今夏、インターンにきてくれた藤井さんは、外国語大学で学んでいる特性をいかして外国と日本の電柱・電線事情の違いについて調べることにしました。
取材の中には、直接電柱・電線と関係のない話と思われる点もありますが、その延長線上にヒントとなることもあると思い、全て紹介させていただきます。なかなか興味深い内容となりました。最後まで読んでいただけたらうれしいです。

異文化目線からの無電柱化を取材してみました!

松本JOYさん (中国・アメリカに在学経験あり)
Q1. ジョイさんは、どちらに、何年間住んでおられましたか。
A.15年間 中国・アモイ在住
2年間 米国・カリフォルニア在住(ハイスクール時代)
Q2. アモイにお住まいの際、都会に住んでいたのですか、郊外でしたか。
A.都会・街中の集合住宅に住んでいました。
Q3. 「無電柱化は電線をどうするか」の4択問題に対して
A.「地中に埋める」と回答。理由は水道も地下に埋設しているので、その発想でとのこと。
Q4. 「無電柱化が進んでいる国は?」の4択問題に対して
A.ドイツを回答。景色・景観の意識が高い国民という印象が強いとのこと。
Q5. 中国の無電柱化政策の印象について
A.観光地を中心に無電柱化を進めている感じ。目的がはっきりしている。国が古い建物、文化財周辺の無電柱化を進めている。国民もそれを分かっている。
Q6. アメリカの無電柱化政策の印象について
A.自然災害が多いこともあり、防災目的での無電柱化の印象が強い。
Q7. 日本の電柱に関する意識について
A.(日本は)電柱が多いなあという意識はあるが、電柱・電線を日本の風景の一つとしてとらえている外国人は多いのでは。つまり「電柱・電線が多い=不快」という感じではないように思う。
Q8. 電柱・電線で無くしたほうがいいと思うところは。
A.狭隘な道路で、電柱があると人の往来や車の往来がしづらい。危険である。
災害などのニュースもよく聞くので防災面でも大事。
Q9. その他無電柱化で感じることは。
A.パリは、電柱・電線がない。米国は、街の中心部はほんとに少ない。郊外はあるが、車社会なので電柱・電線があってもしかたないか。シンガポールは、国全体が街(田舎的なところがない)で、電柱もない。郊外がない。街中で多言語が行き交っていたのを思い出す。アモイは、生まれた時から電柱・電線はある。日本ほど目立たない。日本の電線は、ケーブル線がうっとうい。諸外国に比べるとかなり多いし、黒が目立つ。日本は電線に鳥がよくとまっている印象がある。

米国・カリフォルニア市街

米国・カルフォルニア市街

日本の電柱・電線の構造。図下の通信線が束になって目立っている場合が多い。(国土技術総合政策研究所「無電柱化事業における合意形成の進め方ガイド(案)」より))

 

電線下部の通信線。ケーブルテレビなど種類が多いので束が太く黒い線が目立っている。

◆感 想◆
無電柱化の推進は国(米国では州ともいえる)の政策によってかなり左右される印象を受けた。明確な理由をもっと示し、国民に理解を得ることが大事だと感じた。あと、(日本は)電柱が多いなあという意識はあるが、電柱・電線を日本の風景の一つとしてとらえている外国人は多いのでは。という感想も印象に残った。

山田ご夫妻 (当NPO個人会員)
山田様は、当NPOの個人会員で、今回の企画に関して取材の依頼をしたところ、快く応じていただきました。
Q1. ご主人の経歴は
A. An IT Professional who previously worked in R&D for a major US Telecommunications company.
以前大手米国通信会社のR&D部門でITエンジニアであった。
Q2. 日本では、どのように無電柱化を進めていると思いますか。
A. I noticed a few new neighborhoods without utility poles. Also, some areas have buried their utility lines. However, these are very isolated cases.
電柱のない新しい地域がいくつかあることに気づいた。 また、電線を埋設している地域もある。 しかし、これらは非常に珍しいケースである。

