ドイツ・ハンブルグの街並み。中央上の線は、トラム(路面鉄道)の架線

2023年の名目GDP が日本を抜いて世界第3 位になったドイツってどんな国?

2023年の名目GDP において、日本はとうとうドイツに抜かれて4位になってしまった。
(比較される)名目GDP はドル建てで、日本の名目GDP は日本銀行の金融緩和政策によって円安になり、為替レートに左右されている面が大きい。一方、ドイツの名目GDP は高いインフレ率に押し上げられた状況となっているという見方が大きいようだ。とはいえ、現在の日本とドイツでどこが違うのか。無電柱化とは関係ないことも含めて、ドイツに関して知っていること、話題になったことを紹介します。

1.ドイツと日本 無電柱化の比較

国土技術政策総合研究所の資料によると、ドイツ、ハンブルグ州の無電柱化率(地中化率)は、中圧線(10.25 k V)では、100%、低圧線(0.4 k V)では、96.5%。
これは、イギリスのロンドン(99.9%)、フランスのパリ(100%)と同様に街に電柱・電線がはびこっていないことを示している。かたや、日本の東京23 区では7%、大阪市では5%とその差は歴然としている。
国土技術政策総合研究所の資料による

2.ドイツと日本 緊急輸送道路の比較

国土交通省では、無電柱化の目的の一つに「防災」をあげているが、その対策として国道を中心とした緊急輸送道路の無電柱化を急いでいる。

国土交通省資料による

その緊急輸送道路において、ドイツでは網の目のように張り巡らされているのに対して、日本では主要な都市を結ぶだけで、あとは点在しているのが現状である。
国土交通省資料による


国土交通省資料による

能登半島地震でなかなか救援に行けなかったのも、日本全国でまだまだ道路網が確立していないことを物語っている。日本の道路の総延長はドイツと同様に長く120 万km を超えているが、狭隘な道路が多く、高速(60 km/ h 以上)で走れる環境が整っていない。緊急輸送が必須の道路の無電柱化を更に検証し、優先順位をつけて進める政策を強く求めたい。

3.現在のドイツの環境事情~ドイツから日本が学ぶこと~

名目GDP でドイツが3位になったことにより、日本テレビの「世界一受けたい授業」でも環境先進国としてのドイツの生活が紹介された。無電柱化とは、関係のない要素もありますが、筆者が印象に残ったことを紹介します。
・平均年間労働時間はドイツの1331 時間に対し、日本は1598 時間。
・ドイツは「閉店法」という法律があり、飲食店を除くほとんどの営業施設が日曜日は営業していない。となると、日曜日は何をしているのかというと、ミュンヘン子の大半は、都市部にある広大な公園で散策したり、日光浴を楽しんだりするのだとか。一方で、美術館は、日曜日はどこでも1ユーロと格安だそうだ。キリスト教徒が多い影響もあるのか、不便でも「休む日は休む」という国民意識が根付いているようだ。日本にあるコンビニや100 均の店は、ほぼなく、薬局はある。
・前述の「公園でのんびり過ごす」ということだが、これは、イギリスやフランス他、ヨーロッパ諸国で共通することで、実は、日本のような街路樹がヨーロッパ諸国の一般道路にはあまりなく、歩道はスッキリしていて、自転車専用レーン等が設けられていることが多い。
・以前、松原隆一郎先生(放送大学教授・当NPO 副理事長)がセミナー等で話されていたが、「無電柱化して道路空間の安全性を確保する場合、街路樹の存在がネックになる。ヨーロッパでは街路樹を設けず、その分、別枠で緑の多い広大な公園を設け、CO2の削減も意識した空間をつくっている。今の日本の道路・歩道は、街路樹によって、なんとなく電柱・電線の目隠しを手伝っている感じがする。

その他、番組が紹介した中で興味深いものをいくつか紹介します。
・ドイツでは、ほとんどの鉄道やバスに自転車を持ち込むことができる。専用の車両やエリアが設けられている(自転車持ち込み専用チケットの購入が必要な場合もある)。
・ドイツの夕食は、できるだけ調理・加工しない料理で済ます。パンとハムやチーズが一般的。
・ペットボトルの回収機で回収処理をすれば、40 円(日本円で)戻ってくる。
・街中にある電話BOX などを活用して、いらなくなった本をそこに入れ、誰もが自由にそこから持って帰ることができる。
・ドイツでは、子育てに関する制度が充実しており、育児休業制度も手厚い。育児休暇は法律によって最高3 年と定められており、期間中は政府から「両親手当」という補助金も支給される。

ヨーロッパの国々を意識し、地整的にも違うドイツと日本を比べてどちらがよいかを判断することは難しいと思いますが、参考にする要素は多いのではないだろうか。
また、無電柱化においても、ドイツを含めたヨーロッパ諸国を参考にしつつも日本独自の無電柱化を進めていきたいものです。