、第7条は違反者が氏名を公表されること、第8条は委任に関して記載されてあります。

    第5条(街灯等の設置)

    無電柱化区域において,開発行為に伴い電線類を地下に埋設する場合であって,道路を新設するときは,当該開発行為を行う者は,規則で定めるところにより当該道路を照らすための街灯その他の照明を設置しなければならない。

    2 無電柱化区域を除く区域において,前条第1項第2号に規定する開発行為に伴い電線類を地下に埋設する場合であって,道路を新設するときは,当該開発行為を行う者は,規則で定めるところにより当該道路を照らすための街灯その他の照明を設置するよう努めなければならない。

    第6条(勧告)

    市長は,第3条又は前条第1項の規定に違反し,又は違反するおそれがあると認める者に対し,違反を是正するために必要な措置をとることを勧告することができる。

    第7条(公表)

    市長は,前条の規定による勧告を受けた者が,正当な理由なく当該勧告に従わないときは,当該勧告に従わない者の氏名及び住所並びに当該勧告の内容を公表することができる。

    2 市長は,前項の規定により公表しようとするときは,あらかじめ当該公表の対象となる者に意見を述べる機会を与えなければならない。

    第8条(委任)

    この条例の施行に関し必要な事項は,規則で定める。

    附則

    (施行期日)
    1 この条例は,公布の日から施行する。
    (経過措置)
    2 この条例の施行の際現に都市計画法第36条第2項の規定による検査済証の交付がなされていない開発行為(この条例の施行前に同法第29条第1項若しくは第2項の許可を受けたものに限る。)又は建築基準法(昭和25年法律第201号)第7条第5項,第7条の2第5項若しくは第18条第18項の規定による検査済証の交付がなされていない建築物の建築(この条例の施行前に同法第6条第1項若しくは第6条の2第1項の確認済証の交付又は同法第18条第3項の規定による確認済証の交付を受けた者に限る。)に係る電線類の敷設については,第3条及び第4条の規定は,適用しない。
    3 この条例の施行の際現に都市計画法第36条第2項の規定による検査済証の交付がなされていない開発行為(この条例の施行前に同法第29条第1項又は第2項の許可を受けたものに限る。)に係る道路の新設については,第5条の規定は,適用しない。