-母国(米国)の電柱の様子について
Q3. どれくらい電柱がありますか。
A. There are approximately 180,000,000.
約1億8000万本。
Q4. どの地方が一番少ない(多い)ですか。
A. First, since 1888 New York City has no electric poles. Also, since the 1960’s most new suburban developments have fully buried their utilities. Also, some cities have converted to underground utilities.
まず、1888年以来、ニューヨーク市には電柱がない。 また、1960年代以降、郊外に新しく開発された都市のほとんどは、電線を完全に埋設している。 また、地下埋設に転換した都市もある。
Q5. 道路に電柱はありますか。
A. Yes. Especially in rural areas, or along major established roads.
そうですね。 特に地方や幹線道路沿いでは。
Q6. 電柱がなくて良かったことはありますか。
A. Definitely. In New York City, there are no overhead wires, so the view of the street scape is unimpeded. This allows for a more aesthetically pleasing environment. Also, from a maintenance and resiliency perspective the underground infrastructure allows for speedy upgrades and offers protection for utility reliability in the face of natural disasters.
間違いない(もちろん)。 ニューヨーク市には架線がないので、街並みの景観が妨げられない。 そのため、より美観に優れた環境になる。 また、メンテナンスと回復力の観点からも、地下インフラは迅速なアップグレードを可能にし、自然災害に直面しても地下埋設施設の信頼性を保護します。(地下埋設施設の保護が可能になる。)
Q7. 電柱があって困ったことはありますか。
A. Never.
特にない。

-無電柱化をどこまで理解しているか。 (In the US? Awareness?)-
Q8. (アメリカにおける無電柱化の)認知度はどれくらいですか。
A. Since the US has buried many utility poles for more than 100 years, this issue is not generally discussed or considered by most people. Instead, since most new developments do not have overhead wires, people are simply accustomed to this approach, and it is generally assumed to be the right infrastructure design choice. However, in some older New York City suburbs overhead wires remain. When storms hit the areas (i.e., hurricanes, ice storms, etc.), those wires fall causing power outages and sometimes danger to pedestrians. At those times, people usually complained about continuing to have overhead wires.
米国では100年以上にわたって多くの電柱が埋設(無電柱化)されてきたため、この問題について一般的に議論されたり、検討されたりすることはほとんどない。 それどころか、ほとんどの新しい開発地には架空線がないため、人々は単にこのアプローチ(電柱のない状態に)に慣れており、一般的に正しいインフラ設計の選択だと思われている。 しかし、古いニューヨーク市郊外には架線が残っているところもある。 嵐がその地域を襲うと(ハリケーンや氷雨など)、それらの電線が断線して停電を引き起こし、時には歩行者に危険を及ぼすこともある。 そのような時、人々はたいてい架線があり続けることに文句を言う。
Q9. 無電柱化の利点を教えてください。
A. Please see above.
上に同じ。
Q10. 無電柱化についての国の政策は分かりますか。
A. In the US there are Federal, State, and local laws and policies. Recently, as part of the Federal Infrastructure Investment and Jobs Act signed into law in November 2021 three provisions to support communities interested in pursuing solutions to bury their utility infrastructure underground were included. There are other policies across the country that support this, however, this listing of such policies would be highly complex.
米国には連邦法、州法、地方法がある。最近では、2021年11月に署名された連邦インフラ投資・雇用法の一部として、公共インフラを地下に埋設する解決策を追求することに関心のあるコミュニティを支援する3つの条項が盛り込まれた。米国全体で他の政策でも地下埋設をサポートする内容のものはあるが、列挙すると非常に複雑になる。
Q11. あなたが政治家だとすれば、どのような政策を行いますか。
A. To create working policies government must balance positive objectives of undergrounding with the increased cost burden. For example, undergrounding can result in beautification and resiliency however in the US overhead installation cost is about $200 per meter and the underground cost is about $2,000 per meter. Thus, while the benefits of undergrounding are clear the policy question centers on who will pay the additional cost.
実用的な政策を策定するためには、政府は地中化の前向きな目的とコスト負担の増加のバランスをとらなければならない。例えば、地中化は美観と回復力をもたらすが、米国では架空敷設費用は1メートルあたり約200ドル、地中化費用は1メートルあたり約2000ドルである。このように、地中化のメリットは明らかであるが、追加コストを誰が負担するかが政策の中心である。

Q12. 無電柱化を広めたいとすれば、何をするべきだと思いますか。
A. I think there are two major issues to consider. One is public awareness. Most people if you ask them about power lines in Japan they agree there too many and the wires are not attractive. However most people will say something like “しかたがない“.This is the first barrier. If people do not want to push for change, then other priorities will take precedence. Additionally, as mentioned above, the cost is higher for undergrounding. This cannot be ignored. In every society the budget of the government or companies reflects people’s mostimportant values. So if undergrounding is a priority money can be allocated to the initiative. But if it is not important to people there will be many other priorities or funding such as health care or roads or education etc.
考えるべき大きな問題は二つあると思う。 ひとつは国民の意識だ。 日本の送電線について尋ねると、ほとんどの人が「多すぎる」「魅力がない、綺麗でない」と答えます。 しかし、ほとんどの人は「しかたがない」などと言うでしょう。これが最初の障壁です。 人々が変化を求めようとしなければ、他の優先事項が優先される。 さらに、前述したように、電線類地中化にはコストがかかる。 これは無視できない。 どの社会でも、政府や企業の予算は人々の最も重要な価値観を反映している。だから、電線類地中化が優先されるのであれば、その取り組みに予算を配分することができる。 しかし、もしそれが人々にとって重要でないなら、医療や道路、教育など、他に多くの優先事項や資金調達があるはずだ。

-日本の景観について-
Q13. お気に入りの場所を教えてください。
A. 瀬戸内海と甲山(かぶとやま)です。
Q14. 訪れてみたい場所はどこですか。
A. I’d like to see the launch of JAXA rocket.
JAXAです。
Q15. 電柱がなければ良いと思う場所はどこですか。
A. I agree that the undergrounding approach must be step by step. So city centers, historical neighborhoods, scenic areas should be the priories.
電線類地中化のアプローチは段階的であるべきだということには同意する。 都心部、歴史的な地域、風光明媚な地域が優先されるべきだ。
Q16. 日本では無電柱化の目的を防災、交通安全、景観向上として進めていますが、どの点がいいと思いますか。
A. For each stakeholder their requirements maybe different. So for the typical resident perhaps beautification is the most important thing. However for government perhaps disaster resiliency is the most important thing. And for the utilities perhaps installation and maintenance cost are the mostimportant thing. Therefore, we must think about all the stakeholder needs.
それぞれの利害関係者にとって、必要なことは異なるかもしれない。 つまり、一般的な住民にとっては美化が最も重要かもしれない。 しかし、政府にとっては、災害に強いことが最も重要かもしれない。 ユーティリティ企業(電線管理者)にとっては、設置やメンテナンスのコストが最も重要かもしれない。 したがって、すべての利害関係者のニーズについて考えなければならない。
Q17. (無電柱化について)あなたの国ではどのような点を重視していると思いますか。
A. First, most new construction already buries all utilities. So there is no issue. Second, for existing overhead infrastructure cost of conversion is the biggest issue to accomplishing undergrounding especially remote or rural areas.
第一に、ほとんどの新築工事はすでにすべてのユーティリティ(電線類施設)を埋設している。 だから問題はない。 第二に、既存の架空インフラの場合、特に遠隔地(辺境地)や田舎では、変換コスト(費用)が地中化を実現するための最大の問題となる。

Q18. 何が日本の景観を損なわせていると思いますか。
A. There are many unsightly aspects to the Japanese urban landscape. These include Pachinko parlors, an overload of poorly designed advertising, rusty buildings, and a general lack of city planning. In Europe or many US cities there are strict codes for building that preserve a common theme of design and an aesthetic connectedness throughout the city. This is generally lacking in Japan. Good examples of Japanese city environments are some classical towns like Kurashiki. Also, there are some limited areas which have a good design such as Midosuji Avenue or West Umeda. Overall, much of the Japanese urban landscape is unfortunately slapdash, jumbled, and somewhat run down. Additionaly even in the Japanese country side which can be beautiful because of 田んぼand mountains. Unfortnately the farmers use bright blue plastic sheets to cover their plantings. This is unsightly. In Europe, for example in the country side looks like paintings and farmers don’t use any such plastic sheeting.
日本の都市景観には見苦しい点が多い。パチンコ屋、デザイン性の低い広告、錆びついた建物、都市計画の欠如などだ。ヨーロッパやアメリカの多くの都市では、建築に関する厳格な規範があり、街全体に共通するデザインのテーマや美的なつながりが保たれている。これは日本では一般的に欠けている。日本の都市環境の良い例としては、倉敷のような古典的な町がある。また、御堂筋や西梅田のように優れたデザインを持つ地域も限られている。全体的に見ると、日本の都市景観の多くは、残念なことに、だらだらとした、ごちゃごちゃした、やや荒廃したものだ。さらに、田んぼや山があって美しい日本の田舎でさえそうだ。 残念なことに、農家は植え込みを覆うのに真っ青なビニールシートを使っている。 これは見苦しい。 ヨーロッパの田園風景はまるで絵画のようで、農家はそのようなビニールシートを使わない。

-オンライン取材でうかがった追加の質問・意見-
EQ1. 米国では「無電柱化」という言葉はあるの?
A. undergrounding
EQ2. 日本と米国との政策の違い、電線管理者の考え方の違いについて。特に米国では災害に関して無電柱化を進める政策をとっていると感じるか。
A. 米国では、大きな災害が起こるのはいつも同じ場所に起こる場合が多いので、集中的に投資して一気に進めるケースが多い。米国は州ごとに法律や条例が違う。ケースバイケース。まず委員会を立ち上げ、災害対策のための法律や条例を作成する。法律ができたら電力会社を使命して、その電力会社が施工を担う。無電柱化の費用は税金で賄われるが、電気料金などに反映される。それを人びとは概ね理解している。 ハリケーンがよく上陸するフロリダでは、無電柱化が進んでいる。 米国では、過去・今後における災害の被害額を算出し、この被害額だったら無電柱化したらトータル的に有益だと考える、いわゆる投資的な面で進めている場合が多い。 郊外からは架線での送電線、市街地では地下埋設といったケースが多い。
EQ3. 景観面での追加の意見
A. 京都の先斗町は電柱・電線がなく、すっきりしていてきれい。しかし、一歩外の通りに出ると電柱・電線がいっぱい。これは大変残念。京都は日本でも空襲を免れた、歴史的な景観がたくさん残っているとても貴重な場所(ヒストリカルエリア)。外国人観光客も是非訪れたい場所。もっと景観の価値を高めるべき。
EQ4. 京都市は予算がないと言っているが
A. 外国人観光客から観光税をとってでも無電柱化を進める価値はある。 →(既に観光税をとっているかもしれないが)景観の意識が高い外国人観光客だったら多少の負荷は理解してもらえるか。 あと、残念なのは看板の多さ。美観を損ねている。そんなに看板は必要ない。欧米はほとんどない。

京都・二寧坂
EQ5. 日本は狭い道路が多いと感じますか。
A. 確かにそう。車の往来に電柱が邪魔な上、歩行者の往来も多く、自転車も結構行き交う。
EQ6. 諸外国と日本との電柱事情について
A. ヨーロッパの市街地はトラムの架線はあっても、歩道には電柱・電線はない。実際に行ってみたらわかる。 伝統的な建築物や観光地はほとんどない。京都でみる石畳の道などは電柱・電線がないほうがいい。

◆感 想◆
私たちからの急な依頼にもかかわらず丁寧にご回答いただきました。感謝感謝です。無電柱化に関連したご職業に勤めておられることもあり、詳しい内容と的確なご意見でとても勉強になりました。山田夫妻のお話を聞いていていると、「無電柱化」というよりも「電線(類)地中化」という言葉のほうが合っているような感じがしました。米国では、電柱は基本的には定義がなく(EQ1の回答で「無電柱化」をundergrounding)、電線類は地中にあるのが当たり前。電力需要が少ないところや電柱・電線じゃないと困るところには建てるという印象を受けました。あと、ただ電柱・電線を無くせば景観がよくなるかといえばそうではなく、看板の乱立や不必要なネオン、農村部でみられるブルーシートなども景観を損ねているという意見は、いつも見慣れている私たちにはあまり気が付かない感覚だと新鮮に感じました。

インターン生企画無電柱化 ・ 異文化取材 関西外国語大1回生 インターン生 藤井 沙耶